まほら武道会に極限流   作:桜井信親

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Case1-1 予選 山下慶一

(まほろ武道会、か……)

 

リョウが武者修行の合間に、気紛れで訪れた学園都市。

折よく祭りの最中であり、少しばかりの息抜きとして散策していたところで気付いた催し物。

 

優勝賞金は一千万円と言う、大企業や財閥がスポンサーに付いていてもおかしくない規模の大会。

路銀の足しにあまりに過大であり、金に困ってる訳でもない。

 

通常であれば、いくら旅先で大会があろうとも誘われない限り参加することはない。

しかし、今回は特別。

通常とは異なる強者の気配が集中していており、吸い寄せられるように向かった先が武道会場だったのだ。

 

リョウは感じ取る。

老若男女、中には純粋な人ではないような気配まで。

これまで数多くの戦いを経験してきたリョウにとって、見た目が全てでないことは百も承知。

だが、流石に十歳前後の子供まで複数名居たのには驚きを隠せなかった。

観客だろうかと思ったものの、紛うこと無く選手である。

 

(──面白い)

 

来て間もないこの街には当然詳しくないが、いくらなんでもこれほど大規模な武道大会がいつもあるとは思えない。

リョウはこの偶然に感謝した。

 

もっとも、自分でも完全に偶然だと思ってはいるが、若干の違和感も感じている。

大会はともかく、これほどの規模の学園都市。

定住はしていなくとも、日本は故郷である。

多少なりとも噂になっていてもおかしくないのに、リョウが知ったのはこの地に立ち寄った時だ。

 

その辺が気にはなる。

とは言え、現時点で確認する術はない。

些末なことと一旦脇に置き、受付中である旨アナウンスに従い、受付へ向かう。

 

無事に受付を済ませ、しばらく待っていると間も無く会場の設営が完了すると言うアナウンスが流れた。

ギリギリセーフ。

せっかくやる気になったのに、受付に間に合わなかったなんて笑い話にもならない。

 

リョウは一息つき、選手や観客たちが開始を待つ空間の一角で、開始を待つのだった。

もっとも、実際はリョウが勝手に勘違いしているだけであり、受付はまだ完了していないのだが。

 

 

* * *

 

 

龍宮神社境内。

拝殿右手奥より入った先に、予選会の会場がある。

 

そこで、大々的に開催のアナウンスが響き渡っていた。

 

「──では、今大会の主催者より開会の挨拶を」

 

司会の朝倉和美より紹介されて出て来たのは、超鈴音。

麻帆良の最強頭脳と称される少女である。

 

この少女からも、ただならぬ気配をリョウは感じ取っていたが、それよりも…。

超が言った大会主催の理由に、ピクリと反応する。

 

(表の世界と裏の世界を問わず、か……)

 

普通に考えるなら、一般人の表社会と極道やマフィアなどの裏社会と言う区分だろうか。

現に、ストリートファイトが繰り広げられる場所は表の世界とは言わない。

 

しかしリョウは、もっと別の……。

例えばオロチやネスツと言った、もっと別の世界をイメージしていた。

 

(ありえなくはない、か)

 

一般には知られてなくとも、知る人ぞ知ると言う世界は幾らでもある。

興味本位で足を突っ込む奴も、少なからず居ることを知っているのだ。

 

そして、疑問は続く言葉で確信に変わった。

 

「飛び道具及び刃物の使用禁止!…そして、呪文詠唱の禁止!!」

 

刃物は分かる。

武道大会としては当然の措置だろう。

 

次に、飛び道具はグレー。

刃物と分けたと言うことは、武具を認めない訳ではないのだろう。

普通に考えれば弓矢や鉄砲等のことだが、リョウのような気を扱う者からすれば、気弾も飛び道具と呼ばれることもあり、気になるところである。

 

そして、呪文詠唱は完全にクロ。

表裏に関わらず、通常一般人が暮らす社会で呪文を詠唱する機会などないのだから。

 

リョウとて、そんなものに接する機会はまずない。

強いて挙げるとすれば、ベアール姉妹が扱っていたものが近いだろうか。

いずれにしろ、呑気に構えて良い大会ではないことが知れた。

 

