目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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遅れた上進んでないです。ゴメンなさいm(__)m

スランプ&寒暖差激し過ぎの体調不良気味でございますm(__)m m(__)m


46話

 

「なぁ、今からオレとくっついた状態で一応ロープで縛るんだけど、背中合わせが良いか? それとも背に抱き着く形が良いか?」

「…………別にどちらでも。好きに、して」

「いや、オレだって別にどっちだって良いんだけどよ。アニが決めてくれ。さっさとエルドに縛ってもらうから。お前さんが向き決めてくれた方が早い」

 

 馬の位置にまで移動し、どういった体勢で乗るかの検討が始まっていた。

 

 緊張感がやや薄れかねない会話が続き、軈て ため息を吐きながら、アニが決めた。それはアキラと背中合わせになる、と言う方向だ。

 

 そして、この2人を縛る、と言う大役を請け負ったエルドは緊張感が跳ね上がる。

 

 常に死と隣り合わせの壁外で培ってきた精神力は、調査兵団の中でもトップクラスと言えるのだが、いつ爆発してもおかしくない巨人女の傍にいるのは やはり精神的にきついものがあるのだろう。だからこそ、エルドは顔色1つ変えず いつもの通りにしているアキラはやはり別格だ、と思っていた。……だが、それは直ぐに頭の中で否定する。

 

「(……いや、違うか。いつも通りなんかじゃない。顔色だって、全然別物だ)」

 

 2人が離れない様に ロープで互いの身体を固定する間も、アキラは他愛のない話を続けていた。内容は主に訓練時代の話だった。

 

「(当然、か。短かったが教え子は教え子……だもんな。怒りのぶつける先が、こんな―――なんて)」

 

 今まで巨人を殺す際。アキラの顔は怒りに染まっていた。何度も何度も見たその姿、そして纏う雰囲気。それを見続けた為かいつしかこう言われ始めたんだ。

 

 

 

―――人類の怒りを体現している、と。

 

 

 

 そして、当の言われていたアキラは。

 

『別にそんな大層なものじゃない。……仲間を、みんなを殺されたら怒るのは当然だろ』

 

 そう答えていた。

 ならば、今のアキラは……仲間達を殺した女型の巨人に怒りを向けられるか? と考えたら、そんな簡単にいかないのは判りきっている。怒りと巨人に対する憎しみ。……その相手が自分自身の教え子だった。――本当に残酷極まりない世界だ。

 

「ぅおーう、エルドー。流石に縛り過ぎ。ちょい動きにくい。ロープ引き千切っちまいそうだって」

「っ、あ、ああ。すまん」

 

 アキラの事をフォローをするために、自分達の班が傍にいる。身体ではなく心を守る為に。普段口にする事は絶対にないが、リヴァイ班の全員がそれを意識してきた。それなのに、出来ていない現状をエルドは嘆く。

 両頬を思い切り、挟み込む様に叩いた後。

 

「うっし、これでOKだ。それで、アキラ。オレらからあんまし離れるなよ? ってか、背負ったまんまで馬の操作大丈夫か?」

「おう。この位余裕だって。なんつったって、この愛馬とも付き合い長いし。意思疎通なんて余裕余裕。なぁ? 相棒っ!」

 

 ぽんっ、とアキラは馬の尻の部分を叩く。

 それに反応したのか、応える様に尾を数度左右に振った。

 

「よし」

 

 アキラは、ひょいとアニを縛った状態で馬へと飛び乗った。

 アニも大人しくしてくれていて、脱走しようとする気配は今の所見られなかった。

 

「……アイツも、色々と気を使ってくれたのかね。オレらみたいに」

 

 エルドは、アキラの乗る馬を見て 軽く笑う。

 いつもは、そんな気の利いた対応などしたりしない。大体が一瞥もせず無視したり、露骨に顔を背けたり……と。背に乗せて走ったりはしてくれるが、愛嬌があるとは到底言えなかったのに、あの反応は少なからず驚きものだ。

 それでも、死地を共に潜り抜けてきた愛馬である事は間違いない。助けて、助けられているのは人間だけではないと言う事だ。

 

「ったく、馬がやってくれてんだ。人間様はもっと頑張らねぇと、な!」

 

 エルドも、同じくひょいと馬に飛び乗った。

 

 

「アキラ……。お前が言い出した事でもある。最後まで面倒を見ろよ。メンドクセエ場面にするな」

「わーってるよ、リヴァイ。そっちこそも周囲の警戒怠るなよ、って。オレ今超重要な位置だし。エレンより重要人物になってんじゃね? 大切に扱ってくれよー」

「お前が色んな意味で問題起こす問題児だって全員が知ってる。今更こっちがヘマはしねぇよ」

「誰が問題児だコラ!」

 

