仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第五話:夏の終わりのJoker game!?(10)

「……さぁ、お前たちの罪を」

 

 仮面ライダージョーカー左翔太郎は、指を突き出しながら一歩前進しようとした。

「……ぁん?」

 が、何か違和感をおぼえて横を見る。

 自分と同じような、黒い装甲の戦士が、横に並び立っていた。

 

 何だ仮面ライダーか、と翔太郎は正面へと向き直った。

 何だ仮面ライダーか。

 何だ。

 何……

 

「…………えぇーッ!? お前、仮面ライダーだったのかよぉ!?」

「今更ですか!?」

 

 二度見しながら、指をエイジに向けて、翔太郎は背をのけぞらせた。

 

「つか、なんだその悪人ヅラ!?」

「ほっといてくださいよ! 割と気にしてるんだからッ」

「しかも俺と色かぶってるしよ!」

「良いじゃないですか敵味方でわかりやすくて」

 

 と、果てない口論をくりひろげる彼ら。その特徴的な角にめがけ、春奈は銃をかまえて引き金を引いた。

 ダメージはないが、思わぬ方向からの射撃が彼らを襲い、そこに火の花を咲かせた。

 

「のわっ!」

「って、あぶねぇだろッ」

「前ッ!」

 

 文句を言おうとする翔太郎たちに、春奈の怒号がうながす。

 あん? と向き直した翔太郎の目前には、翼の折れた獅子が飛びかかってきていた。

 

 超人的な跳躍……否、飛翔によって一気に距離を詰めた魔人は、低い唸声とともに獣性をむき出しに爪で切りつけてくる。

「……の野郎」

 すかさず飛びのいた翔太郎たちは臨戦の構えをとって、反撃に打って出た。

 

 

 

 そこから、五人の仮面ライダーとひとりの捜査官との乱戦がはじまった。

 ダークドライブと、グルーバを取り込んだギルガメッシュとが斬り結べば、翼獣と化したギルガメッシュはジョーカーという仮面ライダーともつれ合ったすえに接戦をくり広げた。

 

 時に互いの敵を入れ替え、時に二体の敵を同時に請け負いながら、彼らは格闘術や装備のかぎりを尽くして戦う。

 

 ブレイドガンナーの一閃が、黄金騎士の杖を弾き飛ばした。

 その隙を、エイジは見逃さなかった。

〈NEXT!〉

 イグニッションキーをひねって放出したエネルギーが剣刃に渦巻く。

 

 それが振り下ろされる前に、ギルガメッシュの空いた片手が空をつかむ。

 

〈ガシャコンシールド!〉

 

 彼を中心としたおおきなリングと、さながらゲームのセレクト画面のようなアイコンが浮かび上がりそれらが手を包み込む。

 その光の中から取り出されたのは、大きなふたつのボタンのついた、分厚い丸盾だった。

 そのボタンを、剣の柄で連打すると、

 

〈1・2・3! 3・バリア!〉

 

 と早口でボイスがアナウンスする。盾の前に半透明の障壁が三層、展開する。

 ダークドライブの一斬は、それらによって相殺された。

 

「なっ!?」

 

 必殺の技がいともたやすく防がれたことに、エイジは動揺した。それを読んでいたかのように、ギルガメッシュはシールドを押し出して叩きつける。退くエイジに対し、今度は自身の優位を確立しつつ、黄金の騎士は突進した。

 

 すれ違いざま繰り出される刺突。一撃を与えられて反撃に出た時には、すでにそこに彼の姿はなく、剣は無慈悲に空振った。伸びきった腕を引き戻す前に、身を切り返したギルガメッシュが再び剣を突き出した。それらが、ダークドライブの装甲にいくつもの青白い火花を咲かせた。

 直撃をかわすだけで精一杯だった。

 

 追撃を加えようとするギルガメッシュの側頭部目がけて、春奈はトリガーを引いた。

 

 放たれる銃撃。だがそれは黄金騎士に届くことなく、飛び込んできた別のギルガメッシュがその前に立ちふさがった。

 

〈バッバ! バ、バ、バ、バッファ!〉

 

 色を変じたマントがひるがえり、光弾をいなして防御する。

 その所作には、荒々しくも気品があった。さながら闘牛士か、あるいは魔術師(ウィザード)か。

 

 そのマントの下から分厚く伸びた爪が、不気味な光を宿しながら生身の春奈に狙いを定めた。

 

「……ッ、照井さんっ」

 

 彼女の危機を先んじて察知したのは、エイジだった。

 シフトブレスにセットされたシフトカーを抜き取った。

 その隙を突こうと再度突貫してきた騎士のギルガメッシュを、翔太郎が遮った。

 

「させるかよッ! てめぇの相手は俺だ!」

 

