「う、ぐぁ……」
痛みに目覚めると、見慣れた白い天井が目に入った。
白いカーテンに囲われたベッドに寝かされていた。
包帯やら絆創膏やらが体中に貼られている。
コツ、コツ、コツ、とハイヒールの音が聞こえ、目の前のカーテンが勢いよく開かれる。
「起きた?」
「……うん、ありがとう、姉さ……深川先生」
白衣を纏った、短髪の女性。すらりと背が高く、ミニスカートから伸びる生足。
養護教諭の
「姉さん、でいいわ。蒼伊に先生とか言われると気持ち悪いから」
「うっ……」
思わず項垂れると、姉さんはカーテンを全開にして、来いと顎で示す。
「河野椛でしょ? あの子も懲りないわね」
椅子に座り、煙草をくわえた。
「姉さん、なんでそれを? ……学校内って禁煙じゃなかったっけ」
「最近、人間観察が趣味でね。どうせ校長どころか教師すら残ってないわ」
そういう問題じゃないと思うが、それを指摘したところでやんわりと流されることを僕は小学生のときに学んでいる。
「じゃ、行きましょうか」
「え、どこに?」
白衣を脱いで椅子の背もたれにかけ、さっと上着を着た姉さんに尋ねる。
「あんた学校に泊まる気? もう夜よ」
そう言われて壁の時計を見ると、もうすぐ21時を回るところだった。
「おばさんには言ってあるから、ファミレスにでも寄りましょ」
僕は慌てて鞄を取った。
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家に帰る頃には、22時を超えていた。
「ただいま」
「あ、おかえりー」
リビングでは母さんがパソコンのキーボードを物凄い速さで叩いていた。
上下ジャージに実年齢から大きく外れた若々しい顔に、金髪、眼鏡をかけている。
母さんは三十路にして今大人気の長編作家だ。
2ヶ月に一本ペースで新刊を出し、ジャンルは恋愛からミステリーまで幅広い。
ここまで来たら文章じゃなくて絵にすれば良いのにと思う。
「かなちゃんに聞いたわよ。大変ねー」
「うん、まあね」
姉さんが何を言ったかわからないがとりあえず頷いておく。
ただでさえ忙しい母さんに負担をかけたくない。だからいじめられているなんて相談はできないのだ。
姉さんはどちらかというと「困ったことがあれば
「今日はもう休みなさい。声が疲れてる」
ふー、といってキーボードを叩く指を止め、母さんが言う。
「うん、わかった。おやすみ」
僕はリビングを出て階段を上り、部屋に入った。
鞄を勉強机に置き、ベッドに寝転がる。
人生って、長いなぁ……。