ドーナッツの思いつき   作:ドーナッツ

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続くかな?


ヨルムンガンドープロローグー

 

お前は聞いたことがあるか────────────────?

 

 

 

 

 

 

 

人間大の最終兵器(HUMAN-SIZE-Ultimate weapon)を────────────。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その者、この世の人体を超越し。

その者、人の闇に潜み。

その者、刃を研ぎ澄ます。

 

 

その者、世界に受け居られぬ怪物。

 

 

 

世界は戦禍のただなか現れた、赤い人影を標的に捉えた。

人影は夕日を背に一振りの刀を振るう。

その周りには数々の死体。真っ二つの物もあれば裂傷ですむものもある。

 

ただ一つの例外を除き致命傷の兵。

息はない。すでに死んでいる。

その数、ざっと2000。

無造作に転がした人間だった()

それはタンパク質と血という水分でできた水風船。むろん、少量の金属も含まれる。

人影には死んだ人間に興味はない。

目に見えるものは赤い戦場。

夕日は地平線に沈まずただただ光を照らす。

紅い日と赤い戦場。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まさに人間兵器・・・・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

**************************

 

ここは旧ノルウェー、今は新ソ連共和国。大都市コル―スター。世界でも割と高い方のビル群のひとつ。

ほの暗い部屋の中、ウィスキーの瓶と氷の入ったグラス。

ある一人の男、ビジネスネーム[キルクス]。本名ジョージ・ヒュルクス。

彼のビジネスは武器を売ること。

所謂・・・・・・武器商人。

けっして「ウェルカム」と言う謎マントではない。

そう、なまっちょろい武器を売る商人はない。

彼の手かげるビジネス相手は、()

ライフル?マシンガン?RPG?違う。

彼が主に売っているのは戦車、ヘリ、そして人間(●●)

売るって言っても仲介人だ。少年兵などの下衆がやることなどではない。

この業界は信用と質と価格がすべて。

質が悪い商品など売っても信用がなくなり売れなくなるだけ。

綺麗事なしに生きるには金が必要。

顧客無くして金は入ってこないのだ。

しかし、幸いに彼のビジネスは成功していると言える。

 

 

そんな彼が恐れるもの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

国際的武器運送会社HCLI社。

 

ビジネスライバルとして名をあげる『海運の巨人』率いる武器商人一家。

子会社として民間軍事企業を保有しており、その社員は特殊部隊出身が多い。

そして───────────

 

 

「なあ・・・」

「何でしょうボス」

「お前は人間大の兵器を知っているか?」

 

キルクスはとくとくとグラスに注がれたウィスキーをちびちび煽りながら、側近である屈強な男に尋ねる。

 

「ボス、そんな安物でなくもっと良い酒を・・・・・・」

「俺はこれが好きだからいいんだ。まったく、酒ぐらい選ばせろ・・・・」

 

納得してない男と愚痴るキルクス。アルコールがまわっている証拠だ。

 

「それで、お前は人間大の兵器を知っているか?」

「・・・・・・そうですね、サイボークとかの類ですか?」

「そう、サイボーグ、パワードスーツ。人間と機械の共存。これらはそのうちに人間大の兵器として売られる」

「はあ・・・」

 

持っていたグラスを大きく傾けウィスキーを飲み干す。

さらに、机に叩き付けた。

 

「なら、人間大の最終兵器を知っているか?」

 

再びウィスキーを注ぎながらキルクスは男に問をなげた。

 

「・・・?先程とはどう違うのです?」

 

男にとっての違いは最終がついているかついていないかだ。

なみなみと注がれたグラスをゆらゆら揺らし面白そうに口を歪ませたキルクスはグラスを持ったまま外の景色に近寄る。

眼下にある光の集合体は大都市と言っても控えめの量だが、部屋も暗いせいで際立って見える。

 

「残念ながら、サイボークの類ではない。そもそも機械でもない」

「なら、その兵器はなんですか?」

「慌てんなって。・・・ふぅ。そう、お前の考えるように機械でない兵器は基本無い。しかし、例外はある」

「・・・・・・・・・」

「この人間大の最終兵器は通称『デュポン』と呼ばれていてな、この道やってると一回は聞く単語だ」

 

男にも聞き覚えがあったみたいでしきりにうなずきながら社長の話に耳を傾ける。

話してる間にもウィスキーでのどを潤す。

 

「お前も知っての通り、デュポンはギリシャ神話に出てくる兵器なんだが・・・俺の言う『デュポン』はある人間を指す」

「人間なのに人間大の最終兵器・・・?」

「ああ。こいつは人間だが人間ではない。たった一人の人間が2000の先鋭兵隊を殲滅できると思うか?」

「それは不可能じゃないのか・・・!?」

 

男の背中には冷や汗が流れ出すがキルクスは酔った顔の赤さで、しかしその目は真剣だった。

 

「記憶にないか?この旧ノルウェーの戦場が血に染まった紅い日。そいつは一振りのカタナという昔の日本が持っていた武器だけで戦う不思議な奴」

「まさか・・・」

「その一人の人間は赤くなってきた夕方に現れ、夕日の沈まぬうちに殲滅しつくした、たった一人の日本人」

「平和ボケした日本人がやったのか!?」

 

男にとっては驚きの連続であった。男の発言から読みとれるが、今まで下と思っていた人種が自分以上の戦闘能力を持ち、なおかつ自分じゃ絶対に勝てないような人物だと聞こえる。

キルクスはいつの間にか部屋中央の机に近づいており、グラスをコトっと置くと男の方を向く。

 

「いいか?こいつに勝つ方法は二つある」

「勝てるのですか!?」

「いや、正確には違うが・・・まあいい。その方法、一つ目は闘わないこと」

「・・・は?」

「逃げるが勝ちともいう。そもそも闘わないことが勝ちなのだよ」

 

あっけにとられた男は呆けた顔でキルクスを注視する。

そのキルクスの顔はふざけてる様子などないが。

 

「おいおい、なんて顔してやがる。そんな顔じゃ嘗められて終わりだぞ?」

「いや、ボス・・・今の回答に納得がいかないのですが・・・」

「命あったら勝ちなんだよ。そいつに狙われて死ななかった奴はいない」

 

ゴ○ゴではない。

 

「そして二つ目」

「はあ・・・」

 

男はやはり納得のしない表情であらぬところを見てたが、やがて話を続けるキルクスに目を向ける。

そのキルクスはというとすっきりした表情で話を繋げた。

 

「核」

「・・・は?」

「いや、だから核」

 

ついに言葉を失った男を放って両手をあげやれやれと首を振り話を続けるキルクス。

 

「まったくまいっちゃうねぇ。一人の人間に核むけるなんざ。どこまで過激なんだよ」

「・・・・・・」

「こいつにミサイルはきかない。どういう原理かは分からんが武器で落とせるから。

こいつに戦車はきかない。何故なら照準を合わせる前に武器で墜ちるから。

こいつに戦闘機はきかない。攻撃される前に武器で墜落させるから。

こいつに武器はきかない。ただ一つの例外を除いて、な」

 

でたらめだ。そいつは人間ではない。

男の顔にはありありと見て取れる感情。

恐怖と畏怖。

 

「まさしくそんな人間が居たら・・・」

「実際いるけどな。・・・これが人科であるが人間ではない人間大の最終兵器」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつの名は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────『静空 亮』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは、武器を憎む武器商人と人間大の最終兵器の旅物語。


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