★予選★
二十名一組で行われる予選。
バトルロイヤル形式で、一組から二名が選出される。
AからH組まであり、本選に出られるのは十六名ということ。
当初の説明では飛び道具は禁止とあったが、どうやらそれは銃火器や刃物に関連するものだけらしい。
虎煌拳などは問題なく使えるようで、一安心だ。
もちろん、気弾としての飛び道具が禁止であっても、それはそれでやりようはあるのだが。
俺はG組だが、気になる奴と言えば……。
あの柔術使いと拳法使いか。
それ以外は、まあ小粒だな。
*
「G組!本選へ進む二名の選手が確定しましたーっ」
会場にアナウンスが響き渡る。
目の前に倒れ伏すのは例の柔術使い。
しかし3D柔術とはまた、随分と珍しいものを見ることが出来た。
惜しむらくは、懐に入った時の捌きが甘かったな。
だが、これに腐ることなく修練を重ねれば、良い格闘家になることだろう。
同じ組の、拳法使いと思われる奴とは拳を合せる機会がなかった。
本選でまみえることを願うとするか。
*
全ての予選が終わり、対戦カードが確定した。
本選はトーナメント形式か。
俺は八戦目。
一回戦の相手は、名前長いな。
えーと。
エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。
F組で勝ち抜いた、西洋人形のような少女だ。
しかし見た目に騙されてはならない。
ただ一度だけだったが、合気投げのようなものを見せた。
あれは油断ならん。
なにより、強者の気配が漂っている。
うむ、楽しみだな!
★一回戦★
目の前に佇む少女ことマクダウェル。
姿こそ西洋人形然としているが、予選を勝ち抜いたことは当然。
内包する気配がただならぬものであると感じている。
「はじめ!」
開始コールが鳴るや、ギリギリ見極めることが出来たのは僥倖。
そう思えるほどのスピードで、一気に踏み込んできた。
「はあっ」
「ぬっ?」
少しでも対応が遅れていれば、自分の腹へ綺麗に入っていただろうボディブロー。
ガッと、とても少女とは思えない力が籠っていた。
上段払いが間に合ったので、そのまま雷神剛へ繋ぐ。
踏み込みアッパーを放つも、軽くバックステップで避けられた。
「ほう…」
向こうがこちらを驚いたように見ている。
一撃を防ぎ、すぐさま切り返したことに対する驚きかな。
どうやら、外見と内面の差が大きいタイプらしい。
始まってからの動きは堂に入っていたし、言葉遣いもそう。
なるほどな。
分かってはいたことだが、加減なんてしていられないようだ。
そう言えば何試合か前に、気弾を放ってる男が居たな。
ギャラリーは驚いていたが、それほど珍しいものでもなさそうだ。
使っても問題ないだろう。
「むっ」
気を高めていると、マクダウェルの目付きが変わる。
やはり、場数を踏んできた強者だな。
ならば遠慮は無用。
右手を腰元に引き絞り、気を集中。
この場で出せる全力をもって気弾を撃ち出した。
「虎煌拳!」
*
「貴様、なかなかやるじゃないか。惜しむらくは、これがただの試合でしかないことだが…」
そう言って嗤う。
可憐な少女に似合うような微笑、なんて生易しいものじゃない。
ある種の壮絶さが漂うような、そんな嗤い。
目の前の少女は、人ではないのかもしれない。
そんな感想が頭をよぎる。
荒唐無稽な考えだが、あり得ないことはない。
記憶にある、人の殻を破りかけた強者。
あるいは人の範疇を越えた存在の姿と重なった。
それは流石に想定外だったが、別段問題はない。
俺に出来ることは、己が力をただぶつけていくのみ。
どんな奴が相手でも、俺の手で倒してやる!
*
意気込んで挑んだは良いが、途中で少女は棄権を宣言。
何事かと訝しむ俺に、マクダウェルは言う。
「次の試合が良い肴になりそうなんでな。ここは退くことにした」
良く分からないが、棄権を宣言した以上試合は終わりだ。
若干の消化不良を抱えたまま、已む無く勝利を受け入れた。
「ふっ。消化不良と思うなら、最後まで残ることだ。ではな?」
そう言って少女は何の未練も残さず試合会場を去った。
いや、袖口で少年たちと楽しげに会話してる。
ふむ。
次の試合か…。
確か、デッキブラシを持った少女だったな。
桜咲刹那と言ったか。
なぜブラシを持ってるのかは知らんが、あの少女は剣士だったな。
それもかなり強い。
マクダウェルは間違いなく強者だった。
桜咲も、相当な強者であるのだろう。
★二回戦★
「この戦いでベスト4が決まります。はじめー!」
アナウンスがあったがすぐには仕掛けてこない。
様子見か。
ならば、こちらから動くとしよう。
「飛燕疾風脚!」
鋭い飛び蹴りを放つ。
当然の様に避けられるが、ラッシュをかけて行こう。
「虎咆、疾風拳!」
腕をグルンとまわして肘打ちしつつ、戻し捻りからの正拳突き。
これはデッキブラシでガードされた。
ふむ。
どうやら桜咲は気の遣い手であるようだ。
ただのデッキブラシでは有り得ない、この感触。
うむ、俄然燃えて来たぜ!
