俺たちは現在ネロ帝の待つローマへと戻っていた。
「ただいま、ネロ帝」
「おお、戻ったか。戻ったばかりですまないがこれからガリアへと遠征を行おうと思う。無論、余、自らが出ねば意味がない。苦戦する配下を助けつつ鼓舞するのが目的だ。其方らには供を頼みたい。どうだ来てくれるな?」
「ガリアってのがどの程度重要な場所なのかってところだな」
俺の問いに答えたのはロマンだった。
『連合との戦いに於ける最前線のひとつらしいよ』
「なるほど、なら行かざるを得ないわけか」
「仕方ないね」
「私もそう思います」
「決まりだな!皇帝自らの遠征である!直ちに支度せよ!」
「ははっ!」
ネロの命に従いローマ兵は即準備へ移った。
そんなこんなで準備も直ぐに完了し、出発となった。
ーーーーーー
出発してから数時間が経過し森道を歩いている。
「こんなに歩くとは。刀が重く感じてきたぞ。スタミナがないのではない。想定以上に歩くとなんか重く感じるんだ」
「タツキ。シャキッとしなさい」
武蔵に背中を叩かれ、ハァとため息が出る。
出発してから何時間が経過した?
部隊での移動となると己のペースでとはいかないので余計に疲れる。
「タツキと藤丸は馬には乗るか?」
とネロに問われた。
タツキと藤丸は顔を合わせてとある記憶が蘇る。
そうそれは数時間前、出発の準備をしている時にローマ兵から馬の準備をしたので乗ってみてくださいと言われ、武蔵とマシュは平気ですとのことで未経験の二人が試乗に行った時のことだ。
「馬だな」
「馬だよ」
二匹の馬が俺達を待っていた。
一匹は黒馬でもう一匹は茶色の毛の馬だった。
藤丸が茶色の毛の馬に乗ると言ったので俺は黒馬に乗ることにした。
馬に乗って手綱を握り少し動いてみようとしたその時だ。
「うわぁあああああああああ」
藤丸の叫び声がしたかと思うと藤丸が馬の上でブンブン振り回されていた。
えぇ。早くない?
此方も自分のことで手一杯なので、手助けしてやることができないのでどうにか自分で体制を戻してくれと願いつつゆっくり進もうとしたその時だった。
「タツキ!よけろぉおおおおおお!!」
は?
藤丸が落馬しそうになりながら必死に馬にしがみつき、その馬が此方めがけて走って来た。
「なっ!?」
いやいや知らん知らん!避け方とか知らん!
「おい!黒馬よ!避けろ!やばい!やばい!」
そう言って黒馬の腹を蹴るとヒヒィン!と叫び真っ直ぐに走り出した。
「え?」
早い早い。止まり方?知らん。
「ギュァアアアアアアアああああ」
手綱を思いっきり身体ごと後ろへ引きながら必死に叫んだ「止まれェエエエエ」と。
その甲斐あってか馬は無事止まってくれた。そして直ぐに俺は兵に馬を渡し、今も尚振り回されている藤丸の元へ走った。
もう落馬してもおかしくないのに必死に耐えていた。
「カモーン!藤丸!俺の胸へダイヴだ!」
タツキは手を横に大きく広げた。
「ちょ!?え!?無理無理無理!」
「だよな」
「一瞬止めるからまあ多分藤丸も怖いと思うから、馬が止まったら即降りてくれ」
「え?あ、ああ」
「じゃやるわ」
(ブチ殺すぞ、馬野郎)
タツキが殺気を馬めがけて飛ばした瞬間馬はピタリと止まった。
まあ藤丸にも殺気は貫通してるわけで頑張れ藤丸。
ボテと藤丸が馬から落ちたのを確認し、即ローマ兵に馬を任せ、藤丸に肩を貸し、その場から去った。
去り際に馬はどうします?と聞かれたので「結構だ」と答えた。
ということで俺たちには乗れない!
