いやぁしかし進撃! 続きが気になる終わり方ですなぁ! 皆皆大人になっちゃって…… 笑
ジークは確かもう会いたくないって言ってた様な………。
アキラは 短い時間ではあるが体力回復に努めていた。
その間 思い出していた。
――アニとはどんな兵士だった?
あの時、訓練兵達の教官をしていた時の記憶。
一番新しい記憶。一番濃い記憶。
頭の中に残っている記憶、どれを思い出しても やはり思い出すのは《険しい顔》をしている姿だった。
そしてもう1つ。アニとの記憶、思い出はやはり格闘術の授業でのやり取りだ。エレンとライナー、そしてアニを含めた3人を相手にした時の事。
最初こそは 受けにまわってあしらい続けた。ムキになって挑んでくるエレンとライナー。そんな中でもアニは何時だって冷静そのものだった。出来うる事の最善を尽くす事。それを何より重点的においていた。でも、格闘術はアニにとっては最も得意とするものであり、何処かその技術に誇りを持った様子もあった。何にも負けたくないと言う強い意志も見えた。
情熱と冷静の相反する2つの感情を持ち合わせていた。
そして、何より―――。
アキラが休息をとっている間も女型の巨人の更なる拘束が続けられていた。
「ふんっ!!」
ハンジが力いっぱい捕獲装置の弁を引き抜き、作動させた。大樽の中から対巨人用の捕獲銛が撃ち放たれ、更に拘束させた。
「これでどう? もうかゆいとこあっても掻けないよ? 身じろぎ1つ出来ないよ。多分一生。ほら、傷を塞げば塞ぐほど、関節はより強固に固まっていく仕組みなんだ。 ま、キミの意思で治してる~ とは思えないけどね。全自動で治っちゃうんでしょ? いやぁ 羨ましいなぁ。その技? 再生医療技術? 教えてよ~。アキラに仕込むからさっ!」
何だかアキラにとって怖い事を言っているのだが、今は傍にいないのである意味良かったかもしれない。クシャミはしてると思えるが。
「……それは兎も角。肝心の中身さんはまだ出せないのか? 何やってんだよ、リヴァイとミケは……」
ハンジが言う様にリヴァイとミケは、女型の巨人のうなじを狙い、何度も攻撃を仕掛けていた。
一度、二度、……三度と攻撃を仕掛けているのだが、それは全く効果は無かった。何故なら、攻撃した刃の方が砕け散ってしまうからだ。
「ちっ……。ボロが」
如何にリヴァイであっても、刃よりも固く硬化した皮膚を斬る事は叶わない様で忌々しそうに刃を睨んでいた。 ミケもお手上げと言わんばかりに砕けた剣2本を立てて エルヴィンの方を向いて首を振った。
今までの攻撃、その一部始終を見ていたエルヴィンは考える。
「(身体の一部の表面を硬質な皮膚で覆う事ができる能力……。話に聞く『鎧の巨人』に似通った性質か。……だが、少し違うのは その維持する時間)」
硬質化した部分が、直ぐにボロボロになって蒸発していくのもエルヴィンは見ていた。
つまり、永続的に硬質化する事は出来ないと言う事だ。省エネ運転しなければもたない、と言い換えても良いだろう。
「(立体機動の白刃攻撃をこのまま続ければ弱っていく……、と言う可能性も無い訳ではない。……が、それを試している時間はないな。後は発破を使うか、或いは……)」
エルヴィンは作戦を考えている間にもアキラを見ていた。
直ぐ後ろで胡坐をかき、額に手を当てて何かを考えている様にも見えるアキラを。ここ一番の頭のキレも正直な感想では自分をも凌駕するとエルヴィンはアキラに感じていた。……が、その反面情に脆いと言う面が極端に強いと言う事。そして何よりも。
――全てを失うかもしれない。その覚悟も持ち合わせていないのだ。
大切なものを失うくらいなら、喜んで自分自身が死地にでも迷わず飛び込む男がアキラだ。今はその強大な力を身に窶している為、本能の赴くままに行動をしても何ら問題なかった。寧ろ殆どが成功し、戦果を残し続けてきた。
だが、それが延々と続くと言う保証は何処にもない。万が一でも起これば、人類は力を、……刃を 失うも同然だ。巨人になれる力以上に解明が出来そうにないのがアキラの力。ならば、その力に甘んじる事なく、アキラが来る以前までの調査兵団団長として行ってきた、出来うる事の最善を考え、全てを失う覚悟で挑み続ける。必要であれば、どんな大きなリスクでも背負う。……そうしなければ、人類はアキラの肩に乗っからないと生きられなくなってしまうだろう。それは完全なる依存であり、その末路は火を見るより明らかだ。
