目が覚めたら巨人のいる世界   作:フリードg

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74話 決戦:シガンシナ区

 

 

 

【ベルトルトぉぉぉぉッッ!!!】

 

 

 

シガンシナ区全域に―――否、ウォール・マリアの外、そしてそれを超えて遥か彼方の地平線の先響き渡る様な怒声が響いた。

それはまるで巨人が走り、地鳴らすそれに迫るモノ、と言えるだろう。

 

 

何よりその怒声に込められたとてつもない殺気が、そう思わせてしまうのだ。

 

 

 

そう……声の主は殺気を声に纏わせている。

心の底から―――ベルトルトに対しての殺意を迸らせている。

 

 

 

 

ソレを(・・・)、やった瞬間終わりだ。お前をもう教え子(ガキ)とは思わねぇ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り―――シガンシナ区。

 

 

そこはこの世界の真実が隠されている場所。

調査兵団の最優先目的の場所。

 

ウォール・マリア領は人類に残された3分の1にあたる広さ。

あの5年前の上層部の《間引き》によって、あの日多大なる領土、そして財産と人命を失われた。

 

 

散々、上層部が調査兵団の活動を邪魔しようとした理由も、ある意味巨人を全滅させる事自体を好ましいと思ってなかった所にあるだろう。

 

少なくとも、アキラと言う巨人を超える悪魔が君臨し続ける限りは……。

 

 

 

 

「中の連中が居なけりゃ、もっと早くこの光景を観られたかも知れねぇよな……」

 

 

 

漸く、この地へと来れた事に対して、感慨深いものがある。

やる事成す事、成果に繋がらないのは正直苛立ちも有り、明かな余計な指示がエルヴィンの足を止め、兵団の大規模な動きを抑え、1人でも行くぜ! なアキラの足を他のメンバーが止める。

 

 

「―――教官」

 

 

そんなアキラの傍に居るのは3人のメンバー。104期のメンバー。

このシガンシナ区が故郷である、エレン・アルミン・ミカサの3人。

 

 

「「「ありがとうございます」」」

 

 

自然と、3人は心臓を拳で叩いた。

 

《心臓を捧げよ》

 

のポーズだ。

 

 

「あー、わかったわかった。……だから、それ止めろって」

 

 

これは毎度毎度だが、アキラが好まないので止めさせたりするのが多かった。なので、正式に廃止にしない? と言うアキラの案は、エルヴィンに却下された。

士気を高めるのには十全である事は証明されているし、今後も形式上やるとの事。

 

そして―――無論、心臓を捧げたとしても、生きて帰る様にの指示は忘れない様にしている。死にに行く事だけは止める傾向にさせてある。

 

 

 

人類(・・)は、巨人に勝てるのだ。

 

態々、勝てる相手の食料になる必要は一切ないのだから。

 

 

 

アキラの心情も当然長い付き合いである3人は理解しているので、笑顔で心臓部から拳を離す。

 

それでもやってしまうのは……エルヴィンの命令通りに忠実に熟しているからか、或いは心から教官であるアキラを慕い、付いていくと言う意思の表れか。

 

 

「ようやく、ここへ帰ってこれました。……だから」

 

 

感慨極まるとはこの事だろう。

エレンの気持ちも当然解る。

一足飛び足で、このシガンシナ区へやってくる自信があったアキラだからと言えど、その気持ちが解らない程人でなしじゃないつもりだ。

 

 

そんなエレンの頭を、アキラは撫でた。

 

 

「まだだ。家に帰るまでが遠足―――ってな? それに、あの街にゃ、あいつら(・・・・)が潜んでる可能性だって高い」

 

 

エレンの家の地下。

そこに世界のひみつが眠っていると言う。それが最重要機密であり、ウォール・マリア奪還に続いて重要なミッションの1つ。

 

 

それが敵側にバレてる可能性だって0じゃない。エレンが敵側になっていたライナーやベルトルト、……そしてアニにそれの事を言っていない、と言うのもある意味良かったと言える。

 

