それはある日のことだった。
葵はなんか用事があったらしく珍しく一人で帰ろうと思ったその時、茜と修が校門近くで待ち合わせをして帰っていくのが見えた。せっかくなので二人と合流しようと少し小走りで向かおうとした時ちょうど俺と茜&修の間に一人の女の子がいてその子が茜と修を見ながらただならぬ雰囲気なのがわかった。制服の色を見る限り、二年生つまり修のクラスメイトだろう。
何事かと思って気づかれないよう彼女を見てると口がボソボソ動いているのがわかった、彼女には悪いが能力を使い聴力を強化し何を言っているのかを確認すると…
「あの赤毛の女の子は誰!もしかして、彼女さんとかかな?もしそうだったらどうしよう〜」
という声が聞こえた。聞いてしまったからにはなんかしなきゃいけないよな。
「修のやつ、いつの間に彼女作ったんだろ〜。俺にも紹介しろよー」
わざとらしい棒読みかつ大声で叫ぶとさっきの彼女が俺に気づいたのか走ってきた。
「陽さん!」
「ん?なんだ?」
「あの、私、櫻田くんの…あっ、修くんのクラスメイトの佐藤花です。やっぱりあの赤毛の女の子は修くんの彼女さんなんでしょうか?」
「さあな?今までそんなことなかったからなー、まあ彼女かもしれないな」
「そんな!」
「てことで、追うか?」
「あっ、はい」
てことで俺たちは修と茜の後を追いはじめた。それにしても花ちゃん。尾行下手すぎだろ!
「花ちゃん、花ちゃん」
「はい!」
後ろから急に呼ばれたためか背筋を最高まで伸ばして驚き俺の方に振り向いた。
「あっ、驚かして悪かった。でもさ、尾行をもっとマシに出来ないか?」
「マシにとは?」
「そんなに電信柱一本一本に隠れなくていい。逆に不自然だ。平然を装え」
「は、はい!……あの、なんでそんなに尾行のこと詳しいんですか?」
「それなら、俺たちは今まで何回も訓練されてるからな」
「尾行のですか!?」
「逆だ。尾行を察知する訓練だ。俺たちは王族だ。尾行とかしてくる輩は少なからずいるからな。特に妹たちは能力があるといっても女だしな。誘拐には持ってこいだな。まあ、そういうこともあって尾行を察知するには尾行が上手い奴の手法を知らなきゃいけない。そういうことで俺は尾行についてくわしい」
「な、なるほど」
「てことで、続行するぞ」
「あっ、あの!」
「なんだ?」
「それって彼女さんとかにも被害が及ぶことってあるんですか?」
「…俺たち兄弟はまだ恋人とかが出来たことはないからわからないが0とは言い切れない。どうした?修を諦めるか?」
俺は結構口調で言った。王族と付き合うとはそういうことだ。もちろんできる限り普通に近い恋愛が出来るように親父もお袋もサポートはするだろう。俺もするつもりだ。だが、俺たちが王族ということは切っても切れない。本気で付き合いたいならそれぐらい覚悟してもらわないと困る。
「…ちょっとびっくりしました。王家の皆さんがそんな辛いことがあるなんて知りませんでした。でも!私はそんなことで櫻田くんを諦めたくありません」
かなり、気迫のこもった思いが俺に伝わった。ふふ、気に入った。修よ、お兄ちゃん気に入ったわこの子。
「そうか」
「あっ、その前に櫻田くんに彼女がいるかもしれないんですけど…」
あっ、そういえば茜を修の彼女と勘違いして追いかけて来たんだっけ?
ていうか、この話ししてる間に見失ったし…
「はあ、仕方ねえ」
俺は能力を発動させて聴力と嗅覚を強化した。そして、茜と修が何処にいるか大体の位置をつかんだ。
「よし、いくぞ花ちゃん」
「えっ、あっ、はい」
俺は小走りで先ほど捉えた茜たちを追い、その後ろを同じペースで花ちゃんが付いてきた。そして、二人の姿を見つけた。しかもちょうど茜の要望で監視カメラのない路地裏に入っていった。
「よし、花ちゃん。告白してこい!」
「えっ!?あっ、あの。えっ!その…」
「大丈夫だから」
「でも、彼女さんが…」
「あいつは彼女じゃないから安心しろ。大丈夫。花ちゃんの想いは必ず届く。第一王子櫻田陽が約束する」
「……わかりました。行ってきます」
そうして、俺は花ちゃんを見送り家に帰った。帰った後修たちも帰ってきてなんか知らんが修に礼を言われた。たぶん、花ちゃんが何かしら言ったんだろうが気にしなくていいのに。