目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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遅れて御免なさいm(__)m
ただのスランプです。おまけに進んでませんm(__)mm(__)m


47話

 

 超大型の巨人の出現。

 それはアニも見ていた。そして何が起きたのか理解していた。

 だからこそ、いつもの倍増しに高速に頭が回転する。

 

 

 このタイミングで巨人になる――。

 

 

 そんな話は聞いてないし、していないのにも関わらず、アイツ(・・・)は巨人になった。まだ息を潜めていなければならないと言うのに。まだバレる訳にはいかないのに。

 

 エレンの奪還を失敗した自分に代わり、あの巨人になった。

 

 

 

『何が名誉●●●●だ!! 何が選ばれし戦士だ!! ●●●も■■■■■も全部クソッタレだ!! 全員嘘っ吐きで!! 自分のことしか考えてないくせに!!!』

 

 

 

 アニが何故かこの瞬間に思いだすのは数年前の記憶。

 とある者達と、ちょうどこちら側(・・・・)の世界へ来た時の記憶だった。

 

 

 あの全てが始まった日から今日まで――殆ど全てに嫌悪感があった。

 かつての自分の世界においても、そして この壁の中の世界においても変わらなかった。

 

 人間とは全てが利己的であり何より残酷で残虐。

 

 その本質には残虐性が必ず息を潜めている。一皮むけば誰もが化け物になりえると言う事。それは大なり小なりあるが、きっと本質は変わらない。ただ、大きな力を持つ者であればあるほど その範囲が、規模が、もってる力に合わせて大きくなるだけだ。

 

 他人より自分の利益を優先させる。周りがズルをすれば一緒に流される。そんなのは屑だと自分でも判っている。訓練兵の時代の時は、大体がそんな者達だった。

 

 でも、それが普通の人間だ。――それ以外の行動を起こせる者が異常な人間。珍しい人間。特殊な人間なんだから。

 

 だから、自分だって同じ。同じだからこそこうも思う。流される様なヤツでも、……例え大きな力を持っていて、全てを壊そうとする者であっても、……人間だと思われたい。ずっとそう考え、思い続けていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、今現在。

 

「……………………」

 

 目の前の巨人を、巨大樹に迫る程の巨大な、人間を見下ろし虫けらのように踏み潰す、踏み潰せる程の力を有する強大な巨人を前にしても、全く退かない男達を、アニは見ていた。

 

 そんな集団、数少ない特殊な人間の集団の中で、更に極めて異端な者がいる。

 

 大きな力を持っている癖に、自身の保身や利益に走らず、そして 自分の本音や本性さえ隠さず曝け出す。不思議と、ウソを言っていたりしてないと理解できた。

 

 そんな人だったからこそ、考えを改める様になってしまったのだと、アニは思えた。

 

 

「(―――なんで、今さらこんな事を考えて………?)」

 

 

 そう、気が付けば、目で追っていた時期があった。

 そう、気が付けば、考えていた時期もあった。

 

 いるだけで、息をするだけで、どうしようもなく吐き気さえする場所で、初めて夢中になれた気がした。

 

 この世界にきて、初めてムキになってつっかかった相手だった。あの笑顔が苦手だった。何もかも判ってくれる様な、理解してくれる様な、そんな得体のしれない力を含んでいるかの様な笑顔だ。

 

 だけど、皮肉にもその苦手な笑顔が全てを受け止めてくれた。そして本当に夢中になれた気がした。

 

 それは、巨人となって相対した時にも変わらないのかもしれない。

 

 本当の自分を、正体を本当の意味で全てを曝け出した。

 そしてぶつかった。ぶつかった結果――彼はそれをも受け止めた。

 きっと、作戦が無ければ最後までぶつかれたと思う。きっと自分が動けなくなるその瞬間まで。殺されるその瞬間まで。いや、殺しはしなかったと思う。自分だと確信した時に、明らかに表情が変わったから。

 

 

「さて、―――どうする?」

 

 

 そんな時、考えて込んでいた時に声が頭に直接響く様に割って入ってきた。

 どれだけ混乱していても 聞こえてくるんだとアニは感じる。この人の言葉は。

 

「この状況だ。逃げようと思えば逃げれるんじゃないか?」

 

