遅れましたが2019年もボチボチと頑張っていこうかな、と思います(*- -)(*_ _)ペコリ
しかし……原作は鬱々な展開が続きますね……。リヴァイ班たちの惨劇以来な気分かもです( ;∀;) 他にも沢山ありますがw
104期兵たちが隔離された施設はウォール・ローゼ内地、エルミハ区。ウォール・ローゼとウォール・シーナの壁の丁度中間地点に位置する場所だ。
そんな場所で巨人が現れた……となれば、間違いなくウォール・ローゼが突破されたとしか思えない。そして、それは悪夢以外の何物でもない。
だから、サシャの言っている言葉が信じられなかった。否、信じたくなかったというのが正しい。でも、サシャは意見を曲げなかった。
「本当です! 確かに足音が聞こえたんです! 凄く大きな音が!」
身振り手振りで信じてもらえる様に大きな声でいうサシャ。
行動のロスの1つが命を分かつ事をサシャは知っているからだ。自然に生きてきた者だからこそ。
その時、来訪者が突然窓の外から現れた。
その者はナナバ。104期メンバーを監視している上司の内の1人だ。
「全員いるか!?」
普通は外から、それも二階の窓からくる事なんてない。でも、立体起動装置を使って最短距離で入ってきた事そのものが緊急性を表していた。
そう、サシャが言っている事が事実であるという事。
「ナナバさん!?」
「500m先。南方より巨人が多数接近。こっちに向かって歩いてきてる。君たちに戦闘服を着せてる暇はない。直ちに、馬に乗り、付近の民家や集落を走りに回って避難させなさい。……いいね?」
ナナバは落ち着いている様に見えた。
だが、その話の内容は悪夢再来だったから、絶句してしまう。
「南方……から?」
「あっ……」
コニーの呟き。それに絶望が絡みつくように聞こえるのは、彼の故郷が直ぐ傍にあるから他ないだろう。そして、何よりこれで証明になった。
「壁が……壊されたってことなのか……?」
周囲に緊張が走る。が、その硬直してる時間も惜しかった。
「残念だけど、仕事が終え割るまで、昼飯はお預けだ! さぁ、動いて!! ぼけっとしてられるのも生きてる間だけだよ! それに、言っただろう? 調査兵団で一番許されない事は死ぬ事。……私は誰も死なせるつもりはないよ!」
ナナバはそう伝えると、即座に窓から屋根に飛び移る。
そして、南方を監視しているミケの傍へ。
「ミケ。巨人の位置は?」
「……前方だ。鼻で分かる限りではな……。間違いなく、前方の木で見えないが、あの先に少なくともあの一帯に15体いる。……いや、まだ増えているな。鼻が効かない程の変化は初めてだ」
風に乗って、振動音が聞こえてくる。間違いなく聞こえてくる。巨人が内地深くに侵入してきたという何よりの証拠。ミケの並外れた嗅覚で察知するまでもなかった。
「再び、壁は破壊された……、そうとらえるべきなのかな……? トロスト区やクロルバ区がやられたのだとしたら、報告があるはず……、扉部分以外の壁を壊されたのだとしたら、壁の破壊の規模は計り知れない。……そもそも、壁に開けられた穴が扉部分だったとしても、それを塞ぐ術は? 一体どれだけかければ出来る……? 以前の様に、エレンが塞ぐような事も、難しい。都合よく大岩が転がってるとも限らないからね」
考えるだけで悪夢だ。
悪夢で最悪の結果。
「巨人は、調査兵団が……合計で どれだけ殺してきたか、ミケ。数えた事ある?」
「………いや、自分の班の兵達の討伐申告数、そして自分の討伐数しか知らん」
「私は、ね。アキラが来た日から……、
「………」
ミケは何も言わなかった。
ナナバは、更につづけた。
「どれだけ殺しても、巨人が減る気配が見えないんだ。……今回の大量発生もそう。マリア内の巨人討伐もそう。……殺しても、殺しても、あいつらはまるで増え続ける。……終わりが見えない。…………私は、リヴァイ兵長、アキラに頼り過ぎてしまってるって、今ほど思った事はないよ。まるで、薄氷の上を歩いている様にも思う……」
目の前で巨人を屠る姿が目に浮かぶ。そんな人が傍にいるから、安心できるし、絶望などは絶対しなかった。でも、無情な現実を突きつけられて、無力感に苛まれてしまうのだ。
