足の砂を流してもらったあと、ライラはフェンリルにつれられ寝室に、僕は客間に案内された。
「まぁ、ひとまずそれに腰かけてくれるか。妹さんのことなら心配ない。フェンリルは私らのなかで一番面倒見がいいからな。」
「どうも。ところでこれからいったい何をするの?君たちの言うロキについて、僕はなにも知らないよ。」
「まぁまぁ、私もそこまでせっかちじゃないぞ。というか、特に私から父上について聞くことは無いんじゃ。」
「じゃあ何をするのさ?」
「とりあえず、自己紹介からじゃな。フェンリルから聞いているとは思うが、私の名はヘル。冥界の女王じゃ。」
「僕はシリウス・グランディア。あの島に結界を張った人の子孫だよ。」
……流れで自己紹介してしまったが、大丈夫だろうか。
「そうそう、その結界について聞きたいのじゃ。それはどういうモノなんじゃ?」
「外敵から身を守るためのモノ。事実、あの生き物がくるまでは、一度もそういうことは起きなかったんだってさ。」
「そうか。で、それはどれくらい前からあったんじゃ?」
「500年くらい前かな。僕の先祖のリンガート・グランディアが張ったんだ。そう、あの小箱の中身の持ち主だよ。」
「ほうほう、それだけでも十分な情報じゃ。ありがとう。」
大分話してしまったけれど、もしかしてこれマズかったのでは…というかマズい。やってしまった。これじゃあ完全に一族を売ってるじゃないか…
「さて、次はこっちの番じゃな。なんでも聞いてよいぞ。」
…こうなってしまった以上、同等の情報で釣り合いをとるしかない。同等までが遠すぎるけど。
「…じゃあ、ロキについて。」
「父上についてか、良いぞ。父上は神の敵とまで言われる巨人族の出身でありながら神達の仲間になったのじゃ。頭が冴えていて、幾度も神の一族を救った。じゃが、その体に流れる血はそれを良しとしなかった。父上は悪事を重ねていき、終いには神の地を追放されて洞窟に幽閉されてしまった。そこでは、拘束されながら毒蛇の毒を浴びせられる
拷問を受け続けた。そして迎えたラグナロク。神との戦いで相討ちとなり、父上は死んでしまった。」
「なるほど。でも今の説明じゃ全く関係ないじゃないか。」
「重要なのはここからじゃ。神や私らのような存在は転生できて、死んでも他の存在にメモリーが移る事で甦ることができる。宿主は始めのうちは何ともないが、次第にメモリーに侵食されていき、最後には別の存在となる。」
……転生。メモリー。宿主。よくわからない単語のはずなのに、心のどこかで気づいてしまっている。
「もしかして…リンガートは……」
「お察しの通りじゃ。そちらの言うリンガートは父上の宿主だった。自動的にあの小箱の中身は父上の物ということになるの。」
「おかしいよ!そんな悪名高い奴がリンガートな訳がない!」
「メモリーは代替わりするにつれて少しずつ変化する。私もオリジナルの状態では体の半分が腐っておったが、宿主が変わっていったことで、少しずつ治っていったんじゃ。それと同じで、父上も少しずつ更正していったのじゃ。一族の英雄が依り代なら尚更まともになってるじゃろう。」
筋は通っている。が、納得したくない。
「でも、あの小箱は"リンガート"が遺したんだ。いつか現れる後継者に…って……」
言ってる途中で自分で気がついた。自ら答えを導き出してしまったのだ。
「後継者はロキのこと…つまりあの中身は……」
「父上のものじゃな。」
完全に立証された。加えて自分も渦中に巻き込まれてしまった。
「さて、お互いここまで秘密を話したんじゃ。今後のことも考えなくてはならんな。」
「え…?まさか殺…?」
「するわけないじゃろ。君には父上の可能性がある。また探すのは面倒じゃからな。」
「じゃあどうするの…?」
「家族になろう。勿論、妹もな。」
切れ悪いけど次回頑張ります。