鈴蘭寮の艦娘達   作:雨守学

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春一番が吹いたこの日。

いつもの厚着は脱ぎ捨てて、少しばかりラフな格好で寮を出た。

 

「あ……提督さん!」

 

ピクニックバスケットを持って、鹿島は手を振った。

 

「待たせたか?」

 

「いえ、私も今出てきたところです。今日は暖かいですね。少し暑いくらいかも」

 

鹿島もいつもより薄着であった。

 

「絶好のデート日和……ですね……。なんて……えへへ……」

 

デートか……。

 

「……ああ、そうだな」

 

「それじゃあ、行きましょう」

 

機嫌の良い鹿島と共に、駅へと向かった。

 

 

 

「お弁当、大丈夫かな……」

 

鹿島は時折、バスケットの中を覗いていた。

そんな心配をよそに、俺はこの前の意味ばかり考えていた。

「デートはかけがえのない人としかしない」

鹿島はそう言った。

今、こうしてデートしている俺は、鹿島にとってそういう存在であるという事だ。

そしてそれは――。

 

「提督さん?」

 

「ん……なんだ?」

 

「どうしたんですか? ぼーっとして」

 

「……いや、暖かくてつい、な」

 

「提督さん、お仕事でお疲れなんですよね。向こうに着いたら、お弁当を食べてお昼寝でもしましょう。うふふ」

 

もし、鹿島のあの言葉がそういう意味ならば……俺は……。

 

 

 

――公園は、――区内でも最大規模を誇る水郷公園だ。

 

「私、男の人とこうしてデートするの……初めてなんです。提督さんは……寮の皆さんとデート……してますから……慣れたものですよね……」

 

「いや……まあそうだが……質が違うと言うか……」

 

正直、ここまで異性としての意識を持って臨んだデートは今までにない。

「艦娘」と「女」。

俺は今まで、あいつらを前者としか見てこなかった。

だが、今は少しばかり違う。

 

「あの……手、繋いでもいいですか?」

 

「え?」

 

「デートですし……。ダメですか……?」

 

「別に構わないが……」

 

鹿島の手を握る。

とても小さく、細い。

 

「提督さんの手……大きいですね……」

 

「そ、そうか?」

 

お互いに目も合わせられなかった。

手を繋ぐなんてどうって事ないはずなのに、意識が変わるだけでこうも……。

 

「あ……提督さん、赤くなってる!」

 

「お前だって、耳まで赤くなってるぞ」

 

「だ、だって私は……。提督さんは、慣れてるんじゃないんですか……?」

 

「だから質が……」

 

「質って何ですか……?」

 

タイミング的に後で聞いた方がいいと思っていたが、ここで切り出すのもアリか……。

 

「……この前、お前が言っただろ。「デートはかけがえのない人としかしない」と。それってつまり……そういう意味だろ……?」

 

鹿島はより一層顔を赤くして、小さく頷いた。

 

「確かに俺は、今まであいつらとデートをしたと言えばしたかもしれん。だが、それはただそう呼ばれているものであって、異性として意識したデートは……これが初めてなんだよ……」

 

「それってつまり……私をそういう存在として意識してくれているという事ですか……?」

 

「そう……だな……」

 

そう言ってやると、鹿島は少し躊躇った後、口を開いた。

 

「私の気持ちを知って……意識して……提督さんは……どうするんです……?」

 

顔を向けず、横目で俺を見た。

細い瞳が、しっかりと俺をとらえている。

 

「…………」

 

俺が答えられないでいると、鹿島は小さく言った。

 

「好きです……。提督さんが……好きなんです……」

 

今にも消え入りそうな声だった。

 

「私じゃ……提督さんの恋人に……なれませんか……?」

 

今度は顔を向け、じっと、真っすぐ、俺の目を見た。

思わず息を飲む。

 

「提督さん……」

 

どう答えたらいいものなのだろうか……。

 

「た、確かに……そういう存在が必要かもしれないと思ってはいたが……その、なんだ……まだ心の準備というか……」

 

