目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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何だかビックリ( ゚Д゚)してます。
ちらっと覗いたら、お気に入りの登録者が3500を超えてて……。あれ?あれれ?って感じですm(__)m 
何が起きたのか、判んない~って混乱してますが

兎に角 登録ありがとうございますm(__)m


まだぜーんぜん進んでないのがアレですが、何とかやっていきますので温かい目で (*- -)(*_ _)


52話

 

□□ 調査兵団宿舎 □□

 

 

「……そんな事があったんだ」

「あぁ。色々と常識が覆された気分だろ? あったま痛ぇよなぁ」

 

 だらしなく椅子に腰かけたアキラは、深くため息を吐きながらそう言っていた。

 ニック司祭との一件を話していたのだ。

 そして、その相手はイルゼ。

 

「でもさ。確かに私も聞いて驚いたのは驚いたし、驚愕って言葉が一番しっくりくるんだけど、よく考えて、正直に言ってみれば そこまで驚いた事でも無かったかな? って言うのが感想かな。やっぱり」

「んあ? なんで? だって壁ン中に巨人がいるんだぞ。普通ありえねー! って思わない? 巨人が護ってくれてんだぜ? オレらを」

 

 かくっ、と頭を45度に傾けながらアキラはイルゼに訊く。

その問いにまるで呆れた、と言わんばかりにイルゼは先ほどのアキラよりも深いため息を吐き、答えた。

 

「わかんないかなぁ。だって、私にとっての一番の衝撃は、アキラとの出会いだったんだよ? いきなり どかーーんっ! だもん。目の前にいた巨人もまるで紙切れみたいに飛んじゃったし。比較的小柄とは言っても6m級が飛んじゃって。……あの時の光景に比べたらやっぱり衝撃度で言えば落ちるよ。だってありえないもん」

「あー……、んーー……。そりゃ、そうか。そーだよな。最終的には似た様なの、皆いってるし」

 

 納得した様で、アキラは頭を数度掻き毟る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ニックとの話、壁の正体と真実。そして――中央の王都、王政に見えた影とその日常に張り巡らされた意図。

 

 後者はまだまだ想像の域を超えはしないが、前者に関しては実際に見て、訊いて、確認をした所だ。壁の中には あの50m級の超大型の巨人が直立不動で立っているのを見たのだから。

 

 リヴァイやハンジも当然ながら確認をし、驚きを隠せられなかった様子。ハンジに至っては いつもの成りは完全に息を潜めていた。

 

『久しぶりに思いだしたよ。壁の外に初めて出た時の感覚。……怖いね? アキラ』

 

 遠く、地平線の彼方へまで視線を延ばして、力なく 地に腰を下ろし、そう呟き続けていた。巨人愛の強いハンジから、恐怖の言葉を訊いただけでも十分驚愕に値する事ではあるが、その時のアキラは 軽く一笑。

 リヴァイが驚く事以上に珍しい場面だったから、思わず笑った様だ。笑いながら、ハンジの頭を叩いた。

 

『怖い? んな事より、オレは面倒が増えたって感じで頭がぐちゃぐちゃだがな。仮に、こいつらが目ぇ覚まして 100年ぶりに起きて、運動……町ン中で暴れでもしたら、って想像したら。ま、今まで守ってもらってたってのは事実だし、正直悪いとも思わなくもないんだが、早々にお引き取り願う。寝床荒されんの嫌だし』

 

 そう答え、そして ぽかんっ、としてるハンジを見た。珍しい場面その2だった。

 でも、直ぐに笑顔に戻る。

 

『そーだったね。あははは。怖いのはアキラの方だった。勿論、巨人が(・・・)怖いのがだけどね。ホント、アキラこそが巨人側、敵側じゃなくて良かったよ』

『あん? おお、ハンジ分隊長殿の敵になら何時にだって回ってやるぜ! 結構な恨みみたいなもんもあるしよ! なー、モブリット! お前さんなら、オレの気持ち判ってくれるよなぁ?』

 

 モブリット・バーナー。その男、いつもいつも暴走しがちなハンジを止めるという重要な役を担ってる。……のではなく 副長。なし崩し的と言えばそうだが、上官に振り回されるある意味可哀想な男の1人だ。

