ラブライブ! コネクション!!   作:いろとき まに

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活動日誌- み・はミュージックの・み! 8

 雪穂と亜里沙の実際に経験した合同ライブを踏まえて実施になった歓迎レセプション。

 楽しんでもらおう。少しでも興味を持ってもらおう。入部したいと思ってもらいたい。

 きっと後輩達もそんな気持ちでいてくれているのだろう。

 裏方をやらせて、ごめんね? ありがとう。

 扉の向こうで一生懸命セッティングをしたり、飾りつけやチェックをしている後輩達を想像して、雪穂は心の中で謝罪と感謝をしていた。

 そんな後輩達の為。立場は違えども学院の為に頑張っている親友の為――

 雪穂と亜里沙は自分達の責務を全うする為に、新入生へと説明を始めるのだった。

 

 まずは軽く自己紹介を済ませ活動内容――在籍人数や活動場所。活動時間や練習内容。

 そしてメインとなるライブやイベントへの参加などの話を簡潔に説明する。

 終始、希望と羨望の眼差しで見つめてくる新入生を眺めながら、心の中で苦笑いを浮かべる雪穂だった。

 確かに憧れて部室を訪ねてきたとは言え、今までの内容は言ってみれば事務的な内容だった。

 自分の意志があるにせよ面白い話でも興味が湧く様な話でもないはず。

 まだ自分が中学3年生だった頃。学院存続の為だと絵里のオープンキャンパスでの演説の練習に付き合ったことがある。

 しかし、あまりにも興味が湧かなかったからなのか、雪穂はその場で居眠りをしてしまうのだった。

 そんなことを思い出して、今年の新入生はやる気があるのだと感じていたのだった。

 それは部活の為、先輩の為、親友や後輩の為。きちんと説明する必要があるからと考えた内容とは言え――

 自分自身が興味が湧かない説明だったからなのかも知れないのだが。

 

 そして数名程度の質疑応答を行った後、話はスクールアイドル――主に μ's の話題へと流れていった。

 すると新入生の口から感嘆の声が漏れ始めて、更に瞳を輝かせて真剣に聞こうとする表情へと変化していく。

 それを見た雪穂は「やっぱりね?」と言いたげな表情で亜里沙に目配せした。

 そんな雪穂に同じ様な表情で返す亜里沙。

 当然こうなることは予想していた。だから最後に活動内容を話しても頭に入らないだろうからと、最初に持ってきたのだった。

 新入生の表情に比例するかの様に。期待に応えるかの様に。

 先ほどの説明とは打って変わって、穂乃果達の軌跡を熱く語る雪穂と亜里沙。

 しかしそれは単純に、自分達の大好きな μ's の話をするファンとしての2人の姿なのであった。

 

 自分達が入学する前。穂乃果が μ's を結成してから今まで――。

 学院廃校の危機を救うべく立ち上がった9人の生徒達の物語。

 第1回と第2回ラブライブ! エントリーや出場へのエピソード。

 優勝後の海外PRや合同ライブ。絵里達の卒業からの穂乃果達在校生の道のり。

 苦難や悩み、困難な壁を乗り越えてきた先に待っていた喜び。

 彼女達を1番近くで見続けてきたファンの語る内容に、新入生達は心が踊り、胸をときめかせ――

 時には笑い声が漏れ、すすり泣く声すら聞こえるほどに、聞く者の心を揺れ動かしていたのだった。

 

「……フーッ。……スクールアイドル μ's ――それは、この音ノ木坂学院で生まれました」

「学校を廃校から救い……大会で優勝するまでに……」

「私達はその想いを受け継いで、今まで活動してきました……」

 

 彼女達の話は終盤に差し掛かり、まとめの部分へと到達する。

 一呼吸をしてクールダウンを済ませた雪穂と亜里沙は冷静な表情を取り戻し、改めて説明を始めた。

 見ている新入生も先輩達の優しく落ち着いた声色に、活動内容を説明された時の様な落ち着いた表情へと戻して話を聞いている。

 

「 μ's を中心とした、スクールアイドルの力によって、ラブライブ! はドーム大会が開かれるまでなり――」

「今年もまた、ドーム目指して、予選が開始されることになったのです」

 

 雪穂と亜里沙は、此処にはいない親友。隣の部屋に待機している後輩達へと想いを馳せ――

 輝かしい大空へと巣立っていった先輩達へ。

 産声をあげて眩しい青空を仰ぎ見ている新入生達へ。

 そして受け継いできた想いを、今度は託す立場になる自分達へ――。

 託された想いを胸に刻み込む様に、言葉を紡いでいたのだった。

 

「「――そして……」」

 

 彼女達は一瞬だけ、顔を見合わせて微笑みを交わすと、前を向いて声を揃えて言葉を紡ぐ。

 

「「 μ's の最後のライブは――」」

 

