目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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暑いの嫌い。台風嫌い。


34話

 

 

 

 

「オルオさん! あいつらは……、オレの同期は巨人に勝てますかね?」

 

 

 

 それは街を抜けて平地に出た時の事。

 

 エルヴィンの指示で長距離索敵陣形に分かれた時にエレンはふと仲間達の事を思い出していた。

 

 

 

 

 この遠征が始まる前にエレンはジャンに問い詰められていたのだ。

 

 それはエレン自身がミカサを殺そうとした事実を聞き出そうとした時の事について。

 

 

 

 

 

 調査兵団がおらず、戦力が万全ではなかったあの壁中での戦い。巨人化したエレンは最初その力を制御する事が出来ず 傍にいたミカサに襲い掛かったのだ。

 エレンの力については エルヴィン団長に話を訊き、その詳細をジャンは確かめたかった。明らかに不可解な力であり、その巨人の力の存在自体もエレンは知らなかった事。そして掌握する事さえ出来ないと言う事実。

 

『オレ達と人類の命がこれに懸かっている。このために、オレ達はマルコのようにエレンが知らない内に死ぬ事になるかもしれねぇな』

 

 ジャンが思い返すのはマルコの死の事。そして その死を唯一その場でジャン自身以外に、そしてジャン以上に強く嘆き、怒りをあらわにした人の事も思い返していた。

 マルコが皆の亡骸と混ざり、その命の粉を顔に塗した人の事。

 

『……オレは死にたくねぇよ。オレは まだまだあの人を追い続ける為にこの道を進むと決めたんだからよ』

 

 その言葉に、強く反応したのはミカサだった。

 

『ジャンの考えは判った。でも今ここでエレンを追い詰める事に一体何の意義があると言うの?』

 

 ミカサの目には、エレンの不確かな力を疑い、必要以上に追い詰めようとしているとしか見えなかった。元々エレンとジャンの仲は犬猿である事もそれに拍車を掛けていた。

 

『……あのなミカサ。オレは言っただろ? 死にたくねぇって。エレンの為に無償でお前は死ねるかもしれねぇが、オレはごめんだ。まだまだ、見続けてぇからな。……だが、それでも『死にたくない』とは思っても、だからって『死なない』と思える程 ガキでもねぇ。だから知っておくべきなんだよ。エレン自身もオレ達も。オレ達が何のためにこの命を賭けるのか。その価値があるのか。……オレは、オレ達はエレンに見返りを求めたいんだよ』

 

 ジャンは、はっきりとエレンの目を見据えた。

 エレン自身は緊張を隠せられない。ジャンのこれほど真っ直ぐな目は 今まで見た事が無かったから。

 

『きっちり値踏みをさせてくれよ。こんなに死にたくねぇって。やりたい事があるって我儘を言っちまってるオレにも判る様に。……だからよ、エレンお前……』

 

 次にジャンは強くエレンの肩を握りしめた。

 

『頼むぞ……?』

 

 その懇願にエレンはただ首を縦に振るしか出来なかった。そして 自分自身も強く心に刻み付けた。仲間達の命を預かっていると言う現状を。そして、負担(・・)を決してかけ過ぎないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、場面は戻る。

 エレンに尋ねられたオルオは呆れた表情で答えた。

 

 

「ああ? てめぇ この一カ月間なにしていやがったんだ!? それにアキラの奴を見て感覚鈍らせるなって事ぁ 何度も言われてんだろうが。其々には役割っつーのが決まってるだろ。基本的にオレ達は『如何に巨人と戦わないか』に懸かってんだよ!」

 

 格好良く、更にはリヴァイの様に威厳を見せてやろう! としているんだが、当然ながら非常に揺れる馬上ではオルオは上手く出来ない。恰好がいつもつかない。今日もしっかりと舌を思いっきり噛んでしまったから。

 

「~~~~ッ!!」

 

 血も結構出てるからまた深く切ってしまった様だ。

 そんな中、早馬で傍に接近してきた者がいた。手早く小瓶をオルオに放り投げ、舌をやってしまったオルオだが、何とかキャッチしていた。

 

「締まらねぇなぁ オルオ。も、馬上で喋るなって。消毒液だって無料(ただ)じゃないんだから」

 

 それは、援護班に混ざって巨人を狩っていた男。……異常な力を全員に見せ、この壁外で最も信頼できる男の1人であり、最も心強い男の1人。

 