また、会場の一部では周囲とは違ったざわめきが起こったこともリョウは感知している。

タイミングからして、呪文詠唱の禁止に反応したのは間違いない。

 

(一気にキナ臭くなってきたな)

 

そうなると、グレーとした飛び道具についても改めて考えなければならない。

しかし考えた所で判断し兼ねるのも事実。

 

リョウの扱う極限流は、気を纏うとしても基本的には徒手空拳。

気弾を放たなければ、差し当たり問題ないと結論付けた。

 

敢えて言うなら、気の力が認知されていないと言う恐れもある。

広まっているようで、本当のところは余り知られていないのが気の力なのだ。

 

その辺り、気に掛けなければとリョウは考えるが、認知されてないなら、むしろ気弾を自重すれば事足りる。

よって、大きな心配は必要ないはずである。

 

そうこうしてるうちに主催者・超の挨拶が終わり、司会者・朝倉からの詳細説明が始まっていた。

 

 

予選はくじ引きで決まった20名一組のグループで行われるバトルロイヤル。

 

「予選会終了ギリギリまで参加者を受け付けます!年齢性別資格制限一切なし」

 

「なんだと……?」

 

ここで、受付に関する勘違いに気付いた。

思わずガックリ。

良く分からない疲労感に苛まれるリョウだが、如何ともし難し。

 

それはことは知らんとばかりに、アナウンスは続く。

 

「──只今より、予選会を始めます!!」

 

 

* * *

 

 

まほら武道会予選会。

AからHまでの各グループにおいて、それぞれ20名がバトルロイヤル形式で戦う。

 

そして各グループより2名ずつ選出され、合計16名が翌日の本戦出場となる。

総勢160名の参加者から、本戦に出れるのは16名。

狭き門と捉えるかは人によるのだろうが、リョウにとっては些細なこと。

 

むしろ、過去にサウスタウンなどでストリートファイトに明け暮れていた頃は、よく絡まれたものだと懐かしく思っていた。

 

リョウの格闘家としての認知度が高まってからは、一対一の勝負がメインとなっていた。

しかし何かと物騒な大会の裏側では、そうも言っていられない場面に遭遇することも多々ある。

よって、この大会レベルは未知数だが、油断するべきではないと気を引き締めるのだった。

 

「では、揃ったグループより試合開始です!」

 

 

* * *

 

 

(……ふむ)

 

リョウは自分のグループが始まるまで少し間があった為、先に始まった試合を観戦していた。

 

観戦していたのはDグループ。

前年度ウルティマホラチャンピオンにして中武研部長の少女・古菲が、剣道部の辻部長を倒したシーン。

辻は強烈な気迫を木刀に乗せて振るったが、古の一撃が防具ごと辻を撃ち抜いた。

 

そこで観客や控えの選手から疑義が上がり、審判よりもたらされた回答から、銃火器や刃物以外は問題ない旨が示された。

あくまで常識の範囲だと解する周囲であるが、実際はそれらを使用する者たちが多く居る。

彼らに対する縛りであると言うことを、一部の者たちは察していた。

 

そしてリョウは、気弾の使用は問題ないと認識。

大会レベルについて若干の修正を行いつつ、気力の充足に努めていた。

 

 

* * *

 

 

「大変お待たせ致しました。まもなく第六試合、Gグループの試合を開始致しますッ」

 

アナウンスが響き渡る中、リョウは試合面の一角で瞑目して精神を研ぎ澄ましていた。

 

出るからには当然優勝を目指すが、まずは予選を勝ち抜かねばならない。

Gグループには、リョウが気になる相手が二名ばかりいるのだ。

 

一人は、その立ち振る舞いから見て、まず間違いなく拳法使い。

内気功に特化しているのか気が外に溢れ出てはないが、間違いなく扱えるだろう。

 

もう一人は、気の練りも中々で呼吸法も良くする模様。

さらに芯の通った立ち方・在り方から、恐らく柔術を使うであろう若い男。

 

この二人とはサシで遣り合ってみたい、そう思っていた。

 

とは言え、試合形式から考えればそれは不可能。

せめて悔いなく、消化しようと決めていた。

 

「では、試合開始!!」

 