「それに加えて、超大型巨人の正体も鎧の巨人の正体も……他にいるかもしれない敵勢力も、何も判らない。更にはこの現状だ。…………どうして、私は こんなにむりょk「いいや、違う」っ」
ミケは力強く否定をした。
「確かにオレ達の力は小さい。調査兵団としての力を言うならば、……大きくなり過ぎたと言っていい。個の力が次元を超えたのだから、そう錯覚してしまうのも無理はない。……だが、断じて無力などではない。戦い続ける事が出来るのなら、無力なんかじゃない。……負けもない。戦う事を、止めた時に……オレ達は無力になる。……オレ達は敗北した事になる。そして何より、頼っていると言ったばかりのアキラが一番嫌う言葉でもあるぞ? 今のは」
次にミケは皆を見下ろした。急いで馬を用意する兵たちが見える。
「皆には申し訳ない事をした。我々に従ったばかりに、この状況に放り出してしまったのだから」
「……あぁ、情けない所は見せられない。……怒られちゃうよ。アキラに。もし、彼らの1人でも死なせたら。それは私達の恥だ。必ず、誰も死なせない」
「ああ。……戦うぞ。まずは 巨人群が林まで到達したら一斉に離散し」
ミケが今後の作戦を頭に思い描き、実行させようとしたその時だ。
凄まじい轟音が響いた。まるで砲弾でも撃ち込まれたかの様な衝撃。そして沸き起こる土煙。
「な、なんだ!?」
ナナバは思わず顔を上げた。まさか、もう巨人が接近してきたのだろうか? と思ったからだ。まだ少なくとも目算では500mは離れている筈なのに。こんな無防備な所にまで接近されたのか? と。
だが、それは違った。
「離散するのはまずストップ。一先ずここに籠城しろ。全員散らばらず何処にも行くな」
轟音の後に、その土煙部分から何かが飛び出したのが見えた。そして、それは ナナバとミケの所へ。いつもの飄々とした態度は息を潜め、真剣な顔つきになっている男。……アキラだった。地獄に神を見た瞬間でもあった。
「アキラ!?」
「おう。間に合って良かった。トーマのおかげ、だけどな、灰色の信号がこの空に上がった時、正直目を疑ったぞ」
ギロっと視線を前方へと向けるアキラ。
そう、一足先に調査兵団本部へ知らせる為に走らせたトーマが、咄嗟に信号弾を空に打ち上げたのだ。調査陣形をしている時に主に使われるものではあるが、構わず撃ちはなった。
誰かが見ている事を願って。……そう、アキラが見てくれることを願って。
「それでどう思う? こんなとこまで招待するつもりは全くなかったんだが、壁を壊されたと思うか? ってか、アニ。お前さんたちの力で壁に穴開けれんのか? 扉とかじゃなく、壁そのものに」
「………難しい、としか言えません。私
「そっか。お前さん
しれっと横にいるのはアニだった。まさか直ぐ傍に女型の巨人がいるとは思わないだろう。アキラが来たことで安堵し、注意力が散漫になってしまったから、と言い訳は出来るかもだが。
そして何よりこの現状。目の前の女が引き寄せた可能性も否めなかった。
「っ……! アニ、レオンハート!」
「どうどう、落ち着けナナバ。だいじょーぶ。オレが見てるし。オレの傍限定で、大人しくしてる、って約束してくれたし。な?」
「……約束、と言うか。私にはどうしようもないですから。アキラさんの傍なら」
視線は決して向けない。南側を見続けている。アキラと並んで立つ2人を見て、何処か妙な気配を感じた。それを見たからこそナナバは笑い、力を抜く事が出来たのだから。ミケも同じ気分だったのだろう、軽く笑っていた。
「………随分と信頼を築けた様だな? アキラ」
「あん? オレは教官だぜ。生徒と教官って、それなりに信頼出来てねーと成り立たねーだろ? それに、あーんなヤバい訓練だったら猶更だ」
アキラの回答を聞いて、強張らせていたナナバは身体から力を抜く事が出来た。
そもそも、アニ・レオンハートは幽閉していた。外との連絡手段は現時点ではありえないから。
「………ふふ。やり過ぎて、拗らせないようにね。……色々と」
落ち着けたからこそ、今度は生暖かい目で見守る事に努めるナナバ。