「遅いよ!! アキラ!」

 

 そして、誰よりも心配をかける男でも(基本的に女性陣に)あるアキラだ。

 

「無茶言うなってぺトラ。これでも最速だって! それに移動じゃ無理に使うなって言われてんだから」

「当たり前だ。地面抉って馬が走れねぇ様になったらお前が直せよ」

「へいへーい。リヴァイせんせー」

 

 小言を言われるのを嫌うアキラは、リヴァイにそう直ぐに返すと器用に馬を操ってエレンの元へと向かった。

 

「オルオじゃねぇけど、エルヴィンが考案した(らしい)長距離索敵陣形ってのは覚えてるか? エレン」

「は、はい!」

「なら 判るだろ。基本的に巨人は馬より遅い。瞬間的な速度、瞬発力が結構やばい奴はいたけど、最高速度を持続し続けられる奴はまだ見た事ねぇし、信号弾を見ながら整えたら基本は大丈夫だ」

「そ、そうですよね。判りました」

 

 今ここで陣形についての再講義をする時間は無いし、判りやすくするには言葉では伝えにくい。だから 記憶を掘り起こしてもらうしかないんだ。

 

「まぁ 脅かす訳じゃないが……、奇行種とかが出て来たら戦わないといかんから、その辺は、周りの先輩が男を見せてくれるって。新人に会わせたくはないってオレだって思うし。あんなの見るの正直目に毒だ」

 

 深くため息を吐きながら言うアキラ。何だか実感籠ってる様な感じがするエレン。それは、隣で並走してるぺトラが説明してくれた。

 

「はは…… アキラは結構会ってるからねー?」

「違う! 『遭わされた』 だろ!?」

 

 ハンジ主催のアキラ実験で巨人と相対した時 何匹か会ってる。

 ほんと色々と独特だから 判りやすいし、アキラにとっても会いたくない存在だったりするんだ。動きとかくねくねしてたりして、結構…… いや非常に変なのだ。だから アキラはきっちりと仕留めるケド、最も嫌いだったりする。

 

「……赤の煙弾だ。さっさと撃てアホ」

「っと、それは悪かった。了解」

 

 普段より何処か他人よりお気楽な所があるアキラだが 今は壁外である事と、今回の遠征の重要性をもう一度頭に入れ直し、手に持った煙弾を頭上に撃った。

 

 赤の煙弾は 巨人が現れた際に放たれる物。それを確認次第各班にて同じく赤を撃ち放ち、先頭で指揮を執るエルヴィンに巨人の出現と大まかな位置を最短で伝えるのだ。

 

 そして煙弾は 緑、黒、灰、そして 先程の赤と全4色存在しており 当然其々に役割があって全員がそれを理解し、この陣形を保ち継続させていく事こそが索敵範囲を広げ続ける事に繋がるのだ。

 

「……巨人の全部がオレんトコに来てくれりゃ、大抵の問題は片付けられるんだが こればかりはな」

 

 

 広大な平原において、巨人の行動を制限できる様な事は出来はしない。誘導をする事は可能だが、全体での作戦を立てての計画ならまだしも、いきなりのアドリブで精密にするなど殆ど不可能だ。

 

「アキラ?」

「あー無理なんかしないって。それに」

 

 いつものぺトラの説教が始まる前にけん制をするアキラ。

 

 勝算がある方が行動をするべき、と言う考えは勿論持っている。どう考えても、心配かけるのと心配する者達が死ぬの、どっちにする? と訊かれれば間違いなく前者。

 

 でも最善なのは、最適な答えは各々の役割をきっちりと果たす事なのも事実だ。

 

「オレは皆に期待してんだって。もしもん時はしっかり引っ張り上げてくれるんだろ? あんまそんな場面来てほしくないケド」

「……うん! 勿論。来てほしくないのは私だって同じだけど、思いっきりやるから安心して」

「おう。……あー、でもなぁ……。やっぱ、それつかって安心できるかは微妙だ」

「それくらいは我慢して」

「へいへい……」

 

 

 2人が話してるのは立体機動装置を使っての緊急脱出の件だ。

 

 基本的に装置を使って助けようとしたら 高圧ガスの威力もあって人体を貫いてしまうし、当たり所が悪ければ死にかねない。だが アキラの実験をする際に考案された立体機動装置はワイヤーの先端がアンカーの代わりに強力な接着剤を練り込んだ繊維強化プラスチックになっていて、それを身体に引っ付けて回収する。安全性を言えば 遥かに良いのだが、射出の衝撃や巻き取りの時の速度もあって 万全とは言えないが これも死ぬよりは遥かにマシだと言えるだろう。

