50話を超えれた! という訳で 少々物語の展開が早くなった様な気がしますm(__)m 下手な展開だと思いますが( ;∀;)
50mの高さの壁。人間の世界を囲い、外敵から守ってくれる唯一の砦。
そして その上から見る景色は、思いのほか美しい。壁の外側に人を喰らう悪魔の様な巨人が蔓延っているのを忘れさせてくれる程に。
ここからの眺めは、この世界が以前までいた世界とは程遠い場所である、と認識を改められた場所でもあった。太陽があり、大地があり、広大な自然が広がっており、その中であの巨人達が蠢いているのだから。
そして今、外にいる巨人達は ある意味では立場が逆なのかもしれない。
見つけられたら、即座に殺されるのだから。
巨人には怖れも怒りも悲しみもない。人を見つけたら殆どの行動が襲い喰らう。故に逃げようとしない。そんな気すら起こらない。ただ愚直に喰らう為に進み続けるのだ。
その愚直に進み続ける巨人を屠り続ける者が壁の上にはいた。この巨大な壁よりも強固で、どんな刃よりも鋭く、どんな砲弾よりも強力な男。
「ったく……、もーちょっと怖れってのをしっててもらいたいもんだ。そういや イルゼん時の巨人はちょいと話せたらしいし」
もう 何度目になるだろう。
アキラは 何度か地上へと降りていた。勿論壁の外側、巨人が支配する側にだ。とある理由で壁の上に来た。そして 外を見ていると時折姿を見せるのは巨人だ。壁に近づく巨人を例外なく葬り続けた。
そしてその姿は、まるで動いていないと落ち着かない、と言わんばかりの様子だった。
だが 以前までであれば、巨人を見掛けたからと言って直ぐに行動したりはしなかった。普通の巨人は壁を越えてくる事は出来ないからだ。
ウォール・マリアの崩壊。そしてシガンシナ区への侵入。それらの事実もあり、なるべく巨人を見掛けたら 即殺処分するとアキラの頭の中では決めていたのだ。
身体を動かし続けながらも考える。犠牲者を少しでも減らす事を。
巨人の絶対数は判らない。例え星の数程いるかもしれないが、それでも 少しでも少なく、少しでも、その巨人の餌食になる人間が出ない様にと。
「おい、アキラ」
「ん? おぉ リヴァイか。……ひょっとして ハンジ達も来たか?」
「ああ。……今引っ張り上げる所だ。呼ぶのに苦労した。相応の成果を求めるぞ」
「コラコラ睨むな威嚇すんな。確かにアニは敵側かもしれん。……が、オレの教え子でもあるんだぞ。信じてやれ。っつーか、嫌でも信じる様になる。―――オレ自身がそうだったんだ」
「その説明を最初にオレ達にとっととしてりゃ、悩む必要も無かったんじゃねぇのか?」
「……そりゃ ごもっともだな。まぁ もう来ちまったようだし、しゃーねぇわ」
上にあがってきたリヴァイ。アキラと話をある程度した後に、その視線を変えた。
その視線の先にはハンジが、そして共に上がってきた男がいた。到着したのを確認すると、リヴァイは一歩下がった。
男の顔がハッキリと見える位置にまで近づいた所で、アキラは手を上げた。
「おーっす。エレンの審議ン時以来だな? えーっと、ニック……だったっけか? あんたの顔はよく覚えてんのに、中央関係の連中って大体似たり寄ったりだから、名前までは自信ねーんだ」
「……一体何の用だこんな所にまで連れてきて。生憎私は暇ではない。今も救いを求めている信者達が私を待っているのだ」
共に現れたのは、宗教団体 ウォール教の司祭ニック。
ウォール・マリア、ローゼ、シーナの巨大な壁を神授のものとして、崇拝している団体のトップだ。
現状 街では調査兵団の支持率の方が圧倒的に上なのだが、ウォール教は 壁の内側へ内側へ行くほどにその人気は絶大になっている。
