「昔はお前のようなマスターだったのだが、第二部のPVでセイレムがきてしまってな……」
――それは空想が生んだ悲劇である。
――それは恐怖が生んだ惨劇である。
――それは無知が生んだ無慚である。
――それは我欲が生んだ禍殃である。
――それは後世が生んだ喜劇である。
――それは、
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夜闇の帳がかかったこの時代は、とある一つの事象に支配されていた。
老若男女問わず、些細な引っかかりがあれば他人を“魔女”に仕立てあげ、裁判という理不尽にかけ、そして吊るす。
俗にいう『魔女狩り』に支配された時代――否、本来であれば『魔女狩り』という概念が誕生する以前の時代――AD.1428、スイス、ヴァリス州である。
しかし、この世界における魔女を追い立てる者たちの顔に快活な笑みや狂気の滲んだ眼力はなかった。
皆一様に恐怖と絶望で青ざめた表情を浮かべ、灯りも携えずに、何かから逃げるようにと目的地を定めた旅路を急いでいた。
ある種の異様な雰囲気を伴った集団の前方に、独りの存在が立ち塞がった。
灯りのない夜闇の中でも、その存在は異質な空気を放ち、集団の視界にハッキリとその姿を形作った。
「やあ、こんな時間に大勢で散歩かね?」
声の発生源は少女のようだった。
幼いようでいて、無邪気なようでいて、溌溂なようでいて――故に残酷さを孕んだ声だった。
集団――先頭に立っていた男が、少女の姿を確認し「ひっ」と短い悲鳴をあげた。
夜闇に目立つは爛々と輝く赤い双眸の少女。
だが、誰も彼もが、その場から動くことができないでいた。否、できない。
シャボン玉のように弾ければ動き出すような恐怖ではなく、セメントのように固まった恐怖が、彼らの身体を完全に覆っているからだ。
「しかしな。――しかしだ」
少女は指先を振って「チッチッチッ」と舌打ちをした。
直後、ボゥっと指先に火が灯り、少女の姿を明確に照らし出した。
白髪。
紅い眼。
白い肌。
朱いローブ。
とんがり帽子。
鉤のように曲がった付け鼻。
口元に刻まれた可愛らしい笑顔。
だが、少女を構築する笑みも仕草も、そのすべてに胡散臭いものがった。
「夜遅くの散歩というには、感心しないなぁ。灯りがないなんて、不用心だなぁ」
染みつくような笑顔のまま、少女は頷く。
少女と呼ぶには、いささか変わった口調で言葉を続ける。
「こんな夜には、命を喰らう獣が多いから、気を付けたまえ」
真っ赤な口内と真っ白な歯を見せて、少女は背を向けた。
「――今宵もまた、何十人かが命を貪られる」
呟いてから、ゆっくりと歩き出し、夜闇の向こう側へと消えた。
ほんの一瞬、集団は安堵した。
――何もされなかった。
――見逃された?
しかし、その安堵感も次の瞬間、ふたたび恐怖に塗り替えられた。
「あ、あぁ……」
誰かが絞り出すように、あるいは絶望が心から溢れたしまったかのようなうめき声を零した。
周囲は無数の獰猛な眼に囲まれ、獣めいた唸り声が連鎖していたからだ。
集団は一人残らず、老若男女問わず、朝を迎えることなく、その身を嚙み砕かれ、その肉を貪られ、その魂を凌辱され、その生命を絶たれた。
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――これは幻想が望んだ悲劇である。
――これは渇望が望んだ惨劇である。
――これは天災が望んだ無慚である。
――これは無能が望んだ禍殃である。
――これは魔女が望んだ喜劇である。
――これは、本来あるべき時間から外れた、本来従うべき時代から逸脱した特異点の物語である。
「我は魔女狩る将軍! 高名にして悪逆非道に連なる英雄なり!
ヌハハハハ、安心めされよ! 今の吾輩は高潔なサーヴァントですからな!
――貴殿らが“普通の人間”であればだがな!」
将軍を名乗る狂戦士めいた男が高らかに宣言し。
「貴方たちは知らぬでしょう。――そして、知っていくことでしょう。
魔女たちの悲観を、怨嗟を、遺恨を。私を縛る呪縛のように……」
その目に諦観を宿した女が話し。
「簡単な話だ。私は、私以外の優秀を消したかった。
故にあの男と共謀し、利用し、多くを処刑してきた。
――ま、その私が、まさかこうして狩られた側の器となろうとは思わなんだ」
怪しげな少女が真実を語り。
「ワタシはね、クソ親父のように平然と、ワタシの目の前であっさりと誰かを犠牲にさせるようなことが――大・大・大・大ッ嫌いなのよ!
だから協力してあげるわ。共闘してあげるわ。
改めて、このイカれた時代へようこそ!」
不遜な少女が力となり。
「先輩、これは――ここはとても、胸が苦しいです……」
盾持つ少女がこの世界の現状に言いようのないものを抱き。
『それが悲劇を紡ぐものだとしても――止める』
少年/少女は決意/覚悟を告げる。
AD.1428 異端審問境界ヴァリス/人理定礎値B++
~魔女が与える鉄槌~
「さあ、ライトを当てなさい! 耳を澄ませなさい!
流麗かつ大胆! 太陽のように心を熱く震わせ、北風のように哀愁を誘う歌声をたっーぷりと聴かせてあげるわ!」
何回も出てきて恥ずかしくないんですかぁーーー!?