異世界ミリオタ転生記   作:日本武尊

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第三十八話 どこの世界でも賊の類は変わらんな

 

 

 

 

 シキの後に付いて行ってしばらく森の中を走っていると、シキが茂みの前でしゃがみ込んで止まる。

 

「シキ。どうした?」

 

「……」

 

 シキは息を呑み、ジッと前を見ている。

 

「この先です」

 

「シキ?」

 

 震える声で伝えるシキの姿に俺達は一抹の不安を抱き、しゃがみ込んで草木の間から覗き込む。

 

「っ!」

 

 そこには衝撃の光景が広がっていた。

 

 

 

 そこにはいくつもの馬車が破壊されて、積み込まれていた荷物が辺り一面に散乱していた。

 その中には惨殺された男女の遺体が倒れていた。

 

 その場所から俺達が潜んでいる茂みは離れているが、それでも生臭く焦げくさい臭いが鼻腔を刺激する。

 

 その現場には身体の一部に防具を身に纏い斧や槍、剣と言った武器を持つ男達が辺りを物色している。

 

(山賊か?)

 

 見た目と状況からすれば、男達の正体は恐らく山賊だろう。

 

 差し詰め襲われたのは商人の馬車か。

 

(皆殺しか……)

 

 見える範囲だけでもかなりの人数が殺されている。それもかなり残忍なやり方で。

 立っている人間は山賊だけだ。

 

 ギリッと無意識に歯軋りを立てる。

 

「こいつは……」

 

「……」

 

 すると士郎は怒りを含んだ声を漏らす。隣ではエレナがハイライトの消えた目で見つめてた。

 

 

「――――!!」

 

 すると山賊の一人が声を上げると、他の山賊達が一箇所に集まり出した。

 

 俺は五感強化スキルを発動させて視覚と聴覚を強化する。

 

『へへへ。男やババァばかりでガッカリするところだったが、こんな上物が隠れていたとはな』

 

『こいつは予想外の収穫だな!』

 

『……い、いやっ』

 

 男達の話し声がする中で怯えた様子の少女の声が強化された耳の中に入る。

 

 周りを囲う山賊の隙間から、表情に絶望の色を浮かべる少女の姿が一瞬だけ見えた。

 

(クズがぁ……)

 

 これから行われるであろう行為に俺は腹が煮えくり返る。

 

『っ!セラに、手を出すな!』

 

 すると近くで血だらけで倒れていた男性が立ち上がり、近くに落ちていた剣を拾い上げて山賊に切りかかる。

 

 しかし山賊の一人が振り返り際に斧を振り上げて男性の手から剣を弾き飛ばすと、そのまま男性に斧を振り下ろして身体を切り裂く。

 

『っ!』

 

『あ、あぁ……』

 

 切りつけられた男性は血を噴き出して倒れると、山賊たちは手にしている武器で男性を滅多打ちにする。

 その光景を目にした少女は目を見開き、呆然となる。

 

「っ!」

 

 その光景に俺は絶句し、歯噛みする。

 

『この野郎、生きていやがったか!』

 

『手間取らせやがって!』

 

 山賊は男性だった物に近付くと、容赦なく蹴り付けて転がす。

 

『だが、これで邪魔者は居ない。たっぷりと楽しもうぜ』

 

 山賊たちは憎たらしい笑みを浮かべて少女の元に向かう。

 

『っ……!っ……!』

 

 少女は逃げようとするも恐怖のあまり腰が抜けてか立ち上がる事ができない。

 

 そして男達は少女に群がり、直後に少女の悲鳴と共に布を切り裂く音がする。

 

 

「……」

 

 俺の中で感情が冷え込み、M14のセーフティーを外す。

 

「恭祐」

 

「何だ?」

 

「俺とエレナが行く。援護を頼むぞ」

 

「……」

 

 士郎はPLSのセーフティーを外し、エレナはHK416Cのハンドガード下部に手を添える。

 