 

 こうして、リヴァイ班全員がやや遅れて 陣形に合流しようと移動を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その道中での事。

 

 

「なぁ、卒業したあれからも、ずっと蹴りの練習はしてんのか? アニ。確か憲兵団の方に行ったんだろ? あの辺の連中は まぁ てきとう、サボり、怠惰を貪るの3点コンボな連中だしなぁー。あんな中にいたらこっちまで身体なまる、って感じだ。違うか?」

「……………」

「お、そう言えば さっきの上段蹴りの蹴り込む角度は良かったぜ。小さい的のオレに当てようと工夫してんのがよーくわかった。でも、巨人になっても変わらんみたいだよなぁ、アニ。お前さんにはちょっとした癖があるんだぜ? 軸足に力入れる瞬間に、その癖は顔を出すんだ」

「……………」

「教えてはやらんからなー。ちゃんと鏡の前で練習しとけ。じゃねぇとオレには当たらんぜ。巨人ヴァージョンでも人間ヴァージョンでも。あー、でも何発か当たったんは、わざとだからな! 嘘じゃねぇぞ、わーざーとっ、だぞ??」

「……………」

 

 ただ、アキラが一方的に話すだけで、当然ながらアニからの返事は無かった。

 

 その後ろにぺトラがいた。

 

 いつもの調子で話し続けるアキラ。……何処か哀愁、悲しさの様なものを押し殺す様に感じるのは決して気のせいなんかじゃないだろう。話続ける事で、いつもの様なおちゃらけで話し続ける事で誤魔化しているのだと判る。

 

 誰かを背にして馬に乗ってるアキラを見るのは初めて。そして――あんな寂しそうな後ろ姿も初めて見る。

 

「……(アキラ…… こういう時、どうしたら……)」

 

 どう言えば良い? 心から支えてあげる為には どうすれば良い? 頭の中で何度も何度も自問自答していた。

 

「ぺトラ。あまり考えすぎるなよ。……逆にオレ達が心配かけちまうぞ。アイツに」

 

 グンタがいつの間にか ぺトラの横へ馬を付けていた。話しかけられて漸く気付いたのか、ぺトラは身体をビクっ! と震わせ、反射的に振り返った。

 

「アイツも判りやすいが、ぺトラも判りやすい。……オレ達に出来るのは、アイツの傍を離れない事だ。絶対に1人にしない事。……孤独にさせない事だ。それだけ考えてりゃ良い。……今は、な」

「………判ってる」

「よし。……後勿論だが警戒は怠るなよ。何が起こるかまだ判らない。このまま、終わるとも思えない。……ここにいる巨人(・・)が、アニ・レオンハートだけとは限らないんだからな」

 

 それも事前に話し合ってる事だった。

 アニが巨人だと判明した時に。……女型の巨人の正体をアキラが判っている。話してくれたその時に。

 

 それに元々、知性を持っていると判断した巨人。巨人の姿を纏った人間は 調査兵団の中では最低でも2体はいる、と考えていた。

 

 1体は勿論、壁よりもはるかに巨大な50m級超大型の巨人。

 ただの一蹴りで壁の門を破壊して人類を蹂躙した。

 あれが壁を壊したその日から――壁の中の人類の悪夢が、全てが始まったのだ。誰もが忘れられない存在だろう。

 

 そしてもう1体は 鎧の様に硬い身体を持つ巨人。人間しか興味を持たない筈の巨人が、正確に、狙いを定め、その身体を使って門をぶち壊していた。外壁ウォール・マリアの門程ではないにしても、普通の巨人では到底壊せない強度を誇る門を壊し、銃弾や刃では傷1つ付けられず、砲弾をも跳ね返した程の強度を持つ巨人。

 

 そのままだが、この2体の巨人を《超大型巨人》《鎧の巨人》と名称を付けた。ハンジ辺りが、また愛称を付けるんじゃないか? と思ったのだが、目の前にいないから、と言う理由なのか 相手が人間かもしれない、と言う理由からなのかは知らないが、その2体に関しては特に言ってこなかったのは別の話だ。

 

 そしてその2体には類似点がある。

 

 どちらも煙の様に姿を消した、と言う点だ。

 その後の目撃情報も皆無。そして幾度となく壁外へと赴き、調査を重ねたが見つけられなかった。

 