 周囲は大混乱。

 巨大樹の森は盛大に炎上。見渡す一面が森だから 炎は踊り狂う様に広がり、周囲を蝕んでいった。落ち着いていたのはリヴァイ班のみなのか、炎と巨人の轟音以外にも、悲鳴ににた声が微かに聴こえてくる。

 

 あの巨人が発する超高温の蒸気の威力はアニ自身もよく知っている。

 

 あの巨体に目を奪われがちだが、最も厄介極まりないのはそこにある。近づこうとすれば、身体は焼かれる。近づかなければ、ただ踏み潰されるのを待つだけ。立体機動装置で宙を飛んで迫ってもあの蒸気で全てを吹き飛ばされてしまう。

 

 逃げる以外の選択肢は普通は無く、更に言えばここで巨人化して あの超大型の巨人の方へと逃げれば、追ってはこられない。つまり、この場を離脱するのには最適な状況。女型の巨人の戦力が減るくらいなら、エレンを今諦めるのも必要かもしれない。体勢を立て直す必要がある。

 

 考えれば考える程、今離脱するのが最適の手段。それしか無い。

 

 のにも関わらず―――。

 

「(動け、ない……)」

 

 アニは動けずにいた。簡単な筈なのに。少し身体に傷を作ればそれで良い。身体に縛られているが、そこまで厳重に拘束されている訳じゃない。手も、指も、動く。巨人になる事も出来る。なのに――動く事が出来なかった。

 

 

「とりあえず、オレの背にいたらアニが危ない。オレも動きづれぇし。っつー訳で、木に縛らせといてくれ。……あぁ、別に逃げても良いが、オレ達の邪魔しようとするなら。……もう手加減はしねぇよ。もう腹ぁ括ってる」

 

 

 アニ自身の想いもあるが、動けなかったのは それ以上に身体全体から放つ凶悪な殺気。具現化されたかの様なその気配にあったのかもしれない。

 

 そしてアニは無言のまま アキラの背から降り、木に固定された。

 

 固定自体は大して強くはないから苦しかったりもしない。巨人化できるアニにとっては無いも同然だと言える。だが、出来なかった。

 

「さて……、アニの次はアイツ(・・・)か。お前が何処の誰なのか判んねぇけどよ。……お前が元凶の筈だろ? あの日…… 壁をぶっ壊してくれたのはお前だろ?」

 

 アキラは、アニを降ろした後 あの巨体を見上げた。

 確かに巨大樹の大きさが80mである事を考慮して 見上げてみると 目算ではあるが情報通りの50m超。あのウォール・マリアの壁から顔を出したのも頷ける大きさだ。

 

 そして、全員が超大型の巨人の特性について理解しだした。

 

 

『ぐああああああ!!』

 

 

 立体機動装置を使い、様子を見る為に間合いを詰めていた兵士達が全員吹き飛ばされた。

 

 あの超大型巨人は動いていないが、全方位への高温の蒸気を撒き散らせ、ただのそれだけで蹴散らした。射出されたアンカーも容易に吹き飛ばし、近づく事も出来ない。……近づき過ぎた者は、炙られ、飛ばされながら全身を燃やされてしまっていた。

 

 どうにか救出する事は出来た様だが、一目見ただけでも重症だと言うのは判る。重度の火傷を負ったと言う事が。

 

 超大型巨人が現れた時の大爆発程の規模の高温蒸気では無いのだが、何時くるか判らないそれを前にすれば、当然近づく事が出来ない。更に炎も迫ってきている。普通に考えれば撤退しかない。

 

 だが、あれを放置する訳にもいかないのも事実。

 あの巨人が全ての元凶。そして現在確認されている内の1体。

 あの巨人が壁の門を破壊できる巨人なのだから。

 

 

「アキラ」

 

 リヴァイが、班の全員が戻ってきた。皆が同じ気持ちなのだろう事はその表情だけで判る。……が、打てる手が少なく歯痒い気持ちも見て取れた。

 

「どうやらあの木偶には、簡単に近付く事も出来ねぇらしいな。周りに燃えるものが多すぎるのも問題だ。この火に囲まれたらあの蒸気じゃなくても丸焼きになる。タイミングを見誤ればそれだけで全滅だ」

 

 迫ってくる超大型巨人と炎。その二つが迫る以上、普通は選択の余地はなし。《撤退》しかない。……普通なら。

 

「おう。リヴァイ。なら これからやる事は1つ。簡単簡潔」

 

 アキラはぐるんっ、と腕を回して あの超大型巨人を見た。

 