「なぁ、エルヴィン」
「……なんだ?」
エルヴィンの方を見ていた訳ではないのに、まるで、アキラはエルヴィンの考えている事が判ったかの様なタイミングで声をかけた。
「
『休め』『待機しろ』と命令をされているアキラ。
一兵士である以上、上官であるエルヴィンの命令を訊くのは当然だと思っているし、何だかんだあっても、これまでエルヴィンが間違った事を言った事がない為、リヴァイの言う通り最大限に信頼し従っていた。
従ってなかった時も当然ながらある。だが、それは エルヴィンにどうこう言う前に身体が動いてさっさと行動してた。 だから、壁外作戦においてエルヴィンにはっきり直接言ったのはこれが初めてかもしれない。
「……どうした何か思う所があるのか? 次は発破で手を吹きとばす。現状ではそれで十分だと考えているのだが」
「あぁ。それならあの硬ェ手も吹き飛ばせるだろうよ。間違いなくな。……でもな、それだと中身ごと吹っ飛ばすぞ。アイツの身体を何度か殴って、大体の強度は判ったつもりだ。
「うむ。成る程。ならば手首を切断する様に仕掛けてみよう。これなら うなじに潜んでいるであろう人物をも吹き飛ばす事も無いだろう」
エルヴィンの口ぶりから察するに、アキラに頼むと言う選択肢が無い事は本人にもよく判った。元々の活動時間を大幅に超えていると言う点においても、それは仕方ないと思うのだが、アキラは下がらなかった。
「だからなエルヴィン。オレならもっと早いって言ったんだよ。確かに 固くなったトコをやるのは少々骨が折れるが、それでも 少し時間かけて手を根元から引き千切って終いだ。んなリスクのある事をせんでもな。……と言うより、それ位判ってるだろ? なぜ言わない。拘束してるとはいえ、アレは普通の巨人じゃない。……油断大敵だ。確実な方を取れよ」
アキラは エルヴィンの横顔をじっと見ながらそう聞いた。エルヴィンは アキラの視線に当然気付いている様だった。ゆっくりとした動作で振り向き、言った。
「……いや、アキラ。オレはアキラが動く事こそリスクがある様に思えてならない。……お前も判っているだろう。あの女型の巨人…… 今完全に拘束されていると言うのに、周囲を無数の兵士で取り囲まれていると言うのに。アイツの眼には お前しか映っていない。……アイツの視線はお前のみを見ている。お前の動向を観察している様に思える」
「……あぁ、それくらい判ってんよ。ったく、惚れられでもしたってのか? 随分とまぁ熱烈な視線を送ってくれてるもんだ。あんな傍でアプローチしてんのに、ミケやリヴァイが嫉妬しちまうんじゃねぇか?」
首を左右に振りながら 何処か呆れた様に言うアキラ。
アキラは、休憩の最中も片時も目を離していない。常に視界には 女型の巨人……
だからこそ、エルヴィンよりも先に、真っ先に気付いた。うなじを守る様に 手を交差させ、やや俯き気味の状態だと言うのに、その眼はぎょろりと動いてこちら側を見据えている事に。
だが その正確な意図は判らなかった。
恐らくこの場で一番警戒すべき相手がアキラである事が判ったから、程度にしか。
正確な事は判らない。だが唯一、正確に……ではなく アキラ自身が間違いないと思える事があった。
「
「……アキラ。お前まさか―――」
何かを察したエルヴィンがアキラに訊き終える前に、あの女型の巨人の行動の方が早かった。
『きぃやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!』
それは甲高く悲鳴に似た叫び。
アキラが、今の今まで戦ってきた間でも初めて聞く種類のものだった。
どの巨人にも無かった音域とでもいうものか。あまりのものに誰もが耳を塞ぎ、鼓膜を守る事だけに集中していた。……たった
「………これは」
「断末魔……ってヤツですか? はた迷惑な……」
ハンジとバーナーも突然の悲鳴に戸惑いを隠せず、考えることを止めて耳を抑えた。耳鳴りがまだ続くのだろう、バーナーは目をも ぎゅっ と瞑って耐えていた。
「てめぇ…… びっくりしたじゃねぇか」
リヴァイも耳を塞いでいたのだが、それは一瞬だ。直ぐに態勢を整え直した。一瞬見せた隙も次の瞬間には無くなっている所は流石の一言だ。