 

『いえいえ、わかりませんよ! とは、正直はっきり言えませんが……』

『だよなぁ……、苦労してんの見てるし、ある程度は判ってくれるだろ? オレだって何度このクソメガネを、巨人と一緒にお空の彼方に吹き飛ばしたいと思った事か……。この世界を空から見てみるってのも良いと思ったんだが』

『いやいや、アキラさん! 物騒な話は流石に止めてくださいよ!』

『あはははは! 空は飛んでみたい、鳥みたいに飛んでみたいって思うけど、流石に生身のままで空飛ぶのはヤダなぁ、一生モノの思い出にはなるかもだけど、一瞬で終わっちゃうし』

『分隊長もニコニコしないでください!』

 

 と最終的には 壁の正体については驚きはしたが、これ以上話していても判らないので今は深く考えない事にし、報告だけする事になった。

 

 

 ニックに訊けば早いのだが、彼はあまりに興奮したのか それとも巨人の中に落とされそうになった恐怖でパニックを起こしたのか、過呼吸でぶっ倒れてしまって、その時はこれ以上何も訊けなかったから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「とまぁこんな感じ。確かに巨人が壁ン中にいんのは 吃驚仰天だが。する事は変わらねぇって事で、結構全員あっさりとしてるよ。ああ、後エルヴィンから訊いたが、今日あたりでストヘスの憲兵団支部で会議があるらしい。調査兵団のペナルティみたいなのは 多分ぜーーんぶ無しになんだろうな」

「あははは。うち等の罰って。アキラがあーんな感じで脅したら、そりゃ 無しにするよ。正面から喧嘩売る様な真似できないし、出来る人なんて ハンジ分隊長かリヴァイ兵長だけでしょ?」

「人を暴君みたいな言い方しねぇでくれよ。そりゃ 怒るだろ。……逝っちまった奴らを蔑ろにしかねねぇんだぞ。あいつら」

「うん。判る。……王政や中央に歯向かう様な思考は今までもたない様にしてた、というより、考えもしなかったんだけど、アキラと一緒に戦ってきて、心から思う様になった。……それに」

 

 

 

――アキラは、優しいから。許せないんだよね?

 

 

 

 イルゼは、言葉に出す事なく、そう思いながらニコリと笑顔を向けた。

 その笑顔に疑問を感じていた丁度その頃。

 

「ん。皆も来たか」

 

 がらっ、と部屋の扉が開く。

 部屋に入ってきたのは、104期のメンバーであるエレン、ミカサ、ジャン、アルミン。そしてリヴァイ班のぺトラだ。

 

「……」

 

 イルゼは露骨に残念そうな顔を……はしなかった。いつも以上に真剣な表情へと戻っていた。

 

「皆。気をしっかり持って説明、訊いてね。ぺトラはもう知ってると思うけど。……あなたたちはまだ知らないんでしょ?」

「あぁ。こいつらにはまだ話してねぇ。……なーんか貫禄出てるよ、イルゼ班長」

「っ。からかわない。……じゃあ、皆」

 

 イルゼの指示に従い、メンバー達は夫々席に着いた。

 

 説明が遅れたが イルゼは現在、班長をしている。そして、その班に所属するのが104期のメンバーだ。亡きフレン班長、そしてその班に所属していた兵士達の分まで戦うと心に決め、その後を継いだ。そこに集ったのが今のメンバーなのである。

 

 

 

 そして 多少は省いた事もあるが、大筋な所を全て説明した。

 

 

 女型の巨人はアニである事。

 そのアニは今捕らえていて、超が幾つもつく程の極秘であり 教える事は出来ないという事。

 決まりかけてたエレンの召喚がほぼなくなったという事。

 そして、壁の中の巨人の事。

 

「壁の中には……実はずっと大型巨人がいました、って事……ですか?」

「ああ。詳しくいやぁ、あん時の超大型よりはやや小さ目な巨人だな。それでも50mくらいはあるから十分超大型の巨人か」

 

 言葉を失うジャン。簡単に信じられないのだろう。それも当然だ。

 

「それに、アニが……」

 

