フランス軍のキャンプへ戻ったタツキとレコン。
タツキはジルドレェにより配属された軍の者たちと少し交流をしていた。
「それでタツキという男は信頼に値するか?」
キャンプの奥ジルドレェが待機している場所でレコンとジルドレェは話していた。
「信頼はできると思います、しかし。多少、彼は自由すぎます。ですので、彼らの隊を最前線にするのが良いかと」
「なるほど。一人暴走されては困るりますね。わかりました。では、デュア隊に配属しましょうか」
デュア隊とは現フランス軍の中でも最も気性が荒い者たちの集まりで毎度最前線に立っている者たちの集まりだ。
働き手が無い、荒くれ者どもがこぞって入隊を希望した時に作られた部隊。隊長のデュアは前騎士団長で引退していた身だが、ジャンヌダルクの死などフランス軍の危機を知らされ戻って来た。そして即荒くれ者達をまとめ上げた。
「デュア隊ですか。タツキさん、大変ですね」
レコンはタツキのいるデュア隊の方を見て、苦笑いを浮かべた。
「では、レコンはいつも通りお願いしますよ」
「了解です」
レコンは森の中へ姿を消した。
ジルドレェからデュア隊キャンプへ向かうように言われデュア隊キャンプへ来たタツキは呆然としていた。
「俺はデュア・ロ・クリュア。デュアと呼んでくれて構わん。俺はこの軍を指揮している者だ。お前がこの軍に配属されるというのなら自由に動いてもらっては困る。命令は絶対だ!」
壁。
そう感じさせるような男だ。
鎧を纏っていないにも関わらず、その身体の分厚さは恐ろしいものだ。
分厚い胸板、ガッチリとした腕や足、とても太い首、頭には髪は無くそれが尚更この人から恐ろしさを感じる要因の一つとも言える。
「俺はタツキです、よろしくお願いします」
いつも通りの挨拶のはずが、声が上擦り、手からは手汗をかいていた。
「うむ、ではジルのところへ集合だ」
デュアの指示に従いデュア隊の皆が動き出した。デュア隊は見た感じは40人ほどの軍隊だ。そして各々が纏うオーラの様な物はどれも武人としての威嚇には十分と言えるものだ。
「早く行こーぜ、遅れるとデュア隊長に殺されかねない」
話しかけて来たのは、金髪の青年。彼からは恐ろしさは感じなかった。だが、タツキは気づいた。こいつは、自らの殺気や狂気といった全てを内側へ内包しているということに。
「お前は?」
「俺はこの隊の、切り込み隊の一人なんだけどね、いやーまじ怖いでしょあの人」
「切り込み隊?この隊そのものが切り込み隊では無いのか?」
「まあ、そうなんだけどさ、基本的には銃撃戦なのよ、俺らの戦い方ってさ、でもまずいことに今のフランス軍には銃弾が足りて無い。」
「は!?」
「だから。今はジルさんが指示した時以外は銃は使ってはならないんだよ」
「まじか!?」
「でもそれが大変なのよ。運搬隊の人達は毎度、銃を持っていっては使わず。みんな早く終わってくれと思ってるのさ」
「そりゃ大変だな。そういえば、なんで皆ジルさんっていうのにデュアはジルって言ってたんだ?あいつ、元叛逆者とかか?」
先ほどのジルのところへ行くという発言でタツキが疑問に思っていたことを聞いて見た
「ああ、それはデュアさんは元々ジルさん達の上に立ってた人なんですよ、軍退いた後にジルさん自らが頼みに行くほど彼は信頼されてるみたいですよ」
「まじか」
「まじです」
「我々の敵は、魔女、そして邪竜のみ!見つけ次第砲撃の許可を出す!遅れをとることはあってはならん!出撃」
「「「「オオオオオオオオオオオオ」」」」
森の中に人の雄叫びが響き渡った。
出撃から1時間
「それでタツキ、お前の得意とする武器はなんだ?」
デュアの隣をタツキは歩いていた。
「自分の得意技晒すって愚かじゃ無いですかね?」
「ハハッ、そりゃそうだ、だが、その腰につけている4本の和の国の剣が武器というのはわかっておるがな」