「(これは感情的な発声か? だとするとこうピタリとやめるものだろうか?)」
今、エルヴィンの中に芽生えていたアキラに対する疑問も あの悲鳴、断末魔の前にかき消えてしまっていた。
「…………はッ! だよなッ」
そして、今の今まで座っていたアキラは、立ち上がった。耳を塞ぐ事もなく、ただただ女型の巨人を見ていたアキラは、一笑し立ち上がった。
「んなとこで諦める様なヤツじゃねぇよなァ!? オレの授業ん時だって3人の中で一番粘ってたもんなァ!!」
アキラは、大枝を踏み抜く勢いで跳躍、そしてアンカーを伸ばした。
「エルヴィン、先行ってんぞ。戦闘開始だ!」
短くエルヴィンにそう伝えると返事が帰ってくる前に、アンカーを縮めて移動した。
「ミケェ! 匂ってきただろぉ!? さっさと班動かせ! 正面はオレとリヴァイでやる! 散開させろ!!」
「……ああ!」
アキラとミケはほぼ同時だった。ミケもアキラが言った様に自身が持つ並外れた嗅覚で匂いを感じ取っていたのだ。そう――巨人の匂いを。
「エルヴィン全方位だ。今まで以上の数、同時に接近している。 東側はもう直ぐ来るぞ」
「判った。……発破は、もう間に合わんか! 荷馬車護衛班迎え撃て!!」
待機していた護衛班が 急速に接近してくる巨人を迎え撃つ構えだったが、巨人は目の前にきた人間を無視した。奇行種の類か? と思えたのだが、それが違う事は直ぐに判明した。 何故なら、向かってきた全ての巨人が人間を無視して、一点を見定めていたから。
そして 前方。迫る3体の巨人。
アキラが接近し、真ん中をぶん殴って吹き飛ばしたが、左右の巨人は見向きもしなかった。アキラを無視して向かっていったのだ。怖れを感じて回避した、と言った類ではなく、最初から全く見てなかった。元々巨人にはそんな感情は一切ない。
「野郎ッ オレを無視すんじゃ………… ねぇよ!」
当然見向きもせず、襲い掛かりもしてこなかったのだが、だからと言って逃す理由もないアキラは一蹴。
両足を吹き飛ばしても、それでも這う様にして一点を目指していた。迅速にトドメを刺した後に、アキラはリヴァイの元へ。
「こんだけ奇行種がいるなんて 今までを思えば考えられねぇ。……それに走り方だってきもくねぇ普通だ」
「あぁ。……多分コイツが何かしやがった」
「だが考えてる暇はねぇぞ、リヴァイ。こいつら全部殺る。今考えんのは それだけで充分だろ」
「判ってるじゃねぇか。……その通りだな」
鬼気迫るとはまさにこの事だろう。
人類最強の双角が並び立つ姿は。
二刀を抜刀しているリヴァイ。両の拳を硬く握り絞めているアキラ。
その背にはオーラに似たモノが立ち上っている。まるで巨人を殺した時に発生する蒸気に似たなにか。死んだ巨人の蒸気がそう見せただけだったかもしれないが、確かに後ろにいた者達は見た。
その背の人類の希望。人類の矛を。
接近する巨人は瞬く間に消滅。まさに一騎当千の一言に尽きる。
前方の巨人は全く近づく事が出来ないのだが……、敵は全方位から近づいてきていた。そして、例外なくその巨人達は人間に興味を示さない。興味を示したのはただ一つだった。
そう、狙いは女型の巨人だった。
「まさか、こいつら……女型の巨人を狙っているのか!! 全員! 女型の巨人を死守せよ!!」
女型の巨人の腕に、脚に、胴体に無数の巨人が群がる。
奇行種と見紛う動き、狙われない兵士達、そして 前方の2人の巨人無双。
不幸な事にそれらの影響はエルヴィンの指示にも響き、あと数秒出すのが遅れてしまった。
つまり もう女型の巨人の周囲には大小さまざまなサイズの巨人が群がり 山の様になってしまっているのだから。
「アキラ、こいつら全部外せるか?」
自体を把握したリヴァイがアキラにそう聞くが、アキラは首を横に振った。
「ほっといても中のヤツが喰われる。やっても中のヤツまで殺ってしまう。……塞がりだ。群がるヤツらだけ器用に殺すなんて出来ねぇよ」
「ちっ……。損害はゼロじゃないんだぞ。損害有り、実益ゼロ。啖呵切った挙句のこのザマか」
「言い訳、考えとかないとな。言い訳か。……先に逝ったヤツらの申し訳が立たねぇよ(……それに 死ぬ覚悟まで決めてたって訳か。いや それ位はするか。……アニだったら)」