目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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15話

 

 

 

 さてさて、今は一体何が起こっているのでしょうか?

 

 目の前には巨人たちがいて、まるで餌を目の前に涎でも垂らしているかの様な、大好きな御馳走を前に笑っている様な、そんな見方によればクソ面白れぇ表情で向かってきている。

 

 場所は巨大樹に囲まれてる森林。

 

 結構道も狭く 木々が入り組んでるから 足を取られたりしていて精々1~2匹ずつにはなるが、兎に角目の前の御馳走……ならぬアキラ目掛けて飛びかかってくるのです。

 

 

 はっきり言って、間近で見る巨人は本当に気持ち悪いです。ええ、いつ見ても。

 

 

 確かに アキラは 『そろそろ殴りたい』と言っていたけれど、それでも限度があるというものだと思える。

 

 

「オラぁ!!」

 

 

 だけど、だからと言って黙ってみてる訳にもいかない。

 ちょっとでも あの手に捕まったらシャレにならないので、目の前に群がってくる連中を殴り飛ばした。

 一応自分自身の力は 超級である事は自覚している。ウォール・マリアの壁、門を破壊したと言う50mを超えるこれまた超級の巨人に通用する……とはなかなか思えないけれど、そこそこの相手なら問題なしの様だ。15m級までしか経験が無い様だが。

 

 

「どりゃあ!!」

 

 

 そう、問題なし……。

 

 

「そりゃあっっ!!」

 

 

 全く相手にならない…… 歯牙にもかけない程……。

 

 

 

「――――って、ごらぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 何だか、似たような事 前にもあったな。向かってくる巨人を何度も何度も殴り飛ばした事があったな、と思い出し始めた頃 アキラは何処かへと怒鳴っていた。怒っている様だ。

 

「いい加減にせぇや!! 一体なんのいじめだ! 新手のしごきか!? 新人いびりか!? このクソ上司ども!! パワハラで訴えるぞ!」

 

 現れては殴り、吹き飛んではまた現れ 途絶える事のない巨人の群が目の前にいる中で、ぽつんと残されているアキラが 巨大樹の上に向かって思いっきり怒鳴っていた。

 

 その木の上には……2つの影があった。

 ハンジとリヴァイの2人組が枝の上に立っていた。

 

「え? 新人って、もうアキラは調査兵団の新人じゃないじゃん? ウチの規定では1回の壁外調査から生還出来た時点で、もう一人前なんだから」

「んなこと言ってんじゃねぇー! そんなん どーでもええわ! 一体いつまで巨人とデスマッチさせるんじゃって事だ! 全然減らねぇ、こいつら! どっから湧き出てんだよ!」 

 

 通常 壁外調査に少人数で向かう様な事は 当然ながら殆どしない。

 

 巨人と言うのは人類にとって最大の脅威であり、天敵であり、厄災も同じ。

 アキラだから 簡単にぶっ飛ばせていて ギャグの様に見えるけれど、その一匹でも街中に入ってきたらもう大変だ。

 

 そんな無数の巨人が支配する壁の外で 少数で出ていく事は無いと言える。今回は例外中の例外だ。だが 少数精鋭だからこそ、下手な被害を出さずに外に出られると言う事もある。特にリヴァイ班のメンバーは巨人狩りのプロだと言える程の腕があるし今後にとっても重要な確認事項だという事もあって、エルヴィンからの許可も降りた。

 

「お前の力に関して正確に判ってない所が多い。どれだけその力が継続されるのか、力が出なくなったら、身体能力はどうなるのか、……そもそもその力の根源は何なのか、とかな。判らねぇ事が多いし、調べる限界もあるが、調べれる部分は調べる。その為の実験だそうだ。変な時にミスって死ぬよりマシだろ? テメェの力くらいしっかり把握しとけって事だ。……ああ、発案者はハンジ。オレたちはただの付き添いだ」

 

 涼しい顔をしながらそう言っているリヴァイ。ちゃんと装備は整えていて緊急時にはしっかりと動ける体勢は取れている。

 

「アキラの力の事が少しでも判れば、色々と対処もし易いし、判ったその分私達が頑張れば、アキラ自身の負担も減るかもしれないからね? アキラ本人もそうだけど イルゼにも色々と聞いて判ったんだけど……実は正確に判ってなかったよね? 自分自身の力。だから今後の為だって。頑張って!」

 

 ハンジの言葉は確かに判る。

 自分自身の事を、正確に知っておかないと今後痛い目を見る可能性が高い。現に 以前の時はガス欠寸前で下手したら死ぬかもしれなかったから。

 あの壁が破壊された事件の時も、結構危なかったのは事実だ。

 

 だけど、1つだけ言いたい事がアキラにはあった。

 

