……それから、エイジは戸惑うりんなに説明をし、説得をした。
「あの目玉は、このシフトカーを要求してきた。たぶん、本命はこっちか、もしくは両方だったんだ。だったら、僕がダークドライブに変身して、囮になってもう一度あいつをおびき寄せれば良い。そこを捕まえてやる」
もちろん、反対はされた。
だが、警備システムが作動する前にあのゴーストは侵入した。ましてや半壊した研究所では、とうてい守り切ることもできないだろう。
それに今回の騒動が公になれば、さらにチェイスやクリムと復活は遠のくことになるだろう。
そもそもの原因は、ネクストスペシャルを追いかけた自分にありそうだ。
そのせいで叔父や父母の嘆く姿は、見たくなかった。
熱意ある説得に根負けしたのか、
「まぁ、確かに今変身できる仮面ライダーは、君しかいないものね」
と、最終的にりんなは折れた。
「……ただ、その後がキツかったなぁ……」
三か月後の現在。いつものように自警団としてのパトロールの最中にビルの屋上に腰かけながら、ダークドライブに変身したエイジはそのことを回想する。
泊エイジは、運転免許を取得したその次の日から、また『教習』を受けるはめになった。
ドライブとしての運転や操縦技術、りんなによって開発されたネクストシフトカー三種の説明や、コア・ドライビア以外の超技術への専門知識や対処法、彼女の組んだ濃密なカリキュラムによるトレーニング。
まるで身体と頭をそっくり改造するかのようなトレーニングをこなし、ようやく外で『試運転』できるようになったのは、半月前だ。
例の『サイバロイドボディ泥棒』をおびき寄せるためのエサとして、ダークドライブの姿で警察でも根絶しきれない悪や怪人を退治し、そのウワサを広めさせる。
もちろんこれは警官である父や、その関係者にも聞こえるデメリットもあるが、手っ取り早い。
それに、手がかりがないわけでもなかった。
エイジがダークドライブに初変身した直後から、奇妙な存在がニュースにも取り上げられて世の中を騒がせていた。
〈エイジ君、休憩中ごめんね〉
ダークドライブのシステムに取りつけられた通信機から、りんなの声が聞こえてきた。
〈例の『黄金仮面』が現れたわ。そこから南東二キロ先、貴金属店から金品を強奪。グライダーのようなものに乗って上空から逃走中〉
「了解」
〈しつこいようだけど〉
任務中のりんなは、いつになく真剣だった。
仲間である進ノ介や霧子にも伏せて、彼らの息子に危険なことをさせている。その負い目が、彼女におふざけを禁じ、慎重にさせるのだろう。
〈チューニングとスキャンはしたとは言え、ダークドライブは未知の領域の多いシステムよ。……扱いには十分に気を付けて〉
元特状課とは仲間という枠組みを超えて、泊親子を中心とした大きな家族の輪でもあった。
彼らに余計な手間や迷惑をこうむらせないためにも、この事件は早急に片をつけなければいけない。
――それに、ヒマな大学生をやってるよりこっちの方がワクワクする。
過酷な訓練の最中であったとしても、命を的にした活動であったとしても、エイジにとっては間違いなく今までの人生で一番充実していた三ヶ月間だった。
「わかってるさ。悪魔と相乗りする勇気は、ある」
やや芝居がかったセリフとともに、彼は空中に身を投げ出した。
エイジがダークドライブになることを決意した直後と同様、どこからともなく時空のトンネルを現れたネクストライドロンが、空に青い軌道を描いて、運転手を拾い上げた。
闇になじむかのように、二代目のドライブは夜空を走り抜けていった。
Next Drive……
「『黄金仮面』は、この閉塞した現実に風穴を作る、新時代のヒーローだ!」
「ニューヒーロー? 俺は、最古の英雄だ」
「この男の遺体は、インターポールで引き取らせてもらう」
「君が免許をとった後に、二種類のライダーが現れた……これは偶然か?」
「我が名はギルガメッシュ。それとも当代風にこう名乗ろうか。仮面ライダー……ギルガメッシュ!」
「最新の仮面ライダーは、ふたりじゃない。私は……」
第二話:Gは止まらない/黄金狂時代