ネバーランドでピエロは踊る   作:くまたくま

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他のss投下して、久々に評価を見たら色がついてた…。前回読んでくださった方、ありがとうございました。


第2話

〈エマ〉

 

オリバーがどこかへ駆けていくのを私は見送ることしかできなかった。いや、何か彼に声をかけようとしたのに、言葉が出てこなかったのだ。彼はいつも、そうやって一人で辛いことを抱えている。普段はおちゃらけてレイとじゃれたり、年下の面倒をみたりしているのに、たまにああやって悲しげな表情を浮かべているんだ。そんな彼をみると、私は、いつも心が苦しくなる。どうして相談してくれないのだろう。私たちは家族なのに、って。そんな風に話しかけても、オリバーは「家族がいなくなるのが寂しいんだよ」っていつもみたいにお兄さんみたいに語りかけてくる。それは嘘じゃないと思う。でもそれだけじゃない気もしている。だって、そんな時のオリバーの表情は決まって、まるで貼り付けたような乾いた笑い顔なんだ。

 

 

 

 

ーーカランカラン

 

どんなに悲しくても、暗い闇に落ちたような気分になっても、必ず朝はやってくる。檻のような格子付きの窓から差し込んでくる光は、うざったいくらいに朝が来たことを主張していた。

 

 

悪夢は見なかった。セティとの思い出が、抱きしめた時の身体の熱が、そして2度とそれには触れられないという絶望が、俺を眠らせてはくれなかった。ああ、ああ、また1人俺は家族を死なせてしまった。俺のせいじゃない、自意識過剰なんだって言われなくてもわかっている。でもそう思わないではいられない。その絶望感がこれからの俺の原動力なんだから。

 

多分俺は今ひどい顔をしているのだろう。一睡もしてないし、顔は涙でぐちゃぐちゃだ。それなのに頭は不思議なくらいスッキリしていた。やることが、やらなくてはいけないことが、わかったから。

 

「おっはよー!!」

 

元気すぎるほどの声がして、俺の部屋のドアが開いた。

 

「うわ、え、オリバー、すごい顔してるよ大丈夫!?どこか具合でも悪い!?」

 

飛び込んで来たエマは俺の顔を見て心配そうに言った。彼女はいつもそうだ。ハウスの誰かがいなくなった次の日の朝は、弾けるような笑顔で俺を元気づけようとしてくれる。そんな彼女の優しさが辛くて、努めて笑顔でこう返す。

 

「ああ、大丈夫。セティがいなくなっちゃったからな。少し寂しくてあまり眠れなかったんだ」

 

そう返した俺の顔をみて、エマは心配するような表情を浮かべた。

 

 

「おはよう、オリバー。朝飯だぞ」

 

ハウスから誰かがいなくなった朝はレイもいつものからかいをしてこない。周りの子供達もみんな俺の顔を見て大丈夫かと声をかけてくる。情け無い。年下に心配かけるなんてな。そんなぼやきを誰に吐くでもなく胸にしまって、食卓についた。

 

「さあ、みんな。セティがいなくなって少し寂しいかも知れないわね。それでも今日も仲良く楽しく過ごしましょう。私たちは家族なんだから。セティもそう願っていると思うわ」

ママの挨拶はほとんど耳に入らなかった。ただ無心で朝食を口に入れた。大泣きしたからとても腹がすいていたのかもしれない。栄養の補給は大切だ。ここから俺の戦いは始まるのだから。

 

 

〈レイ〉

「まあ、今日はすごいわ!!満点が4人も!!」

 

ママの声が響いた。どうやら今日はオリバーも満点だったらしい。それなのにあいつは元気のないままだ。いつもなら俺に自慢の一つでもしてくるだろうに。

 

ーーまあ、セティがいなくなったからなーー

そう。セティはいなくなった。エマたちは里親の元に行ったと思っているが彼女はもう、この世にいないのだ。それがこの世界。鬼の作った農園の摂理。吐き気がする。そして、それを知りながらも助けられなかった自分にも嫌気がさした。

 

--まだだ、まだはやい。待つんだ。必ずその時がくるから。エマもノーマンも賢くて頼りになる。俺たちなら生き残れる--

 

そんな考えをしてる俺に余計に苛立った。そう。オリバーを俺は見捨てている。このハウスは12歳になったらどんな子供でも出荷される。オリバーを助けるには時間が足りない。先輩風を吹かせながらもどこか子供っぽいあいつは、ママを除けばこのハウスで唯一の年上だ。俺はよく喧嘩をするがあいつのことは嫌いじゃない。絶対口には出さないがな。

 

--それにしても今日はいつもより落ち込みが激しかったな。しょうがねぇ、少しは励ましてやるか…。もっともそれも俺の自己満足だが--

 

そう思い、辺りを見渡し、オリバーを探そうとした時、

 

「--レイ」

 

ゾクリ。言いようのない恐怖が、俺の体を走った。後ろからかけられたその声がオリバーのものだとはわかった。だが、違う。ゆっくりと振り向き、見たその顔はいつもより血色の悪いようにみえた。だが、そんなことはどうでもよくなる程に、目に覚悟を携えている。何かとんでもないことをするような、そんな悲痛な覚悟を。

 

--誰だ、コイツは。いや、オリバーだ。しかしなんだこの感情は。びびったのか、俺が。違う。そんなことじゃない。コイツは一体何をしようとしている--

 

考えがまとまらない。体が固まっている。目の前の、いつもと同じで全く違う彼に焦点が合わない。

 

「少し話があるんだ。俺の部屋に来ないか?」

オリバーのその言葉にどうにか俺は頭を上下させた。

 

まずすべきはレイを味方につけること。この現実を知っている人間がいることを知らせ、エマたち10歳組が12歳になるまでに何ができるかを考えなくてはならない。そのための実験台に俺はなろう。原作でレイがしたように、耳の発信機がどの程度で壊れるかを調べるために、怪我をしてみることは必要だ。外に出たらどうなるのか。最終的にはママの秘密の部屋に行ってみることも考えなくては。ああ。知識が足りない。この絶望に立ち向かうにはどうしようもない程に。それでも何も知らないよりは。そのまま無力に死ぬよりは。

 

--もしかしたらその方が幸せなのかもしれないな--

 

そんな考えすら頭をよぎり、頭を振って消し去る。

 

--さて、とりあえずはレイに話をするとしよう。精々俺をうまく利用できる策を作ってもらおうじゃないか。我が自慢の後輩くん--

 

自嘲めいた笑いを浮かべ、俺はレイに声をかけた。

 

 

 

--そうして始まる、理不尽への反逆。未だ道なきその意志は、もう1人の現実を知る少年に如何様な影響を与えるのだろうか--




お読みいただきありがとうございました。主人公オリバーくんは原作2巻までの知識を持っております。
さて、ジャンプではとっくに脱出し、全く違ったフィールドですね。この物語、オリバーくんは脱出のその先を考えておりません。それは全部できの良い後輩たちに押し付けようという魂胆ですね。その代わりそこに至るための犠牲は全て引き受けようと。そういう考えでございます。
さあ、彼の辿る道はどんなものなのか。ゆっくり待って頂ければ幸いです。

おまけのおまけ

なんかスマホから文章打ち込むと最初の一マス、空白開けても開かない仕様ってあるんですかね?あと、感想を非ログインの読者様にも書いていただけるような設定にしたいのですがやり方がわかりません。誰か親切な方教えてください。
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