 それを使う判断を下すのはリヴァイ。そして リヴァイが不在な場合は ぺトラ。

 

「リヴァイ兵長。緑の煙弾が北東の方角に確認出来ました」

「ああ。……撃て」

「了解です」

 

 緑の煙弾は エルヴィンが陣営全体の進路を変える際に放たれるものだ。

 全体に方角を知らせる為、確認したらすぐに同じ方向に向かって緑弾を放ち、同じく最短で全体に知らせる。

 

 赤と緑を組み合わせ、巨人との接近を避けながら目的地を目指すのが基本的な行動。

 だが、それだけで常に理想的な陣形を保ち 進行を続ける事が出来る訳ではない。

 

 それは先程の会話でもあった通り 行動がなかなか予測できない奇行種の存在だ。

 一番最初にそれに気付いたのはエレン。

 

「アキラさん! 兵長! 右翼側方面から黒煙です!」

「早速かよ……」

 

 黒弾は奇行種。

 

 個体によってその性質は様々。だから予測がつきにくい、と言われているんだが、実験中で何度も見ているからかアキラは大体が予測がついていた。嬉しくはない様だが。

 

「その辺の人間には興味を示さないで、周辺をうろちょろ走りまくってるタイプのヤツだろうな。……或いは好みの人間がいなかった、ってヤツか? そういう奴に限って決まって……」

 

 その巨人が視界に入ってくる。

 

「走り方がキモイ」

 

 身体をくねくねさせながら走ってくるんだから仕方ない。 明らかに男型な巨人なのに オカマ? って思える様な走り方をする奴もいるし 二本足で立ってる癖に突然四足走行を取る奴もいる。 

 

「リヴァイ。良いか?」

「ああ。任せた」

 

 アキラは 了解を取った所で早速行動開始。

 

 

「武運を祈ります」

「気を付けて……」

「とっとと何枚かにおろしてきてやれよ アキラ!」

「頼んだ!」

 

 

 戦闘を避けて移動をするのが主だが、奇行種に対してのみは戦闘は必要だ。当たり前だが、近くの人間を襲わないとは言っても巨人と一緒に走る訳にもいかないから。

 

 そして、平地での立体機動装置は本来の性能を発揮できるものではないと言うのは周知の事実。周囲に何もない平地では巨人の身体にアンカーを突き立てなければならないからだ。その場合 短い時間ではあるが、ワイヤーで巨人と繋がってしまう事になるから、暴れられて ワイヤーを絡め取られてしまえば最悪な展開になる。巨人の力で吹き飛ばされてしまうからだ。そうなれば、地面と激突するしかない為殆ど死んでしまう。

 

 故に成功率が最も高い戦術が必要になってくる。この場で最も巨人討伐の成功率が高いのは……。

 

「あぁ。さっさとヤってくる」

 

 アキラが戦う事だ。

 

 走ってくる巨人に対して迎え撃つ構え。

 アンカーを巨人に突き刺し、収縮の勢いと自分自身の力を合わせて殴る。

 それだけで巨人は吹き飛ぶ。或いは四肢が潰れ、暫く走行不能になるのだ。その隙にうなじを削いで終了。

 

 

 と言う訳で上記の通りの行動をして あっさりと奇行種を仕留めたアキラだが。

 

「……妙だ。今回オレ達は特別作戦班。ここは5列中央・待機の地点だ。こんな深くにまで1匹とは言え奇行種が入ってくるか……?」

 

 脳裏には嫌な予感が走っていた。

 

 この調査兵団の実力はよく知っている。通常種であろうと、奇行種であろうと しっかりと作戦を立てて其々が戦いの役割を果たせば巨人とて倒せるから。それが生存率が向上した理由の1つなのだから。

 アキラは戦った感触でよく判る。この巨人は 誰でも……とは言えないかもしれないが、調査兵団であれば問題なく倒せる。でも、陣営の最奥まで侵入を許した。

 

 それらの状況に嫌な予感を頭の中に感じつつもアキラは再度合流しようと馬を走らせたその時だった。

 

 

「灰色の煙弾確認!!!」

 

 

 その声を聴いたのは。

 




オリ色『灰』




どんな意味にしようかな……………。
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