カニ祭二日目、松子はゴシックロリータ、いわゆる黒を基調としたゴスロリ服を着ている。
.....いや、なんで?
「.....これで唐吉様の視線は、私の、モノ!」
「じゃ、松子ちゃんも張り切ってるみたいだし、ビラ配りよろしくね!」
「.....え、ちょ」
まぁ、そうなるよね。ウチも当たり前のように昨日と同じ服着せられたし。
三竹ってこういう食と金の絡むところじゃ逆らえない圧があるからなぁ、逆らったら後が怖そう。
ここは素直に言うことを聞いておいた方が良さそうだ。なんでも、今日は三竹の家族が来るとか来ないとか。
それ、にだ。
「.....今日はついてきたんだ」
「あぁ、少し気になることもあってね。唐吉君はまだ寝てたよ」
「そう」
別にいらない情報だった。来たらちょっとうざいかなぁ、と思うだけであってウチが直接被害を受けるわけでもない。
ただ、ちょっと寂しいと思っただけだし。
「あ、いたいた!ツバキちゃーん!」
「か、楓先輩!?」
「ていうか何その服、かわいい!」
ビラ配りのため校内を歩いてると楓先輩と帽子を被ったチェシャ猫と遭遇した。
「あれ、もしかしてこの子がツバキちゃんの使い魔?」
「え、えぇ」
「.....まさか、あんた時計ウサギか」
「久しぶりだねチェシャ猫。元気そうで何よりだ」
「まぁ、ね」
時計ウサギがチェシャ猫を見上げる形になってるのに、時計ウサギの方が胸を張って偉そうにしてるように見える。このちんちくりんが。
身長差のせいで時計ウサギが本当にちんちくりんにしか見えない。
「それで、先輩はどうされたんですか?」
「あぁ、そうだった!午後の二時くらいに時間取れる?」
「えぇ、と、その時間でしたら–––」
シフトは入ってなかったはずなんだけど、三竹に何か頼まれるかもしれない。それに休憩に入るまでに着替えもしたいから、時間的にギリギリになってしまう。
ウチが葛藤してるとその原因、というか我がクラスを一時的に掌握してる三竹がポンとウチの肩に手を置いた。
そして、いい笑顔、さらにサムズアップをして言う。
「生徒会長さん、大丈夫ですよ!時間はこちらで調整しますので!(ふふふふのふ、ここで生徒会長さんにうちのクラスを宣伝できれば学校中に知れ渡るのはもう必然!宣伝はできることからしておかないと、ツバキちゃんにそこで宣伝を頼めば、ツバキちゃんみたいな子がいるってことで更に集客効果が期待でき–––)」
そうだから、全力でプロデュース!なんてことを考えてそうな顔だなぁ。
「そう!それは助かるわ〜!実はちょっとステージをやろうと思ってね!」
「ほほう、それは具体的にどのような?」
「えっとね、まずはあと一人誰かに声をかけて–––」
.....ウチを他所に話は進んでいく。三竹はどこからか算盤を取り出して、メモまでもしてる。
もうすぐ開校時間なんだけど、大丈夫なのかな?松子は松子でビラ配ってるけど、正直怖い。
あれじゃ、お化け屋敷の宣伝をしてるようにしか見えない。廃墟へようこそとか地獄へようこそとか言い出しそうだ。
「ほら、行くよチェシャ猫!カキヤが来ちゃう!」
「はいはい」
「あれ、三竹話済んだの?」
「済んだよ〜、それよりもほら、もうすぐ開校だから今日は一階の方中心にお願い!あ、あとシフトも少し変えといたから確認よろしく!」
「え、マジ?」
「うん。ここを代わりに松子ちゃんを入れて–––」
生徒会長からのお誘いを断るなと言われてるようだ。さっき何か札束らしき紙を受け渡ししてたのがチラッと見えたし。
.....見なかったことにしておこう。
シフトの変更を聞いて、ウチはカニ祭の玄関口でもある一階のロビーでビラ配りを始める。
時計ウサギというマスコットの力、押忍家のネームバリューのお陰もあってか、昨日より早く全て捌けることができた。例のごとく撮影会が始まろうとしたが、生徒会の方々といつの間にかできてたファンクラブの皆さんのお陰で昨日ほどの騒ぎにはならなかった。
【–––ギ、ピ、ピラピラ...ッ、パッツン】
「ツバキ、今のノイズはどういうことだい?」
「え?」
そっか、たしか使い魔にも魔女の声とやらは聞こえるんだった。そういえば、昨日もこんな感じにまともな言語に聞こえないことあったな。
「どう、って?」
「.....少し話をしたいところだ。ちょっと待ってくれ」
と、時計ウサギは首から下げたタブレットを操作した。するとどうだろう、一階ロビーから人がいなくなった。まぁ、時間は一時間ちょっとかかったけど。
「.....今度は何したの?」