「まあ、こんな堂々と帯刀してたら気づきますよね、そうですよこの4本が俺の武器ですね」
「俺の武器はこいつ」
そういって見せつけられたのは、というか先ほどから目に入ってるのは。もうほんとはこの人を体現したかのようなゴツい大剣だった。
そしてこの人は先ほどより大きくなっているように見えるのは銀色に輝く鎧を纏っているからだ。
「諸刃の剣ってやつですね。剣の両面に刃とですか」
「そうだ、その方が効率よく敵を倒せるだろ?」
「そうですね」
まあ、諸刃の剣ってのは力負けしたきにそれは自らを襲う。だからこそ、使う人はあまりいない。
「デュア隊長!ワイバーンの複数、二足歩行の狼複数が接近!接触まで約20分です!」
「うむ。」
《 デュア隊よ!敵はワイバーンと狼!20分後に戦闘が始まる!準備をせよ!》
デュア隊に向かいデュアは大声で知らせを伝達した。
突然現れた、レコンにより敵の接近を知らされたデュア隊は各々が戦闘準備にはいった。
「レコン!?」
「あ、タツキさん、最前線ですね〜頑張ってください」
そういうとすぐに隊の中に消えていった。
彼は人からの注目を消すのが上手い、タツキは知っていても見失ってしまった。
20分弱、ワイバーンの群れと戦闘が始まった。
「盾を持つものは攻撃を弾け!剣を持つものは一撃で羽を捥げ!弓を持つものは一矢で目を抜け!」
「「「了解」」」
デュアの命令に皆が当然であるかのように了解を出した。
「ギャシャ」
ワイバーンの群れの前線にいたもの達が下降しながらその鉤爪で隊に突進を仕掛けてきた
「弾きます」
突進に合わせ盾を持つ10人が各々3人チームを組みワイバーンと激突した
盾を持っていたもの達は後方へ弾き飛ばされたが命を賭したものはいなかった。
ワイバーンは突進を止められた後すぐにホバリングを始めようとしたが、突進を仕掛けたワイバーンの羽は全て一瞬にして捥がれていた。
「隊長!次来ます!」
「盾ども!働ェエエエエエ!」
デュアは後方へ弾かれ、倒れていた者たちを鼓舞した。
「「「はい!」」」
「ウォオおおおおオオオオ!」
ガンッ!!
という破砕音と共に盾兵達は後方へ弾かれた。
「行けェエエエエエ!」
剣を持った者達がすぐにワイバーンの羽を捥ぐ、これが繰り返されていた。
「デュア!これはあまりにも」
「あまりにも?何だ?」
そのデュアの目にはより恐ろしい覇気があった。
「盾の奴らが可哀想だ・・・と?損な役回りだとでも言いたげだな」
武人である前にタツキは一様は平成の人間だ。弾かれ吹き飛ばされ、ゾンビのように繰り返す。こんなのは非道だと感じていた
「悪いか」
「悪い!彼らの勇敢さ、気高さを馬鹿にしているようなものだ!彼らは自らが志願してそこでやりたいと言った者達だ!彼等はそれを誇りにしている!ならば、この俺が、隊長がすることは決まっている!何も気にせず使ってやることこそが!彼等の望みだとは思わないか!」
「そ、そうだぜ。新入りよ。俺らはこれに全てかけてんだ。だから、弾いた後は任せてんだぜ。」
盾持ちの一人がタツキの肩を叩き、そう言い残し最前線に出た。
「どうだ?まだ文句があ」
「無いね。何も。俺の勘違いだった。悪いことをした。前線に戻る」
タツキはデュアの言葉を最後まで聞かず、自らの答えを述べデュアの元を去った。
「切り替えが早いというのだろうか。あいつは何を見てきたのか。」
その一瞬のその会話がタツキという男の本質を、フランス軍隊員ではなく武人としての宮本タツキを見せた。
最前線に向かうと言ったタツキは走行中にタツキより離れた横の中で何かが通った。
タツキは即動きを止めそれを見た。
そこには複数の武装した二足歩行で走る狼が中衛ラインまで接近を始めていた。
そしてワイバーンに気が向きすぎて、それには誰も気づいてはいなかった。
後方はジルドレェ
前線にデュア
中衛はそう言った指揮官はいるのか!?