何だか妙な感じがしたのはアキラも同じ。でも今は忙しいから。
「それは兎も角、あの巨人群をとりあえずぶっ潰してくるから、お前らはこっから動くな、ってあいつらにはオレから言っとく。言い方は悪いが、バラけるより密集しといてくれた方が巨人集中してくれてやり易い。……動くのはそれからだ」
アキラは そう言うと眼下に飛び降りた。まだはっきりと状況を察してない104期のメンバーたちの前に。
いきなり上から人が降ってくるなんて状況にビックリしない訳はない、が 誰が来たかが分かったから直ぐに納得できた。
『アキラ教官っ!?』
「よーし お前ら。とりあえず此処を動くな。んで、オレが時間は作ってやるから 十分に装備も整えておけ。撤退するにしても、周囲を散策するにしても、装備がないと話にならん」
ぐるんっ、と腕を回して背を向けた。
「いやいやいや! きょーかん! ちょっと待ってくださいよー」
「んあ? なんだサシャ。今ヤバいトコって事判ってんだろ? お客さんが大量に押し寄せてきてんだから、割り込み禁止札でも立ててこねーと」
「訳わからん事いわずに聞いてください! ちょっとで良いです! ちょっとだけで! なーんで、アニが此処に!? しれっと傍にいますけど」
「なんだそんなことか。だが、よく判ったな。その通り、アニだ。……サシャの癖に」
「いや、判るでしょ! ていうか、サシャの癖にってなんですか! それ位わかりますって!」
「………」
話題の中心人物であるアニは、一瞥するだけで殆ど無視していた。
アニの存在に驚きを隠せられないのは 無論サシャだけではない。アニの事を知っている104期のメンバーなのだから。そして、その正体については秘匿になっている。事実を知っているのは数少ないメンバーだけなのだから。
仮に、知っている者がいるとするなら……。
「ッ……、な、なん……で?」
「……アニ」
それは、敵側の巨人とつながりが有る者に限り、だろう。
今回は、確かに言い方は悪いがアニを使った探りをそれとなく含んでいた。……が、こういう状況になった以上すべき事を優先させる。つまり、巨人の殲滅。兵士たちの命を何よりも優先させる事だ。
ここでアキラがはっきりと皆の反応を見てなかったのは、敵側にとっては完全に幸運だったと言えるだろう。他の者たちとは異なる反応を見せていた。露骨に驚いていたのだから。
「(………馬鹿)」
冷静なポーカーフェイスなアニは あからさまに驚きを隠せられてない所を見て 軽くため息を吐いていた。皆驚いているから、木を隠すなら森、と言ったように紛れ込ませているかもしれないが、驚きの質が違う。……驚愕、と言う言葉が何よりも当てはまるとアニ自身が強く感じたからだ。
「おー、そういやぁお前らに言ってなかったよな。アニは、アレだ。ほれ、……オレの、秘書? そう秘書だ。専属の」
「……はい?」
涼しい顔してそっぽ向いてたアニ自身が『アンタ何言ってんだ?』って言わんばかりの表情でアキラを見てたから、他のメンバーの疑問が解消されるわけもなく、今にも追及しそうな感じだった。
そしてアニは呆れと同時にこう思う。
「(……
間違いなく話が拗れそうな気がするからだ。こんな状況だというのにも関わらず。
それこそが力の信頼だと言えるかもしれないが、やはり空気と言うものは読んでいただきたい。
因みにアキラはと言うと颯爽と話を終わらそうとしていた。説明するには時間が足りないから。
「まぁ、詳しい事はここに来る連中をヤった後だ。とっとと動けお前ら。これは訓練じゃねぇぞ! 30秒以内だ! 1秒でも遅れたらダッシュ10本追加ー! よーいはじめーー!」
まさに教官時代のノリ。
目の前には巨人の群れが迫ってきているというのに、あの時の空気。
様々な感情が渦巻いていた。まだまだ落ち着けるのには時間がかかる筈だった。でも、この空気のおかげで初心に帰る事が出来た様だ。
だからこそ、胸に拳を。……敬礼をした。
そして、その後のアキラの反応も勿論全員が知っている。
「アホ。オレに何回言わす気だ? お前らの心臓なんざ要らんっつーの。とっとと行け」