「変身時の人払いがてらこの一階周辺にペンキ塗りたての看板と立ち入り禁止の看板を使わせてもらった。さらに違和感を失くすためにチェシャ猫にも協力してもらって生徒会、そこから教師陣、理事長に連絡を通した上で緊急という形で措置を取ってもらった。入り口も裏門に変えてもらった上でね」
「.....相変わらずアナログ方式、ていうかこういう時こそ魔法の力とかじゃないの?」
「そんな便利なものが存在するなら私は使えるようにしたいものだ」
「おまいう」
なんか釈然としないなぁ。今回も多分こいつのポケットマネーから出てるんだろうな。
「それで、魔女の声がいつからそうなったんだい?」
「えっと、昨日かな」
「カニ祭が始まってからか。始まってから変身は?」
「してない」
「ふむ」
何だろう、いつになく真面目な雰囲気をしてる。もしかして緊急事態なんだろうか?
「.....一度本部に戻る必要があるか」
「どうしたの?」
「いや、何でもない。試しに一度変身してもらってもいいかい?」
「ステッキは教室の鞄の中なんだけど」
「.....私が取ってこよう」
「いや、その必要はないッス!ほらツバキ姉!」
「ありがとね。戻ってきな、時計.....ん?」
「え?」
「はい?」
あれ、時計ウサギが人払いしたって言ってたはずだよね?
けど、ウチにステッキを持ってきたのはどっからどう見ても見間違えようのない愚弟だ。この見慣れたアホ面を間違えるはずがない。
「か、唐吉君!?」
「酷いぜウサギっち!俺を置いて先に行くなんてさ!」
「それ、あー、ごめん、寝てたから。ってそうじゃなくてどうして!?」
時計ウサギ物凄い剣幕で唐吉に迫る。対する唐吉はのんきに「んー」と言いながらポリポリと頬をかいてる。
「いやぁ、なんつーか、ツバキ姉が俺のことを必要としてる気がして–––」
「大丈夫、してないから」
「おうふ!?辛辣!?」
まさか立ち入り禁止やらペンキ塗りたての看板のあるところにまでやってくる馬鹿だとは思わなかった。
しかも、ステッキを持ってきたということは一回教室に行ってウチの鞄を漁ったことになる。荷物の類はクラスの皆しか入れないところにまとめて置いてるというのに、そこに入ったとか。やっぱり馬鹿だ。
「それじゃ!俺はダチを待たせてるんで戻るッス!」
.....あいつ、友達いたんだ。
唐吉の姿が完全に見えなくなったのを確認し、辺りに小型のカメラもないことを確認。さらに唐吉の残留思念がないと判断して時計ウサギから許可をもらい、久々に変身をしてみた。特に何の問題もなく変身できた、いつも通りだ。
「.....」
「どうしたの?」
「いや、合点がいった」
「.....そう」
こいつが何を言ってるかは全然わからない。ウチはこいつのことも魔法少女のことも何も知らない。いや、知ろうとしなかった。
.....はぁ。
「ねぇ、時計ウサギ」
「何かね?」
「–––人払いが解けるまでさ、あんたのことと魔法少女のこととか。色々教えてくれない?」
「.....ツバキ」
もう、戻れないんだ。片足も突っ込んじゃったし、魔法の力も使ってしまってる。なら、少しでも知った方がいい。
全然納得いかないけど、こいつのバックに何がいるのかも気になるところ。
「何か、悪いものでも食べ–––」
ウチは容赦なく、変身した状態で本気で心配してくる時計ウサギの顔面に蹴りを入れた。
※
『メルスィーボクゥ!カニ祭二日目も後半戦に突☆入!』
『早いものッスねぇ』
『そうだね、この放送を流すっていうことはそういうことだから、ネ。いつもはお昼休みにやってるけど、この二日に限っては校外の皆様にも楽しんでもらいたいですネ』
『えー、パーソナリティは何か面白いネタがあれば提供してほしい系女子の千梅ちゃんと–––』
『生徒会が生んでしまった罪、星よりも輝き放つイケてるメンズ代表!添咲カルマ=です☆』
『では本日の校内放送、クラブラジオクラブを五分拡大版で始めまーす!』
『んー、今まで昼休みの描写なんてなかったから今回が第一回にしか思えないね!フレッシュだ』
『初心忘るべからずッスからね!カルマ先輩さすがッス!』
『だろ?もっと褒め称えていいんだぞ!』
『そうしたいんですけど、時間が押してるらしいのでやることパパッとしちゃいましょう!次は私ら体育館に行かなきゃですし!』
『おぉ、そうだったな!ステージの司会進行の仕事もあったんだった!僕らがここでグダグダしてると、そっちも遅れるんだった!』
『はっはっはっはっはっはっ!』
『あっはっはっはっはっはっ!』
『それでは、最初のお便りー!北海道にお住いのゲレンデホームレスさんから!』
『遠方からのお便り感謝するぞ!』
『えっと、何々?