目に見えるだけで三十匹はいるぞ。
「弾くぜ!」
動きをタツキ止めていたタツキを狙ったワイバーンの攻撃を盾持ちの一人が弾いた
「タツキ!任せタァ!」
後方へ弾かれたのは先ほど少し会話をしていた、金髪の男だった。
その一瞬でタツキは思考を一度リセットし、弾いたワイバーンに目標を定めた。
《 一刀−輪廻 》
綺麗な弧を描く斬撃はワイバーンの身体を切り落とした。
ただの斬撃で羽を落とすのもいいがその時はタツキの中で少し後悔があった。
突っ立っていなければタツキならあいつに盾をやらせずにすんだだろうと。
だからこそ、技を見せた。
タツキは抜刀した刀を黒色の鞘に収め、横後方へ走り出した
(間に合え!間に合え!間に合え!)
奇襲だけはされてはならない。軍隊に綻びが生じてしまう!
「タツキ!?」
金髪の盾持ちの男は突然走り出したタツキを見てすぐに弾かれ倒れていた状態から起き上がり、タツキを追った。
「指揮官を少し外れる。大丈夫か?」
タツキが走ったのをみたデュアは隊の一人にそう伝えると、言われたものはタツキの暴走をみていたので、これはヤバイと思いながらも
「だ、大丈夫です!」
「では」とデュアは地に突き刺していたその大剣を持ち上げると、タツキとは逆方向に走り出した。
「えぇ!?!?」
てっきりタツキが怒られると思っていた隊の者達は驚愕を隠せないでいた。
タツキは潜伏しながら、接近する狼の後方へ刀を突き刺した。
奇襲を仕掛けようとしていた狼達は突然の奇襲に隊列を乱していた。
タツキは後方からタツキの存在に気づけなかった狼を一掃した。
タツキの両手には小太刀が握られていた。
だが、奇襲が成功したとはいえ狼が武装しているということはこの狼の中にも手練れはいるようで、タツキが来たことにより前方の狼が中衛ラインに一気に攻め込もうとしているのが見えていた。
「クソッ!」
タツキは敵一体につき2秒かからず倒していたが、手練れのやつらは10秒はかかってしまう。このタイムロスは大きい。
ここで閃光を弾けさせたら見方にも影響が出てしまう。
何より身体が重い
技一回につき身体が悲鳴をあげているのがわかる。
身体がタツキへ危険信号を出しているということだ。
令呪はもう無いため無理やり身体を強化することはできない。だからこのスピード以上は無理
「そんなにできてても満足できないって顔してんな」
「は?」
「助っ人でーす」
金髪の男だった。
「盾は効率が悪い下がれ、それに今は守ってもらわなくても戦える」
こいつがマシュのような盾での攻撃をできるとは思えない。ならば下がっていてもらう方が邪魔にならない。
「ま、その辺は理解した上で来てるんだよ。俺元々は個人専門の暗殺者だぜ?」
「は?」
そう言った瞬間前方にいた狼の首が落ちた。
「ワイヤーか」
「流石タツキさん目がいい!そうですよ〜、まあ一回で気づかれたのは悲しいんですけどね」
「いや、それ初見殺し系だから気づいた時には死んでね?」
「まあ、そうですかね?」
盾にワイヤーをセットしてその先を先ほどこいつが動きの中、気づくことができないレベルの速度で何かを投げたのは見えていた、その何かを敵の首にワイヤーが当たるような軌道で投擲する。
「証拠となるワイヤーは盾から切り落とせばいいか。まじで暗殺者かよ」
「そうですよ〜、まあ国がこうなっちまった以上、暗殺とか意味なくなっちまったんでねー。こんな感じで軍で盾やってるんですよー」
「なんで盾。お前なら他のもできそうだけどな」
「いや、そりゃ暗殺者として暗躍してたことバレたら処刑されちゃいますよ。だから、バレないように盾なんです」
「・・・?バレないように?。お前!バレてないのか!」
テヘ?と舌を出して笑いやがった、次の瞬間前方の狼、8匹の首が落ちた。
「ほら、タツキさんおしゃべりしてないで、手動かしてくださいよ!」
「何言ってんだ?もう狼は隊長みたいなやつ以外いないぜ?」
「は?何言って......」
9匹の狼の身体が切り落とされていた。
「ワイヤーっすか。タツキさんもできたんすね」
「流石本職だな、気づくのが早い。まあ、できるけど、普段はやらない、今回はお前がやってるのみて久しぶりにやってみたくなったんだよ」
「なんでやらない?」