 全員がそれを見て大体察した。何を考えているかをだ。それを察したと同時に表情が更に険しくなる。それが特に顕著に表れているのがぺトラ。

 これまでの付き合いから、こういう場面で、アキラが何を言うか 大体判るからだ。背後に迫る脅威をどう対処するか。

 今までとは規模が圧倒的に違うと言うのに、変わらない。

 

 更に仲間達が危険である事。この巨人の災害を終わらせる可能性があると言う事。

 

 それらを考えたら、アキラが言う事は1つしかない。

 

超大型巨人(アレ)を思いっきりぶっ飛ばしてくる。その間に体勢を整えろ。つーか、少なくとも森出ろ。平原で巨人とやるのはしんどいかもだが、焼けるよりはマシだろ?」

 

 殆ど想像通りの答えが返ってきて、より表情が険しくなったぺトラは激昂する。眉間に皺を寄せながら、アキラに急接近した。

 

「何馬鹿な事言ってんのよ!!!」

 

 ある意味いつも通りのやり取り。壁外調査の時は本当にいつも通りで恒例と言えるかもしれない程の。

 状況がどれだけ悪くとも、この光景だけは変わらなかった。

 

「適任だし、これはチャンスでもあるだろ? アレをどうにか出来りゃ壁壊されるリスクも減る。アイツには立体機動装置が使えないってのも最悪だ。正直、アレ無しだったらリヴァイにだって余裕で勝てるぜ、オレ」

「ほう。馬鹿なガキなりに考えてるみたいだな。それは面白い。で、試してみるか?」

「おーおー、OKOK! 白黒つけっか? この根暗顔!」

 

 何故だかリヴァイvsアキラな流れになってしまいそうなので、もう一度ぺトラが叫ぶ。

 

「だから、何馬鹿な事言ってんのよ!? 今日、アキラどれだけ戦ってたか判ってる!? もう、1時間超えてるんだよ!? 先ず撤退が先決でしょう!? 森から離れた所で体勢を整え直す! あの脚なら全然逃げれる! 逃げ切れる! だから、ぜ・ん・い・ん で!」

 

 女型の巨人との戦闘時間。

 捕獲を主にと考えていた為か、普段よりもはるかに時間が掛かっていた。それに加えて反撃も受けている。此処から先は未知の領域であり、どうなるか判らない、と言う思いがぺトラの頭の中で警鐘を鳴らせていた。

 さっきは大丈夫だった。……でも次も大丈夫だとは言えない。誰にも言えない。それが答えだった。

 

「あー……んー……」

 

 アキラは今度は直ぐに答える事なく、頭を掻いていた。

 何処か迷っている様な感じに見えた。

 

 そして、その後はあの超大型巨人を見た。

 

 どうやら何かを探している様で、頻りに周囲を見渡していた。そして何よりも速度が普通の巨人より圧倒的に遅い。踏み出す一歩の歩幅は比にならないくらいデカいが、動きそのものは鈍足だ。それに少しだけ安心した様にアキラは振り返っていう。

 

「『活動限界時間(アレ)、実はぜーんぶ嘘だったんだぜっ!』 ……って言えないよなぁ。そもそもある意味、間違ってないっちゃ間違ってないんだし。……さて、どういえば良いか。それに今 一から説明する時間は流石になさそうだし」

「………は?」

 

 ぺトラだけではなく、エレンやほかのリヴァイ班の全員が呆気にとられた顔をしていた。

 

 言っている意味を理解できているのはリヴァイだけだった。

 

「今まで言ってた時間ってヤツを超えて、更に超えていったら、身体が脆くなる~とかじゃなくてだな……。 んー、アレだ。どんどんオレがオレじゃなくなる(・・・・・・・・・・・)、ってヤツだ。……あー、なーんか自分で言ってて恥ずいんだけど。……悪ぃ、それ以外の言葉見つからねぇんだわ」

 

「「「「は?」」」」

 

 言っている意味が判らない。ぺトラだけが興奮してた状態だったが、それ以外のメンバー全員も同じ反応だった様だ。視線が一気に集中していくのが判る。

 

 当然だろう。自分が自分じゃなくなる、なんて言葉を素で言ったとして、それを直ぐに『それ、判ります』なんて言える者はこの場にはいない。それにアキラが突拍子もない事をいきなり言い出す事は少なくなかったが、それでも何言ってるか判らない程だった。

