「二天一流の技を操る青年、宮本タツキ。全く彼は一体何者なんだ。あれ程の力があれば一般採用なんてありえないと思うけどね」
ロマンは先程の宮本武蔵との会話後、宮本タツキこと佐藤立樹の個人情報の書かれた資料を確認していた。
カルデアの総力を挙げ調べさせたものなので、カルデアへ呼ばれたレイシフト適正者の情報は裏の情報まで事細かに書かれている。
「全くと言っていいほど情報がない。書かれているのは【一騎当千の神】、【戦場の闇】、【死を呼ぶ悪魔】なんだこれ。中二病みたいな感じか?本当にカルデア職員は一般採用として偶々スカウトしたみたいだし、一体彼は何なんだ」
「それを言うなら、同じく一般採用の藤丸君の方が異常だと思うがね。カルデアのバックアップがあるとはいえこれ程とはね」
ダヴィンチがロマンの独り言に答えた。
ロマンは再び頭を抱え「一般採用とは何なんだ」とうな垂れた。
ーーーーーー
タツキ達は現在ネロ帝の家(馬鹿でかい城)に来ている。
「さて。余のローマは、今、危急の時にある。栄光の大帝国の版図は、今や、口惜しくもバラバラに引き裂かれているのだ」
城へ着き、大広間に一同が集まったところでネロ帝が話しはじめた。
「かたや、余が統治する正統なるローマ帝国。この首都ローマを、中心とした都市だ。かたや、何の先触れもなく突如として姿を見せた余ならぬ複数の「皇帝」どもが統べる、連合だ。【 連合ローマ帝国 】かの者どもはそう自称し、帝国の半分を奪ってみせた」
うん?
「は?待て待て!この国、半分も奪われてたのか?」
「あぁ。連合の実態もよく判らぬし、斥候を放てど、いずれも戻っては来ぬ。守りの態勢で待つことしかできぬからな」
徐々に奪われていってしまうというわけか。
「マジかよ。敵の拠点の把握はできてるのか?」
「分からぬ」
これはアレだ。敵からはこちの拠点がわかるのにこちらからは仕掛けることすらできない。
完全に受け戦になっている。
守るより攻める方が強いのは時と場合によるが、この場合は守る方はとても弱くなる。
敵の主戦力を引きつけて、敵の本陣へのカウンターも狙えないのではどうすることもできない。
「武蔵。現状のパワーバランス的に一気に押し切られることはないと見ているがどうだ?」
このまま待つだけではどうすることもできないが俺達がここを抜けた場合、こちら側の守りがより手薄になるのだ。
「それは大丈夫よ」
「そうか、じゃ俺ちょっと出かけてくr」
「待ちなさいタツキ。索敵に行くのは必要だろうけど、斥候を出したのに戻らないというのも気になるところだし、今ここを離れるリスクを考えると、それは悪手よ」
「やっぱ俺一人でも抜けるとマズイか」
「そうね。一様タツキも戦いになれば頼りになるしね。戦いになればだけど」
「頭悪くてすまんね。アホだから皇帝さんの話聞いてもわからん」
「皇帝か。所詮は
僭称か。
身分を超えた称号なんて、俺には沢山与えられたけどな。
【二天を継ぐ者】【一騎当千】【平成の武蔵】【守護者】【打ち破れぬ者】などなど。俺と戦った奴らが変な異名を広げたせいで俺の実力以上のパワーワードが俺にのしかかってきた。まあでもかっこいいし、気に入っているのもあったりするけどな。
打ち破れぬ者は
「何か気になることでもある?」
藤丸がネロの表情を見て、違和感を悟ったらしくすぐに反応した。
先輩!と藤丸の言葉に少し失礼があるのではないかと心配になったマシュが止めようとしたがネロが「構わぬ」と言ったのでマシュは引き下がった。
あの反応的にマシュも気づいていたのか。
「そう言えば先刻、ともに目の当たりにしたな。連合の敵将カリギュラ。其方達が来る前、余の軍勢を単身で屠った男。あれは「皇帝」を名乗る連合の大逆者のひとり、そして、この余の伯父なのだ」
『既に死んでいるはずの人間。そうだね?』
「そうだ。姿の見えぬ魔術師よ。我が宮廷魔術師も、伯父カリギュラの手に掛かったが、生きていれば、そなたと話が合ったかも知れぬ。かの魔術師は死を乗り越えたと嘯いてな。事実、大した魔術を余にみせたこともある。しかし......。死なぬはずの魔術を修めたかの者が容易く死した」