 それに駆けつけた調査兵団の主力部隊が到着した時には、もう それらしき巨人はどこにもいなかったと言う点も不自然だった。それだけの破壊力を持つ巨人が、あれだけの巨躯を持った巨人が、生き残りの誰も目撃もなく消える等、普通は考えられなかったからだ。……だが、エレンがその疑問の答えを持ってくれていた。巨人から人に戻る時 巨人の身体は蒸発する。

 

 つまり煙の様に消えた――と言うのは比喩なんかではなく、役目を果たした後に実際に蒸発したと言う事だ。

 

 真の目的に関しては未だ不明だが……、それでも少なくとも2人以上はいると判断した。

 そして 今回の遠征で3人目の巨人が現れた。

 

 現れたのは女型の巨人。中の人間はアニ・レオンハートだった。

 

 更に今回の大規模遠征は104期の訓練兵達が入隊して初めてのもの。つまり 残りの巨人がいるとするなら、同じく104期のメンバーである可能性が非常に高いだろう。 アキラがその事が判らない筈がない。

 

 たった数年の教官時代だったが、その中でも一番騒がしく、一番問題が目立って、一番印象に残って、……一番楽しめたのが104期のメンバーだった。

 沢山の教え子達が命を落としたあの日の事も、忘れる筈がない。手に拾い、顔に塗した命の火は、まだ残っているから。

 

 

 それでもだからと言って、しなければならない事が判らない程アキラは自分を見失ってはいない。今生きている仲間達が何よりも大切だから。

 

 

「なぁ……アニ」

 

 アキラは、ずっと他愛のない会話、と言う名の独り言を続けていたが、ここからは違った。アニ自身も空気の違いを感じ取ったのか、気が付いたら俯かせていた表情をゆっくり持ち上げていた。

 

「お前は……ここじゃない 違う世界(・・・・)から来たのか?」

「………ッ」

 

 少しだが、反応したのをアキラは背中越しに感じる。

 肯定だと受け取り、返事を待たぬまま、続けた。その先は アニにとっても興味が尽きない内容。

 

「そう、か。……なら、お前もオレと同じ(・・)なんだな」

 

 アキラと言う男の正体に直結するかもしれない情報だった。

 此処から生きて帰れるとは、アニ自身は思っていない様だが、それでも、死に逝く自分には必要のない情報だと頭では判っていても、耳を傾けてしまう。そして その動作が ほんのわずかな動作がアキラに伝わる。

 

「オレもそうさ。ここじゃない違うトコから来た。……これ話した事あるの、結構少ないから黙っててくれよ?」

「…………」

 

 誰かに話す様な事が出来るとは思えないのに、何故そう伝えるのか、と疑問に思う間もなく、アキラは続ける。

 

 アキラ自身が、突然この世界に落とされたと言う事。自分自身は全く違う世界から来たと言う事。……巨人とは全く関係のなく、この世界に比べたら 楽園とも言える程平和な世界から来たと言う事。

 

 そして、巨人を薙ぎ倒す力―― それも突然得た、と言う事。

 

「妙ちくりんなヤツだよなぁ。なーんか、頭ん中で声がしたと思ったら、巨人蹴っ飛ばせー! だもん。出来る訳ねー、って当然思ってたんだけど、そうも言ってられなくてさぁ。なんせ目の前で喰われそうな子がいたからな。……んで、やってみたらこの通り」

 

 いつの間にか、手に持っていた拳よりも一回りは小さい石を軽く上へと投げた。……本当に、まるで石をパスするかの様に、放り投げたそれは、まるで矢の如き速度で空高くへ飛び、そして 見えなくなった。

 

「マジで世の中不思議な事だらけだ。……その上、理不尽で残酷。信じられねぇくらい残酷な世界だって、痛感してるよ。お前のいた世界(・・)ってのはどうだった? ……この世界より良い所なのか? 言うまでもない、かな。……帰らなきゃいけない、って気合入れてたもんな。……お前は、お前達は 帰らなきゃ行けない。……そうか」

 

 軽く投げた方の腕をぐるん、と回して 首を左右に折り、コキコキッと鳴らす。

 

 

――ここまで話をした意図は一体なんなのか……? 死に逝く者への餞別のつもりなのか? 