即ち、調査兵団の活躍が間近で見られる壁に最も近い場所での威光は小さいが、中心部での権力は相応に高い。特にこの壁絡みの意思決定権は王政の次とも言われている程だ。
「ふーん。
「っ……。ふん。今はどうでも良いだろ。早く要件を話せ」
ハンジは、2人のやり取りを見ていて強く思う所がある。以前から何度も何度も思っていた事ではあるが、今脳裏に改めて過った。
もしも――仮に今ここにアキラがいなかったら。否、アキラと言う人物そのものが この世に存在しなかったら? という所だ。
ウォール教はこの壁に口出しをする権限が強い。そして、それは王政に与えられたものだ。今までも、壁の強化、そして 地下道の建設。それらを拒んできた。
だが、アキラが加入してから風向きが完全に代わった。
代々の調査兵団は 成果を上げる事はおろか、悪戯に兵士達を死に急がす様な兵団だった。
その兵団がたった1人の兵士の加入により、姿形を変える。
真の意味での人類希望の光へと。
調査兵団が結果を残し、巨人に勝利し続けるという100年の歴史的に見ても前代未聞の成果を上げ出してから、民衆の意を少なからず組み始めた。
――人類は巨人に勝つ事が出来る。
ウォール・マリアを突破されたあの悪夢の日から今日まで、希望の灯が消えなかったこそが、彼が現在も継続して残している最大の戦果だと言える。
そんな男だからこそ、このニック司祭は、この壁上にまで登ってくる事を拒みきれなかったのかもしれない、とハンジは思えた。壁に近づくだけで目を血走らせる男が 登る事を決意したのだから。
「思いの外効果抜群だったんだよね。アキラに頼まれた伝言を伝えると」
ハンジはニックを連れてくる前に、こう言ったのだ。
『■■■が現れた。壁の秘密について話がある』と。
「壁の秘密……ねぇ。ありきたりな謳い文句と言うか誘い言葉と言うか。ウォール教だからかな? 程度だったんだけどなぁ。何のことだと思う? リヴァイ」
「……さぁな。アイツが来てから、正直驚く様な事はめっきり減っちまってる。たまには悪くねぇんじゃないか。それにアイツは言った。『黙ってみてれば直ぐに判る』ってな」
「そりゃそうだけどさ。……まさか、ニック司祭の顔色があそこまで変わるとは思わなかったし。想像以上の反応だったから、気になってきたんだよね。アキラが言う事って、突拍子なのも真面目なのも高確率で物事の真相に迫れるから、言われるまでもなく黙ってみてるけど」
「……お前は別だろ。今までで黙ってた試しあるか?」
「それは今回からにするさ。エルヴィンは来られなかったんだから。その分私が見てあげないとだし」
ハンジは、ニックを強制的に、強引に引き摺って連れてきた訳ではない。
ニックを連れてくる際にアキラに言われた通りに、先ほどのセリフを耳元で囁いただけだ。ただのそれだけで効果はあった。
後は、リヴァイがアキラに言われた様に、ただ見守るだけだ。黙ってみていれば何かを知る事が出来ると。
「要件っつっても、大体は判ってるんだろ? ハンジのヤツに伝言頼んだ筈だが」
「………壁の、秘密」
「おお。それだそれ。オレも正直半信半疑だったんだけどよぉ……。試してみりゃ一発だったわ。普通は試す気にもならねぇよな」
アキラは、右手を地面に突き刺した。……様に見えただけで、空いていた小さな切れ目に小指から人差し指まで差し込んだ。メコッ、と音を立てたかと思えば、まるで窓を開くかの様に壁の一部が剥がれた。
丁度大きさは人が出入り出来る扉程の大きさ。 恐らくは壁が出来てからずっと暗闇だった筈だろう。その中に 107年ぶりに太陽の光が注ぎこまれる。