「両手突き!」
「猛威虎殺掌っ」
「暫烈拳ッ」
「くっ、斬岩剣!」
「斬空閃っ」
「神鳴流奥義…百烈桜華斬!!」
*
桜咲の剣士としての腕前、気の扱い方は素晴らしいものがある。
マクダウェルとは違った方向で、想定外だった。
「勝者、リョウ選手!これにてベスト4が出揃いましたー!」
しかし勝ったのは俺。
止めは天地覇煌拳。
一瞬の隙を付いて繰り出したのが上手く入ってくれた。
戦ってる間にどんどん精神が研ぎ澄まされていった、いい感覚だった。
実にいい試合だったよ。
だが、マクダウェルもそうだったが、完全な本気ではなかったようだ。
そこが惜しい。
機会があれば、全力で打ち合ってみたいものだ。
★準決勝★
相手はネギ・スプリングフィールドと言う少年。
しかし一回戦の様子は素晴らしいものだった。
相手の高畑と言う奴が繰り出す剛拳に対し、中国拳法のようなもので対抗。
最後には自ら突進しての一撃必殺。
燃えるな。
しかしあの剛拳をも越えてくるとは、何とも驚きだ。
ふむ。
「はじめ!」
試合開始の合図とともに目の前から掻き消える少年。
一回戦のマクダウェルと似たような技だな。
あっちより、若干甘いところがあるようだ。
「桜華槍衝、太公釣魚勢!!」
「極限…」
背後に回り、持っている杖のようなもので一撃と言う感じか。
だが残念。
見えていたら対処も容易い。
「必さぁーーっっつ!!」
極限虎咆。
踏み込みつつ、気を纏った拳を打ち上げる。
少年は、錐もみ回転しながら天高く吹っ飛んで行った。
*
「格闘とはまさしく己自身との戦いだ!勘違いしていた様だな!」
目の前には地に伏す少年。
どうにもキレがなかった。
目先のことに集中出来てなかったような。
それじゃダメだ。
相手にも失礼だしな。
ま、彼はまだ若い。
良い経験になっただろう。
★決勝★
「……まさか、相手が貴方になるとは……」
対戦相手の、クウネルがいきなり失礼なことを言う。
あの少年が決勝の相手として望まれていたのか。
何となく、そんな気がする。
だが、あの状態ではとてもとても。
次の機会を待つことだな。
それよりも、目の前のコイツ。
前の試合を見ていたが、どうにもおかしい。
実体がないかのような動き。
気になるな。
「それでは、決勝戦。開始!」
*
ふーむ。
何とも言い難い。
強いて言うなら、質量をもった幻影と言ったところか。
こういった手合いは、まとめて全部吹き飛ばすのが一番だな。
覇王翔吼拳を使わざるを得ない!
「ふふふ、どうしました?」
「覇王翔吼拳!」
煽ってくる相手に対し、真向からぶっ放す。
流石にまっすぐ放つと試合会場も吹っ飛ぶので、若干上方向に向けてな。
そして、クウネルは消失した。
まあ、恐らくどこかに本体が元気で居るのだろう。
「え、えーと?クウネル選手、いずこかへ吹き飛んでしまい、試合継続不可との判断です」
俺、優勝。
優勝賞金は一千万円か。
路銀の足しとしては十分だな。
おっと、マクダウェルとまた話をしておかないと…。
★後夜祭★
何やらデカブツが練り歩いている。
飛び道具で撃退すると言うアトラクションらしいが。
積極的に参加する訳じゃないが、偶々見かけたしな。
普通の相手じゃ試す訳にも行かない技でも、試してみようか。
ぬぅーーーっ
「覇王獅咬拳!!!」
デカブツは消滅した。
おお、流石は親父の最強技。
ゼロ・キャノンを吹き飛ばすだけのことはあるな!
お陰で気力をごっそり持って行かれたが、試すことが出来て良かった。
どこかで誰かが頭を掻き毟りながら吠えている気がしたが、まあ気のせいだろう。
プロローグ兼エピローグを書こうとして断念し、簡略版を書きました。
細部については、年内を目途に書きたいと思います。