 そして、アニについても同じだった。彼女があの時の女型の巨人であるという事など、誰が想像できるものだろうか。 

 そう、それも簡単には信じられない。……が、その中でも別段驚かなかった者もいた。

 

「アルミンは、驚いてねぇ感じだな。……判ってたってか? アニの事」

「っ……はい。アニは、……女型の巨人は、同期の僕達にしか知りえないエレンの渾名に反応しました。……それに、恐らく捕獲した二体の巨人を殺したのも、彼女だと推察できましたから」

 

 アニの真実を訊き、アルミンだけは表情を殆ど変えなかった。

 その表情を殆ど変えなかったからこそ、唯一目立った存在だったから、アキラは見逃さなかった。二体の巨人を殺したのがアニである、という発想はアキラにはまだ正直無かった事だが、それはとりあえず置いといた。

 

「後はミカサもか?」

「……はい。私は女型とアニの顔が似てると思いました」

「だよな。……普通はそんなの偶然、他人のそら似、っつー感じで片付けるんだが、エレンが化けた時のを見りゃぁな」

 

 エレンの巨人も、エレン自身が変身した所を見ているし、多少なりその先入観でモノを見てしまう所があるものの、それを踏まえても似ていると言わざるを得ないから。

 

「オレも初見で一発、とは言わんケド、何度か打ち合った時に判ったよ。人間時でも、巨人時でも、構えが変わってねぇし、蹴りの軌道だって一緒。判って欲しかったんだな、とも思っちまったよ」

 

 はぁ、とため息を吐いている所にエレンが前に出た。

 

「それで、アキラ教官。……アニはどうなるんですか?」

「エレン……?」

 

 エレンの問いに ミカサが鋭い視線でエレンを穿った。その強烈極まりないミカサの視線に反応を見せる訳でもなく、エレンはアキラの返答を待つ。

 

「アニなぁ。とりあえず 接触できんのはオレだけだし。今は何とも言えん。……アイツにも色々と曲げれねぇ何かがあるみたいでよ」

「曲げれない、何か……ってなんですか? それに――」

 

 エレンの表情も、ミカサ程ではないがきつくなっていく。

 あの時の女型の巨人の出現で、どれだけの被害が出たのかが判ったからこそ、エレンは聞かずにはいられなかったのだろう。犠牲になった者達の中には、エレンが巨人だと知っていて尚、気さくに話をしてくれた人もいた。

 興味本位に深く探ろうとしていた人もいた。

 

 普通は化け物を前にしているからこそ、あの時。牢屋に入れられていた時の牢番の男達の様な反応を見せるのが普通だと思うのに、一切見せなかった。

 

 そんな人たちが、犠牲になった。

 

 

 

 

「どんな大義があって―――人を殺せたんですか?」

 

 

 

 

 仇を目にする様な顔だった。

 アニを捕らえたのなら、全てを明らかにして欲しいと言うのがエレンの要求、気持ちなのだろう。

 だが、それをぶつける相手は明らかに間違っている。

 

「エレン。それ オレに訊くトコか? あぁ、オレにアニに訊いといて欲しいって事か?」

「あ、いや…… すみません」

「はは。わーってんよ。……お前さんの気持ちだってオレぁ判ってる。一応は全部、背負ってるつもりだからな、あいつら(・・・・)を」

 

 アキラは目の前で拳を握る。 怒りが無い訳ではないのが分かる。それが例え教え子であっても、沢山面倒を見、振り回された相手だったとしても。

 

「アニの中にあるモノは、オレにもまだ判んねぇ。ただ、判るのは 今のアイツは 死を全く恐れちゃいない。強引に吐かせようとしたって無駄だろうな。オレはしねぇし、それに他の奴らがしたら、そのまま殺されちまうよ。巨人に変身してそのままお陀仏だ。だから、オレだけ接近許可が出てる。悪いがお前らには まだ(・・)アニの場所は教えれねぇから」

 

 アルミンは、アキラの答えに僅かにだが アニに希望を見た。

 

「(『まだ』という事は 今後有り得るという事なのかな……? 確かに アニが、心を開く相手と言えば、アキラ教官ただ1人だった筈……だし。それでも、アニがした事は許される様な事じゃないと思うけど)」