「正直、オレも此処を傷つけるのは嫌だったんだぜ。お前らの様に崇拝してる訳じゃねーんだけどよ。
開いた先に見えたのは、大きめではあるものの これまで何度も何度も見てきたものだった。見間違える事はあり得なかった。
「……最初はな。天辺から見てる訳だから、ハゲ頭かと思ってたんだが。
「っ、や、……や………」
それを確認したニックは、ガタガタと身体を震わせた。
「やめ、ろ……」
「あん? 壁の秘密を知りたくて来たんだろ? ウォール教だもん。壁の事は隅から隅まで愛でる。まさに壁様」
「やめて、くれ……」
「何でだ? 特大スクープじゃねぇか。信仰者も驚くだろうぜ。……何と、この約100年。巨人のせいで人類は虐げられ、惨めな思いをしてきたってのに、とんだどんでん返しだ。常識もぶっ飛ぶ」
「やめろ!」
アキラは 立ち上がって、ニックの胸倉を掴み上げた。
掴み上げ、強引に開いた壁の中へと顔を向けた。
そこに見えたのは、頭。……本当に頭だった。
「まさか、壁が巨人で出来てるなんてなぁ! この世界に来て驚きの連続も連続。完璧に驚きに耐性が出来ちまったってのに、こればっかりはたまげたってもんだ! 閉じて 身体動かしてりゃ、落ち着くんだが コレ開くたびに色々頭ン中がぐちゃぐちゃになっちまうよ!」
そう、壁の中には巨人がいた。
それも この壁の高さを考えると50m級の巨人。悪夢が始まった切っ掛けである超大型の巨人と同等の体躯を持つ巨人だ。
「止めろぉぉ! こ、この巨人に日の光を当てるなぁぁ」
アキラは、ニックの要望には応えず、ただただ至近距離で睨み続けた。
「それよりもニック司祭さんよぉ……。アンタ、
「っ……っっ……」
「見えるなら、応えろよ。お前らは、
「う、う、うぐっ…………ウっ げぼぉぉっ」
ニックは堪えきれなくなった様で、嘔吐。吐瀉物を巨人の頭にぶっかけた。
「ゲロまみれになっちまって。普段なら笑ってやっても良いな。巨人の頭にゲロを吐くヤツなんざ、これも人類史上初の快挙ってヤツなんだしよ」
リヴァイがゆっくりと アキラの方へと歩いてきた。
もう黙っているつもりは無い様だ。アキラもそろそろリヴァイが来る事が判っていた様で、声が聞こえるよりも早く、剥がした壁の一部を完全に取り払い、ニックの事も解放した。リヴァイが来てよく見える様に。
「御覧の通りだリヴァイ。オレらは今まで巨人を頑張ってやっつけてた訳だが……、帰る家は どうやら巨人に守ってもらってたらしい」
どさっ、とアキラは座り込んだ。
「らしいな。正直驚いた。……随分久しぶりな感覚だ」
「だよな。オレだって同じ気持ちだ。リヴァイを驚かせた、ってだけでしてやったりなんだが……今はそんな気、欠片もねぇわ」
「ふん。お前が いつもと違うって事くらい判ってたつもりだ。……が想定を遥かに超えた事案だな。エルヴィンのヤツもここに来てりゃとっとと知恵の1つくらい借りるんだが」
「……それはまた後々でってヤツだ。んで、ハンジはどうなんだ? コレ見ても興奮するか? 思わず巨人が寝てる閨だし、そこへダイブしちゃいたくなっちまうか? ああ、行くんならちゃんと戸を閉めといてやるから安心しろよ」
いつもの調子で。なるべくいつもの調子で話そうと努力をしているつもりだったアキラだが、その緊張感は 何処となく声色に現れていたらしい。ハンジもいつも通りにはいかなかった。
「……此処だけ巨人がいるって訳じゃないよね。たまたまアキラが開けた所にだけ巨人がいた、って訳じゃないんだよね」
「あぁ。数カ所で確かめたが、全部いたよ。―――壁=巨人だ」