「シッ」

 

合図と同時に一歩前に踏み込みつつ、風を切る勢いで正拳突きを放つ。

 

──龍閃拳。

 

それは極限流の技の一つであり、正面に向けた重い一撃である。

これを腹に受けた相手は、為す術なく周囲の二、三人を巻き込んで場外へ吹き飛んでしまった。

 

「「おおっ」」

 

「こ、これはっ!?道着を着た選手が、痛烈な一撃をぉぉーーっ!!」

 

この一撃に会場が湧き、アナウンスも相まって場の注目を集める。

観客が居る試合は珍しくはないが、ここまで煽られることも最近では滅多になかった。

心中で苦笑しつつ、あくまで目を向けるのは会場の相手のみ。

 

「はぁあっ」

 

「ッ」

 

突然、リョウの横合いから伸びてくる腕。

咄嗟に上段受けで攻撃を遮る。

 

が、相手は気にすることもなく、そのまま掴みに来る。

それもそのはず。

相手は先ほどリョウが注目していた、柔術使いの男だった。

 

彼の名は山下慶一。

3D柔術の使い手であり、リョウが見た通り呼吸法によって練度を上げることが出来る達人でもある。

 

(しくじったな。掴まれると怖いかも知れん)

 

山下はリョウの腕を手繰り、鋭く道着の襟を掴みに行った。

掴むことさえ出来れば、絶対の自信を持って技を放つことが出来るのだから。

 

しかし、それは叶わない。

リョウはその腕を逆手に取って、相手の脇から胴の下に身体を滑り込ませた。

 

──谷落とし。

 

そのまま山下の身体ごと、勢いよく倒れ込んで地面に叩き付ける。

 

「ぐぼぁっ」

 

素早い動きと強烈な技に、山下は受け身を取ることも敵わず強かに背中を打った。

勿論、リョウも多少手を入れて呼吸が止まるほどのダメージは受けないよう配慮したが。

 

柔術使いに、柔道に起源を持つ技で返す。

皮肉な結果となったが、結果として山下はこれ以上動けず、KO扱いとなってしまった。

 

傍から見れば、リョウがあっさりと山下を降したように見える。

しかし山下の手繰り寄せの技術は本物であり、リョウとしても反射的に谷落としと言う、危険な技をかけてしまっていた。

 

その証拠に、山下以外の者は全て打撃一発で決めている。

 

「Gグループ、本戦出場者が決定しましたーっ!」

 

そして、リョウが気になって居たもう一人の拳法使い・大豪院ポチは完全に反対側に居て対戦は叶わずに終わる。

Gグループの勝者はリョウ、そして大豪院ポチとなった。

 

 

* * *

 

 

やがて、全ての予選試合が終了。

本戦は明朝八時より、龍宮神社の特別会場で開催される旨が通知された。

 

そして、トーナメント表が発表される。

 

第一試合 佐倉愛衣 対 村上小太郎

第二試合 大豪院ポチ 対 クウネル・サンダース

第三試合 長瀬楓 対 中村達也

第四試合 龍宮真名 対 古菲

第五試合 田中 対 高音・D・グッドマン

第六試合 タカミチ・T・高畑 対 ネギ・スプリングフィールド

第七試合 神楽坂明日菜 対 桜咲刹那

第八試合 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル 対 リョウ・サカザキ

 

大会委員会による厳正な抽選の結果との触れ込みだが、果たしてそれは本当やら?

気になる者も中には居たが、ほとんどの者は気にせず試合表にのみ注目している。

 

(第八試合……。大豪院との試合は厳しそうだな)

 

リョウは残った面子から鑑みて、本戦は予選とは比べ物にならない程厳しいものになると予感していた。

そして、同時に楽しみであるとも……。

 

「よぉーし、明日も張り切ってやるか!」

 

本戦の試合会場と時間を再度確認し、リョウは龍宮神社を後にして夜になっても煌々と照らされた街へと消えて行った。

 

 




もう一個の方が途中で詰まったので、気分転換に投下。

山下君については、もっと掘り下げようと思いましたが色々と難しくて断念無念。
情報少なすぎぃーっ

次回の更新は、年度内を目標にしております。
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