『この時代の魔術師を容易く倒す。通常の人間じゃない。サーヴァントだ』
歴史に影響があるレベルのことだということはわかった。
この時代にあるべきではない力がここに存在している。
「聖杯の力か」
聖杯の恐ろしさは何となくわかった。
それと共にそれが人を魅了し支配する程の魅力があることも。
『可能性は高い。それがこの特異点の原因になっているんだ』
その後も話しは続き、俺は聞き専に徹していた。
ネロ帝は国のほぼ全ての力を注ぎ込み各地の暴虐を収めようと動いたらしい。
総督や将軍クラスも派遣されたようだ。
だが、それでも勢いは納まらなかった。
そして先の戦いは首都を落とさんと攻め込まれていたようだ。
そして多勢の敵に対してこちらは少数の勢力で応戦する必要がある。
故に、とネロ帝は言った。
「余の客将となるがよい!ならば聖杯とやらを入手する目的、余とローマは後援しよう!」と
もちろん俺達と目的は同じであり、願っても無い申し出、断ることは無く、協力することになった。
そしてなんと藤丸は総督の位を与えられた。
その後、宴をするとのことだったのだが、俺は疲れたのでと一人寝室へ案内してもらった。
高級そうなベッドだな。
そう思いながらベルトを外し、刀を机の上に置き、ベッドに横になった。
「ハァ疲れたぁ」
心からの疲労が声に出た。
敵側に魔術師がいるらしいし、前線で戦う強大な魔術を操る奴もいるらしい。それってサーヴァントだろうか。
現状俺はあの敵の頼光に勝てない。
武蔵は戦えていたので、武蔵に任せることになるが、もし万が一、そのタイミングで魔術師と戦うことになればマズイ。魔術師相手の戦い方なんてほぼ知らない。魔術の基礎も知らない俺からしたら何が起こるかわからない敵と戦うのは毎回生きるために刀を振ることしかできなくなる。
ロマンはレフが敵側にいるとみて藤丸を最前線に配置するようにお願いした。
ネロ帝はそれを受け入れそこに俺も同じく配置された。
ベッドの上で座禅し、瞑想する。
1日の反省と、改善点を記憶のみで探し、改善された形を妄想する。これは余裕のある時にたまにやることだ。
コンコン
「宴の準備が整いましたが、如何しますか?」
全く邪魔なお誘いだこと。
しかし先程俺を部屋へ案内してくれたのは男だったが今回は女の声だな。
「案外突然暗殺されたりしてな」
そんな事を呟きながら、あるわけないかと吐き捨て、扉に向かい「遠慮しておく」と答えた。
「わかりました」
とだけ言い残してその者は立ち去った。
少しして俺は眠りについた。
この時、藤丸やマシュ、武蔵は戦いに出ていたのだった。
タツキの油断が招いたミスは、潜入していた敵側の者と城の使用人が入れ替わり、緊急報告を伝えに来た男は殺され、代わりに潜入していたものがなんでもない報告をして去って行っていたのだ。
先程タツキが感じた、死の予感はタツキへ向けられたものでは無く、扉を隔てた向こう側で城の使用人へ敵方の潜入者が向けたものだった。
『きくん』
『きくん!』
煩い。誰の声だ?聞き覚えのある声だな。
脳に響く声に煩いと思いながら寝返りをうっていた。
しかし、その声は尚も叫び続けている。
一体何なのだ。
「うぐざい」
煩いと言ったつもりだが、寝ぼけており、しっかりと発音されなかった。
尚も頭に響く声。
徐々に意識が戻り始め、その声が「タツキ君!起きてくれ!」と言っているのがわかった。
声の主はロマンだ。
その声から緊急事態なのはすぐにわかった。
飛び起きるように体を起こして「すまない、寝ていた。どうかしたか?」
『やっと繋がった!どうかしたか?じゃないよ!藤丸君達は昼間からずっと戦場に出続けているんだ!そろそろ限界が来るかもしれない!君も参加してくれ!』
全く。どうかしたのか?ではないな。
「了解」
そう言って、すぐにベルトを巻き刀を帯刀し、鞄から10個の指輪を指にはめ、部屋を出た。
部屋を出ると死臭がした。
先程、俺をこの部屋へ案内してくれた男が血まみれになり死んでいた。
斬り殺されたのか?