知られるくらいなら吹き飛ばしてしまえ! 精神だと、ここに到着した時点で、街が壊滅していても不思議じゃないからだ。

 

街が無事……とは言えないかもしれないが、あの5年前の惨劇の時とそこまで変わっていない所を見ると、大規模な破壊はしていない事は理解できる。

 

 

「細々したのはほんっと苦手。……正面切ってぶつかってくる相手じゃないから猶更だ」

 

 

正面から堂々と攻めてくるのは何にも考えてない巨人くらいだ。

あの猿は勿論、鎧の巨人と言われるライナーと超大型巨人であるベルトルト。

 

勝てない、と解っている間に正面衝突はしないと思われる。

だからこそ、アキラは苦手なのだ。考える事が出来る敵は、巨人だろうが人間だろうが―――ー本当に面倒くさいのだ。

 

 

「うん? 怖いか? アルミン」

「あ、いや……その……」

 

 

感謝の傍ら、僅かに震えているアルミンの姿を観て、アキラは聞いた。

アルミン自身は、否定したい気分でもあった。アキラが傍に居るのだから、と。信用してない訳じゃないんだ、と。

 

でも、アキラはただただ笑っていた。

 

 

「そりゃ大したもんだよ、アルミン」

「……え?」

 

 

アルミンの心情を無視した様な笑顔を向けるアキラ。

 

 

「これまででもオレと一緒に居て、緊張感がない~って兵士は案外多かった」

 

 

超常的な力で巨人を屠る男。

人類最強の双璧を成す男。

 

そんな男と一緒に居るのだ。気が緩む。

己の力がある、と勘違いしてしまったかの様に気が緩み―――軈て死に至る者だって少なくなかった。

 

 

「ふつうは皆巨人なんざ恐怖の象徴。初心を忘れない心構え。3人組の頭脳担当は伊達じゃないな」

「……そういう、訳でもないですよ。教官。……僕は、仲間が喰われた最中を見てます。あの場面を、見て……巨人と対峙して、動く事が出来なかった。エレンが助けてくれなかったら、僕はここにはいなかった」

 

 

遠く、遠く。記憶の残滓をアルミンは想い馳せる。

あの日、巨人の口の中で―――エレンに助けられた。巨人の口から出してくれた。

その代わりにエレンが―――。

 

 

「怖がってるのは、克服できていないから。頭で考えて、初心を忘れない様にしよう、って事じゃないです」

「……それなら猶更良い。無茶やってバカやって、ポカミスする様な真似、アルミンはしないだろ? そういうヤツ、最高に信用できるってもんだ。―――教え子ん中じゃ一番だ」

 

 

大きな大きな手で、アルミンの頭を撫でた。

とてつもなく大きな力を生むその手は……温かかった。

 

 

「そんでもって、保護者担当はミカサだな。主にエレン担当で」

「はい。勿論です」

 

 

真顔で返すミカサ。流石にミカサの頭を撫でて~~などはしないが、速攻で帰ってくる返答は笑いを誘う。

 

 

「アルミンが居て、そんでミカサが常日頃エレン(こいつ)の傍にいて……、なら安心できるってもんだ。あいつら(・・・・)にエレン奪還なんざ不可能だ、って思える程に、な」

 

 

アキラはそういうと、グー――っと背筋を伸ばした。

 

 

「さっさと終わらせて、カルラさんに報告しろよ? エレン。……ひょっとしたら、ひょっとするかもしれねーから」

「……はいっ!!」

 

 

カルラ・イェーガー。

エレンの母親にして、最近その生存を知ったエレンにとっての心の支えの1つ。

極限状態故に、その精神は崩壊寸前で、記憶障害を患っている状態。エレンの事もミカサの事も、自身の事さえも、記憶から消え、唯一覚えている……と言うか、神様の様に崇めたりするのはアキラに対して。

死の寸前に救出してくれたからなのだろう。

 

神様扱いされるのは正直苦手なので、いつも苦笑いしている。神様もろくなモノじゃない、と思っていたりするからだ。

 

