《またこれから始まるのか》《まだ終わらないか》《まだまだこれからだろ》《一撃で仕留める》《選択の余地は無いか》《俺は約束を果たす》《寝返ったのか》《気合い入れてくれ》《逃さないわ》《始まるわね》
【 次の戦いも油断せずに行くぞ 】
タツキが目を開けると、またもや野原だった。
無事レイシフトに成功したみたいだ。
一瞬で時代を移動したと言われても実感がないのだが、流石にもうそのことに関しては考えないようにしている。
考えても仕方のないことだろう。
「無事成功したな」
藤丸も目を開け、それを確認したみたいだ。
「そうですね」
マシュも目を開け確認した。
「あれ?タツキ集中してる?行く前は違ったのに」
武蔵が来るやいなやそんなことを言って来た。
集中とはタツキが戦う気になった時に起こる現象の結果のことだ。
頭の中で何人もの声がして、その後、一気に気合が入る。
タツキが集中している時は感じ方が違うらしい。武人として何か感じるものがあるのだろうか?
「さっき集中だけしておいた、流石に集中しないでレイシフトはナメ過ぎだろうしな」
「そーね、後で言ってあげようとしてたけど、その手間が省けたわね」
「言われなくてもやるよ」
「そーね、そうしてもらわないと、マスターとしては働けないんだから、そこはしっかりしなさいよ」
「はいはい、わかってますよー」
タツキは武蔵と少し言葉を交わし、通信機を手にしてロマンに話しかけた。
「なあ。ロマン。いちよう聞くが、ここが首都ローマなんだよな」
「その筈だよ?」
通信機からロマンの声が聞こえて来た。
通信機は通常通り機能しているようだ。
「丘陵地だぞ」
「そうですね。タツキさんの言う通り丘陵地帯です」
俺の言葉にマシュも重ねて伝えてくれた。
『本当かい?おかしいな。転送位置は確かに固定した筈なんだけどな......』
「まあ、ミスは仕方ないですよ、それでロマン。ここはどこかわかりますか?」
藤丸の切り替えは最もだった。
言っていても仕方のないことは言わず、必要な情報を貰う。
効率的と言うかなんと言うか。
『ローマ郊外に当たるところみたいだ。時代は正しいからそこは安心してくれ。しっかりとローマ帝国第五代皇帝!ネロ・クラウディウスが統治する時代だよ』
「時代まで違ってたらどうしようもないわな。場所のズレくらいなら何とかなるか」
時代移動なんてのは俺たちだけの力じゃできないが、場所の移動なら出来る。
まあ人の力で出来る範囲であればだが。
「ねえ、タツキ。青空が綺麗だと思って見たんだけど、またあるよあれ」
と武蔵が空を指差したので見ると、フランスでも見かけたデカイ輪がここローマの空にも存在していた。
「ロマンまたあるぞ。光の輪」
『こちらからは何も観測できないんだ。でも引き続き調べておくよ。気になるからね』
「ヒャッ」
突然マシュが声を上げたのでそちらを見ると胸元からフォウ君がひょっこりと顔を出していた。
「また付いて来てしまったんですね」
マシュはフォウの頭を撫でてフォウと話し合っている。
言葉が通じているかのようにフォウは頷いたり、首を振ったりするので、本当に理解しているのではないかと思ってしまう。
「戦いの音がするな」
ただその言葉が口から出ていた。
「え?戦いの音ですか?」
マシュに聞き返された。
「いや、えーと?」
何でそんなことを口走っていたのかはわからない。
フランスでの戦いを終えた後は集中状態になっていなかったからだろうか。
久しぶりの感覚に身体が燃え上がっているのがわかる。
要は「暴れ足りない」の感情が感覚を尖らせ、遠くの戦闘の音を拾ったのだろう。
「そうね、よく聞こえたわね。私も言われるまでわからなかったわ」
武蔵が遠くを眺めながら、そう返してくれたので、やはり空耳ではなかったと確信した。
『戦闘の音?どのくらいの規模かわかるかい?その時代で隊を組んでの戦いはありえないんだ』
「近づいてもいいか?」
『そうだね。何が起こっているのか気になるし、お願いするよ』
ロマンの答えが出ると同時にタツキは地を蹴った。
「タツキ!?」
「タツキさん!?」
「あー!もう!先走んなっていつも言ってるのに!」
藤丸、マシュ、武蔵の順番で声が聞こえたが、タツキは気にすることはなく地を蹴る。
試し切りになるといいが、さあ、お相手さんはどんなやつらかな!
