「えーっと 次の企画だけど、アキラの身体の耐久度の確認をしてみたい思うんだ。まずはさ大きな丸太にぶつかってみる? 巨人用のトラップを幾つか用意できるよ。後はそうだね、爆弾とか……うん。段取りは大切だよね。まず検証するなら剣で刺してみるとかかな?」
「……おーい。そろそろ、ガチでキレて良い? なぁ リヴァイ。このクソメガネ。外でうろついてる巨人と一緒にお空の☆にしていい??」
「……後にしろ」
会議の様なものを宿舎でしているけれど、その中身はただの『アキラをどうやってイジメよう?』と言う作戦会議だった。それも本人を前に言っているので更に性質が悪い。頭からバクッ! と一口で食い殺してくれる巨人の方がマシだと本気で思いかねないだろう。
そんなハンジの提案に これまた笑顔で接するアキラ。いつも沢山怒鳴ってるのに今は笑顔で対応しつつ、ハンジの様な物騒な提案をしている。
アキラのその笑みが何処となく怖く感じたりもするんだけれど……、やっぱりギャグに見えるし、何よりハンジの試練? イジメ? もあっさりとこなしてしまいそうだから、これまた面白い絵面しか思い浮かばないのである。
「やってるな。お前達」
「……エルヴィンか」
そこに入ってきたのは、調査兵団 団長のエルヴィンだ。
ハンジやリヴァイよりも階級が上な男だから、リヴァイよりもこっちに聞く方が良いだろう、とアキラは思って。
「エルヴィンだんちょーさーん。コイツ酷いんだぁ。オレの事 実験動物扱いどころか、拷問までするんだよ? このクソメガネ。お空の彼方に吹き飛ばして良い? 多分、コイツ殺す気だよー、オレの事。黙って殺されるのはヤダしぃ~」
「……ハンジ。そろそろからかって遊ぶのは止めてやれ。アキラの事を宝だと言ったのは私だが、お前もそうだ。失うのは人類にとっての痛手だ。それも身内に怒られて その挙句死ぬなんて 末代までの恥になるぞ」
「ははは。ヤダなぁ。冗談に決まってるじゃない。ここで アキラにキレられちゃったら、私なんかじゃ歯が立たないし。リヴァイに守ってもらわないといけないし」
「……コイツと戦るのは面倒くせぇよ」
「オレだって、お前と一戦やるなんて、何よりも一番めんどくせぇよ」
笑っているハンジだが、目の奥では真剣味を帯びているから、どこか怖い。
リヴァイとアキラもいつもブレてない。
エルヴィンは そんな3人を見てただただ苦笑いをするだけだった。
「それよりも現状を話せ。……エルヴィンも来た事だ。色々あるだろ? 判ってる所からで良い」
「そうだな。アキラも聞いてくれ。色々とうんざり気味かもしれんが、次からはまじめな話だ」
「いーよいーよ。真面目な話なら幾らでも。最近じゃそっちの方が珍しいし」
と言う訳で、現状のウォール・マリアの奪還作戦についてと 今後の壁外調査についての件一式諸共の説明を受けた。
以前と比べて犠牲者の数はやはり増えているものの、調査そのものは 少しずつではあるが進んでいるという事。比較的 近い集落や村の類は 調査兵団による一時的な巨人の掃討により、その財産の回収や物資の調達も出来ているという事。そこまでのルートを模索し予め持ち込んだ補給物資を設置し更なる順路を作成し……etc
作戦は進んでいるが、ゴールは全く見えないのが現状。何よりも巨人を相当駆除している筈だが数が一行に減らないのが厄介だった。
つまり、ウォール・マリアの全てを奪還するまでは相当難しいと言う事だ。
更に以前まで行っていた壁外調査を再開するなどと 今は夢物語になってしまいかねなかった。
「壁外調査と言っても、ウォール・マリアの壁の内側だがな」
「その壁に穴が開いたんだ。戸を叩く必要も無く 連中は入ってくるんだ。もう そこだって十分壁外だろ」
「……違いない」
続けられる説明。そして今後の方針。
「まずは、現時点での最前線はトロスト区。次いでカラネス区とクロルバ区の3点が最も重要拠点になっている。……超大型の巨人が南側に現れた事もそうだが、これまでの調査で、巨人は主に南側に集中していると思われるからな」
「……連中は頭が弱ぇからな。だが、考える頭があるのもいる。扉を破壊した超大型と鎧の様に硬質な身体を持つ巨人の2匹だ。それ以外は一番近い壁によって集るんだろ」
そう、かつての襲撃で扉をピンポイントで破壊した超大型の巨人と 逃げ惑う人間には一切触れずに ただ一直線に扉を破壊し、巨人たちを先導した鎧の巨人。
この2匹が現状最も厄介な巨人とされていて、最も排除しなければならない相手だ。
だが、調査時にも全く遭遇はしていない。最優先で精鋭達を用いて
「アキラの活動可能時間に制限がある以上、その力を組み込んだ作戦や無理な進軍は制限する。そして いつ超大型が現れないとの判らない状況だ。なるべく犠牲者を最小限に留めつつ、迅速に現状の更なる把握をしなければならない。……1ヶ月後には再び出発予定だ」
「成る程。つまり 1ヶ月間は休みがもらえる訳か? 英気を養わせてくれよ そろそろ」
「勿論だ。アキラは休め。他の雑務業務は他の分隊長達に一任させている。……休息の仕方は任せるが、以前みたいな無茶は止めてくれ」
「えー、良いじゃん。マリアの内側の方が川とか多いし、新鮮な魚とかも釣れた。食は大事なんだぜ? エルヴィン。……奴らの様に無駄に喰っては吐く連中を見て来たら薄れるかもしれんがな」
エルヴィンが言う以前の様に……とは アキラの休暇で壁外へと向かった事があった。
