救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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序章~解決~

 アジトの階下では、赤とも紫とも取れない恨み色の炎が四方に立ち上っていた。その中には黒焦げになった死体もチラホラと見える。

 

 

「お前ら!!怯むんじゃねぇ!!!」

 

 

 そんな怒号とともに数人の男たちが、一人の少女に襲い掛かる。少女は腕をひとふりすると、掌に携えた炎がまるで生き物のように蠢いて、相手の腕や足に巻き付き、恨み色に焼き尽くす。

 

 

「あ、・・・兄貴!!まさかあれって・・・!!」

 

「うるせぇ!!水魔法で対抗すりゃいいんだよ!!!」

 

 

 兄貴と呼ばれた男は近くに落ちていた刀を手に取り、自らの親指に傷を付け血を出し、刀に不思議な模様を描き始める。

 

 

「水剣《アクアソード》!!」

 

 

 書き終えると同時に刀が水色に光り出す。恐らくこれも魔法の一種だろう。物体を属性強化させる魔法だろう。

 男はその刀を構え、少女に切りかかる。生き物のように蠢く炎を上手く躱しながら、懐へ飛び込んだ。

 

 

「死ねぇぇええ!!!!」

 

 

 しかし、少女はそんなことはお見通しとばかりに、炎を手に纏わせ刀を止める。水が蒸発するような音が響く。しかし火は水に弱い、そんなものは誰だって知っていることだ。故にこの勝負は男が勝つと思われた。

 

 

 

「アンタはそんなもんで勝てると思ってんの?」

 

 

 

 少女は余裕を見せるような口調だった。男は驚いてはいたが攻撃の手を緩めなかった。刀を持つ手を両手に変え、一気に振り抜く。

 

 男は少女の体が真っ二つになる想像をしていた。血が噴き出し、悲痛な悲鳴を上げながら自分の顔を真っ赤に染めるのだろうと。

 しかし、実際はそう甘くはなかった。

 

 

 

「―――――っ!!」

 

 

 

 少女は傷一つ、付いてはいなかった。

 

 不思議に思った男の刀には、柄より先が溶かされていた。あまりの光景に驚きを隠せないでいた。

 魔法じゃない、属性は火ではない。もし火属性の魔法ならば、鉄を溶かすほどの温度を掌に出すのだから、それなりに熱気が来るはずだ。しかし、少女の炎はおよそ熱気と呼ばれるものが感じられなかった。まさかと思った男はよりも先に少女が名乗る。

 

 

「アタシは呪術師のミケ。アンタたちのヘンピな魔法と一緒にするなっ!」

 

 

 ミケは腕をひと振りして男をなぎ払った。大きく騒ぎを起こしたためか、続々と団員たちがミケの元へ集まっていた。

 

 

 

「これでいいのよね・・・・?・・・救世主《ヒーロー》」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・お前は・・・・何もしねぇのか・・・・?」

 

 

 鋭い爪、鋭い牙、背中に大きな翼を携えているが、ドラゴンでもなく人間でもない明敏の周りには、恐らくジェラードの団員であろう男たちが倒れていた。

 

 数えるだけでも十人はいる。この数を一人で相手取ったのだろう、ならば息が切れてもしょうがない。

 

 明敏の目の前には、ボスが憮然と椅子に座っていた。特に何するでもなく、あくまで傍観者を貫くように。

 とはいえ、傍観者であろうと明敏は構わなかった。葵を傷つけた人間に同情を掛けてやるつもりはないのだから。

 

 

 

「・・・・・はぁ・・・・はぁ・・・・・はぁぁぁああああ!!!」

 

 

 

 明敏は息を切らしながら叫び、目の前の敵に突っ込んでいく。それを見る限り、いつもの冷静さを失っているのは一目瞭然だった。

 ボスの顔が微笑んだように見えた。余裕の表れだった。馬鹿にされる気分に陥った明敏はさらに冷静さを失っていく。

 

 

 

 

「―――――召喚《サモン》」

 

 

 

 その声が聞こえたとたん、明敏は外へ吹き飛ばされていた。

 

 

 

「――――――――――っ!?」

 

 

 

 横腹に激痛を覚えたところを見ると、攻撃されたのだと理解する他なかった。能力を解除していなかった明敏は、背中の翼で勢いを殺し、体制を整える。

 