「私の事……好きですか……?」

 

「好……き……だが、そう言う好きかと聞かれると……まだ分からねぇところは……」

 

「もう! はっきりしてください!」

 

俺が本当に困っている所を確認すると、鹿島は深くため息をついた。

 

「なんか……頑張って告白した自分が馬鹿みたいです……」

 

「すまん……」

 

「まあいいです……。提督さんは恋というものに疎くて、ヘタレだって分かりました……」

 

返す言葉が無かった。

 

「でも……やっぱり私は、そんな提督さんが好きです。これからは、私を好きになってもらえるように……好きだってはっきり言ってもらえるように、頑張りますから」

 

暖かい風が吹いて、鹿島の髪を揺らした。

その表情は、何か強い決意に満ちているようであった。

 

「鹿島……」

 

「だから今日は、私の魅力を存分に味わってくださいね。もしかしたら、帰る頃にはお返事していただけるかも」

 

そう笑った顔のお陰で、いつの間にか力の入った肩を、下ろすことが出来た。

 

「過信し過ぎだろ。自分の魅力を」

 

「うふふ」

 

それから再び手を取り、俺たちは公園内をゆっくりと回った。

 

 

 

「よっと」

 

草原広場と呼ばれるその場所に、レジャーシートを敷いた。

広場の真ん中には大きな木が生えており、あのCMに出てきたモンキーポッドにそっくりだった。

 

「お昼にはまだ早いですし、さっき買ったこれ、やりませんか?」

 

そう言うと、鹿島は売店で買ったバドミントンセットを出した。

 

「ああ、やろうか」

 

普段ならこんなものは買ったりしないんだがな。

少しばかり気が浮ついている。

 

「いきますよ! えい!」

 

「ほい」

 

「えい!」

 

「上手いな。ほい」

 

「本当ですか? えへへ、えい!」

 

何だろう。

 

「おっと!」

 

「すごいです! 続いてますよ! えい!」

 

今までこういうのを馬鹿にしていたが。

 

「これはどうだ?」

 

「わ! もー……今のは絶対とれません! ちゃんと優しくしてください!」

 

「フッ、悪い悪い」

 

案外悪くないもんだな。

 

「もう一回です。目標は十回続ける事です! えい!」

 

「いち」

 

「にっ!」

 

「さん」

 

「しっ!」

 

俺は寮の管理人として、あいつらと接してきた。

あいつらは艦娘で、俺は管理人。

それ以上でも、それ以下でもなかった。

 

「ご」

 

「ろくっ!」

 

「なな」

 

「はちっ!」

 

今の俺は、一人の男であって、管理人ではないのかもしれない。

このバドミントンセットだって自腹だしな。

 

「きゅう」

 

「じゅっ! やった! 十回ですよ!」

 

「何回まで出来るかやってみるか。じゅういち」

 

「はい! じゅうにっ!」

 

体が軽い。

心が軽い。

 

「じゅうさん」

 

「じゅ……あっ! あー……ごめんなさい……落としちゃいました……」

 

「十三回か。結構いったな」

 

これが――。

 

「えへへ、楽しいですね。もう一回やりましょう!」

 

「ああ」

 

これが――恋というものなのだろうか――。

 

 

 

結局、ラリーは二十回もいかなかった。

 

「暑いな。ちょっと休憩するか」

 

「そうですね。お茶飲みます? 冷たいですよ」

 

鹿島はバスケットの中から水筒を取り出し、お茶を注いだ。

 

「どうぞ」

 

「ありがとう」

 

乾いた喉が一気に潤うとともに、火照った体を冷やした。

 

「美味い」

 

鹿島も俺も、少しばかり汗ばんでいた。

 

「風が気持ちいいですね。久しぶりにはしゃいじゃいました」

 

「俺もだよ」

 

そのままシートに寝転がると、鹿島も同じようにして寝転がった。

空は透き通っていて、雲一つなかった。

 

「私、今一番幸せかもしれません。大好きな提督さんと、こうして二人、幸せな時間を過ごしてるなんて」

 

