『タツキ君!急いでくれ!サーヴァント2騎と藤丸君達が接触!』
ロマンからの緊急連絡を受けタツキ、武蔵は全力で平野を駆け抜けていた。
「タツキそんな急いだら体力が持たないんじゃない?」
武蔵はタツキの心配をしながら走っていた。
実際にタツキは数十分もの間休むことなく走り続けていた。
「気にするな、俺は、ハァハア。平気だ」
くそ。血の味が口いっぱいに広がる。
粘着性のある唾液が口に回る。
気持ち悪い。
「私が先に行ってるから、タツキは後から来なさい!」
「断る!」
二度とサーヴァント......いや。武蔵一人で無茶はさせない。
信頼していない訳ではない。
ただ。嫌だからだ。俺はこいつと共に何度も戦った。そんな仲間が俺がマスターとして不出来なばかりに負けたとしたのなら、その責任は俺にある。
ああ、でもこれは武蔵のことを信頼していないことになるのだろうか。
「タツキ止まりなさい」
突然武蔵の声が落ち、とても低い声で呼び止められた。
その威圧に驚きタツキは足を止めた。
「私、負けたのよ、あの黒いセイバー、アーサー王に。マシュちゃん守ろうとしてさ、しくじった。逆に守られちゃったのよ。その時にさ、マシュちゃんからこう言われたの。
「ごめんなさい、守りに出るのが遅れてしまい。武蔵さんに怪我を」ってさ、やらかしたなーって思ったわ。でもねタツキ。二度もミスはしない。どうせタツキのことだから、マスターである俺がーとか考えてんでしょ?」
「え?......いや。あの」
突然の暴露に思考が追いついていなかった。
ただそれを耳に収めることだけしかできなかった。
「タツキ。貴方が信じれないのはサーヴァントである宮本武蔵なのよね。タツキの前にいる宮本武蔵はサーヴァントの宮本武蔵?違うわよね、タツキが私と出会った時に命令したのはその関係が嫌だったからじゃないの?」
( 俺のことをタツキって呼ばせるようにしろ)
フッ。
不意にタツキの口に笑みが浮かんだ。
何だ。そんなことを忘れていたのか。
「そうだな、俺の前にいるのは俺と共に肩を並べて戦い、俺の技の究極点にして原点。宮本武蔵だったな。」
「待ってるわよ、タツキ」
「ああ」
武蔵は疾風のごとき疾走で駆け抜けていった。
残されたタツキはただ一人空を見上げていた。
『一杯食わされたね』
「ダヴィンチちゃんか、まさか俺の命令を逆手に取られるとはな」
『タツキ君もまだまだってことだね〜』
「ですねー」
『なんだ、今日は随分素直じゃないかい?』
「まあ、そんな日もありますよ、で、武蔵は無茶しても大丈夫なんですか?」
『結論から言おうか。無理だ。何故ならあの王の聖剣をほぼ直撃している、彼女の体は魔術により、傷は消えている。」
「消えているか。」
『そう、癒えてはいない。本来なら今回の特異点に連れて行くべきではなかった。この特異点が無事終わり、次の特異点までに回復が間に合わないようなら次の特異点ではカルデアに残ってもらおうと思う』
「おい、そんな未来のことはどうだっていいんだよ、今だよ!無理なのかよ!ちくしょう」
マスターである俺の性能不足の責任だろうな。
でもそのことをあえて言わないでくれているのか。
一度足を止めてしまった足はガクガクと震え、再度走ることを拒む。
喉が水分を求め
体が休息を求めているのがわかる。
「なあダヴィンチちゃん。令呪ってさ、前に使った分が回復してるんだけどさ、これってどれくらいの周期で回復するんだ?」
『突然の質問だね、藤丸君の場合は1日一角みたいだ。タツキ君の場合は7日に1角だね』
「ありがとうございます」
『でもそれを聞いてなにッ』
タツキは通話を切った。
回復ペースは魔力センスとかの問題なのだろうか。だが7日に1角回復するなら十分だ。
確かこいつは自分の肉体への強化をできるらしいからな。
(令呪よ我が肉体を強化せよ)
タツキが念じると一角消滅し、タツキの肉体に力が漲った。
「これは強化ってレベルじゃねーな」
そう感じさせるほどのエネルギーが溢れ出していた。
リヨンはもう少し先か。
タツキは足に力を入れ走り始めた。
走り始めて10分程度経過した。
タツキはこの辺は影が多いから走りやすいなと思いながら足を進める。
その違和感に気づいたのはそれがタツキの目の前に降りてきた時だった。
武蔵のことで頭が一杯になりタツキは一番大事な周囲への警戒を忘れていた。
忘れていた、というよりは周囲を自分の都合良い方向で考えることにしたのだ。
そして
《グガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!》
爆発音のような轟音が空で響きそれを見るため空を見上げるとそこには
「島?いや違う。あれは龍?ワイバーンなんて可愛く見えるぞ」
巨龍はタツキの目の前に降下してきた。
「貴方は確かあの連中の中にいた、ランサーを滅ぼし、アサシンも貴方なのでしょう?その事でお礼をしに来たわよ」
白い方のジャンヌと同じ声でここまで圧が違うのかよ。
黒ジャンヌ......いやたしか、こう呼ぶんだっけ
「ジャンヌ・ダルク・オルタ。」
「はい。では始めましょうか」
「なあ、ここは一つ俺とお前で一対一ってのはどうだ?その龍は休ませておいてさ?」
「本来なら断るところですが。まあ良いでしょう。少し苛立ちめいたものを晴らすというのも」
乗ってきた。
「晴らせるかどうかはやってみなきゃわかららないだろ?」
「愚かな」
一気に攻め滅ぼさないとやべぇかな。
こいつの纏ってる殺気は尋常じゃない。
《初白雪》
突風
抜刀と共に刀を抜き去り、ジャンヌダルクオルタの視界に入った時にはその切っ先が閃光の如くジャンダルクオルタの首を搔っ切らんと走っていた。
「ふん」
ジャンヌオルタの槍はその一閃を狂う事なく正確に振り払った。
しかしそれは
(フィエク)
喰らえや《初白ッ......ああ?なんだこれ。」
タツキの右腕に黒く漆黒の槍が突き刺さっていた。
「ふっ、ふふふ。っはははははははははははははははははははははははは!やばいわ、貴方まさか本当にランサーの時と同じ事をしてくるとは思わなかったわ」
なっ、見てただけであれがわかったのか!?そもそもあんなみる価値はない戦いをこいつは見てたというのか
この槍はどこから......
魔術か。
「その大きな槍は見せかけで本当はこっちがメインってことか。姑息な手段だな、元聖女様」
「見せかけですか。何を言っているのです?どちらも私の武器で本物ですよ」
「そうかよ、あ、そうそう、聖女様。こんな至近距離で話さない方が身のためだぜ?」
「はい?何故でしょう?」
小太刀は片手で振り抜けてこの距離なら抜刀と共に切り裂けるからだよ!
居合の抜刀術である。
タツキは小太刀へ左手を伸ばしたが左手が動かなかった。
「なっ」
「ですから、何故でしょう?教えてくれないのですか?それとも、まさかとは思いますが左手なら動かせるなんて思っていたのではないでしょう?」
この漆黒の槍に刺された所が動かないとか、なんだよこれ
令呪での肉体強化してんだぞ。
「ですが、おかしいですね。何故でしょうか?何故そのように平然と話せているのでしょう。これに貫かれた時点で発狂物なのですが」
「痛くはねーからな!動かないだけだ」
令呪での肉体強化のおかげか?だが効果が切れた時がやばそうだ、さっさと抜け出さねーと
「そうですか。まあいいでしょう。一本一本身体に突き刺していきますか」
「一本一本?一体何本あるって.....は?あ?」
ジャンヌオルタが空を指差したので見上げるとそこには無数の漆黒の槍が浮いていた。
「これが私の宝具、
無数の漆黒の槍がタツキめがけて飛んできた。
やばい。
令呪よ残り2角全てかけるから、俺の体を最大強化しやがれ!
タツキの手の令呪が全て消えた
「 ああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアあああああガハバア」
途絶える事なき槍の雨はタツキに逃げる隙すら与えなかった。
「あ あ
あ?ああ。が? 」
生きてるか。俺。生きてるな。なら最後に一仕事やらねーと。
体を縛る槍が消えたんだ。
刀を持って振り抜け
何してんだよ
動けよ、足
動いてくれ、手
なにしてんだ。タツキ!
頼むよ
「あっけなかったわね」
( 不意の閃光 )
「なっ!?」
「グバア」
ジャンヌオルタと巨龍は視界を奪われた。視界が戻った時には周りは煙幕で覆われていた。
「ここは森の中か?視界が安定しねぇ。身体が動いてよかった。何かに支えられたような感覚だったが。なんだったのか。
令呪の効果が切れ始めてる。体への負担が大きくなってきた。
駄目だこれ。
逃げれたのに。
逃げれたのに。
逃げれたのに。
逃げれたのに。
武蔵に後から行くと言ったまま死ぬのか。
ダメだ。
ちくしょう。。。
「どうしました?と問う必要すらありませんな。皆の者。この者を救いなさい。」
銀色の鎧の騎士がそこにいた。