向こう(・・・)で死んだあとに、いきなりこの世界に突き落としてきた存在だ。良いもの~なんて中々言えるもんじゃない。

 

 

そんな時、だった。

 

 

「アキラ教官。そろそろ時間です」

 

 

アニが迎えに来た。

この一戦において、アニの参戦には渋る者が多かったのだが、彼女は参戦を決意し、そしてアキラは勿論、エルヴィンやリヴァイも暗に認めている。

 

 

「おう。―――つーか、アニが全員にネタバレしてくれても良いって思ってんだけど、オレ」

 

 

アキラは苦笑いをしてアニに言った。

アニは敵側だった存在だ。故に世界のひみつについて握っていると言っても良い。

 

 

「私が何を言っても、証拠になるようなモノは一切ありませんし、ただの戯言、信憑性も乏しい。判断材料の1つにしたとしても、公表する事は控える。そう団長が判断してました。もう忘れたんですか? ボケましたか?」

「いや、ボケてねーーし! 言ってみただけだよ! ったく」

 

 

実を言うと、アニからある程度の《話》は聞いている。

その真実を明らかにするためにも、整合性をとる為にもシガンシナのエレンの家、地下に用事があるのだ。

 

 

「――――――」

「ミカサ。そんな睨んでも意味ない。何もしないから。アンタも何回言ったら理解するんだよ」

 

 

ミカサはミカサで、エレン防衛機能が働き、射殺す勢いで近づいたら睨みを利かせている。

特にエレンの傍に来たら、その殺意は10割増しになるのはこれまでの実験? で解っている事。

 

 

「そりゃ、アニが悪い。エレンの保護者として警戒すんのはしゃーない。受け入れろ」

「……まぁ、既に受け入れてますが。それでも小言は言わせて欲しいだけです」

 

 

カラカラ~と笑うアキラ。

そして、ミカサに少し近づいたアニは、『保護者で満足なの?』とすれ違いざまにミカサに言い……、そしてミカサはミカサで、睨み殺意を向けていた筈なのに、少しだけ目を逸らし、目元を赤く染めたりしている。

 

 

「……別に。保護者保護者言ってるの教官だけだし」

「まぁ、そりゃそうか」

 

 

アニは納得した様に手を少しふると、後方へと戻っていった。

アキラの目には、ミカサはエレンの保護者。でも、他のメンバーの目から見れば……………。それをアキラに察しろ、と言うのも無理な話だ。様々な視線をその一心に受けて尚、ちゃらんぽらんな対応をするのだから。

 

 

「んじゃ―――オレも戻りますかね」

 

 

 

 

 

 

――朝日が昇り……その日の光が地上を照らし始めた。

 

 

それは、作戦開始の合図でもあった。

 

 

 

 

 

 

「物陰に潜む巨人に警戒せよ!!」

 

 

 

 

エルヴィンの号令がとぶ。

その間に、アキラはヘタクソな立体機動を駆使して、更には持ち前の脚力にものを言わせて、空高く跳び―――街の風景に目を凝らしていた。

 

 

巨人らしき動きがあれば、速攻で対処できるようにだ。

 

 

その絶対的な護りの目に加えて、エルヴィンの指示での警戒。守りとしては最大級だと言える。

 

 

 

 

「これより作戦を開始する!! 総員、立体機動に移れ!!」

 

 

 

そして、守りに関しても2段構え。

 

敵の目的の1つに、エレン奪還と言うモノがある。それはアニの証言もあり、行動もあり、信憑性は限りなくあると言って良い。

 

 

故に、全員がフードで顔を隠し、同時に外の門を目指す。

誰がエレンか解った時には、もう破壊された外の門をふさいだ後。

 

 

作戦としてはこれ以上無い。

 

 

 

だが、無論懸念はある。

 

 

 

それがあのベルトルトの能力について、だ。

敵側がエレンを奪還しようとしているのは解るが、最悪の想定をしてきたらどうなるか、である。

 

最悪エレンを殺しても良い。死んでも良い、と判断したならば、なりふり構わずの行動をとる可能性があるのだ。

 

