完全にネタ回です。
どうしよう。本能が抑えられなくなりそうだ。フェンリルとしてのメモリーではなく、宿主の母性本能が暴走しそう。
原因はどう考えてもこの兄妹だ。
お兄さんの方は責任感に溢れていて、カッコいい。妹さんは、幼さ故の心の弱さを持ちながらも、お兄さんを慕う強かな心を持っている。そして可愛い。
尊すぎる。親になりたい。或いは姉。
………ダメだダメだ。落ち着け私。ここで変なことして不審者扱いされたら終わりだ……平常心平常心……!
「フェンリルさん。」
「はい、なんでしょう。」
「お兄ちゃんはどうなっちゃうの…?」
少し涙を浮かべて問われる。ちょっと罪悪感あるなぁ……。
「大丈夫です。少しヘルと話をしているだけです。私達が傷つけるようなことは絶対にしません。」
「そう…」
ゴメンね…。すぐ戻ってくると思うから…。
私の部屋の前まで案内してふと思いだした。
……片付けてないや。
「ちょっと待っててください!」
一瞬だけ扉を開けて部屋に入り、すぐさま閉める。
そこには案の定、服やらなんやらが散乱していた。
「oh…ワタシノバカ…」
とにかく片付ける。服はクローゼットに、本も本棚に戻し、ベッドのシーツは予備のものと取り替える。
ナイス手際。これがヨルムの部屋じゃなくてよかった。
最終確認をし、入ってもらう。
「失礼しました。どうぞ。」
いくら汚いとはいえ、彼女たちが今まで暮らしていた家とだいぶ違うはずだ。
「…明るいね。あれは何て言うの?」
「照明です。あれがあることで、夜も色々な作業が出来るのですよ。」
「へぇ、便利だね。今までと全然違うなぁ…。」
言葉がどこか上の空な感じだな。寝かせてあげなきゃ。
「ライラ様、だいぶお疲れのようですのでこちらに横になってください。。」
「うん、ありがとう。」
かわいい。
ウトウトしていても、いざ寝床につくと眠れない人ってよくいると思う。
どうやらライラ様も例外ではなかったようだ。だが、話ができるので私としては嬉しい。
「ライラ様。」
「なに?」
「失礼でしたら申し訳ないのですが、その頬の模様は一体何なのでしょうか?お兄様にもお見受けしたのですが。」
「あぁ、これ?これはね、私の家族は皆ついてるモノなんだ。これが濃ければ濃いほど強い能力を持ってるらしいよ。」
「お兄様の模様はかなりはっきり、それでいて濃いモノでしたね。つまり…。」
「そういうことになるんだけど、実はまだ能力が目覚めてないんだ。だから私は…おにいちゃんを…守る…って…誓ったのに…」
ライラ様の目に涙がうるうるし始める。私のバカ!なにやってんだ!トラウマほじくり返してどうするんだよ!
「なにも…できなくて……逆に…お兄ちゃんに…」
そこまで言うと、ライラ様は大きな粒の涙を落としながら泣き始めてしまった。
気づけば私は、ライラ様を恋愛ドラマよろしく正面から抱き締めていた。冷静になって、自分がしたことを理解する。
「わわわ、出すぎた真似を…!申し訳ありません!」
持ち前のテンパり癖が災いし、勢いよく手を離そうとしてライラ様の肘に当たる。そこからからくり仕掛けのように力が伝わり私の顔面へとクリーンヒット。自ら強烈なアッパーの原動力を作り出してしまった。
これが罰ならば甘んじて受け入れよう。自分のせいだもの。
「大丈夫フェンリルさん!?ごめんなさい!」
「いえ、私が悪いんです。お気になさらず。」
大失態である。
「ごめんなさい、フェンリルさん。それと、ありがとう。」
何故だろうか。失礼なことしかしていないはずだが。
「お母さんもこんなときに、おんなじことしてくれた。」
「からくりアッパーをですか?」
オイコラ。んなわけあるか。漫才すな。わりとシリアスシーンやぞ。
「違う違う。ハグだよ。」
ライラ様に笑顔が戻った。結果オーライかな。
「フェンリルさん、お母さんみたい。優しいね。」
「…ご要望とあらば何度でもして差し上げますよ。」
クールに決めていたいがキャラはもうブレブレである。
だが、ライラ様の為、というよりこのきょうだいの前ならばそれでもいいかなと思えた。
たくさん話し込んだあと、ようやくライラ様に再び眠気が訪れたようなので今度こそ眠りに落ちてもらう。
「フェンリルさん。おやすみなさいのハグしよ。」
「喜んで。」
抱き締めあった後も、手は繋ぎながらライラ様は瞳を閉じた。
もう少しだけ愛でて、お兄様が来たら私も今日はリビングで寝よう。
この時は、私の大失態カウンターがもうひとつ数を刻むことになるとは思ってもいなかった。
書いててすごく楽しかったです。
次こそはまともにやります。