「いやぁ! 今まさにだ。めっちゃ負担になってんぞ!? 奇行種ってヤツも結構いるし! こいつら更に目の毒だ! 動きそのものが他のよりも更に気色悪い!!」

「の割には悠長に会話出来てるよなぁ。ほら、サボってんじゃねぇぞ。踏ん張れアキラ!」

「おおっ!? 今の状況で一体どーやったらサボれるってんだよ! 教えてくれ逆に! サボりたくても、サボらしてくれねぇよ! このでかい連中が休ませてくれねぇんだよ!! マジで、マジでオレ死ぬかもしれんぞ!」

 

 わらわらと出てくる巨人さん達。

 数だけを考えたら ひょっとしたら ウォール・マリア襲撃の時よりも多いかもしれない。何でこんなにいるのか疑問に思えるのだが……その疑問は直ぐに解消する。

 

 木々の間から、アンカーの射出音が聞こえてきたかと思えば、リヴァイやハンジのいる枝に着地した人影が何人か見えたから。

 

「おぉ…… やってるな。やっぱ壮観だわ。あれだけ憎かった巨人どもがぶっ倒れてるのを見るのは」

「必死に頑張って 漸く1体倒せるかどうか、そんな時間でここまでやってしまうとは……。やっぱり人類にここまで希望が持てたのは……随分と久しぶりに感じるよ」

「多大な犠牲を払って進めているマリア奪還作戦も、光明が見える……か。まだまだ先の話しだが」

 

 いつものリヴァイ班の皆だ。

 その最後尾にいるぺトラはと言うと。

 

「……アキラにばっかり負担をかける訳にはいかないんだからね! 私達も今回のこの任務、アキラの事しっかりとバックアップする! だから私達も集中する! もしもの事があったらすぐに動けるように!」

 

 何処か陽気な男どもの尻を蹴っ飛ばす勢いで前に出てそう言っていた。

 因みにぺトラは 今回の1件を訊かされて、リヴァイ班の中で当然ながら一番反対だった。アキラの力を目の当たりにしていて、疑っている訳ではないが、それでも危険すぎるし、万が一にでも死んでしまったら……? と不安だったから。

 ぺトラに対する答えが 全員がカバーをする事と緊急脱出の手段があると言う事だ。

 反対意見を言ったとはいえ、ぺトラにとっても任務だから本当に拒否する事も出来ないから、最後には納得するしかなく、それでいて与えられた任務に集中していたのだ。

 

 そんなやり取りを一通りみて、アキラが感じたのは 唯一心配をしてくれてるのはぺトラだけだという事と他の男たち、オルオは兎も角、エルオやグンタまで 何処かお気楽な様子だ。そう、まるでテレビや漫画の中の登場人物でも見てるかの様な感じだ。(この世界には テレビは無かったけど)

 

 だが それもぺトラの言葉を訊いたからなのか、或いは元からしっかりと最初から思っていたのかはわからないが(後者だと願う)、陽気な表情は直ぐに消え失せる。

 

「判ってるよぺトラ。アキラのヤツがへばったらしっかりと回収する。その為に立体機動装置を色々と改造したんだろ?」

「そろそろオレ達の付き合いも長い。……アイツの事を信じてるのはお前だけじゃないぞ。ぺトラ」

「身体に急激なGが掛かって、常人ならきつい回収方法ではある……が、アキラは 持ち前の身体能力を利用しているのか、殆ど無傷だ。……惚れた男が心配なのは判るが しっかりと我々で最後の一線は超えさせない様に守る」

「ほ、惚れっ///!? なな、何言ってっっ……!」

 

 色々と話しをしてる所、少々だが耳に入ったアキラ。全部は聞き取れなかったが大体内容は理解出来た様だ。

 

 ……ぺトラ。どんまい。

 

「あーそうだな。随分と良い班に恵まれたよなぁオレは。 ……だがな、幾らなんでももーちょっと段取りってもんがあると思うのは 気のせいじゃないし間違ってねぇよな? 体力測定なら 訓練施設でも出来んだろ? なのにいきなり外で? 実践投入すんの? オレ、協力するつもりはあるけど、兵器になったつもりは無いよ??」

 

 6m級を吹き飛ばした所で、盛大な皮肉を口にするアキラ。

 

「絶対そこのメガネだろ!? どんな実験でもある程度の段取り、段階があると思うのに、それを思いっきりぶっ飛ばしてこれにしたの! オレ、3日前までは新人教官(結構無理矢理)だったんだぞ!? それが突然外に出て、森の中、巨人の巣の中。そんな中で ハンジ分隊長さんは、まるで 巨人を使った実験ん時みたいな目でオレの事見てるし! 目ぇキラキラ輝いてるし! あー、そろそろ解剖でもされんじゃねーか、って不安になるわ全く!」

 