 

 そう……色々(・・)と調査をし、確認をしてきた者達以外には判らない。

 

 

 

 その間にもあの巨大で鈍足な巨人は 周囲を火の海にさせながらゆっくりと迫ってくる。

 

 

 

「それに言い忘れたけど、今回、1人で行く気はねーって。だよな? リヴァイ」

「あぁ。一応ここから先はオレへのエルヴィンの指示はねぇからな。オレの判断で動く。オレとお前の2人だ」

 

 リヴァイはそう言うと一歩前へ出た。

 

「お前らはアレと距離をとれ。アレが現れた以上陣形もクソもねぇ状況とも言えるが。一先ず森を出る事を優先し、当初言った通り森の西方向へ向かえ」

 

 それがリヴァイ兵長の指示だったが、そこにエレンが割って入った。

 

 

「オレも使ってください!!」

 

 

 心臓を強く叩き、進言するエレン。

 

「バカタレ。お前はさっき一仕事買ってくれただろ。あのおかげでアイツを……、アニを捕まえる事が出来た。もう十分だ。休んでろ」

「仕事と言うのなら、アキラ教官は身を削りながらずっと戦い続けている筈です! オレもやります! まだやれます! それに敵の狙いがオレであるのは明白! アニの……、女型の巨人の時の様に、少なくともオレは囮に使えます。お願いします! 使ってください!! オレは心臓を―――」

 

 

―――捧げる。そのつもりで戦ってきた。 

 

 エレンの気持ちはわかる。判らない程、アキラは薄情ではない。だが、それでも言う事はただ1つだ。

 

 手を伸ばして人差し指、親指に力を籠る。

 そして 巨人になった後特有の少々皺が普通の倍増しで多くなってるエレンの眉間にばちんっ! と一撃を決めた。

 

「いたっっ!」

「バカタレその2だ。オレぁあん時言っただろうが。『お前らの心臓なんぞ、いらん!』 ってよ。忘れんじゃねぇっての。んな大事なもんはお前の為だけに使え」 

「で、でも……」

「でももへちまもねーっ。エレンの巨人の力は確かにつええってオレも思ってるが、リスクの面がデカすぎ。1回巨人になってんのにまた巨人になって、それで戻って……ってなったらもう次は動けねぇだろ」

「っ、でもっ!」

「だーかーら! でもじゃねーっての! 駄々こねるな」

 

 アキラは エレンの首筋チョップ。それでエレンは静か?になった。

 強制的に静かにさせたその後、リヴァイ班のメンバーを、グンタを、エルドを、オルオを、そしてぺトラを。其々の眼を見た。

 

「お前らの任務、最優先がなんなのかって……忘れてる訳、ねぇよな? 忘れてるなんて言ったら、説教だぞ。今度はリヴァイが」

「鳥頭なのはお前だけだ」

「うっせ! 兎も角だ」

 

 アキラは、ひょいとエレンを、ぺトラのいる方へと投げた。

 無言でエレンを受け取るぺトラ。

 

「こっちは任せろ。だから、エレンの事は任せたぜ? 直ぐ戻ってくるからよ」

「……それ、もう信じにくい。最初のヤツも、全然戻ってこなかった」

「ゔ…… だ、だいじょーぶだって。今回はリヴァイもいる。潔癖症だし、問題ないって」

 

 問答がこれ以上続くのは宜しくない。

 リヴァイは軽くため息を吐いた後に、アキラ同様に全員を見て言った。

 

「………コイツのお守が今回の一番の疲れだな。だが、お前ら、悠長に黄昏てる暇はねぇ。もう直に追いつかれる。いや、攻撃範囲内に入るぞ。……お前ら、あのデカいのはオレ達が相手する。これは命令だ。従え」

 

 有無を言わさぬいつもの迫力で命令を下し、そして背後を指さす。

 当然、そこにはあの超大型の巨人見えている。

 一定の間隔で放ってくる高温の蒸気が迫ってくる。

 確かに、時間がもう無い。アキラとリヴァイの力、そして判断を疑う訳もない。それが最善だと言う事も。

 

 意識を失っているエレン以外の全員。最後まで文句の1つや2つを考えていたぺトラも例外ではなく、声を揃えた。

 

 

 

『勝利を信じています。兵長、アキラ』

 

 

 

 




次くらいで街に戻る……… かなぁ?
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