仮面ライダー NEXTジェネレーションズ   作:大島海峡

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第六話:Dark Night(7)

 全力で腕を伸ばし、腕を伸ばす。

 繰り出した拳は、難なく受け止められ、捻り上げられた。

 

 愕然とするエイジの眼前に、ギルガメッシュのマスクがあった。

 頭突き、頑強に保護されているはずの顔面に鈍い衝撃が入る。前頭葉から波打つ衝撃が、彼から思考を奪っていく。

 

 だが、おかげで両者の間に間隙が生まれた。

 その合間に、エイジはブレイドガンナーを転送し、握り固めた。

 

「ッア!」

 みじかい気炎を発して蒼刃を、黄金の鎧に叩き込む。叩き込もうとした。斬れる、はずだった。

 

 だがその一拍子速く、ギルガメッシュの拳撃がその手首を叩いて軌道をそらした。

 だがエイジは諦めない。軽く崩しかけた姿勢を強引に引き戻すと、無理な姿勢のまま再度拳を打った。

 

 防がれる。だが、相手に攻撃をさせないままに、エイジは連打し続けて反撃を妨害する。反動で自身の身体を立て直す。

 だが、肝心の攻撃はことごとく、ギルガメッシュの剛腕によって撃ち落とされていく。

 

 最小限の動作、最低限の無駄、最短の軌道、最速の振り。

 あらゆることにおいてベストな連撃は、それを上回るギルガメッシュの打撃ではね返されていく。

 

 何度も、何度も打ち込んだ。それでもエイジの猛攻は、金色の装甲に火花ひとつ立てさせることはできなかった。

 

 エイジの身体が音をあげるほうが先だった。

 痺れと消耗で鈍磨した斬撃の合間を縫って、ギルガメッシュは力任せの中段蹴りを放った。

 エイジの脚が一瞬地を離れた。その威力と圧力はあまりに強く、息をする間もなくそのまま踏み倒される。

 

 銃撃に切り替えたブレイドガンナーのトリガーを、ギルガメッシュの面に目がけて絞る。

 すんでのところでかわされたが、エイジは解放された。起き上がった。

 後ろ跳びで退きながら、二射、三射と続けざまに放つ。

 

 だが、黄金の王は退かない。

 光弾の横雨を、浴びながらも平然と前進する。

 

 接近するごとに激しくなっていく連射に身じろぎもたじろぎもしない。ただ、視界をふさぐ顔面への射撃だけは、わずらわしげに、羽虫を払うかのような手つきで防ぐばかりだ。

 

 動揺の寸時が、そのまま相手の反撃の機へと直結する。

 これが真の格闘だ。そう言わんばかりに突き出した拳はそのままガラ空きになったダークドライブの胸部を穿ち、今まで打ち込んできた連打連射の倍するであろう苦痛がエイジを襲った。

 

(勝てない)

 

 腹の底から染み渡るような冷たい実感を抱く。

 これまで戦ってきたギルガメッシュたちとはまるで違う。

 

 今までの彼らとて、ライダーとして高いスペックを有していた。

 だが、彼らには慢心があり、そこにつけ入る隙もまたあった。ゆえに、勝つヴィジョンが浮かばない、ということはまずなかった。

 

 だが、この最後のギルガメッシュは違う。

 心技体いずれにおいてもダークドライブやエイジに劣る部分がなく、遊び心や油断といったものがない。構えも作らずだらりと両腕を垂らしているにも関わらず、そこには小細工や小手先をの技術を介在させる余地がない。

 

 だからと言って、しんがりを買って出たというのに、すぐ後ろに叔父たちがいるのに、負けを認めて逃げるわけにはいかない。

 

 ネクストハンター、ネクストビルダー、ネクストトラベラー……

 いずれのシフトチェンジも、勝算のある戦いが思い浮かばない。

 となれば、残された手段は力攻めしか残されていなかった。

 

〈NEXT!〉

 

 加速をつけつつ、エイジは飛んだ。

 突き出した右足に、するどい雷光がほとばしる。

 

 車道という狭さからネクストライドロンによる助攻は受けられないが、それでも全出力を集中させた。

 

 だが、

 

「これは、天空寺タケルの方がマシだったな」

 

 ギルガメッシュは技で応戦しない。ただ隻腕で受け止める。そのまま握り固められ、並の怪人であれば触れるだけで爆散するようなエネルギーは、彼の外殻を素通りして流散していく。

 エイジの爪先はボルトで打ち付けられたかのごとく固定され、その身は宙づりになった。

 ギルガメッシュの逆の手がその喉輪へ、蛇のように伸びる。獅子の牙のように食らいつく。

 

 そのままギリギリと締め上げられて、エイジは苦悶の声をあげた。

 

「いい加減、お前を好きに遊ばせておくわけにもいかない。そろそろ働いてもらうぞ」

「ふざ、けるな……誰が、お前なんかの、ために……ッ!」

 

 精一杯の抵抗として手足を揺らしながら、エイジは低く声を振り絞る。

 対するギルガメッシュは「あぁ」と声を漏らした。

 まるで、この瞬間も戦っているエイジのことなど、今の今まで忘れていたかのような調子で。

 

 

 

「別に、()()()()言っていない」

 

 

 

 ぞろり、と。

 王の背に、触手が生えた。あるいはツタか、孔雀の羽か。

 先端に独特の突起を持つそれは中空で幾筋も分岐しながら、捕捉したダークドライブへのベルトやシフトブレス、そしてそこに取り付けられたネクストスペシャルのシフトカーへと絡みつく。

 

 瞬間、悪性の情報の嵐が、エイジの視界と神経を焼いた。

 脳に直接針を刺しこまれるかのような激痛が襲い、たまらずエイジは苦悶の叫び声をあげた。

 

 彼の断末魔は途切れることなく、意識はそのまま深い闇へと沈んでいったのだった。

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