みなさんカニ祭楽しんでますでしょうか?OBとしてそちらに行きたかったのですが、急な仕事が入ったのでお便りさせてもらいました。
質問ですが、今のカニ祭七不思議はどうなってるのでしょうか?
私14期生なんですけど、今はどうなってるか気になります』
『なるほど、カニ祭七不思議!聞いたことないですね、次行きます!』
『お次は、現在我が校に在学中の美術部の堕天使さんから!
フハハハハハ!我の便りが読まれる頃、我は聖域にて彩の世界を創世している頃であろう!
我ら美術部の個展をよろしく頼むぞ!3階美術室前だぞ!忘れるなよ、我との約束だぞ!』
『お疲れ様でーす!次ー!』
『お便り終わりでーす!』
『では、次に入る前に宣伝!午後から体育館ステージにて、我らが生徒会長カエデちゃんがシークレットプランによる演目をやるぞ!ぜひ来てくれ!』
『先輩先輩!それ言っちゃシークレットになってないッス!』
『ハッ!?まぁいい、次のコーナー!』
.....何をしてるんだ、千梅は。
約束の時間に楓先輩と合流し、今は生徒会室である。
「.....楓、あれでよかったのか?」
「モーマンタイ!」
むふ!と胸を張る先輩。相変わらずデカイ。
「ていうか、ステージって何するんですか?ウチ何も聞かされてませんけど」
「それはもう一人が到着してから伝えるわ。千梅ちゃんの紹介してくれた人なんだけど、もうすぐ来るはず」
「.....千梅が紹介って」
正直嫌な予感しかしないな。
あいつと関わってて嫌な予感がしなかった時があっただろうか、否!ない!!
「ていうか、どんな人なんですか?」
「さぁ、少なくともうちの高校の生徒じゃないらしいけど」
「へー」
ていうか、楓先輩と千梅ってどういう関係なんだろう?
「ねぇ、チェシャ猫。時計ウサギちゃん起きそう?」
「.....微妙、かな。結構深く蹴り入っちゃってるし」
「ツバキちゃん、生き物は大切にね」
「はーい」
校内放送はまだ続いている。
カルマ先輩のナルシスト発言に千梅の煽ての掛け合いが延々と行われているから終わるものも終わりそうにない。
これ、毎回昼休みにやってるんだって改めて思うとヤバイな、うちの高校。
買ってきたチョコバナナを三人で食べていると、生徒会室の扉が勢いよく開かれた。
「あ、カキヤ!」
「え、唐吉!?」
「よぅ、楓、お待たせ」
「あれ、ツバキ姉」
もう会わないと思ってたのに、まさかこんな形で会うなんて。
「もー、遅いよカキヤ。ステージまで一時間くらいしかないよ!」
「悪い悪い、僕も色々あったんだよ。なんだ、いたのかクソガキ」
「あ?なんか言ったかハエ男」
「ハッ、エ...相変わらず感に触るチビだ」
「テメェこそな」
「ちょ、ちょっと二人とも〜!」
「僕は認めないからな!魔法少女なんて馬鹿げた存在絶対!!」
え、あの人魔法少女のことを知ってる!?