「武蔵ならできる」
という答えが正解だろう。
「其方ではないのだな、藤丸はどうだ?」
「マシュなら。。。」
「わたしは騎乗スキルがありますが、その、先輩はあまり馬に慣れていませんので」
「私も、もちろん乗れるよ」
マシュと武蔵は乗れるのなら乗ればいいのにと思いながら共に歩く二人を見た。
その横を藤丸がゼエハアと息をしながらも弱音を吐かず歩いていた。
「藤丸、よく弱音も吐かず歩けるな。これ半端ない距離だぞ」
「俺が弱音を吐いてる訳にはいかないからね。マシュは平気?」
「わたしは問題ありません。デミ・サーヴァントですから、体力は凄いんです」
「サーヴァントってその辺半端ないよなー」
「戦闘面だけ見るならタツキはその部類に足を踏み込んでいるよ」
「まじか?」
「俺視点ではだけど」
「藤丸君〜タツキを甘やかさない!タツキはまだまだ」
「左様ですか。。。」
『二人とも馬に乗ればよかったのに』
とロマンが通信で言ってきた。
『あれかな?先程の馬騒動がトラウマになったかい?』
「アホか!お互い怪我してないんだからセーフだ!」
「俺は精神的にダメージ食らったけどね」
「先輩!?何があったんですか!」
「タツキの殺気に当てられただけだよ」
ボコッと頭を叩かれた。
「タツキ。遊びで殺気を飛ばすのは許せないな」
武蔵にめっちゃ怖い目で見られた。
「い、いや!違う違う!タツキは俺を助けるためにだから!」
「それならそうと早く言ってよ〜ごめんなさいタツキ」
「おいこら武蔵、結構本気で殴っただろ。
タンコブできたじゃねーか」
「え!?できてないけど」
「比喩表現だっての!それくらい痛かったんだよ!」
武蔵に頭を確認されタツキの頭にタンコブができていないことが発覚した。
『楽しく会話中のところ悪いんだが、前方に生体反応、サーヴァントではないけど、敵のようだ』
「楽しく聞こえたならロマンの感覚を疑うね!殺伐としてるからな」
『タツキ君、お話は後にして早くしないと左右からの挟撃ちにされるよ。ってもうされてるんだけど』
「アアァン?言うの遅せーよ!」
「いや、タツキよ。そうでもないぞ。余の斥候より早いとは見事だぞ」
ネロさんロマンのフォローなんてしちゃダメよ。
まあ、敵が来るのがわかるだけで、すごくありがたいんだけど。
「藤丸!左の敵は任せたぞ」
と言ってネロは右側へ走り出した。
「俺はどっちに行けばいいのかしら?」
「タツキの行きたい方でいいんじゃない?私はそれについて行くから」
「なら真ん中かから突っ込んで敵の左翼と右翼を攻撃するか。俺は左翼で武蔵は右翼な」
「了解」
「それじゃ藤丸、行ってくるわ」
「任せたよ!」
「おう!お前らも遅れを取るなよ」
「もちろん」
タツキと武蔵はそのまま前へ走り出した。
そしてある程度敵の面影が見えてきたところで気がついた。
「敵って人じゃんか。ローマ連合かよ」
「敵が来るって言われると何かわからないから厄介よね。それじゃ右に行くわね」
そう言って武蔵は右側へ走り出した。
よしなら俺も始めるか。
前線は戦闘が始まっているみたいだしな。
「へい!ローマ兵さん俺とあそぼーぜ」
そう言って一人目を斬り殺した。
「なっ!?誰だ!?お前......まさか。悪魔だ!悪魔が出やがった!撤退しましょう!こんな奴相手にしていたら命がいくつあっても足りません!」
近くにいたローマ兵が叫んだ。
だが、リーダー的なやつの答えはこうだった。「数で押しつぶせ」
その声を聞いた連中の顔色はどんどん青くなっていった。
恐れさせた時点で戦況はこっちに向いている。ま、その隙を見逃してやるほど余裕のある戦いでは無いんでな。
タツキの刀がまた一人斬り落とした。
「準備はできてるか?」
「な、やめ、やめろ」
「やめないな。ブチコロスッ!!!!」
「エイヤャァアアアアアアアアアァ!」
タツキは叫んだ、相手を威圧するように、弱めの殺気を混ぜてその反応を見る、やや動いたやつは反応ができているので先に殺す、反応できず固まっていたやつは雑魚だ、後回しにする。
そうして見極め、最短でその中の強者を倒し尽くした。
「ひぃ!」
そう言って男は逃げ出した。だが目の前の木にぶつかり倒れた。
「俺が逃すと思うか?場の支配は二天の分野の一つだぞ?」
タツキはただ追ってる様に見せて敵を道から森の木々の茂っている方へ追い詰めていた。
男は倒れながら剣を振った。
タツキはそれを弾き飛ばして男の頸動脈を斬った。
「部隊長!逃げましょう!無理です」
「ぬぅ」
「部隊長!決だ.....ん。アレ?」
バタリとその男が地に倒れた。
「おいおい、逃げようとすんなよ」
誰々さんがやられた!という叫び声が各場所から聞こえたので強者狙いの作戦は狙い通りだったと言えるだろう。
その時反対側から悲鳴が聞こえた。
「悪魔ダァあああああ」
武蔵だな。
つーか悪魔湧きすぎだろ。
「さあさあ、部隊長さんはお前か?」
「な、なぜ、あれだけいた軍隊が!前線は!」
そう言って前線をみると前線も崩壊していた。
「あ〜前線はカルデア軍師と盾使いがいるからな〜持ちこたえられないんじゃないか?」
「なるほどな」
そう言って隊長は馬から降り槍を構えた。