 と言ってる間に、比較的小型サイズの3m級が3体程一気に接近してきた。

 唸る様な、うめき声の様な……そんな奇声を発してくる。大きな大きな顔を近付かせて来る。

 

「だぁ! うっとうしいわぁ!! 変顔で近寄ってくんな!!」

 

 左側の相手を眉間に左拳を一撃。

 右側からの相手を左脚で側頭部に蹴りを一撃。

  

 正面に至っては、無理矢理身体を捻って ぐるぐると回転させながら踵落としを撃ちかました。

 

 攻撃の1つ1つが入る度に、どごん! ×3 と落雷でも落ちたのか? と思える様な轟音が周囲に木霊し その度に驚いてしまう面々。慣れたとはいえ やはり人外の力を目の当たりにする場面は 壁外だけで数少ないから 突然だったら驚いてしまう様だ。

 

「………はぁ、はぁ。疲れた……。 ……ったく。 で、どれくらいたった?」

 

 気が付くと、アキラは木の上に昇ってきていた。何だかんだ口では不満や文句を言いっているものの、時間を気にしてる所をみると、根は真面目? と思ってしまうのは気のせいだろうか?

 

 因みに アキラのその動きを追えたのはリヴァイのみだった様で、他のメンバーは若干だが 戻ってきていた事に驚きを見せていた。

 

「……なんだ? もうへばったのか。さっきよりタイムが落ちてるぞ」

「無茶言うな! 休憩挟んでるとはいえ 連続なんだぞ! その上サイズがでけぇのが結構集まってきたし。その辺を考慮してくれた上での査定の言葉をくれたらうれしいんだけどなぁ。リヴァイせんせー?」

「オレなら後10匹は殺れる」

「なら 素手でやってみ? 世界観がガラっ と変わるぜ」

「……そんなバカみたいな真似が出来るのはお前だけだ」

「装備整えたお前も似たようなもんだろ。そのバカみてぇにはええ動きはな」

 

 恒例の互いに面白い程 温度差のある口喧嘩をしあってるうちに、ハンジが落ち着いた様子で時間を計測していた。

 

「うん、最初が40分くらいかな連続での戦闘は。その後インターバルを挟んで37、35分……30分。今が20分弱、かな。確かに連続ですればするほど落ちるみたいだね。後は 使う力が強ければ強い程、持続時間が減っていくのかな? まだ判らない所は多いけど、現時点で纏めると、長距離の遠征の場合は 休憩を挟めば何とかって思ってたんだけど……、ちょっと難しいみたいだね。巨人が現れるタイミングなんて 決まってる訳ないし」

「……やっぱさ、 人の事兵器みたいに見てね? 前に言ってたヤツだが。人類の希望じゃなく、人類の兵器かオレは」

「ははっ、こーんな面白い兵器がある訳ないじゃん? アキラはどっからどー見ても人間だよ。いや、びっくり人間」

「いや、扱いの事言ったんだよ!」

 

 緊急脱出用に立体機動装置を改造して備えていたんだが、結局アキラは自力で戻ってきたから意味無かったんじゃないか? とツッコミを入れたかった他のメンバー。

 

 だけど、そんな空気もまるっきり無視して 速攻で近づくのはぺトラ。

 

「大丈夫だった? はい。タオル」

「はぁー、さんきゅ。オレの事 労ってくれんの、ほんとぺトラだけだわ。ほんと、きっつい職場の中の唯一の癒しだこりゃ。ありがたい、ありがたい。ありがたやー、ありがたやー」

「も、もー 何言ってるのよー/// そんな事言ったって何も出ないんだからね!? えー……あー、でも 帰ったら御馳走くらいはしてあげるよ?」

「………ん? あれ? あー、まぁ 良いか。楽しみにしてる」

 

 南無南無~と手を合わせて言っていたアキラは、実際はからかう様に言ったつもりだった。そんなアキラだったのだが予想以上に喜んでるぺトラを見て狙い外した? と目をぱちくりさせていて、そんなアキラを呆れた様子で見るのはオルオ達。

 

 

 

「ほんと、結婚すりゃ良いんじゃないか? この2人」

「……そりゃ イルゼのヤツが黙ってねぇだろ。それに必要な手順を踏んでねぇ時点で血の雨が降りそうだ」

「ふむふむ。一夫多妻と言うのが一番争いが無かったりして」

 

 

 

 妙な事を言ってる3人組に、ぺトラは道中で拾っていたのか、石ころを投げつけた所で本日のイジメと言う名の実験は終了したのだった。

 

 

 




彼が戦ってたら最早ギャグ世界。
何度も殴って飛ばすので『見ろ! 《巨》人がゴミの様だ!』と高見の見物が出来そうです。

でも本番(原作シーン)はシリアス感頑張ります。

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