 

 

 アニは、不思議と嘘を言っている様には聞こえなかった。嘘を言う必要が今アキラにあるとは思えないし、何より あのメチャクチャな力を考えたら、と思えばそこまで衝撃ではないから。だが、それでも今自分にそれを話す理由。その真意が判らなかった。

 

 

 アキラは、また会話を区切り――そして、空気を更に重くさせて アニに訊いた。

 

 

「―――なぁ、他にいるヤツは、アニと同じく……オレの教え子、なのか?」

「……ッッ」

「そっか。ありがとうよ。……それだけで充分だ。もう、十分」

 

 

 アキラの真意が、アニには今判った。

 嘘偽りのない言葉で、更に間違いなく聴き入りそうな内容の話を訊かせて、更に意識を集中させる。今までのありふれた会話。いつもの砕けた会話だけだったら、馬の耳に念仏、馬耳東風だったかもしれない。話に興味を持たせて、それでいて反応を感じる為に話をした。身体を密着させているこの状況も自分の変化を見極める為に都合が良いだろう。並外れた感覚を持つアキラなら、些細な違いをも容易に読み取るだろうから。

 

 

「悪いな、アニ。……オレはお前らの事だって大切に思ってた。バカばっかりやったり、面白れぇ事ばっかりやったり、ハゲ…… キース教官やオレの言う事訊かないヤツも多かった。苦労した分、その分……思い入れがある。アニだって睨んでばっかで正直可愛げねーってなんど思った事か……。……でもよ、全員が 壁の外(こっち)側に来るかもしれないヤツらなんだ。そりゃ熱心に見るさ」

「………」

 

 アニは、アキラの気持ちが伝わらない程 まだ心は残っていた様だ。

 アキラが知る由もないが、彼女に、彼女達にとっては壁中の人間は 悪魔の末裔と呼ばれている民族。何を躊躇する必要があるのか、と。

 

 だが、アキラは違う。話の全てが本当なのであれば、彼は壁中の人間などではないのだから。

 

 だから、表情を読ませない。感情をあまり出さない。他人と極力関わらない様にしていたアニも、あの訓練時代に 感情を激しく見せてしまったのかもしれない。その時から何処か、壁中の人間とは違うと勘付いていたのかもしれなかった。

 

 

 そして、アキラは腰にある銃を取り出した。

 込められているのは音響弾、そして器用に片手でもう一丁の銃も取り出す。こちら側は信号弾の込められた銃。

 

 今度は行動の意味がアニには判らない。

 ただ、感じたのは伝わってくる体温が、急激に上昇でもしているのではないか? と思える程熱くなっていた事だった。

 

「お前達にどんな事情があるのかは知らん。譲れない想いってヤツも、肌で感じた。……それでもな。どんな理由があろうと――――」

 

 ぎゅ……と強く握られた銃。信号弾の込められた銃を上へと持ち上げる。

 

「オレは――――」

 

 ずどんっ! と言う音が響いたかと思えば、空高くに煙弾が撃ち放たれた。……それに込められたのは灰色(・・)の煙弾。

 

 アニは、はっ と顔を上げ 周囲を確認した。

 

 先程まで普通に並走していた筈なのに、いつの間にか アキラの周囲にいた調査兵団リヴァイ班のメンバーは陣形をとって、いつでも立体機動装置を使える様にスタンバイしていたのだ。

 

 そして何より――次の瞬間には 背後で轟音が聴こえる。巨大な蒸気、そして 熱気を感じた。何度も何度も間近で感じた事のある気配である為、アニは()がやってきたのかが直ぐに判る。

 

 それが放ったのは ただの蹴り。

 アニの時は、ここにある巨大樹を1本薙ぎ倒しただけだった。それでも驚異的な脚力だと言える。他の巨人達には到底出せない破壊力。……だが、現れたそれ(・・)は文字通り、見た通り桁が違った。

 

 振るった脚は、大地を破壊した。一面の巨大樹を削り取り、その熱気は炎をも生む。

 

 

「こ、こいつは……ッッッ!!!」

 

 

 後ろで、エレンの声が響いてきた。

 どうやら顔見知りなのだろう。 否、エレンだけではない。あの日を生き延びた全ての人間が、それを見た全ての人間が忘れる事の出来ないであろう面。

 

 

 

――第89回 壁外大規模遠征にて、超大型の巨人と遭遇。

 

 

 

『うおおおおおおおおお!!!!』

 

 

 

 大地を破壊する超大型の巨人。到底この世の物とは思えないだろう。その姿はまさに 《破壊の神》。

 

 だが、神であろうと悪魔であろうと、自分達がする事は変わらない。

 リヴァイ班全員が 取り乱す事なく 行動に移れていたから。

 

 そして、当然ながらアキラも―――。

 

 

家族(・・)に手を出すヤツは、許さねぇ」

 

 

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