「……分かった」

 

「えっ!?」

 

 なんでもなく普通に言う恭祐達にシキは驚く。

 

「ま、まさか、山賊を?」

 

「放って置く訳にはいかないからな」

 

「で、でも、殺すことは」

 

 シキは戸惑いの色を表情に浮かべている。

 

 まぁ無理も無い。これから相手にするのはいつもの魔物ではない。クソ野郎だが、相手は人間だ。

 

「シキ。別に無理して付いてくる必要は無い。車を取りにいってくれ。必要になる」

 

「……」

 

 シキは戸惑いながらも静かに茂みからはみ出ないぐらい高さまで立ち上がって元来た道へと戻る。

 

「……」 

 

 俺は士郎達に軽く頷くと、二人も茂みからはみ出さないぐらいまでの高さまで立ち上がって迂回しながら山賊に接近する。

 

「……」

 

 俺はその場に伏せて茂み横の開けた場所に匍匐で移動し、M14に装着しているバイポッド展開させて伏射の姿勢を取る。

 

「……」

 

 マガジンと挿入口付近を左手で掴むようにして銃本体を保持し、スコープを覗き込んでレティクルを山賊の一人の頭に重ねて狙いを定める。

 

 これから人を殺す。以前の俺なら躊躇する所だが……もう躊躇しない。

 

 

 それに、あんなクソ野郎共を殺すのに躊躇う理由があるか?

 

 

「……くたばれクソッタレ」

 

 ボソッと呟き、引き金を引く。

 

 ダァンッ!! と乾いた音と共に弾丸が放たれ、狂いなく山賊の頭を側面から撃ち抜き、反対側が弾けて中身と共に血飛沫を出して男は横へと倒れる。

 

 突然の銃声と仲間の一人が倒れると、何が起こったのか分からず少女に手を掛けていて呆然としている山賊たちだったが、俺はすぐさま他の目標に狙いを定めて容赦なく引き金を引き、銃声と共に弾丸が放たれて山賊の一人の頭を撃ち抜く。

 

 二回目の銃声でようやく山賊たちは我に帰り、慌てふためいて逃げようとするが、時既に遅し。

 

「逃がすか」

 

 俺は次の目標に狙いを定めて引き金を引き、更にもう一人の右脇腹少し上を撃ち抜いた。

 

 すぐに隣の山賊に狙いを定めて引金を引き、四人目も後ろから右脇腹上を撃ち抜く。

 

 銃声がする度に仲間が死んでいく。その光景に山賊たちは混乱の極みに達して、発狂しながらも森の奥へと逃げようとする。

 

「……」

 

 森の奥地に逃げようとする山賊を俺は逃がさず狙いを定めて引き金を引き、山賊の頭を撃ち抜く。

 

 

 直後迂回していた士郎が茂みからPLSを構えて射撃を開始し、放たれた弾丸が逃げようとしている山賊の身体を撃ち抜く。

 

 その近くでは茂みからエレナがHK416Cをフルオートで射撃を行い、山賊たちを撃ち抜いていく。

 

 ある程度山賊たちを撃った後、HK416Cを背中に背負って跳び出し、両脇のホルスターから銃剣付きUSPを取り出して前に向け、乱射しながら接近する。

 

 しかし乱射していると言っても、当てずっぽうではなく、正確な射撃で山賊を一人一人頭か左胸、左右脇腹上に弾丸を当てて撃ち抜いている。

 

 山賊の一人が雄叫びを上げて古びた剣を横へと振るってエレナに襲い掛かろうとしたが、彼女は姿勢を低くしつつ前へと跳び出し、山賊の攻撃をかわしてその脇を通り過ぎる際に右脚を銃剣で切り裂く。

 山賊が激痛の余りその場に膝を着くと、直後にエレナは後ろに振り向き、その際に右手に持つ銃剣付きUSPを山賊に向けて引金を引き、銃声と共に放たれた弾丸が後頭部から貫通する。

