目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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62話

 

 

 

 

――ああ、また此処か。

 

 

 

 

 

 

 アキラは目を開けた瞬間に悟った。いや 眼を開ける前から判っていた。

 

 また、別の世界に来たのだという事を。

 

 巨人のいる世界もアキラからすれば別の世界と言って差し支えないから、第3の世界と言えばいいのだろうか。

 

 

 

――それで、またオレに悪趣味な世界を見ろって言うのか? どんな罰ゲームだよ。

 

 

 

 空の上に、天に聳え絶つ光の大樹を前に激しく落胆する。

 

 この世界から帰るのは、どうやら 何かしらをしなければならないのだという事はこれまででよく理解した。単純にコレが夢で 朝目が覚めたら起きる、と言った簡単な事ではないらしい。

 

 何かをするのか、或いは―――。

 

 

 

 

『そう言うな。……お前も見るべき事だと思う。……これが、この世界の本来あるべき形(・・・・・・・)なのだから。世界の記憶……、この星の記憶と言った所か』

 

 

 

 この者が戻してくれるかである。

 

 

 

 

 

 それはお決まりの如きもの。

 まるで最初からいたかの様に隣に立っていたモノがいた。

 

 

――男女か。

 

『誰が男女か。……前に言っただろう? 我が名は星喰(ほしはみ)。崇め奉る様な存在だと言っても差し支えないのだぞ』

――ほーん。そりゃ面白ぇ冗談だ。バケモンの巣窟に放り込んだ張本人をかよ。……まぁ、散々な目に遭わしていただいてる礼に存分に祀ってやるよ。

『くくっ、貴様は本当に散々な目に遭ったと思っているのか? そうは見えないのだがな』

――ちっ。 

 

 

 

 時折、面白おかしく神経逆撫でててくる所を見ても、そんな大層な存在とは思えない所の1つだろう。

 

 ただ、神経を幾ら逆撫でしてきたとしても―――アキラが最も言葉を交わしたい存在の1人である事には変わりない。

 

――お前には、視えているんだろう? この先が。……どうなる? ここから先どうなる?

『…………生憎だが、我が視せる事が出来るのは、過去。そしてーーお前がいないこの世界(・・・・・・・・・・)だ』

 

 指をさす先にあるあの光る大樹が一際輝いたその時、世界の扉が開く。

 

 広がるのは巨人が支配する世界。

 その世界では人間は無力だ。……見せられる先には、様々な人間が喰われている。それはアキラが知る人物も例外ではない。今、自分のいる世界では普通に話し、軽口を言い合って、時には笑い合い、ケンカもして…… そんな連中が喰われ、潰され、消し飛ばされ、物言わぬ身体になってしまっている。

 

 

――胸糞悪ぃ。

『貴様がいなければ、この世界はこう辿っていっていた。その絶望の中でも 人類は進撃を開始する。―――あの少年の中に眠る巨人と共に』

――エレンか。

 

 

 映された先には、エレンがいた。

 巨人となり戦ってる相手……ズレが自分だけであるのなら、恐らくはアニであろう女型の巨人。そのアニは、……仲間達を殺しつくしていた。グンタをエルドをオルオを、……ペトラを。

 

 そう――以前見たあの夢も、この光景を見ていたんだとアキラは理解していた。

 

 

『貴様は認めんだろが、この世界に齎したものは計り知れん。……命もな』

―――……ふん。

『皆に支えられ、此処まで来た。らしいな』

――それが嘘だと?

『いや、そうではない。……驚嘆に値する』

 

 ふわり、と身体を宙に浮かせ、そして指を鳴らせた。

 

 すると、此処とはまた違う何処か別の世界が現れた。

 

 誰だろうか、恐らく成り立ちから察すると自分と同じ人種。言うなら日本人と言って差し支えないであろう姿。そして、それを取り囲む兵隊たち。黒装束に包まれた者たち。

 

 そして、その日本人は……あろう事か、その場の兵士たちを、男たちを虐殺しだした。人とは思えない力で、人とは思えない貌で、暴虐の限りを尽くした。もう死体となっているのにも関わらず、痛めつけた。巨人に喰われる場面も十分胸糞悪いが、これも等しく同じだ。それが巨人か人かの差。

 

『力を持てば、強大であれば強大である程に、それを試したくなる。己よりも弱い弱者に対して力を存分に振るう。……それが性だ。弱肉強食と呼べばそうなのだが、そこに善悪などは存在しない。喰うか喰われるか、ただそれだけだ。我は貴様からすると気の遠くなる程の時を過ごし、そして 観てきた』

 

 

 また指を鳴らせると再び巨人がいる世界へと戻って来た。

 それは自分がいて、皆がいて、馬鹿やって騒いで そして 巨人から皆を護って……笑顔だった。

 

『正直今も信じられん程だ。嘆きを感じ、我が干渉した世界は此処以外にも数多くある。……この世界もその内の1つだ。この世界は1人の少女が我を呼んだ』

 

 再び指を鳴らせると、この広大で無限にすら感じる地に 1人の少女が現れた。

 虚ろな目をしている少女は、ただただ大地に手をやり、その砂の様な粘土の様なものを只管捏ね続けていた。

 

