シリウス君が外出してるときの話です。
ある日の昼下がり、昼食を終え部屋に戻った私はいつも通り昼寝をしようと、服を脱ぎ捨てベッドに寝転がった。本当ならば人型を解きたいが、巨大な私を納められる広さも、支える耐久力もこの部屋にはない。ここで暮らす限り、満足な日光浴は出来ないだろう。
───狭い。
部屋だけじゃない。この世界そのものが狭い。何度も転生して、何度もたどり着いた答え。天上はあれだけ広くて、器も要らずに自由に泳げたのに、今じゃ服とか言う拘束具で身を固めないと異端とまで揶揄される。生き辛いったらありゃしない。
「異端、か。」
そういや、パパの依り代のヤツも異端なんだった。まだ受け入れ難いが、そういうところだけは昔の依り代より親近感が湧く。まぁ感情移入したところで覚醒してしまうまでの付き合いだ。そのあとにヤツはいない。
パパの再来を楽しみに、私は眠りについた。
◇
夕方を告げる鐘で私は目を覚ます。日はすっかり傾き、体を少しの寒さが過る。本当にこの体は不便だ。体温調節を直接できない。
さっき脱ぎ捨てた服を最低限着て、あることに気づいた。何処からか歌が聞こえている。聞き覚えのない言葉で、しかし濁ることのない少女の澄んだ声。声の主は大体わかっていた。
一応ノックをして、対象の部屋を訪ねる。返事はなく、歌は続く。私は扉を開けた。案の定、中には窓に向かいベッドに座る少女、ライラ・グランディアがいた。こちらに気づいていないのか、歌は途切れない。ただ読み取れるのは歌の合間にする息継ぎを示す肩の上下だけ。よほど熱心に歌っているのだろう。
暫くして歌は終わり、彼女は立ち上がってこちらに振り向く。その頬には夕日が反射していた。
「あっ、ヨルムンガンドさん……起こしちゃった……?」
「たまたま通ったら聞こえただけ。随分と夢中になって歌っていたけど、なんの曲?」
「えっと、これは……わたしと、あの島にいたともだちとの歌なの。」
「ん、自分と友達って、兄は入ってないのか?」
「……うん。お兄ちゃんは偉大な人のけいしょうしゃ?っていうのなんだけど、その人みたいな強い力がまだ使えなくて……だからその時まで私たちで護ろうっていう歌なんだ。」
「護る……誰から?」
「えっと……」
少女は口籠る。流石に踏み入り過ぎたかと反省。齢十にも届いていない彼女の心には負荷はまだかけるべきではない。
「すまない。少し配慮が足りなかった。」
ううん。と、首を横に降る少女。健気に、気丈に振る舞おうとする様はどこか哀しい。背伸びをしてバランスを崩すように、いつか精神を壊してしまいそうで。