投稿時間は零時に行います。
俺が転移した場所ははじまりの街の中央広場だった。
俺だけでなく、他のプレイヤーも次々と転移してきたようだ。
「……どういうことだ。」
瞬く間に中央広場が埋まって行く。
「全プレイヤーが転移しているのか?」
俺の言葉は誰にも届くことはなかった。
そして確かめられることもないだろう。
プレイヤーからは困惑の声が広がる。
「キークエやってたのに。」「レベリングしてたんだがなぁ……。」「ログアウトが出来ない。」といった声が聞こえてくる。
声の一つに俺は本当かどうか確かめるためメインメニュー中のログアウトボタンを探したが見つからなかった。
「バグ……にしては何かが変だ。いったい何が起こるんだ?」
そのとき、上空にWarningの文字が浮かび上がったかと思うとSystem Announcementの文字とともに空を埋め尽くし、血液を思わせる赤い液体がローブを着用した十メートルくらいの人形みたいなものを形成した。
その人形もどきはこう言った。
「プレイヤーの諸君、私の世界へようこそ。
私の名前は茅場晶彦。今やこの世界をコントロールできる、唯一の存在だ。
プレイヤー諸君の中には、ログアウトボタンがない事に気付いている者もいるだろう。
これはバグではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である。
よって諸君らによる自発的なログアウトは一切できない。
また、外部によるナーヴギアの強制ログアウトも出来ない。
もしも外部の人間の手によってナーヴギアが停止、あるいは取り外しが行われた場合、ナーヴギアの信号素子が発する高出力マイクロウェーブが、諸君らの脳を破壊し、生命活動を停止させる。
しかし、充分に留意してもらいたい。
今後ゲームにおいて、あらゆる蘇生手段は機能しない。HPがゼロになった瞬間、諸君らの仮想体は永久に消滅し、同時に諸君らの脳は、ナーヴギアによって破壊される。
諸君らが解放される条件はただ一つ……このゲームをクリアすれば良い。
現在君達がいるのはアインクラッドの最下層、第一層である。
各フロアの迷宮区を攻略してフロアボスを倒せば上の階へ進める。
第百層にいる最終ボスを倒せばクリアだ。
それでは最後に、諸君のアイテムストレージに私からのささやかなプレゼントが用意してある。
確認してくれたまえ。」
「プレゼント……?」
ここにいる多くのプレイヤーがこう思っただろう。
『嫌な予感がする。』と
アイテムストレージを見てオブジェクト化する。
「これは鏡か。」
そこに写っているのは現実の俺と似てはいるが違うこの世界での顔。
ある程度似るように設定したから当然か。
俺は恰好良くもないが不細工というわけでもない。
しかし身体が突然発光したかと思うと同時に周りのプレイヤーにも同じ現象が起こった。
「眩しい……!!」
光が収まり目を開けるとそこはさっきと同じはじまりの街の中央広場だ。どうやら転移ではないようだ。
だが周りの様子がおかしい。全てのプレイヤーの見た目が変わっていたのだ。
中には女子から男子に変わっているプレイヤーもいた。
「可哀想に……。南無阿弥陀仏。」
いい加減にお経を唱えたところではたと気が付いた。
「姿が変わっているのか?」
手鏡を見る。
そこには現実の俺の顔が写っていた。
「ふむ……。」
別に困ることはない。異性を引っ掛ける気はないし、普通に会話できるならどうでも良い事だ。
体型も現実の細い体型になっていた。
それはそうと情報収集だ。聞き耳を立てよう。
聞き耳を立てた結果、身体をペタペタ触ったのが原因という声が耳に入った。
確かにそれっぽいが……。
「現実であることを認識させるためか。まあどうでもいい。」
そして茅場晶彦は
「それではプレイヤー諸君、健闘を祈る。」
この言葉を最後に消えた。
どうやら茅場晶彦によるこの世界のチュートリアルが終わったようだ。
周りが煩いが俺はいたって冷静だった。
別に驚くほどのことでもない。
ただやることが増えただけだ。
「生き残る……か。」
思いつくことはあれど生き残る確信を俺は持てなかった。