少し走るとすぐに声は近くなった。
「「「ウォオオオオオオオ」」」
隊を組んでの戦いじゃねーか。
「おい!ロマン聞こえるか!隊を組んでの多人数での戦いだ。片や大部隊、もう片方は少数部隊だ。真紅と黄金の意匠.....デザインが分かれているな。少数部隊は防衛戦って感じだな」
タツキは戦いが見える場所まで行き、止まりロマンに現状の報告をした。
『多人数戦闘!?やはり変だ。歴史に異常が起きているとしか思えない』
「なるほどな。じゃ参加した方がっておいおい。少数部隊の真ん中で一騎当千してる女。かなりやるぞ。一人で何人もの相手をしてやがる」
タツキの目にあったのは金髪ドレスの女だった。
「首都へ雪崩れ込もうとする軍団をたった一人で」
追いついて来たマシュもそれを見て驚いているようだった。
「え?あの顔.....」
追いついて来た武蔵もそれを見るとその女を見て驚いた顔をした。
「どうした?」
「あいつ。冬木の......」
「あーなるほど。そういうことね」
「ロマン。あの金髪女って冬木にいた聖剣使いで間違いないか?」
『間違いあるよ。アーサー王がいるわけはない。それにその人は人間だよ。サーヴァント反応を感じない』
「だってさ、他人の空似ってやつだよ武蔵」
「わかってるわよ、私だってサーヴァントとして呼ばれたんだから相手がサーヴァントなのかってのはわかるわよ。私が驚いたのは世界に同じ顔が3人はいるというけどまさかここまで似てるとはって思ったのよ」
「なるほどね、そりゃ驚くか。因縁の相手と同じ顔で戦場で戦ってたら」
『ゴホン!ともかくだ!ありえない戦闘が行われている。それならやることは決まってるね』
「助けるならあの女の方だな。そんな気がする」
「そうですね。フォウさんも賛成みたいです」
「タツキ、マシュ、武蔵!バックアップは任せろ」
『相手はサーヴァントや怪物ではないようだけれど規模が規模だ。注意したまえ!』
「了解ッ!」
マシュが前進したのに合わせてタツキと武蔵も出た。
マシュが軍隊に突撃を仕掛け怯んだ敵を武蔵が斬り落とす。
さあお披露目と行きますか【 裏斬 】の斬撃を。
マシュと武蔵の連携で開いた道を突き抜け
タツキは一気に戦闘の中心にいる女の隣まで行くと目の前に立った。
「助太刀する」
「首都からの援軍か?」
「首都?カルデアからの援軍だ」
(燃え上れ。炎よ。イメージするわ焼き尽くす炎)
「ケンッ!」
「ブラスタァァアアアアアアア」
タツキの刀は燃え上がり、そしてその炎を纏う刀をタツキは一振り。その一振りにより刀に纏われていた炎は前方へ襲いかかる
「なんだ貴様!?」
「火?」
「やべーぞ!」
やっぱ言葉はわかるんだな。
炎が大軍を駆け巡った。
と同時に刀に埋め込まれていた聖召石が砕けた。
死者はゼロ
多数が火傷を負ったが、死者はゼロだった。
俺のイメージした炎は料理に使う時に出る炎だったのだ。
だが、見た目は限りなく炎の斬撃であった。
「聞けェエエエエ!今の一撃は加減したものだ。次は全力で焼き尽くす!恐れを知らぬならばかかってこい!」
沈黙だった。
あれだけ雄叫びをあげていた者達が沈黙した。
「はったりだ」
一人の男がそう呟き、一人武器を取り、前に出た。
瞬間男の腕から武器が消えた。
いや正確には男の手が消えた。
そして赤き水飛沫が周りの元達にかかった。
皆、戦場に生死の戦いをしに来てはいる。だが、それでも死にたいと思っているやつはいないだろう。
それほどまでに武蔵の一閃は壮絶だった。
そして武蔵が俺の隣に立った。
「殺してはいないわ。すぐに手当てすれば命は助かる。さあ選びなさい。戦うか、撤退するか」