傷口からナイフのような刃物で斬られたと予想できる。気づくのがもう少し早ければ助かっていただろう。
チッ!
舌打ちをして、その場を通り過ぎた。
あぁくそ!やらかした!
すっかり夕暮れの空模様だ。
外からは戦いの音が聞こえて来る。
「ロマン!場所を教えてくれ!」
『首都外壁の東門前だ!現在サーヴァントらしき影はないが、長く続くとそれだけ藤丸君に負担が大きい、急いでくれ!」
「了解」
東門めがけて一直線に駆け抜け、戦場へと出た。
まだまだ敵さんは士気が高いな。
刀を抜き、敵陣の中へと突っ込み、周囲の敵を斬り捨てた。
「な、何だこいつ!危険だ!隊列を組め!まずはこいつから始末する!」
「「「「了解!」」」」
タツキの無双を見た兵の一個隊の隊長らしき人物が命令を下すと、俺の目の前で盾兵が壁を作り、後方より弓矢で狙撃するという体制をとられた。
流石は攻めてくるだけあって判断力はいいな。
だが、今の俺はそんな物に止められるわけにはいかないんだ。
放たれた矢は矢は12本。
タツキはそれを確認すると駆け抜けた。
周囲に降り注ぐ矢の雨。
タツキの周りに綺麗に降り注ぐ矢はタツキにかすりもしなかった。
「何なんだこいつ。まるでどこに飛んでくるかわかっているような動きじゃないか!」
盾の一人がそう言ったのが聞こえた。
わかるじゃなくて動き回ってるからお前達の、狙いがブレブレなんだよ。
引きが弱くなって放たれた矢は通常よりも速度が落ちる。
初白雪でのフェイク込みだからまあ見分けつきにくくしてるってのはあるけどな。
一瞬のフェイクを複数織り交ぜたタツキの動きを捉えられる者はおらずいとも容易くその盾の壁は突破された。
「この隊の隊長はお前だな?」
「いかにも」
「覚悟はできているようだ」
「ああ。戦場に足を踏み込んだ以上はできているとも」
「良い心得だ」
タツキの刀が男の頸動脈を斬り裂いた。
タツキの近くに立っている人の姿は無くなった。タツキは返り血を浴び赤く染まっていた。
その理由はその隊全てを斬り捨てた、ためである。
「次」
タツキの視線の先には別の隊が見えた。
タツキはそこをめがけて足を進めた。
「一人でどうにかできるほど甘くないぞ、小僧」
「そうか。じゃ返し刀で言い返そう。俺をお前ら程度でどうにかしようとか思わない方がいいぞ」
「自惚れるなよ!」
「お互い様だろ」
部隊によって主とする武器が違うのはどこでもある事だが、この部隊は長い槍をメインに構成されていた。
日本では見ないタイプの槍だが、想定される使い方は
「槍投げしかないわな。そんな柵で自分達は籠って敵に槍をぶつけて殺すとか陰気くせぇことするなよ」
タツキがそう言うと、「黙れッ」と叫びながら敵の一人が槍を投げた。
それを見たもの達もまた槍を投げ始めた。
タツキはそれを全て綺麗に避けてみせた。
「馬鹿者ガァ!しっかりと狙わぬか!槍は有限じゃ!無謀者一人始末できずして何ができるッ!」
「すみません!全然当たりません!」
「まるで飛んでくる場所が見えているように避けられます!」
過大評価ありがとう。
ただ馬鹿みたいに目で見えるものしか見えていないようじゃ昇格はできないぞ?
