FGO小ネタ 嘘予告集   作:零崎妖識

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酒呑ちゃん召喚記念。
やっと……やっと四人目の☆5が……!


剪定事象の時計仕掛け

剪定事象。

読んで字のごとく、剪定された事象。

既に滅んだ、もしくは滅びることが確定した並行世界。

そんな、剪定事象の一つの話。

 

 

 

昔昔、おおよそ千年ほど前に、とある並行世界のこの星(地球)に、ある大きな出来事が起こりました。

その地球はこの世界──カルデアのある世界よりも時間が進んでいる世界です。

ある日唐突に、なんの前触れもなく、

 

地球が死にました。

 

星の寿命がなくなったのです。

 

人間が計算した星の寿命に、たった五十億年ほどの誤差があり、人々は星の死が近づいていることに気がつきませんでした。

そして、百年の時間をかけて星は活動を休止し、人々は抵抗を諦めました。百年という時間は、人類が対策を講じるには短すぎ、危機感を維持するには長すぎたのです。その時点でもう、この世界は剪定事象になっていたのでしょう。

 

しかし、三十年が過ぎた頃、ある一人の男性が、表舞台に姿を現したそうです。彼は英雄になり得るような人ではありませんでした。科学者でも、政治家でも、宗教家でも、魔法使いどころか、魔術師でもありませんでした。ただ一言、人類を驚愕させる一言を言ったのです。

 

「わたしはこの星の全機能を、歯車だけで動かす設計図を作った」と。

 

彼は、時計技師だったそうです。

 

そうして、その世界は滅びる運命を滅びた後で回避し、星の意思の代弁者の目をも回避しました。

もはや魔法の域に届くその技術は、その技術を持って再現された星は、彼の宝具とも言えるでしょう。

彼は自らを『Y』と名乗りました。そして、数えきれないほどの歯車からなる星の設計図を、こう名付けたそうです。

 

──『時計仕掛けの惑星(クロックワーク・プラネット)』と。

 

 

 

 

「──それで、その『Y』って人が作った自動人形(オートマタ)がこの娘?」

 

「そのようです、先輩。彼女がInitial-Yシリーズ壱番機のリューズさんですね」

 

長々と又聞きの昔話を話したマシュ・キリエライトと、昔話を聞いていた藤丸立香の目の前には、地味だが女装すれば可愛くなるであろう少年と、モデルも肌足で逃げ出しそうなほどの美少女が座っている。

少年は見浦ナオト。少女はリューズ。ナオトの方は、自動人形であるリューズのマスターである。

 

「私たちが行うことは、彼らに協力して区画(グリッド)・京都のパージを阻止することです、先輩。本来この世界には居ないはずのサーヴァントが召喚されています。もし、彼らの妨害によって京都がパージされてしまったら、この世界の今後の歴史は大きく変わってしまうでしょう」

 

「はて、この方々は何を言ってるのでしょうか?失礼ながら、わたしにも理解できるようにちゃんとした言葉で仰ってもらえますか?」

 

リューズが毒舌を吐き、ナオトが諌めようとした途端──彼らが居るレストランの横を、どこかで──具体的には西暦1888年のロンドンで──見たような兵器、ヘルタースケルターが駆動音と共に過ぎていった。

 

「……バベッジさんが召喚されてることが確定しました、マスター」

 

「あー……ありゃ何なんだ!?あんな駆動音聞いたことないぞ!?」

 

「チャールズ・バベッジ……大昔の数学者ですね。蒸気機関を使用したコンピュータ『階差機関』、『解析機関』の設計者と記憶しています」

 

何とか納得したナオトたちと共に、京都を支える大支柱(コア・タワー)へ向かう一同。途中で時計技師、マリー・ベル・ブレゲやその護衛、ヴァイネイ・ハルターと一悶着あったものの、リューズの戦闘力とナオトの異常なまでの聴覚によって、無事に大支柱に到着する。

しかし、ここで英霊が立ちはだかる。

 

「ええ、この区画が落ちたほうが面白いと思いませんかぁ?それでは、このわたくし!忠実なる従者メフィストフェレスが!!あなた方のその懸命な作業を嘲笑ってあげましょう!!!」

 

努力を嘲笑う道化。彼を止めるのは、一人の英国紳士(蒸気機関)

 

「この世界は、我が夢見た世界とは違えども、我が夢の先と言えるだろう──救ってくるがいい、この世界に生きる者よ。我が空想、我が理想、我が夢想を持って、君たちを応援しよう──『絢爛なりし灰燼世界(ディメンション・オブ・スチーム)』!」

 

立ち塞がるもう一人は、京都に巣くった一つの鬼。

 

「ほな、あと六時間ってとこかいなぁ?そんなら、時間いっぱい楽しんだほうがええんとちゃう?」

 

酒呑童子。人間のことなど餌としか見ない怪物。マシュが抑えるが力足らず、このままでは彼女との戦いに負け、京都がパージされてしまう。

そんな時、リューズがとある宣言を行う。酒呑童子を倒すための──物理法則に違反するという意思表明を。

 

「定義宣言──Initial-Yシリーズ壱番機『付き従うもの(ユアスレイブ)』リューズ」

 

ここから先は彼女(リューズ)の独壇場。彼女にしか立ち入れない世界。彼女が『Y』に作られたという証明。

 

「固有機能──【虚数時間(デュアル・タイム)】……起動シークウェンス、開始します」

 

リューズの体内から、ナオトの耳にしか聞こえないであろう微かな音が聞こえる。時を刻む秒針の音。それが緩やかに、確かに、不規則に、不条理に、しかし美しく自然に、歪んでいく。

同時に、歯車が噛み合う音が反響し、リューズの黒い礼装(ドレス)が姿を変える。先ほどとは真逆の、真珠色の婚礼衣装(ウェディングドレス)へと。

 

「──第一時計『実数時間』から第二時計『虚数時間』へシフト開始」

 

リューズの胸元の時計の盤面にシャッターが下り、直後、隠されていた二つ目の時計が、盤面を露わにする。

それは、一つの固有結界とも言えた。一番近いのは、アサシンのエミヤの宝具、『時のある間に薔薇を摘め(クロノス・ローズ)』だろう。なぜなら、

 

「────『絶対機動(ミュート・スクリーム)』────」

 

彼らの認識下では、既に全てが終わっていたのだから。

 

「……かはっ。最後の最後に、ええもん見れたわぁ……うちも、何が起こったんかはわからへんけどなぁ……ほな、さいなら……」

 

残り時間、三時間五十七分。大支柱の異常を見つけ出し、直すまでの制限時間。彼らは、無事に終えることができるのだろうか。そして、パージの阻止は可能なのだろうか。

たとえどちらへ転ぼうとも、この星の歯車は廻り続ける。

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