神星物語   作:陽下 ノクト

2 / 11
前回から少しだけ話が飛びます。主人公はそのまま。


Кошмар и конец,

 突如として上がり、迫る炎。逃げ惑う人々。もがき苦しみ死んでいく。

 大人たちは子供を逃がして死んでいき、逃げた子供は泣く泣く逃げるも炎に捕らわれ消えていく。

 あと四つ

 空虚へ消えて。

 あと三つ

 体が割けて。

 あと二つ

 傀儡に成って。

 残るは一つ

 僕は木偶に殺されようとしている

何故皆が殺されていくの?何で僕が最後なの?なんで僕はマスキロに殺される?やめて、殺さないで、ああ……!

 

 

 

「お兄ちゃん!」

 ライラの声で僕は現に引き戻された。数秒の間で荒い呼吸を整えながら状況判断。どうやらさっきまでの悲劇は夢だったようだ。

「お兄ちゃん、大丈夫?ひどく魘されていたけど……」

「ごめん、ライラ。心配をかけさせたね。もう落ち着いたよ。」

 口ではそう言うものの、思考の処理はまだ済んだわけではなかった。今のものを簡単に悪夢としていいのだろうか。現実との境目が曖昧であるのはあまり珍しい事ではない。しかし、今回は何故だか違和感があった。

「どうかしたの?」

「ああ。少し悪い夢を見たものだから、気分転換に散歩でもしようかと考えてたところ。一緒に行く?」

「行く!」

 

 

 

 夜中ということもあり外出しているような人影はなく、ライラとの会話に花を咲かせる他無かった。時折空を見上げて星々を眺めているとキラリと星が流れて、二人で喜んだりした。

「どっかへ行こうとしてるの?」

「うん。」

 来るだろうと思っていた質問に、あらかじめ用意していた答えで返す。あの場所にはいつかはライラも行かなきゃいけないと思ってたのでいい機会だ。

 

 

 

 目的地であるリンガートの墓には予想していなかった先客がいた。

「ばばさま……?」

「…おやおや、シリウスにライラじゃないか。夜中にこんな所で会うとは奇遇じゃな。」

「ばばさまは、なぜここに?」

「墓参りじゃよ。それより夜中に子供が外に出歩いていることの方が妙じゃの。」

「寝覚めが悪くてね。気分転換のついでにライラを連れて散歩してたんだ。」

「そういえば、ちゃんと顔をみて話すのは初めてじゃの。」

「ばばさまの話は面白いってお兄ちゃんがいつも言ってるんだ!私も聞きたいな!」

「いいじゃろう。せっかくこの場所に来たのじゃから、リンガートについて話してやろうか。あやつが仲間を引き連れてこの島に来たことはもちろん知っておるな。」

「うん、とっても凄い能力を持ってて、結界をはって島を安全な場所にした!」

「よく知っておるの。じゃが、こいつは知らんじゃろう。」

 そう言うと、ばばさまは墓に置かれていた小さな長細い箱を手に取った。

「それは……?」

「リンガートが遺したものじゃ。あやつには自分の子孫にいつか現れる継承者に渡しておいてくれと言われておる。身に付けていたものらしいが、中身は知らぬ。ここにあるより、おぬしらが持っている方が都合がいいじゃろう。」

 ライラがばばさまの手から小箱を受け取った直後だった。

 地面が揺れ、なにかが擦れるような音がした。ここの建物では絶対に出すことのない異質な音。

 繰り返される砕破。

 いったい何処が?

 

 ……空だ。

 

 空間は欠如し、そこからは深遠がのぞいている。

「嘘だ……!」

 ライラの身を引き寄せ、視界を遮断する。

「ばばさま、これは…?」

「……災厄じゃ。安寧の終わりに、我らの終焉に導かれる……。」

「それって……なにがおきるの……?」

「わしにはわからん。いざとなればお前たちは結界を破って外界へ行け。この状況よりはましであろう。」

「でも、それじゃあ皆は…!」

「他人より自分の身の心配をしろ!お前たちはグランディアじゃ!その血が有る限りわしらは滅びぬ!だから逃げるのじゃ!」

「でも……」

 そのあとの言葉は続かなかった。深遠から見たことのない形の怪物が現れ雄叫びをあげて、結界を大きく破壊。もう機能はしていないだろう。

「お兄ちゃん…恐いよ…」

「ライラ……。大丈夫、逃げよう。生き延びてまた戻ってこれるように。」

「……うん。」

 いつものライラであれば絶対に見せることない涙。

 ……絶対に守り抜く。

 僕は彼女の手を引き、怪物と反対の方向へ走る。幸いにも、陸地がある方向にはまだ被害が及んでいない。逃げ道は見えた。沢山の大人が戦っているが、とても敵いそうもない。何人かの人々は怪物が現れた裂け目へと消えていく。

 一度見てしまった光景。絶対に正夢にはしたくない。僕たちは生き残らなくてはならないのだ。

 島の端まであと少し。

 

 結界はない。

 

 対岸が見える。

 

 一度止まってライラを抱え、加速。彼女の体重が軽いお陰で走りへの支障は少なかった。

 

頼む、届いてくれ。

 

 

 

 しかし、跳躍の最高到達点はあまりにもはやく訪れ、降下へと向かう。

やはり駄目か……と、そう思ったときだった。

 水中から現れる大蛇のような怪物が、まるで足場になるように上下に蛇行する。その体を利用していくと、対岸へと容易に近づくことが出来た。

 そして最後。スピードを消して着地。ライラも小箱も無事だ。しかし、島の方は見るに耐えないほど悲惨な光景が広がっている。立ち上る火炎。盛大に破壊されるリンガートの墓。

「ママ…パパ…。」

ライラは泣きじゃくっている。無理もない。幼い彼女には辛すぎるだろう。

「クソッ!僕に力があれば…!」

力なき僕らには立ち尽くすしかなかった。




もうちょっとだけシリウス編は続きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。