投擲武器に対抗するには細かく動き続けるのが対策としては一番簡単でいい。
タツキのその細かな変化は幻覚すら見せる美しい奥義の様なものだった。
無駄な動きが一切なく、美しい動きだった。
「馬鹿な。それでもこやつも人の子。ミスはあるはずだ!狙うな、とにかく撃て!奴は場慣れしているように見える!狙うことの方が愚かな行為だ!」
「隊長が取り乱したらダメだろ。狙うことの方が正しいっての。狙いもしていない投擲武器は各々がぶつかり合って勝手に落ちる。ほらな」
投擲された槍は他の兵の投げた槍とぶつかり合い弾きあう始末。
隊長は歯ぎしりをしながらそれを眺めていた。
そして「突撃ダァ」と叫んだ。
判断を誤ったな。
「剣の間合いは死の世界だぞ?」
「え?」
一番先に突っ込んだ男の腕が飛んだ。
いとも容易く斬り捨てる。
「悪魔め」
「悪魔か。なら悪魔らしく殲滅しますかね」
一言、言い捨てた男が死んだ。
そしてそれを聞いていた者達もまた「悪魔め」と憎しみの目でこちらを見て突進。
山積みにされていく死体。
隊長はそれを見て後退
「逃げんなよ」
「悪魔め!この快楽主義者ガッ!格下を殺して楽しか?もはやそんな奴は人間ではない!悪魔だ、この悪魔!滅さ......れ、ろ?」
男が最後に見たものは首のない己の体だった。
「突撃命令は悪手だ。少なくとも柵の中にさえいれば俺が無理やりこじ開けない限りは死ぬことはなかった。それとな。格下でも戦場に出て来たのなら関係ないんだよ」
まあ投槍は全部視えるから意味ないけど。
さぁ。こっから投擲ゲームの始まりだな。敵軍とこちら側の軍が入り乱れてるから判断しづらいがまあでもあの隊列組んで戦況を見ている、あの後列の奴らは少なくとも敵だろうな
槍の数は全部で28本。盾が8と剣が8
剣は日本では見ない形だし持った感じしっくりこないのでこれも投擲しようか。
全部で投げたら44発。まあそんなに投げたら体がもたないから最低限の数で切り開こうかな。
令呪肉体強化。
そう言うとタツキの右手の甲の刻印が一画消えた。
「よし、やっぱすごいな。これで簡易型令呪なんだから本物は相当エグそうだな」
タツキは槍を一本拾い、先程の敵兵同様に構えて後列部隊に向かい投げ込んだ。
「せぇええええの!」
タツキは休むことなくドンドン槍を投げ込んでいった。
「はははははははははは!おらおらおらおら!行ったラァ!」
バタバタと人が倒れていくのがわかった。
「ウォオォオオオオ」という叫び声と共にその部隊から十数名こちらへ向かい走ってきたのを確認し、槍を構えそちらへ投げ込む。
隊列を組まれる前に仕留める。
避けながらこちらへ接近するのは困難だろうよ。
だが何故奴らは飛んできた槍を盾で弾かないんだ?あんな馬鹿でかい盾持ってるんだからわざわざ避けながら走ってこなくてもいいだろうに。
あ。もしかしたらこの槍は突きがメインじゃなくて貫通メインで相手ごと地などに貫き刺して行動不能にするのが目的の槍なのか?