 

『だからこそ、貴様は――――』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 匂いが違う。

 空気が違う。

 

 そして、目を開けた先に見える視界が違う。

 

「………」

 

 アキラはゆっくりと身体を起こした。

 混乱をしている訳ではないし、先ほどの世界の事を忘れてしまった訳でもない、そして 今――すべき事も頭にある。

 

「……アキラ? 起きた??」

 

 そして、まるで見計らったかの様に部屋へと入ってくるのはペトラだ。 

 単なる偶然に過ぎないが。だが、アキラにはそうは感じられなかった。

 

――決別の時が来た。

 

 そう、告げられた気がした。

 

「いいやまだ寝てる」

「何で そんな堂々と嘘つくの?」

「……はは。寝込みでも襲いに来たか? ペトラ」

「ッ……、な、なにいってるのよっ!! 馬鹿な事言ってないでよ!!」

 

 ペトラにぽかっ! と頭に良い具合に気付けを貰った。

 アキラは、軽く笑うと 軽く首を振って頭を左右に揺らせた。

 

 ペトラは、突然言われた事に僅かながらに頬を赤く染めていたのだが、アキラの今の心情を判っている分、叩く以上は何もしなかった。いつも通りの自分に必死に勤めようとしているのが判っているから。

 

 

 

「悪ぃ。……さっさと済ませるか。ああ、ペトラ。ローゼの壁上に呼ぶ奴らの位置とか、その辺の打ち合わせは頭に入ってるな?」

「勿論よ。……相手の規模を考えて、しっかりと順応・対応できる配置に出来ている。団長や兵長にも了解を得た陣形だよ」

「……なら、安心だ。ああ、後オレとアニ、それにエレン達の場所も?」

「………言われた通りにしてる」

 

 ペトラは 少し表情が険しくなりながらも、頷いた。

 私情を絡めてる場合ではないのは判っているから。そして、もしも ソレ(・・)が暴走した時、誰が止めれるのか、誰が適任なのか。もう判り切っている事だから。

 

「だから約束」

「うん?」

「いつもの」

「ああ――。って、いつものっつったって、結構最近じゃね?」

「茶々はいらない」

「へーへー」

 

 アキラは身体を起こすとペトラの正面に立った。

 そして、その頭をそっと抱き寄せ、自分の胸にペトラの頭を当てた。心臓の鼓動を聞かせる様に。

 

「誰も死なねぇよ。……勿論、オレもな。約束する」

「……うん」

 

 とくんっ、とくんっ、とアキラの鼓動を感じるペトラ。

 止まってない。動き続けている。そして――止まる事はない。

 

 心臓を捧げられる事はない。

 

 

 アキラは、周囲にいつもいつも『心臓なんかいらない』と公言しているんだ。つまり、誰も犠牲になるな、と言っている。 

 

 ならば、とアキラを慕う者達は 皆口揃えてアキラの事も言った。死ぬような事、つまり心臓を捧げられる様な事になるな、と。

 その誓いが今回のコレだったりする。勿論、好意を寄せる女性達に限り!となっていて、男には流石にやってない。と言うよりそんな話にすらなってないのは言うまでもない。

 

 

 

 

「さて――、行くか」

「うん」

 

 

 全ての準備は整った。後は舞台に上がるだけだ。

 

 

 ウォール・ローゼと言う名の舞台に、………教え子たちと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□ ウォール・ローゼ □□

 

 

 《ウォール・ローゼの再調査》

 

 名目はそれだった。

 

 巨人達の壁中襲来。普通に考えたらウォール・ローゼが突破された事を疑うだろう。ウォール・マリアを破壊されたあの日から、人類は何時だってその最悪の想定をしていなかった日は無いのだから。誰もが連想する。だからこそ、調査兵団が徹底的に壁を調べた。

 巨人が現れる事が出来る穴はおろか、亀裂の1つさえなかった。

 故に再び調査する必要性は今のところは無かったのだが、自然に調査兵団の全ての兵達を集わすのにはコレが最適だったのだ。

 

 

 そして――始まる。

 

 

「よぉ、待ったか? お前ら」

 

 

 壁の上で 全ての始まりが壁。

 名は違えど あの壊されたマリアの壁とこのローゼの壁は繋がっている。

 

 壊されたあの日から、全て始まった因縁。

 

 

「そろそろ……色々と決めようか。なぁ……」

 

 

 壁の上での決められた配置。

 何処に誰がいるのかは、班長クラスは全員把握している。

 

 そして 位置取りも万全にしている。巨人化した時に発生する爆発的な蒸気と人を焼く熱風。それら全てを考え 犠牲を最低限度に抑える為に、万全を期している。

 

 後は唯一にして無二。巨人の天敵。人類最強の矛が彼らを迎えるだけだ。

 

 アキラはゆっくりと二つの影に向かって歩き続ける。

 日の光の位置の所為か、逆光で表情が見えにくくなっているが、間違える筈もない。

 

 

 

 

 

 

 

「ライナー、それにベルトルト。……久しぶりに面談と行こうぜ」

 

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