巨人により、人口と領土が減った人類の活動拠点。その資源も減ってしまった故に食料問題もそこまで大きくはなってないがそれでも影響は出ているのだ。
と言う訳で、以前の1年間壁外で暮らしたスキルを最大限に活かして、これまた呑気に釣りに出かけたのがアキラ。
周囲の仲間達に盛大な駄目だしを喰らい、何度バカと呼ばれたか判らないが、それでも アキラの言う新鮮な魚やはたまた、人間がいなくなり野生に還った牛や羊を連れ帰って貴重な肉の確保など、物凄く貢献してしまっているから あまり強く言えなかった事もある。
……が、それでも万が一何かがあったらどうするんだ? と言うお叱りもきっちり受けてしまった為、現状のアキラの休暇は必ず誰かが一緒について監視をする程になってしまっていたのだ。
「あの肉は美味かった。今度は上手い事やって全部 調査兵団に回せ。アキラ」
「おっ? 流石リヴァイは判ってるな。まぁ 火事場泥棒みたいな真似は出来んから あんまし期待はすんなよ。あいつら捕まえられたの結構偶然だし。流石に 牛やら羊を担いで壁の上に昇るのは無理だから 扉を開けてもらわないといかんからな。巨人がいない時にしないと開けてくれんし」
「ははは……。アキラは型破りな事をしてくれるから全然退屈しなくて良いんだけど、ぺトラやイルゼに思いっきり怒られても良いなら、どんどんやってみてよ。私達が潤うのは事実だしね」
「ぁー………。それは確かにヤダな」
当然ながら、アキラの身を誰よりも心配してるのはその調査兵団の紅点である乙女達。
これまでも何度も言われていて、涙まで見せていて 心配かける事がここまで相手を傷つける事だという事も アキラはそろそろ学んでいた。(遅すぎるし、忘れっぽい)
絶対に自分は死なないと思っていても判らない。何故ならこの世に絶対と言うものが無いというのは 世界と世界を渡ったアキラが誰よりも理解しているから。
だから 以前……。
「そうだったな。何人か一緒に行動しないといけない、だったな。外に出るのは罪だったし それに幾らなんでも、もう牢には入りたくないし」
1人で外に行くと言うのは厳禁となった。
と言うより昔から壁外に出る事だけでも罪になっていて ウォールマリアの内側とはいえそこはもう壁外になってるから 適用されてしまう。……法的にはまだ改定は済ませてないみたいだけど。
「お前を恐れてる壁の中の豚共しか喜ばねぇ様な真似はするか」
「あー……、そう言えばそんな事もあったなぁ。結構懐かしい。保身に走ってる。全力疾走してる様な連中との件だったか? これ以上 思い出したくないけど」
アキラの存在を中央が知り、その正体についての問答が極秘ではあるが行われた事がある。エルヴィンの計らいもあって、公には その力はリヴァイの様な強い兵士程度にしか認識されていない。
……だが、誰が巨人を殴り倒す様な真似が出来る人間がいると信じるだろうか。
リヴァイの言う豚共と言うのは巨人を見た事も無い連中で、妙に強い権力や支持率があって困った連中は、巨人が人間に化けてるんじゃ? とまで言い出したりして 脅威を自分達を脅かす者を排除しようとする事しか頭に無かった。
だが、壁外活動を主とする旨を伝えたら、大人しくなった。……壁の外で死ぬならOK 程度にしか考えてない様だった。
「皆がアキラやリヴァイの様に強くない。……人間とは脆く 弱い生き物だ。より狭い場所に閉じ込められれば、最終的には殺し合う。根本にはそういう残酷性がある」
「ああ。知ってるつもりだ。……が 調査兵団にはそんな臭いはしないがな。好奇心旺盛なバカばかりだって認識しかないよ。つまり、お前ら人ん事バカバカ言ってるが、同類項だって事忘れんなよ? 特にハンジ!」
「勿論。自覚はあるさ。そうでなきゃ調査兵団なんて務まらないしね」
「……その中でもお前がダントツで突き抜けてるって事実も忘れるなよ。バカが」
「うっせ!」
実に頼もしい限りの面々。
人類は……再び巨人に支配される事はない。
この籠の外へと解き放ってくれる。
エルヴィンは、そう強く思えたのだった。
「アキラ。もう1つあるんだが」
「ん?」
「以前の訓練兵の教育係の件だ」
「ああ。そっちはクビにでもするか? オレが上手く教えれたとは思ってねぇし」
「いや 逆だ。お前に憧れて 訓練に精を出す者が増えている。士気を高める効果もあるそうだ。……上手く力を抑えて本当の力を隠しているとはいえ、それでも実演を完璧に繰り返した事が功を成したのだろうな」
「ふーん、……憧れ、ねぇ」
胡散臭そうな目をしているアキラ。
だが、これは紛れもない事実だった。教え方の上手さなどではなく、ただ純粋に強い。
それだけで、人は着いてくるというモノなのだ。……リヴァイの様にぶっきらぼうで、性格に難があったとしても 憧れや羨望の眼差しを向けられ続けているのだから。
「調査兵団としての任務に次いで、特別教官として定期的に見てやってもらいたい。それも息抜きの1つとも思ってくれ」
「へーい了解。ま 実験体にされるよりは幾らかマシ、かな。息抜きっつーのは 微妙な面もあるが 今の104期、だっけ? その訓練生たちは マシな部類だし」
それに面白い奴らもいる。と言うのが一番の理由でアキラは了承したのだった。
そして――――時は流れた。
最後は無理矢理感満載。
全然進んでないから、そろそろ原作付近に戻ろうかと思いまして。