「まあ、理由はいくつかあるが、ワイヤー使いなら俺が動いた方が早いんだよ」
「あーなるほど〜、そりゃそうですねえ」
「じゃ、あのいかにもお頭感の出てるやつを倒して前線復帰しますかね」
「俺は盾やりましょうか?」
「好きにしてくれ」
「わかりましたー」
一閃
大将と思わしき狼は一瞬にしてタツキに倒された。
「ま、わかっちゃいましたけど、タツキさん本当に盾の役割奪いますよね」
「はは、悪いな、じゃ戻るか」
タツキと金髪は狼を始末し前線復帰した
「フハハハハハハハハハハ!」
時を同じくして、タツキとは逆方向に潜伏していた狼部隊は恐怖を感じていた。
「なぁに、怯えんでも良いぞ?俺は一人、お前達は30以上、数だけで言えばお主らの勝ちであろう?」
狼達の目の前に立つのは巨人
ではないが、そう思わずにはいられなかった。
この人間はヤバイと本能が察しているが、足がその場から離れようとしない。
恐怖が狼達を支配していた。
「そう慌てるなや、1匹ずつ綺麗にしてやるから」
頭の禿げた巨漢は手に持つ大剣を存分に振り回していた。
それもとても楽しげに
「これで全てだな」
タツキ達は前線に戻りワイバーン達を全て倒した。
「タツキさん、この先で、タツキさん達の仲間の方々と竜の魔女達が戦闘を開始しようとしています!急いでください」
「武蔵達か!」
タツキが隊を抜け出そうとした時だった
「タツキ、待ちなさい! レコンの話によればそこにジャンヌがいる可能性があるという。我々の最大出力を持って加勢に加わる!フランス軍よ!進軍せよ!発泡の許可をする!」
「「「オオオオオオオオオオオオオオオオ」」」
タツキのいる前衛部隊、デュア隊隊長はジルドレェのその指示があったことを聞いた途端、全力疾走で荒野を駆けて行った。
そしてそれに続くように、デュア隊の隊員達が走り出した。
「タツキ!遅れるな!今から始まるぜ!楽しいフランス軍の戦いがな!」
金髪がそう言い残し走って行った。
タツキはすぐさまそのもの達に続き走ることにした。
「おい!なんでデュア隊は走ってんだ?」
走りながらすぐ近くに話したやつに声をかけた
「今から砲撃が可能になった、我らデュア隊は前線で戦う者達だ、先に行って出来る限り殲滅するのさ!」
「なるほどねぇ」
タツキ達の目の前に現れたのはワイバーンの群れ、そして、その中でも目を引くのは、ファヴニール。巨龍だ。
「おいおい、竜殺しはどうなったんだよ」
先陣を切って走っていた、デュア達がワイバーンと交戦を始めた。
「 撃てェエエエエエ!ここがフランスを守れるかどうかの瀬戸際だ!全砲弾を撃って撃って撃ちまくれ!狙いは巨竜のみ!ワイバーン共はデュア隊が始末する!全ての弾を巨竜へ撃ち込め!恐れることはない!嘆くな!退くな!人間であるならば、ここでその命を捨てろ!もう一度言う!恐れることは決してない!何故なら」
と、怒涛の怒鳴りを上げていたジルドレェが一度言葉を切り
「我々には!聖女がついている!」
ジルドレェのその一言により
フランス軍は今までで最高の雄叫びを上げた。
「「「「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」」」
タツキはすぐにフランス軍を抜け、ジャンヌダルクと黒いジャンヌダルクがいるところへ向かおうとした。
「宮本タツキさん」
「え?」
突然、ジルドレェに話しかけられた。
「貴方とはここでお別れです、あまりにも短い時間でしたが、面白かった。狼の時は特にね、楽しませてもらったよ。それでだが。タツキに最後に一つ頼みがある。」
「頼み......か。叶えるのは無理だと思う、俺はこの時代の人間じゃないんだ」
「そうでした。ではこうしましょう。もし貴方がここにいる間に私が私で居られなくなった時は、迷わず私の首を刎ねてください。」
「は?」
「信じられないかもしれませんが、わかってしまうのです。この身はいつか、闇に侵食されるのが。だからもし貴方がいる時にそうなった時は」
「わかったよ。フランス軍宮本タツキとしての最後の仕事。期間内であれば成し遂げる」
「では、さようなら」
タツキはすぐに最前線の前にある者達の元へ向かった。
カルデアの宮本タツキとして