武蔵の眼光が敵軍を貫いた。
タツキは再び刀の穴に聖召石をはめ込むと刀を構えた。
「剣を収めよ!!!!」
後方から声が響いた。
先ほどの金髪赤ドレスの女だった。
「勝負あった!もうよい!やめよ!」
女は敵軍のを率いていた者を見つめた。
それに反応しその男が「撤退」と叫んだ。
すぐさまその場を離れたかったであろう、前列の者達の顔からは安堵が伺えた。
「すっかり首都は封鎖されていると思ったが、まあ良い。褒めてつかわすぞ。たとえ元は敵方の者であっても構わぬ。余は寛大ゆえに、過去の過ちぐらい水に流す!そして今の戦いぶり、評価するぞ」
「余と轡を並べて戦うことを許そう。至上の光栄に浴すがよい」
「なあ。武蔵。自分のことを余なんて言うってことはこの人は偉いさんなのかな?」
「そうなんじゃない?それより!なんなのあの技!火よね!火!もしかしてだけどタツキって究極点に至ってたりする?」
「究極点?なんだそれ。アレはダヴィンチちゃんプレゼンツ。火を噴くルーンブレイドこと裏斬!かっこよかっただろ?」
「なにそれ!使ってみたいんだけど!」
「まあ貸して欲しかったら貸すけど、これ今回あと2回しか使えないぞ?」
「回数制限あるの?ま、あと2回なら一回ずつってところね!」
「ゴホンッ!貴公ら。余の話を聞かぬか」
「あ、悪い!ついつい」
「ごめんね。タツキ馬鹿だから」
「お前だよ!」
「ゴホンッ!」
マシュが此方を睨んだ。
「可愛いよねマシュ」
「は?」
「え?可愛くない?」
「可愛いと思うぞ?」
「だよね〜」
「お前そっち系?」
「そっちって何?」
「タツキ、武蔵。少しくらい黙ろうな」
藤丸の笑顔により、二人は黙った。
( なんだろうな。藤丸の笑顔ってたまに怖い時があるんだよな )
その後の話は報償を出すと言うことと、今は何も無いのでローマについて来てくれってことだった。
俺たちはその女について行くことで意見が一致したので、おじゃますることにした。
究極点......。つまりは究極の一。
他の追随を許さないモノ。
そういえばあの発言からするに武蔵も究極には至っていない?
おかしいな。
五輪の書。
あの本には《 無 》について記されていた。
やはり俺の知ってる宮本武蔵とは違う存在ということか。
俺が二天一流を正式に次ぐには究極の一は不可欠。親父達はいつかわかると言っていたが、実際のところは、サッパリだ。
俺の使う技は二天一流後継者達が残してきた技を少しだけ自己流にアレンジしただけの技やそのままの技が多い。
いくつかオリジナルはあるがあまりに、未完成なためほとんどは使う機会がない。
そして究極の一。
無の境地。
先代の武蔵は至ったという。
俺の祖父は至れなかったと言っていた。
だが、その祖父は俺に可能性を見た。
だが、無の境地には至らなかった。
俺がこの特異点を巡ることを否定しないのはそのためだ。
なんの報酬も無いだろう。
だが俺の目的が果たせるなら俺はいくらでも力を貸す。
なら同じ立場の藤丸はどうなのだろうといつも考える。
あいつは何故この危険な冒険を進んでやるのだろうか。
「タツキ?」
ん?
ぼーっとしていたみたいだ。
どうも深く考えると周りが見えなくなる。
「なあ、藤丸、お前ってさ......」
「うん?」
「あーいや、あの女の人、好みか?」
「可愛いよね」
「だよな」
話を逸らしたのは今は聞くべきでは無いと何故か思ってしまった。
本当に無欲でただそれを成しているのであれば多分俺は情けなくてたまらなくなる。
俺には、報酬の無い死闘は出来そうに無い。
だからいつか聞く。
その時の俺は多分きっと、納得できる。
そう自問自答しながら皆の後を追った。