「ツバキ姉はなんでここに?」
「ちょっと黙ってて」
「おい、テメェ軽々しくそういうこと言うんじゃねぇよ!楓に危険が増えたらどうするつもりだ?」
「そうなれば僕が守る。僕は古今東西様々な格闘技に精通しているから、君と一緒にいるよりは現実的で合理的だろう?」
「なぁ、ツバ–––」
「一時間後にウチらステージやるから体育館で待ってて」
「ひゃっほーう!そうさせてもらうッスー!」
馬鹿は去った。
「カキヤさん、でしたっけ?」
「何だ君は?」
「–––魔法少女のツバキです」
「ッ、君も!?」
「.....同じく、魔法少女のサクラ!」
「誰や!?」
メガネの男、カキヤが振り返ったとこには白髪の女性、ってあれ?
あの人たしかあの時警察手帳を持って帰って行った人!
「全く、サクラ。君はもっとマナーというものを学ぶべきだ。入室前にノックは三回してだな」
「ハンプティパンティ!?」
「おや、チェシャ猫ではないか。そこで横になってるのは時計ウサギか?」
–––あの人も、魔法少女!?
「ふむ、となるとその麗しきパンティを履いた二人のレディも同種、というわけか」
「.....少し黙って、この子たちに変な印象持たれたら困る」
「おいおい、ご主人様といえど譲りはしないぞ?」
なんだろう、あのタマゴみたいな時代遅れなカイゼル髭の親父。生理的に無理、普通に受け付けることができない。
白髪の、サクラって人がこっちに気がついたっぽい。視線を向けてこっちに向かってくる。
「.....君は、たしかナキの手帳を持ってきてくれた娘」
「ど、どうも」
「その節は世話になった」
あれ、意外と友好的な感じ。なんか、ネットリとした品定めするかのような視線が気になるけど、カイゼル髭よりはマシだ。
「ちょ、っと!二人とも!」
「–––まだ言うかテメェ!テメェがそうやって魔法少女と公言してること自体が楓に危険を晒しかねないってのがわからねぇのか!?」
「–––何度でも言うさ!それは君が彼女を魔法少女という存在にしたからなんだろ!?だったら君がステッキを持ち去り、楓から離れれば済む話だろと何度言わせるつもりだ!?」
「だから–––!」
「いや、君は–––!」
「「うるさい!」」
–––話が進みそうになかったので、カキヤって奴をウチとサクラさんで蹴り飛ばした。
「.....あ、改めて自己紹介しましょうか!私は楓。この高校の生徒会長で魔法少女、使い魔はこのチェシャ猫でカキヤは私の彼氏」
(デカイ)
(デカイ)
巨乳の上に彼氏持ちとか、パネェ、楓先輩マジパネェっす。
「私はサクラ。使い魔はこの変態、もしパンツがなくなってたら最初にこいつを疑って」
「.....もっと他にあるだろ?」
「ない。あと、私は女の子とは積極的に仲良くしたいと思ってる。デュフフフフ」
–––変態コンビだったのか。
なんかカイゼル髭とは違う意味で身の危険を感じた。チェシャ猫も何か感じたみたいで楓先輩を庇ってる。
.....彼氏のカキヤってメガネはぐーすか眠ってるけど。
っと、次はウチか。
「ウチはツバキ、使い魔はこれ。クラスで焼きそばやってるから時間があれば来てくれると嬉しいです」
「おい見ろよチェシャ猫。時計ウサギが耳を掴まれて物呼ばわりされてるぞ、笑うところじゃねぇの?」
「あんたはまず頭にある被ったパンツをどうにかしろよ、それ誰のだよ?」
それにしても、この場に集まった全員が魔法少女だなんて。変な偶然があるもんだな。
「ふふふ、偶然じゃないわよ。私が仕組んだんだもん」
「え?ていうか、心の声」
「魔法を使わせてもらったわ。【読心魔法】は熟練度を上げれば変身しなくても使えるのよ」
へー、熟練度か。そんなものがあるんだ。サクラさんもうんうんって頷いてる。
この二人は魔法少女になってそれなりに時間が経ってそうだ。ウチが一番の新参者、この二人のどっちが長いかはわからないけど、少なくともウチよりも知識も経験も豊富なはず。
時計ウサギじゃなくて、この二人に聞いてもいいかもしれない。
