オー・マイ・リトルガール!   作:秋元琶耶

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新生活、スタート

親の都合で関西に引っ越すことになったと知った瞬間、あたしは即関東に残りたいと主張した。家は祖父母の家がある。今はもう二人とも亡くなってしまったけれど、持ち家だし、両親もこの家を手放す気はないと云っていたので問題はないはずだ。

が、わかってはいたけど答えはNO。まだ中学2年になったばかりの子供を置いていくほど育児放棄していないとばっさり切り捨てられて、以降この手の話題は我が家でタブーになってしまった。

一応親の仕事に理解はあるつもりだ。まだまだお子様のあたしの目にも父親の仕事は立派で、誇らしい。しかも引っ越しの理由が栄転だというのだから、そのこと自体は本当におめでたいことだと思っている。

いるのだが。

 

―――その引っ越し先が、大阪だというのが、しんどい。

 

だって、正直あのお笑いのノリについていける気がしないのだ。

別に根暗なつもりはないけれど、そう、あの何でもかんでもお笑いに繋げる感じが若干―――いや、結構苦手。

お笑い番組は好きだし楽しいが、ただ見ているのと自分がやるのとは大間違いだ。

それをクラスメイトの友人に相談したら、

『大丈夫、お前ならどこででも一番を目指せるよ!』

という大変爽やかな笑顔で見当違いのエールをもらってしまった。腹立つ。この薄情者!

 

…なんてやってるうちに、いよいよ転校初日。

あたしが転校するのは四天宝寺中。もう学校案内のパンフレットからしてお笑い全開だ。

やばい。

馴染める気がしない。

どんどん自分の目が死んだ魚のそれになっていくのを感じるが、今更どうしようもないのだから人生とは本当に無慈悲だと思う。つらい。

そして案の定クラスに入ったらもう全員がお笑い芸人みたいなことになってて、ほんとこれ無理。

なんで教室に入った瞬間からこんなことがわかるかというと、転校生を盛り上げるためなのかなんなのか、みんながどう考えてもウケ狙いの格好しかしてなかったんです。アフロだったり鼻眼鏡だったり制服逆に着てたり、とにかくそういう感じ。

無理無理。

笑えないし、引くしか出来ない。

何も云えなくてひきつった笑いだけ浮かべてたら、一気に白けた空気になったっていうのも無理な理由だ。ツッコミ待ちとか知らないから。

しかもね、最悪なことにね、自己紹介してる途中にね、クラスメイトが云ったんですよ。

 

『ここは大阪なんやから、関東弁やのうて大阪弁しゃべらなあかんで!』

 

そしてドッと沸く教室。

はいもう心のシャッターが下りた音がしましたよ。

もうこれ開かないよ。永遠に閉じたまんまですよ。ガラガラがっしゃんもう閉店。

だいたい無理して大阪弁もどきでもしゃべろうものならそれはそれでこき下ろす癖に何云ってんだお前状態ですよ。

 

そんなわけで、自己紹介を終えた瞬間から、あたしはこの学校でのキャラを決めました。

無口で無愛想な根暗キャラ。

これしかない。

これなら最低限度の言葉を発するだけで生活できるに違いない。

花の中学生活を棒に振るような気がしないでもないけど、この際背に腹は代えられない。友達ができないのは寂しいが、それは高校で頑張ればいいのだ。

幸い、あたしには趣味と実益を兼ねた特技がある。中学時代は、勉強とこれに青春を捧げればいい。

 

本日から四天宝寺中2年6組、津々井 小毬。

いざ、灰色の中学生活頑張ります!

 

 

 

 

 

+オー・マイ・リトルガール!

 

 

 

 

 

*****

 

ていうやつ。

最初は短めの話が続きますが、徐々に短文で収まらず長文になっていきますが、どうぞよしなに。

全24話完結済、短編は今後ぼちぼち書いていきます。

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