「覚悟は?」
「できている。行くゾォ!」
部隊長は槍を前方へ向け突進した。
「ヤァッ!」
タツキが全力で走り出し、男めがけて突進した。
(なっ!?リーチでは此方が勝っている何故だ)
部隊長は突進の際そう考えてしまった。
その一瞬の思考の濁りが部隊長の攻撃の
赤き飛沫が飛んだ。
「拍子させ狂わせてしまえば、あとはただ避けて斬るだけだからな。こっちのは無謀な突進に見えてその裏に意味があるんだよ」
部隊長が殺られたため、こちら側にいた敵軍隊は撤退を始めた。
「ロマン、撤退を確認。追って始末するか?」
『いや、撤退しているのなら構う必要はないよ』
「了解」
タツキは二刀を鞘へ収めた。
タツキは撤退する敵を横目に藤丸の元へ戻った。
「アレが悪魔だ。二度と戦場で出会いたくない」
「ただ剣を二本振ってるだけじゃないのか?」
「そんな次元にアレはいないから悪魔なんだ」
「そ、そうか」
そんな会話を耳にしながら歩いた。
俺の噂が変に過大評価されて益々悪魔化していってるな。。。
「マシュ、藤丸。お疲れ〜あっち側ももう終わったようだな」
「敵が悪魔が出たって叫んでたけど、あれタツキだよね。ここに来て間もないのに知名度上がったな」
「上がって欲しくないわ」
「あの連合の手練れたちを雑兵扱いか。本当にその手勢の数でよくやるものだ」
「いや、此方にはマシュと武蔵さんと一騎当千の桁外れの悪魔がいるようですので」
「いや、そこを巧くついて前線を崩したのは藤丸の指示だろ?言っとくけど前線に置かれる勢力って主戦力が置かれる場合もあるからな?タチ悪いねぇ〜」
「な、タツキには言われたくないな!左翼と右翼を壊すとか恐ろしい事言い出して前線を俺達に任せて走り出すんだもん。驚いたよ」
「ふむ。どうだ?客将と言わず、余のものとなるか?この世の栄華を余の傍で味わうことができるぞ?無論、連合帝国を討ち果たして後のことだが」
ネロが突然、藤丸にそんなことを言い出した。
「考えさせて下さい」
藤丸の答えに俺とマシュは!?となった。
(おい!マシュ、藤丸が取られるぞ!)
(とら!?い、いえ、先輩が決めたことでしたら......決めたことでしたら・・・。)
「即答したくともできぬとは、奥ゆかしいではないか。よいよい、こっそり前向きに考えるが良い。連合征伐の暁にはガリアはおろかブリタニアをも与えて構わぬ。余は気前の良いことで知られているが、ここまでの大盤振る舞いは珍しいのだぞ?な、そうであろう。そこな兵士?余は歴代皇帝の中でも、抜きんでて豪華よな?」
ネロに突然問いを投げられた兵は即回答した。
「はっ。仰る通りでございます!今日という日は、ローマの輝ける太陽がさらに眩しく輝いておられます!」
兵も大変だな。とタツキは思ったのであった。
だがだ、まずいぞ。
ネロは完全に藤丸をものにしようと動いてきた。
(よし、マシュ。藤丸監視体制に入った方がいいぞ)
(そうですね。そうしましょう)
『お二人さん?何の相談をしているのかな?』
「何でしょうドクター?」
「何の用だ?」
『い、いやなんでもないよ。マシュはわかるけど、タツキ君は何故起こるのかな』
「俺はこの件に関してはマシュの味方をすると決めた。勝手に就職とか許さん。しかも領土付きとか許せんな」
『なるほど、タツキ君は就職できず、道場破りでお金稼いでいたそうだからね』
「仕方ねーだろ!実家があの家族ってわかった瞬間びびって雇ってくれねーんだよ!」
「そんなにも有名だったんですか?」
「まあ、いちよう?俺の家、道場だからさ。しかも真剣振り回してたりしてめっちゃ目つけられてたんだよ」
「誰にですか?」
「さつに?」
え?とマシュは目を丸くした。
『警察を困らせちゃダメだろ』
「さつの奴らも依頼しにきてるくせに酷いよな」
「依頼?なんの依頼ですか?」
マシュが聞いてきたので素直に答えた。
「闇討ち」
と。
「え?」
「は?」
マシュと藤丸が目を丸くした。
ロマンはまあ知っていたのだろう。反応はなかった。
「あれ?武蔵は?」
そういえば武蔵が帰還していなかった。
「ごめん!遅れた〜なんかちょっと先に沸いてたので倒してきました」
へへへと笑いながら恐ろしいことを言う武蔵さん。
一人で何軍隊倒してくるんですかね。
俺よりよっぽど悪魔だろ。
「そ、そっか。お疲れ」
「つーかさ。あと何回こんな戦闘をしながら進むんだ?流石に疲れるぞ」
『いや、心配ないよ。目的地はすぐそこだ』
「ほんとか!目的地が見えると急に体力が回復した気になるな」
「長旅ご苦労様だったな。既にガリアの地に入っているぞ。ガリア遠征軍の野営地は目と鼻の先。しばらくぶりにゆっくりと寝所で休めるぞ」
「ハァ。まじで疲れた。敵と戦うのは疲れないが歩くのが疲れるんだよ」
「敵と戦うのは疲れない?戦闘狂でも味方にいたか?」
「いえ、先輩アレはタツキさんです」
「おいお前ら。今は疲れてツッコム気にもならんから許してやる」
「相当お疲れの様ですね、お疲れ様でした」
「マシュもな。藤丸監視はしっかりな」
「もちろんです」
さてもうキャンプが見えてきた。
馬の乗り方絶対覚えようと決めたタツキであった。