「大げさだな」

 

「大げさなんかじゃありません。こうして再会できただけでも奇跡なのに、デートまでしてるんですよ?」

 

「そう言われると、確かにそうかもな」

 

鹿島はギュッと、俺の手を握った。

 

「これで提督さんと恋人になれたら……幸せなんて言葉じゃ足りないくらい……かも」

 

時間が止まったかのように、風も止んだ。

次の風が吹くまでの間、俺たちはじっと、お互いを見つめ合っていた。

 

 

 

「そろそろお昼にしましょうか」

 

バスケットを開けると、中にサンドイッチがぎっしりと詰まっていた。

 

「ほう。そう言えば、あの頃もよくサンドイッチを作ってくれていたよな」

 

「手軽に食べられるし、良いと思いまして。どうぞ、召し上がってください」

 

「ああ、いただきます」

 

一口含むと、あの頃の記憶がよみがえってくるようであった。

 

「懐かしい味だな。昔と変わらず美味い」

 

「うふふ、良かった。色んなバリエーションのサンドイッチを作ったので、飽きないと思います」

 

「同じ味でも飽きねぇよ」

 

サンドイッチを食べながら、昔話に花を咲かせた。

 

「そう言えば、響ちゃんって覚えてます?」

 

「ああ。大人しい奴だろ?」

 

「あの子、親が見つからなかったみたいで、今は響ちゃんが配属された鎮守府の提督さんと暮らしているそうですよ」

 

「そうなのか」

 

寮や施設に預ければいいものを引き取ったのか。

相当な絆で結ばれた関係だったのだろうな。

 

「うふふ、懐かしいな。あの子達に、提督さんと鹿島は夫婦みたいだーって、揶揄われたことあるんですよ?」

 

「あったな。そんな事」

 

「あの時は否定したけれど、本当はちょっと嬉しかったりして……えへへ……」

 

夫婦か……。

もし鹿島が俺の嫁になったら……。

なんて……意識し過ぎか……。

 

「本当に夫婦になっちゃいます? なんて、うふふ」

 

ふと、鹿島に大和の影が重なった。

その瞬間、俺の中で何か、歯止めがかかったかのような――夢から覚めたかのような感覚に襲われた。

 

「提督さん?」

 

「ん……?」

 

「どうしたんですか? 急にハッとしたような顔をして……」

 

「……いや、何でもない」

 

「……? 変な提督さん」

 

なんだ、今の感覚は……。

 

 

 

弁当を食い終わってから、しばらくシートに寝転がり話していたが、暖かい光の中で、鹿島はウトウトし始めた。

 

「ちょっと眠くなっちゃいました……」

 

「寝ていいぞ。見ててやるから」

 

「でも……提督さんだって眠いんじゃ……。お仕事……大変だったんでしょう……?」

 

「俺は大丈夫だ。お前こそ、朝早くから起きて弁当の準備をしてたんだろ?」

 

鹿島は少し驚いた後、赤面した。

 

「お休み、鹿島」

 

そう言って頭を撫でてやると、鹿島は目を瞑り、やがて寝息を立てた。

 

「寝たか……」

 

鹿島。

俺の過去を知り、俺を好きでいてくれる存在。

管理人ではなく、艦娘特有の気の迷いでもなく、一人の男として。

 

「…………」

 

俺も鹿島が好きだ。

こいつが恋人なら、どんなに良い事か。

しかし……。

 

「さっきの感覚……」

 

大和の影を見て、その気持ちに歯止めがかかった。

あの瞬間、俺は男ではなくなった。

管理人へと戻ったのだ。

 

「男の俺と……管理人の俺……か……」

 

どちらにでもなれる。

そう思っていたが、どうやら違うようだ。

 

「…………」

 

鹿島に返事をしなければいけない。

だが、まだ迷いがある。

一歩踏み出せない。

管理人としての俺が、道をふさいでいた。

 

 

 

「すみません……」

 