タツキはそう考えて、実験として、盾を投げ込んだ。するとそれを前列3人が止まり陣形を取って盾を3つ横並べに並べてそれを防いだ。
説は5割くらいは正しいと判断。
次は剣で試す。
剣を投げるとそれは盾で余裕を持って弾かれた。
立証。槍は危険という認識を持っているが他は防げるということ。
槍投げはしたこと無いから見様見真似だが、二天の才能というべきか、こと戦闘に関しては勘だけでできてしまう。まあ飛距離は令呪ありきだけどな。
己の才能が恐ろしい。
「グハッ」
タツキにより投げられた槍はそれを避けようとした兵を盾ごと貫いた。
死には至らないがまあ動くことはできなくなったか。
「逃げてきた兵の一人が言っていたが、お前が悪魔か」
一人の男が俺を見てそう言った。
一人を失い12名となった隊がタツキの前で陣形を組む。
前衛が2名の盾、その後ろに3名の剣と盾持ち、その後ろに4名の弓兵、その周りに3名の手に長槍を持つ騎馬兵うち一人は部隊長らしき男。
「俺、誰一人逃さず殺したはずだけど?」
「腕を斬り落としたくらいでは人は死なぬぞ」
「あらら〜気絶せず、自分の足で歩いて逃げたのか。やるなそいつ」
「許さんよ。敵討ちというわけでは無いが、一騎当千の悪魔などこの国を滅ぼす元凶になりかねん」
「いやいや、それいうならお前らも同じだろうよ」
「我らは国のために戦っている!行くゾォ」
「行くって何処へだ?」
「敵を煽って動揺を誘うのが得意らしい。だがその手には乗らんよ」
「あぁ。そう」
タツキは左手5本の指を手前へ引いた。
ガンッ!という鈍い金属音が鳴り、後衛にいた弓兵3人が倒れ、騎乗していた騎士が1名馬から落ちた。
「何が起きた!?」
「盾です!先ほど投げられた盾がこちらへ向かって飛んで来ました!」
隊長は後方を見ると弓兵が盾の下敷きになっていた。
そして同時にタツキは一人の騎馬兵を斬り落としていた。
「糸を大量に盾に取り付けそれを引いて盾を飛ばしたか。そしてそれに気を取られている隙に盾兵に守られていない騎馬兵を討つか。してやられたの」
隊長は部隊の横面に立っていたタツキの姿を睨みつけた。
「立てるな?」
「す、すみません。一人は意識を完全に失っています」
「寝かせておけ。お前達二人は弓を構えろ」
「申し訳ありません。背負いの矢が折れてしまっています!」
「なっ......。クソッ!」
ダメだな〜油断しちゃ。盾に繋がれている糸を切らなければ同じことの繰り返しということがわからないのか?
「ナッ!?」
ブフォアア
盾持ちの隣にいた騎馬兵一人の馬に盾を当て馬を暴れさせた。
馬の機動力は邪魔だから先に落とす。
「馬鹿者ガァ!先に盾に繋がれている糸を切らぬか!」
馬鹿はお前だ。
「味方の混乱に気を取られすぎてお前自身の警戒がなくなってるぞ?」
「な、に......を?」
隙ができた隊長を見逃すことなくタツキは斬り落とした。
隊長の死に動揺を隠せない連中は連携が乱れ、タツキに向かい突っ込んできたのでタツキはそれをいとも容易く斬り捨てた。
各指輪に付いているボタンを押すとワイヤーは全て指輪は収納された。
これぞワイヤー収納武器リング(父親作)
以前は指でワイヤーを持ったためすごく痛かったので、確かそんなものがあった気がして鞄を探したら入っていたので一様持ち歩いてはいた。
「ふぅ。とりあえずひと段落かな」
タツキの周辺には斬り捨てた者達の亡骸が転がっており、他者から見れば返り血を浴びたその男は悪魔と呼ばれるにふさわしい光景だっただろう。
刀を鞘に納めたところで、ロマンから通信が入った。
『タツキ君。すまない。君に負担をかけすぎたかい?』
「気にするな。俺が寝坊したのが悪い」
『そうか。こっちでも人を殺してたように簡単に殺すから殺してたのでは無いかと怪しんでしまうよ』
「神秘の秘匿だっけか?それがあるように俺らにも色々あるかもしれないぞ?」