エルヴィンとしては、可能性としては考えられるが、決して高いとは思わない。でも、万が一と言うモノがある。

 

 

 

 

 

 

「―――万が一、の可能性の方が高くなってねぇか?」

「……その様だね、リヴァイ。想定してなかった。街中、それに外。……一切巨人が居ないなんて」

 

 

リヴァイとハンジは立体機動を駆使し、壁上に上り、辺りを捜索、監視したが―――巨人らしい姿は一切確認できない。

 

 

「出したり消したり出来る……とか?」

「考えたくねぇな」 

 

 

どんなタイミングで巨人が出てきたとしても対処は出来る……が、全員がそうと言う訳じゃない。心臓を捧げると言う意味で、本当に捧げる事を臆した者はこの場には誰一人としていないが、それを良しと決してしない男が居るのだ。

 

 

「最近じゃ、死者0がずっと続いてるからね。……暴走したらって考えたら本当に笑えないよ」

「面倒事が増えるな。好ましくない」

 

 

苦笑いをしている間に、更に上空からアキラが下りてきた。

 

 

 

「上から見てた。ひとっこ一人いねぇ」

 

 

苦虫をかみつぶした様な顔をするアキラ。

色々発散出来ると思っていたのが残念なのか、やはり策を弄してくるのが一番嫌いだから苛立ってるのか……、ほぼ間違いなく後者だろう。

 

 

「ここは既に敵の懐の中、って訳だ。知性のある巨人が相手だ。無能じゃ無けりゃ、色々弄してくるだろう」

「―――じゃあ、手筈通り、宣戦布告のプランVで。良いか?」

「ああ。喧しいからオレから離れてやれよ」

 

 

懸念点はまだ色々ある。

 

が、アキラのいうプランVに関してはエルヴィンも了承し、全員が勿論解っている事だ。

 

 

 

ハンジは数種類の煙弾を空へと打ち放つ、そして色の組み合わせで、全員にこれからする事を通達した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……でも、本心では―――アキラにそれ(・・)を言わせたくなかった、と思っていたりもする。

 

誰よりも強く、誰よりも優しいアキラの口から、そんな事は。

 

 

「なんで傍に?」

「良いじゃない。ずっとアニに付きっ切りだったんだし、たまには私と一緒しても」

 

 

イルゼがいつの間にかアキラの傍へとやってきていた。

本当に、物凄く、超がいくつかつく位久しぶりに2人での行動に―――ーなる訳がない。

 

 

「傍に居る。離れてやらないから。だから、頼りなくても少しくらい背負わせて」

 

 

ペトラだって傍に来た。

イルゼとペトラのコンビはここ最近では多い。

2人とも、班が違うし、何ならイルゼは班長。

 

それでも、壁内ではアキラの事を良く知り、いい意味でのストッパー、精神的支柱になれるのに適役だから、と色々と任されているのである。

 

 

「はぁ、ほんっと頼りになる仲間だよ、まったく」

 

 

お見通しか、とアキラは頭を掻く。

無論、アキラも覚悟はしていた事だ。迷いは一切ない。迷う筈がない。でも深奥を覗き込まれた気分でもある。

 

 

 

「迷いを捨てたアイツ(・・・)は、たぶん誰よりも強い。ライナーよりも、私より、あの巨人の能力を鑑みたら……戦士長(・・・)にだって迫る。それがアイツだ」

 

 

 

アイツら側だった筈のアニまでが、傍へとやってくる。

 

そこまで情けない姿をさらしていたのか? とアキラは少々自己嫌悪になりそうだが、憂いは最早ない。元々ない。

 

本当の意味でも、今無くなった。

 

 

 

 

「はぁ、お前らが一番オレに近いんだ。―――飛んだ3秒後、耳を塞げ」

 

 

 

 

アキラはそういうと、すぐさま跳躍した。

 

ドンッ! と壁上を破壊する勢いで飛び上がると同時に―――咆哮するかの如き声量で敵対者へのメッセージを送る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベルトルトぉぉぉぉッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大量破壊・殺戮兵器を使わせない牽制として。

 

 

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