空は夕焼けに染まっていた。

 

「せっかくのデートなのに、熟睡しちゃうなんて……」

 

「起こすのも悪いと思ってな」

 

「うぅ……」

 

肩を落とす鹿島。

 

「何、これが最後って訳でもねぇだろうし、そう落ち込むな」

 

「え!? またデートしてくれるんですか!?」

 

「あ、あぁ……」

 

「絶対ですよ!? 約束です!」

 

「分かったよ。ほら」

 

小指を出すと、鹿島はしっかりと絡め、指切りした。

 

「えへへ、またデートして、今度こそ提督さんを恋人にして見せますから!」

 

「俺もヘタレを治すよう努力する」

 

はっきりと答えを出せるようにな。

 

「けど、残念。早めに提督さんを恋人にしたかったのになぁ」

 

「何を焦ってるんだよ?」

 

「だって、恋人が欲しいという提督さんを狙う人は、今後増えていくと思うんです。陸奥さんとか、提督さんがそう言うと思わなかったから驚いていましたし、そうなった今がチャンスだと思うはずですから」

 

そこまで想われているとは思えないがな。

 

「でも……私が一番恐れているのは……大和さんなんです……」

 

何故その名前が出たのかは分からなかったが、俺はドキッとした。

 

「大和さんはなんというか……鈴蘭寮にいる誰とも違う感じがします……。提督さんだって、そう思っているんじゃないですか?」

 

俺は何も言わなかった。

 

「私にもはっきりとは分からないんです。何故、大和さんを恐れているのか。でも……そう、提督さんと大和さんが二人で話しているのを見ているだけで、不安になるんです。ほかの人だとそうはならないのに……」

 

「…………」

 

「だから……」

 

鹿島は俯き、大きく息を吸った。

 

「提督さんを……早く恋人にしたいんです……」

 

「鹿島……」

 

「その為なら……私……」

 

鹿島はそっと近づき、俺を抱きしめた。

 

「何でも……出来ますから……」

 

それが何を意味しているのか、俺には分かっていた。

だからこそ、鹿島を離した。

 

「お前の気持ちはよく分かった。だが、俺はまだヘタレだ……すまん……」

 

鹿島はじっと俺の目を見て、言った。

 

「絶対……提督さんに好きって言わせて見せますから……」

 

その背中で、太陽が沈んでいった。

 

 

 

寮に戻った頃には、すっかり暗くなっていた。

 

「今日はありがとうございました。またデート、しましょうね」

 

「ああ」

 

「では、うふふ」

 

鹿島は小走りで部屋へと戻っていった。

 

 

 

部屋に戻ると、陸奥が居た。

 

「お帰り、提督」

 

「おう」

 

「遅かったのね。鹿島さんとデート……してたんでしょ?」

 

「ああ。公園であいつが寝ちまってな」

 

「そう……」

 

陸奥は何をするでもなく、テレビを見ていた。

 

「そう言えば聞いたぜ。今度、皆で合コンに行くんだろ? いい奴が見つかればいいな」

 

「……私は行かないわ」

 

「そりゃまた珍しいな。あの山城ですら参加すると聞いているのに」

 

陸奥はテレビの電源を消して、俺を見た。

 

「ねぇ……」

 

「何だよ?」

 

「提督にとっての私って……なに?」

 

「あ?」

 

「寮の艦娘の一人に過ぎない……?」

 

「何が言いてぇんだよ?」

 

陸奥は珍しい顔をした。

その表情に、只ならぬものを感じる。

 

「ずっと……貴方の心は女に向かないものだと思っていた……。私がどうアピールしようが……肩透かしだったから……」

 

そこまで言われて、この先、何を言われるのか、少しだけ分かった気がした。

 

「でも、大和さんや鹿島さんが現れて、貴方は変わった……。ついには……恋人が必要なんじゃないかって……言いだすほどに……」

 

「…………」

 

「それでも私は……まだ貴方に肩透かしをくらっている……。鹿島さんや大和さんにある「女」としての目が……私には向けられていない……」

 