『怖い事を言うな〜流石に冗談だよね』
「......まあな?」
『え?!何?!?どう言うこと?』
「ロマン。俺の事なんて調べがついてるんだろ?わざわざ聞くなよ。つけられて不名誉な称号しか残ってないんだよ」
『称号?まさかあの死を呼ぶとかってやつかい?』
「死を呼ぶ?聞いた事無いな。まさかまーたなんか増えてたのか。厄介な」
『あれ自分でつけたわけじゃ無いのか』
「当たり前だ!あんなもん呼ばれるだけで鳥肌が立つってのにここでもあのローマの連中に悪魔呼ばわりされるし、何なんだよ!」
『たしかに敵から見ればタツキ君は悪魔かもね』
「まあこれだけは言っておくが、本当に人は殺してないぞ?ただ俺の二天の伝承者さんが殺してたのはたしかみたいだがな。そことの繋がりがあるから全然考えないでそれを行えてしまったことに初めは驚いたけど、それが普通なんだと身体が知っていたって感じだ」
『そうか。不思議な話だね。わかった、今後は油断なく頼むよ』
「はいはいもう寝坊したりしませんよ」
そこで通信は切れた。
敵が撤退した頃には
日はくれすっかり夜になっていた。
「しぶと過ぎ!うぜぇ!」
「それよね!ありえない!お腹空いた!」
「それだ!寝起きで何も食べてないままなんだぞ!朝御飯を出せ!」
「タツキ。それは朝御飯とは言わないわよ」
「なっ!?」
「先輩お二人が疲れ切って駄々をこね始めたした。どうしますか?」
「流石に二人に負担がかかり過ぎたかな」
「安心せよ!宴の準備をさせている。歓迎するぞ」
「まじか!行くぞ!武蔵」
「おーよ!」
「まてぇい!」
「藤丸。俺を止めるな」
「藤丸。私を止めるな」
俺と武蔵は同時に藤丸に振り返ってそう言った。
藤丸は俺達の姿を見てあははと笑ってこう言った。
「君達、お風呂入ってきた方がいいと思うぞ?血糊を落としてきてから食事を頂こうよ」
そういえば俺と武蔵は返り血で血だらけになっていた。
?
そういえば風呂とローマといえば......
「映画じゃん!」
「タツキ?」
「そうだよ!ローマってどっかで聞いた事あると思ったら映画だよ!映画!ローマといえば風呂!さぁ!出発だ!」
「浴場へは一人案内人をつけよう、疲れと血を落としてくると良い!お主らも行くか?」
「いえ、私達は宴の準備を手伝います」
「そうだな、俺もそうするよ」
マシュと藤丸は残るそうだ。
来ればいいのに。
「そうか?じゃ行くぞ!武蔵!。......そういえば混浴なのか?」
「なっ!?斬り落とすよ」
「何をですか!?」
武蔵の視線が精神的ダメージをタツキに与えた。
「其方らの国では別々の風呂場があるのか?そもそも女子が風呂に入るという習慣そのものがあまりないのでな。そこは我慢してほしいものだ。だが!見事な働きっぷりだった其方なら何なら貸切にしてやっても良いぞ?」
ネロ帝が腕を組みどうする?と聞いてきたので、そこは甘えさせてもらうことにした。
「助かる、お願いしてもいいか?」
「え?タツキ?」
「いやあれだよ。俺は別にいいけど、一様武蔵は女の子だからさ。武蔵は気にしないかもだけど、俺は気になる」
「わかったわ。そういうことならお願いするわ」
「うむ!ではそのように手配しよう」
「タツキ。素直じゃないな。お前武蔵ちゃんの素肌を野蛮な男達の前に晒したくなかっただけだろ?独占欲か?」
藤丸がコソコソと耳元でそう囁いた。
「なっ!?バッカ!お前!そんなわけあるか!ってか男のツンデレとか意味ないから、変なこと言うな!」
(あっとるじゃろ)
(正論だな)
(仕方ないわよ。この歳でどーt)
「ウッセェええええええええ!!武蔵先に入ってくれ、俺はちょっと用事があるから武蔵の後に入る。あ、あとネロ帝、俺の時は浴場開放してくれて構わない」
「うむ、わかった」
脳内ジジイ、ガキ、ババアがウルセェ!