 

 すると彼女の後ろから二人の山賊が襲い掛かろうとしたが、士郎が片方の山賊に狙いを定めて引金を連続して引き、数回の銃声と共に放たれた数発の弾丸が山賊の身体を撃ち貫く。

 

 エレナはすぐさま立ち上がると近付いてくる山賊に逆に近付き、一瞬戸惑った山賊の首目掛けてUSPを振るい、山賊の首を銃剣で切り裂く。

 

 すぐさま足が竦んで動きを止めている山賊にエレナはUSPを向けて引金を躊躇無く引き、頭を弾丸が貫く。

 

「……」

 

 彼女はUSPを勢いよく振るって銃剣に付着した血を振り払うと、冷たい視線を生き残った山賊に向ける。

 

 睨みつけられた山賊は足を竦ませるが、直後に茂みから出てきた士郎がPLSの銃口を向け、引金を連続して引く。

 

 放たれた弾丸は生き残った山賊の身体を貫き、その命を刈り取った。

 

 

「うわぉ……」

 

 その光景を見た俺は思わず声を漏らす。

 

 確かに士郎の言う通り、エレナの映画や漫画さながらの動きだな。

 

 内心呟きながらマガジンキャッチレバーを押しながら弾が残っているマガジンを外し、ダンプポーチに放り込んでマガジンポーチよりマガジンを取り出して前端を引っ掛けながら挿し込む。

 

 周囲に誰もいない事を確認して立ち上がり、M14を構えたまま茂みから出る。

 

「……」

 

 しかし冷静になって見渡すと、改めてそこがどれだけ悲惨な状態かを確認する。

 

(ヒドイな)

 

 男女の遺体やその仲間入りを果たした山賊の遺体に馬の死骸が辺り一面に倒れており、泥と血が入り混じって変色していた。

 

(もう少し……もう少し早く気付いていれば、状況は変わっていたのだろうか)

 

 いや、例え早く気付いたとしても、被害が小さくなるだけで結果に殆ど変わりは無いだろう。

 何よりもう過ぎた事なのだ。たられば話をしたところで結果が変わることは無い。

 

 何より、シキが居なければ気付くことも無かっただろうに。それで状況がどうこう言うのはあまりにも筋違いか。

 

「……」

 

 胸中で様々な感情が入り乱れて、何とも言えなかった。

 

「士郎、エレナ」

 

 俺は周囲を警戒しながらマガジンを交換している士郎とエレナの元へと向かう。

 

「大丈夫か?」

 

「あぁ」

 

「はい」

 

 士郎とエレナは一言返して頷く。

 

 見た感じ、酷く疲弊しているって感じじゃないな。

 

「……」

 

 そんな状態の中、士郎は少女の元に近付くと、少女は緊張の糸が切れたのか気を失って倒れていた。

 

 着ていた物は全て強引に剥ぎ取られていたが、暴行の跡は見られなかったし、やられた跡も無い。

 

 しかし何かで切ったのか、左頬には大きな切り傷が出来ていた。

 

「生存者は……この子だけか?」

 

「恐らく。まだ何とも言えないが」 

 

「……」

 

 俺はメニュー画面を開いて迷彩服3型の上着を出すと、少女の身体の上から被せて抱え上げる。

 

「恭祐は他の生存者を探してくれ」

 

「士郎はどうする?」

 

「俺は、ちょっと用事がある」

 

 と、士郎は指の骨を鳴らしながら、腰が抜けている山賊の生き残りを睨み付ける。

 

「……やりすぎるなよ」

 

「分かっている。エレナ」

 

「うん」

 

 そう言うと二人はその山賊の生き残りの元へと向かう。

 

「……」

 

 俺は周囲を警戒しながら少女を安全な場所に運び、その後生存者の確認に入った。

 

 

 

 


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