「陸奥……お前……」

 

「私だって……女なのよ……? 貴方が好きで……大好きで……この気持ちに……貴方にかけた言葉に……嘘なんかないのに……なのにどうして……? どうして貴方は……私を見てくれないの……? 追い出そうとするの……?」

 

「追い出すだなんて……」

 

「追い出そうとしているわ……! 合コンもそう……。私なんか……さっさと他の男に拾われろって思ってるんでしょ……?」

 

「それは違う! 俺は、管理人として――!」

 

陸奥は一呼吸おいて、「ごめんなさい」と謝った。

 

「分かってる……。分かってるけど……どうしようもないの……。貴方に相手にされなくて……恋人の候補にも挙がってなくて……自分を……貴方をせめることしか出来ないだけ……」

 

「陸奥……」

 

陸奥は俯き、静かに涙を流した。

 

「……すまん」

 

「…………」

 

「……俺はずっと、お前が俺を揶揄っているとばかり思ってた。仮に本気だとしても、それは、寮に男が俺しかいないから、勘違いしているんだと……」

 

艦娘特有のって奴だ。

 

「お前とは……寮始まって以来、ずっと一緒だったな……。それまで、色んな男を見てきたはずなのに、お前は俺を見ていてくれていたんだな……」

 

「色んな男を見てきたのは……貴方が女を見てくれないって分かってたから……諦めようと思って……」

 

「だが、今は違う……そういう事だろ……?」

 

「…………」

 

「俺も……まだ女としての存在や、恋というものを理解していない。もちろん、お前の事もだ……」

 

「本当よ……もう……」

 

「だから……これから色々理解していこうと思っている……。そして、俺なりに答えをちゃんと出そうと思う。お前たちが迷わないように……」

 

「提督……」

 

「お前の気持ちはよく分かった。俺はヘタレで、山城に言わせたら駄目駄目な野郎だ。待ってくれとは言わねぇが……その……」

 

言葉に詰まっていると、陸奥は俺の頬にキスをした。

 

「な……!」

 

「待つ……。どんな結果になろうと……待つわ……」

 

「陸奥……」

 

「やっと……私を見てくれた……。今は……それだけで十分だわ……」

 

そう言うと、再び涙を流した。

 

「けど……遅いわよ……ばか……」

 

泣く陸奥を、俺はただ慰めることしか出来なかった。

 

 

 

陸奥が部屋に帰った後、俺は仕事も手につかず、ぼうっと考え事をしていた。

今日だけで、色んな事があった。

鹿島、陸奥……。

二人が、本気で俺を好きでいてくれている。

俺は男として、管理人として、答えを出さなければいけない。

 

「はぁ……」

 

今まで、俺自身から逃げてきたことがよく分かる。

他人の為に何かしていると、俺自身の事を気にしなくても済むから、楽だからと、ずっとこうして来た。

 

「あいつらにどうこうではなく、俺自身がどうしたいか……か……」

 

本当に理解しなければいけないのは、あいつらや恋ではなく、俺自身の事なんだ。

 

 

 

「ん……」

 

いつの間にか寝てしまったのか、俺は仕事机に伏していた。

体には、毛布が掛けられていて、机の上には握り飯がラップされて置かれていた。

 

『お夕食です。仕事がお忙しければ、いつでも仰ってくださいね。お手伝いしますから。大和』

 

「大和……」

 

前にもこんな事があったな……。

あれは確か、鳳翔が――。

 

「…………」

 

大和の影に鳳翔を見るのは、これで何度目だろうか。

俺は握り飯を一口含んだ。

 

「美味い……」

 

これから考えなきゃいけない事に、何故か俺は、ずっと、大和も関わってくると思っていた。

鹿島もそう言ったし、陸奥も大和の名前を出した。

何故だ?

――いや、本当は分かってる。

何故なのかを……。

 

「あいつの握り飯と……そっくりだ……」

 

俺が恋した鳳翔に、大和が最も近い存在だからだ――。

 

――続く。

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