ある日、俺たちに家族が加わった。名前はボルシチ。光と茜が買い物の途中で捨てられてるこの子を発見し拾ったのが始まりらしい。
お気に入りの場所は茜の胸の上らしい。
で、その猫なんだが少し困ったことに今、めちゃくちゃ俺に怯えてる。まあ、今に始まったことでもない。というか、俺に対するこの反応は動物全般共通する。たぶん、理由は俺の能力
個人的には、どんな動物とも友達的な立ち位置で接したいんだがそうもいかない。動物園に行こうものならもう園内大パニックになるのは間違いない。てか、一回なった。
ちなみに今は俺はリビングのソファーに座っていてボルシチはリビングと廊下の少し開いてる扉の間から軽く震えながら俺を見ている。
「はあ、そこまで怯えなくていいだろ」
こうもずっと怯えられててはいくら我が家とはいえ落ち着けない。逆に軽く脅して完全服従させることなんて簡単なんだがそれでは今度はボルシチが休めないしな。どうしたものか。
「陽ちゃん。どうしたの?」
この状況を作った元凶の一人茜が俺の座りに座った。
「あれだ」
俺は見ずに親指をボルシチの方に向けた。
「あーあれね。ごめんね陽ちゃん。やっぱり飼うの嫌だった?」
「いや、そうじゃなくて飼うのはいいんだ。でも、あれじゃいつか逃げるぞ」
「うーん。じゃあ、どうしよう」
「はあ、光、栞、ちょっと来てくれ」
「何、陽ちゃん」
「どうしたの?陽兄様」
後ろのファミリーテーブルで遊んでいた光と栞を呼び出した。
「ボルシチ、説得して来てくれ。喋れる栞と比較的懐いてる茜と光なら大丈夫だろ。それでダメなら出来るだけボルシチの前に姿を現さないようにするから」
「わかった。茜ちゃん、栞。陽ちゃんのためにも頑張ろうね」
「うん」
「はい」
そうして、早速三人はボルシチを説得し始めてくれた。まあ、あの態度があの態度だし時間がかかるな。
そんな時、茜が座ってたスペースに奏が座って来た。
「相変わらず動物には恐れられるのねお兄様は」
「まあな。てか、どうしたらそのイメージ消えるんだ?」
「もう言葉じゃなくて態度で示すしかないじゃない。なんか、優しさ溢れる行動したら?」
「…わかった。じゃあ、手伝ってくれ」
「いいけど、何か生成するのは嫌よ」
「お前に生成頼むってことは何か奢れって言ってるようなもんだろ。誰がんなこと妹に頼むかよ。ちげーよほら」
俺は自分の膝の上をパンパンと叩いた。
「膝がどうしたの?」
「乗れ」
「はあ!?」
「昔よくしてただろ、これすれば優しい人アピールできるだろ」
「嫌よ、恥ずかしい!てか、そんなの猫相手に効くわけないでしょ!」
「なんだよわかんねえだろ。それと、生成以外なら手伝うって言っただろ。1分前の約束をお前は忘れるのか?」
「誰が、そんな子供みたいなお願い聞くものですか!」
「俺から言わせればお前はまだまだ子供だよ」
「一つしか違わないでしょ!」
「そうやってすぐに喚くのが子供だって言ってんだよ」
「なんですって!」
どんどん奏がヒートアップしていく。バカがそういう所がまだまだ子供なんだよ。外面はコーティング出来てもこういう内面をよくしなきゃどうにもなんないだろう。そういう所で茜とか葵に世論調査で負けるんだよ。
「落ち着け奏、俺が悪かった。もう乗れとは言わないから」
「ふん」
はあ、なんとか落ち着いたか?それにしても少しぐらい付き合ってくれてもいいだろう。昔は茜と葵の三人で俺の膝の上取り合ってたくせに。
「はあ」
俺は大きくため息をついた。あれ?てか何の話ししてたんだっけ?
「あの、陽ちゃん」
「ん?どうした光?」
「ボルシチ、今のかなちゃんとのやり取りでさらに怖がってもう今日は説得無理そうなんだけど…」
「あっ、しまった」
ちくしょー、ボルシチが俺に懐くのはもっともっと先になりそうだ。