 と気炎を吐きながら彼と競り合い、エイジがシフトカーを入れ替える時間を作る。

 彼の援護に心中で詫びと礼を告げながら、エイジは黒赤のパトカーをセットした。

 

〈NEXT HUNTER!〉

 

 ネクストライドロンから発進したタイヤが分離し、ダークドライブの手に格子の形状でおさまった。

 それを無造作に投げると、空中で分解したそれが、ターゲットの周囲に柱のように突き立った。

 

 ……ただし、ギルガメッシュではなく、春奈本人を囲む。

 

 彼女を閉ざし、そして同時に保護した牢屋は、ギルガメッシュの爪撃を阻んだ。

 舌打ちする魔術師の横合いから、エイジは飛び膝蹴りをくり出して春奈から退かせた。

 

〈CANCER ON!〉

 

 だが、白銀の獅子が黄金と黒のライダーの間に割って入った。

 その右手には爪に代わって蟹鋏のような武装が取り付けられていて、閉ざしたそれをさながら鈍器のように振りかざしながらエイジを追った。

 二体のギルガメッシュを巧みに誘導しながら、春奈から引き離していった。

 

 そんな激闘のさなかに外野に置かれた春奈は、歯ぎしりしながら石畳のテクスチャを荒々しく踏み鳴らした。

 

 

 改めて、仮面ライダージョーカーは外見も形も、とうてい『仮面ライダー』と定義しがたい魔人の一体と相対していた。

 

〈1・2・3・4・5・6! 6バリア!〉

 

 ボタンを連打し何層もの防壁を重ね掛けするギルガメッシュを前に、

「だったら、変わり種で勝負だ!」

 翔太郎は、自身のマキシマムスロットへガイアメモリを挿入した。

 ただし、ジョーカーメモリはロストドライバー自体に差したまま。青いメモリを別に。

 

〈TRIGGER! MAXIMUMDRIVE!〉

「ライダー……トリガーラッシュ……!」

 

 必殺技の名前らしきものをつぶやきながら、青い輝きをほとばしらせた拳を握り固める。

 

 飛び上がった翔太郎は、それこそ弾丸のように高速の打撃を繰り出した。防壁を速度と数とで押し切って、削り抜いて、最後は限界いっぱいまで引いた拳をうならせ、突き出す。

 

 だが、わずかにその拳先に、ブレのようなものが生じた。まるで、暴れ馬の手綱でも握っているように、突き出した腕の先から身体の重心が揺らいだのだ。

 

「手数でバリアを破るのは悪くない。が、慣れないマキシマムに身体がついて来なかったか!」

 

 体勢をくずして生まれた隙を、文字通り、ギルガメッシュが剣の切っ先で突いた。

 

「ぐあっ!」

 

 地面を滑る翔太郎の前に、残るギルガメッシュが合流した。

 彼らに追いつくようなかたちで、エイジが翔太郎の前に立った。

 

 心身もろともにぶつかり合うような凌ぎ合いが続いていた。

 決め手に欠けるのはどちらの陣営も同じだったが、地力、すなわち単純なスペックと数で考えれば、この『黄金仮面』たちが優位に立っていた。

 

 だが、示し合わせたかのように彼らは足並みをそろえて退いた。

「チュートリアルはもうここらで良いだろう」

「そろそろ次のステージに進めさせてやっても良いな」

 テレパシーで通じ合っている彼らがあえて会話をする必要があるかはさておき、その談合はすぐに一致を見せたようだった。

 

ジョーカーが踏み込むより早く、黄金騎士のギルガメッシュがきびすを返す。その退路には、色とりどりのコインがあって、みずからの肉体にそれを吸収していった。

 

〈高速化!〉

〈透明化!〉

〈ジャンプ強化!〉

 

 と、彼の設定したステージ内にボイスがけたたましく鳴り響く。

 それに反し、ギルガメッシュの姿は視認できなくなり、音や気配はするが、ものすごい勢いでそれが上へ、さらに上へと遠のいていった。

 

〈ファルコ! ファッファッファファ、ファルコ!〉

 

 魔法使いのギルガメッシュは指輪から生み出した魔法陣をくぐった。真紅のマントをはためかせ、赤い羽根をまき散らし、上空に飛び上がる。

 

〈LIBRA ON!〉

 

 獣のギルガメッシュが星雲の輝きとともに、錫杖をその手に生み出した。石突で床を叩けば、その像が大きくぶれて、陽炎のように姿はかき消えた。

 

〈この街の象徴たるこの風都タワーは預かった。中にいる客ともども無傷で返してほしければ、屋上まで来い〉

 

 その場に立ち尽くすエイジたちに残されたのは、そんなテンプレートな言葉だけだった。

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