さっきから脳内でヒューヒューとか騒いでやがる!
「普通に嫌じゃない?相棒の女の子が舐めるように見られるなんて絶対嫌なんだけど」
(ひゅうひゅう)
(完全にデレましたな)
(男のツンデレって価値があるのかしら)
「おいこらテメェら!うっせぇぞ!」
( おいどんはもう寝るぞい?風呂を覗いてもおいどんらは知らんぞい?)
「テメェは誰だ?急に初見さん来んな!」
(おいどん悲しい)
「うっせぇ!」
(一言言うていいか?お主周りからヤバいものを見る目で見られとるぞ?)
「え?」
街に入り先程借りた部屋へ戻ろうとしている道中で独り言を他者へ聞こえる声で発していたために、周りはこちらをコソコソと隣の者と何かを言いながら奇異の目で見ていた。
俺、即帰る。
歩くスピードを速め、自室へ向かった。
俺の仕事はまだ続いてる。武蔵を先にした理由はもう一つ。
まだ血を浴びるからだ。
俺をハメたあの女。
アレは潜入者だ。帰られる前に殺す。
「逃がさない」
再びタツキの目に殺意が現れた。
輝夜。先に俺を罠に嵌めやがったやつ、場所わかるか?
輝夜はタツキの脳内で話しかけてくる女の剣士だ。
(わからないわ。ただ近づけばわかるわよ?一度嗅いだ人の匂いは忘れないから)
じゃ俺が歩き回るから近づけば教えてくれ
(わかったわ)
その後俺はあらゆる場所を歩き回った。
そしてその女はいた。
(あの花瓶を持ってる女ね。上手く召使いに成りすましてるけど、臭いは同じだから間違いないわ。あと少しだけど血の匂いもするわね)
了解
殺気を感じ取った女は花瓶を置き、胸元に仕込んでいた小刀を抜こうとした
が
「なん.....で。ごめんなさいマスタァ」
その手ごと背面から刀が女を貫いていた。
だが、返り血は飛ばず、そこから光の粒子が溢れ出した。
「俺を騙したんだ、生きて帰れると思うなよ。ん?てか、マスターってお前サーヴァントだったのか?」
「え?その声......」
そう言って女は此方を向いた。
短髪のおとなしそうな顔の子が微笑んだ。
「よかった......生きていたのですねマスター」
「は?何言ってんだお前?」
俺をマスターと呼んだのか?
「私は占いに長けた者達の集まった出来損ないのサーヴァントです。占いに貴方が血だらけになってやられている姿が見えたので、睡眠の薬を部屋に流し込み、眠っていただきました。身勝手をお許しください。ですがやはり未来は変えられませんでしたか」
そう言って女は俺の顔についていた血を手で拭った。
「訳がわからない!何を言ってる?お前は敵の潜伏者で俺を嵌めたんじゃないのか!?」
「あ、あぁ。そう言うことでしたか。身勝手な行いには罰があるものですね。私達、占師というものは騙されたと罵られ詐欺だと言われその結果、殺されるんです。名も残らず○○の場所にいた占師としか残りません。そして我々は皆、正しいと思いそれを成します。今回も正しいと思っていたのですがどうやら私の誤りのようでした。返り血ですか。マスターの血じゃなくてよかった」
そう言ってその子は光の粒子となり消えた。
後にはただ、血だらけのタツキが、廊下の真ん中で膝を床につき理解ができないと頭を抱えていた。