 この言葉を放った瞬間、彼女達は心の中で吹き出し笑いの感情に苛まれる。

 最後のライブ――確かに表現的には間違いではない。

 しかし、彼女達は知っている。自分達の言葉にした『最後のライブ』が『ファンの知る最後』のライブであることを――。

 とは言え、自分も知らない穂乃果達の『本当の意味での最後のライブ』の話などできる訳もない。

 周りも――ファンや学院のほとんどの生徒達も知らないのだから、最後のライブと言っても問題はない。

 だけど自分達は知っているから、心の中で付け加えた「みんなが知ってる物語の」と言う言葉に吹き出し笑いの感情を覚えていたのだろう。

 

 ここで一呼吸を挟み、彼女達は満面の笑みを浮かべながら――

 

「隣の部室に移動して、歓談をしながらでも話をしたいと思います」

「飲み物やお菓子もありますし、ライブ映像や衣装。先輩達の残していった活動日誌の一部も閲覧できますから、楽しんでいってください」

「もちろん私達への質問も受け付けますので、気軽に声をかけてもらえると嬉しいです、これで説明会を終了します……お疲れ様でした」

「お疲れ様でした」

「――お疲れ様でした。……それでは、中の方へどうぞ?」

 

 隣の部室への誘導を兼ねて説明会の終了を伝えたのだった。

 雪穂と亜里沙の労いの言葉と共に隣の部屋へと繋がる扉が開かれ、後輩達が労いの声をかけながら新入生達を中へと誘導する。その言葉に列になって中へと進む新入生達。

 彼女達の表情が晴れやかで、楽しそうで、充実している様に見える。

 隣の部屋へと進んでいく、そんな彼女達の姿を後ろから眺めていた雪穂は、軽く安堵のため息をついていた。

 すると彼女の肩を優しく叩く、小さな拳の感触を覚える。

 振り向くと、亜里沙が優しい微笑みを浮かべながら、部長の責務を労う様に軽く肩を叩いてくれていた。

 雪穂は亜里沙の優しさに感謝を含ませた笑顔を送り、自分もまた副部長の責務を労い彼女の肩を優しく叩いてあげる。

 2人はどちらからともなく手を止め、微笑みを交わすと軽くハイタッチをするのだった。

 そして亜里沙は雪穂に笑みを溢して頷くと、先に隣の部屋へと歩き出していた。

 

 雪穂は全員が隣の部屋へと入ったことを確認すると、ふと研究部の部室を一瞥する。

 姉達の思い出、自分達の思い出、後輩達の思い出。

 そんな全ての思い出と、色々な想い。そう言った目に見えないものを沢山詰め込んで見守ってきた部室。

 自分達はこれから――受け止めた先輩達から託された想いを、新しい子達へと託していくのだ。

 そう、あの扉の向こうには自分の知らない新しい未来が待っている。それは楽しみでもあり、緊張や不安でもある。

 まるで彼女には、ライブ直前のステージ袖に立つ様な気分。そんな風に感じていたのだろう。

 でも逃げない。お客さんは待っているのだから。自分で1歩を踏み出さなければ何も始まらないのだから。

 そう決意をして雪穂が歩みを進めようとした瞬間――

 彼女の背中を優しく押し出す、暖かな風が吹くのだった。

 それはきっと巣立っていった先輩達が背中を押してくれた優しい手。

 そう解釈した彼女は無意識に強張っていた肩の力が抜け、嬉しそうに微笑んだ。

 そんな包み込んでくれる暖かで柔らかな風を感じながら、新しい未来の始まりを迎えるであろう――

 新たな『みんなで叶える物語』の1ページ目を綴るべく、眩しい光の方へと歩き出すのであった。

 

♪♪♪

 

 ――こうして始まる、国立音ノ木坂学院アイドル研究部の新たな物語。

 しかし雪穂達『託す側』の生徒達も、最初から託すことを自覚できていた訳ではない。

 穂乃果を始めとする先輩達と共に歩み、先輩達からの『託された想い』をしっかりと受け止め、自分達で考え、考え、悩んで考えて――。

 自分達の信念を作り上げて成長してきたからこそ、後輩達へと想いを託すことができるのである。

 

 この物語は――時を巻戻すこと、雪穂達の入学式。まだ彼女達がスクールアイドルを始める前まで遡る。

 入学当初の雪穂達が穂乃果達と同じ時を刻み、様々な出会いや経験をして、沢山の想いに触れ。

 色々なことを自分達で考え、答えを導き出して進んでいき――

 後輩へ自分達の想いを託していける様になるまでの成長物語。

 そんな彼女達のスクールアイドル活動を、彼女達の活動日誌で読み進める――

 穂乃果達の新しい『みんなで叶える物語』であり、雪穂達の『みんなで夢みる歌作り』なのである。

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