 

 エレンの言う様に、どんな訳があれば人を殺す大義が得られるのだというのだろうか。

 遥か昔から人類は巨人に支配されていた。そして壁を築き、100年もの平和を成就したのも束の間、その壁は破られてしまった。

 

 それを壊したのが――だとするのなら。

 

「(い、いや、あれは超大型の巨人が。それに、もう一体いた。アニの仲間が少なく見積もっても、後2人はいる筈。アニの、仲、間……? ……まさか)」

 

 

 アルミンの中で今、線が一本に繋がった。

 それはほんの些細な切っ掛けに過ぎなかった。いつもなら、忘れても別に問題ない程の些細なもの。だが、アニの事を知り、鮮明に蘇ってきたのだ。

 

 女型の巨人を追った アキラの姿。そして――それを見つめ続ける後ろ姿。

 アキラの正体を探るかの様な発言。それらが意図するものは……?

 

「ん? どうしたんだ、アルミン」

「……えッ? い、いや、何でもないよ。ちょっと考えてて、まだ纏まらないだけで……」

 

 エレンが気になった様で、アルミンを窺うが、問題ないという様にアルミンは手と首を横に振った。

 

「訊きたい事あんなら、今の内だぞ、アルミン。こーんな悠長に時間取れるのってなかなかないと思うしな」

 

 そんなアルミンを見て、アキラはひょいひょいと手招きをした。

 それを聞いて、アルミンはとりあえず 疑問に思っている所の1つを頭の中で引き出し、口にする。

 

「あの壁の中に巨人がいる、という事は判りました。……ですが、壁そのものはどうやって作ったんでしょうか? 巨人を支柱に、そこから造ったのだとは思うのですが、原材料等で判った事はあるんですか?」

「あー、ソイツね。確かに疑問に思うよなぁ。巨人が幾ら頑張って立ったとしても、普通に間は空くし、ただ、横並びに立ってるだけだったら、スカッスカの筈だし。でも、その答えは多分これ」

 

 アキラは何かを取り出した。取り出したのは拳大の石。

 

「? なんですか、それ」

「あぁ、皆も聞いてくれ。これ話したのはエルヴィンとかハンジ、リヴァイだけで、まだ伝わって無いと思うし、不確定要素だが、明るい話題でもある」

 

 その石をひょいっ、とテーブルに放り投げた。

 

「それ、オレがアニ、女型の巨人とやってた時のもんだ。何度か身体散らした時に、いつの間にかオレの胸ポケットの中に入り込んでたみたいでな。少々気になってたからもって帰って見せたら、これも吃驚されたよ」

「っ、そ、そうです。何故、蒸発をしないんですか!?」

「いやいや、何でもかんでもオレに訊くな。オレは巨人学みてーなのを収めてる訳じゃねーんだぞアルミン」

 

 今までの巨人は絶命すると、全てが無くなった。肉も骨も、その身体の全てが蒸発し跡形もなくなり、残ったのはその時に発した熱によって所々が焦げた地面、そして 体液からだろう大きな水溜まりが残るだけだった。

 

「やり方は判らん。……が、こんな感じで、身体を固める事が出来んのなら、その応用で壁だって作っちまいそうだろ? モノ壊すのは得意なんだが、オレは作るのは苦手でね。多分、エレンにその役目が回ってくると思う」

「オレが、ですか?」

 

 エレンは言っている意味が判らない様だった。それを見たジャンは、馬鹿か、と加えながら代弁する。

 

「お前の巨人がその能力を得たんなら、空いた穴も塞げるって事だろ? 分かれよ馬鹿」

「ッ……オレで、壁を……」

「おう。まぁ リヴァイならこういうだろうな。―――やるかやらねぇかじゃねぇ。やれ、ってな感じで」

 

 アキラはそう言うと、こんな感じで言うだろ? と言わんばかりにぺトラの方を見て笑った。

 

 ぺトラもその視線に気づいた様で、軽くため息、そして笑みを見せた。

 

 

 

「オルオの100倍は似てる」

「……それ褒めてんの?」

 


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