「それで、私たちはこの後のステージで何をすればいいの?」
「あ、そうだった!実はね–––」
そうだ、そのために集まったんだった。時計ウサギも目を覚まし、使い魔も囲んで生徒会室で魔法少女達による会議が始まった。
※
その頃、ビラ配りをしている松子の目に体育館へ向かう唐吉の姿が映った。
–––そこから松子の行動は素早かった。自分の着ているゴスロリドレスを近くにいた女子生徒、控えめで大人しく勤勉で学年どころか教師陣の中でも有名な音無子猫(おとなしこねこ)に着せて、ビラを全て手元に置いてサムズアップをした後、下着姿で松子は体育館へ向かった。
その後、体育館前でゴスロリ姿で頬を赤らめる優等生の写真撮影会が行われると同時に生徒、教師陣と共にファンクラブが設立され、体育館内ではランジェリー姿で徘徊する松子の姿が多くの人に目撃された。
後に「体育館前の衣替え現象」「体育館の下着女」がカニ祭七不思議として語り継がれることになるのは別の話。
※
体育館のステージ演目。
このカニ祭の目玉の一つと言っても言い程に盛り上がるプログラムの一つ。
今年はゲストとして「CamereoN」という大学生と高校生で結成された若手バンドが呼ばれた。
プロ枠としては九之島真娘がこの後来る手筈になってるらしい。
他にも演劇部や競技ダンス部、軽音部や吹奏楽部に美術部までもが猛威を振るうまさに文化の祭典のステージ。
–––そう、正直に言うとありえないくらいにカオスなのだ。
「.....楓先輩、もしかして去年もこんな感じだったんですか?」
「そうよ!楽しそうでしょ!」
「ま、まぁ、はい」
子供のように目をキラキラさせてる先輩に本音を言えるわけもなかった。
「でも、ホントにやるの?ウケはいいと思う、でも、人前出たくない」
「やるの!こんな時こそ授かった魔法少女の力を存分に発揮しなきゃ!」
「多分、使うところ違います」
今、ウチら三人は変身した状態で体育館のステージ裏で待機してる。
なんか、改めて見るとこのコスチュームってやっぱりデザインが際どいというか独特というか。
サクラさんと楓先輩のコスチュームも相変わらずだ。ウチとはまた違った要素があって、エロい。
「時計ウサギ達置いてきちゃったけど、いいんですかね?」
「いい、あの変態はむしろ連れてきちゃ駄目」
「それにチェシャ猫に説教されるのも御免だしね」
二人共、使い魔に苦労してるのか使い魔に苦労させてるのかわかったものじゃないな。
変身するためだけのために人払いもしなきゃいけないし、それがまさかのポケットマネーから出てるんだもんね。
.....ん?あれ??
そうだ、人払いをするんだったら、ウチらの正体がバレたらヤバイ。
でも、魔法少女に守秘義務はない、それにこれからウチらはこの顔でステージに立つ。
魔法少女とは言わないけど、バレる要因にはなるんじゃないの?
でも、だったら何で変身の度に人払いなんて面倒なことを?
「ツバキ、ちゃん?どうしたの、ここが痛いの?」
「ひゃ、ちょ、サクラさん!?急にお腹撫でないで!」
「てへ」
もう、超びっくりした!
『では、次でラスト!なのかな?そうだよね、千梅ちゃん?』
『そうですとも!我らが生徒会長様率いる精鋭部隊によるオンザステージッスよ!』
「もうすぐね!準備はいい?」
「うん」
「はい!」
–––もう、難しいことを考えるのは後回し!
今は目の前のステージに集中する!
『では、登場してもらいましょう!魔女っ娘連合軍!』
チーム名がアウト!
ていうかサクラさん!初っ端から転ばないでください!!
※
体育館の客席には妹の誘いでカニ祭を訪れていた桐助は座っているパイプ椅子を体重で押しつぶし、目の前の光景にいたく感動していた。
自分のデザインしたドレスが可愛い女子が着て、踊ってる!
しかも全てが上玉、桐助の頬が静かに歪む。
–––見つけたぞ、魔法少女!
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