 

「なんだ今の・・・?あいつは何も動いちゃいなかったってのに・・・・」

 

 

 吹き飛ばされた場所を改めて見てみる。しかしそこにはボスが立ち、こちらを見据えていた。突然の出来事に、明敏は冷静に判断を開始した。

 自分は本当に高校生なのだろうか、と思うほどに対処が早かった。いくらなんでも大事な人が捕まえられて、いつまた酷い目に合わされるか分からない場所に置いてきたというのに、不思議なほどに頭を回転させる。

 

 ボスの腕には魔法陣は無かった。しかし魔術を使わないわけではなさそうだ。もし、今の攻撃が魔法によるものだとすれば、ボスか、それとも別の誰かの可能性がある。

 

 

「とりあえず・・・・行ってみるか・・・」

 

 

 翼を一度大きく広げ、勢いを付ける。自分が吹き飛ばされた場所へ、ボスのいるところへ突っ込んでいく。何があるか分からない、しかしだからと言ってここで諦める理由にはならない。

 

 明敏は突っ込む勢いで足を突き出す。勿論それで攻撃するつもりはない、ボスもそのことを知ってか知らずか、軽く横へステップを踏んで躱す。床を擦りながらブレーキを踏む。もう一度戦場へ戻ってきた明敏は、ボスを睨む。

 

 

「ケッ、『改革者』のくせして気づかねぇんだな」

 

 

 ドスの効いた声、ボスは薄ら笑いを浮かべ明敏を嘲笑する。何を言っているのか分からない。しかし自分の融合したドラゴンは何かを感じていた。

 

 

「―――っ!!」

 

 

 

 ―――後ろだった。

 

 

 だが、そんなことを野生の勘で察知していた明敏は、後ろに居る誰かに対して肘で攻撃を与えた。

 

 

 

―――――ガッ

 

 

 

 音は鈍く、皮膚に触れた感触があった。しかし、人でない感覚だった。固く鉄板にでもぶつかった様な。

 

 

 

 

―――――ガルルゥゥゥウ!!!

 

 

 

 

 それもそのはずだった。鳴き声は人とはかけ離れた、今まで聞いたこともないような雄叫びだったのだから。

 危機感を感じた明敏は、いち早く横に飛ぶ。その直後自分の居た場所に、大きく歪な形をした斧が振り下ろされていた。

 

 

「―――――っ!?」

 

「んな攻撃じゃあ、効かねぇぜ?」

 

 

 明敏は自分の目を疑った。ゲームや漫画などでしか見たこともない生物が見えていたからだ。その生き物はボスのもとに向かうと、命令をしくじった為か膝まづいて許しを請いていた。

 

 

「俺のガーゴイルにはな」

 

「が、ガーゴイル・・・!?」

 

 

 空想上の生き物であるガーゴイルは、主に番人として扱われることが多い。石のように硬い皮膚、背中にある大きな翼、指に生える鋭い牙、それら全て本物の石。だがそれも全ては空想上の話で、実際は日本で言う鯱と意味合いは同じである。

 だが実際に動いているのを見ると、その空想が現実だと示される。それにあのガーゴイルは石膏ではないようだ。

 

 

「召喚魔法・・・ってのはわかるよな?」

 

 

 ガーゴイルの頭を撫でながら言う。まるで主従関係のように見え、不自然に思えた。

 

 

「魔法陣を描いて、そこから召喚獣《モンスター》を召喚する力だ」

 

 

 そしてボスが指差すほうに目を向けると、大きな魔法陣があった。明敏は頭の中で歯車が噛み合う感覚を覚える。一連の出来事の正体、明敏の横腹を攻撃したのは他でもないガーゴイルだった。

 

 

「よし、行け」

 

 

 ボスが頭を撫でるのをやめると同時にそうガーゴイルに指示を出す。ゆっくりと立ち上がるその生き物は猫背にもかかわらず二メートルを優に超えていた。そして歪な形の斧はガーゴイルの身長ほどだ。

 

 かなりの攻撃範囲だと思った明敏は、拳を胸に当て能力を解除する。そして――

 

 

 

 

「染色体X《クロス・フィーリング》」

 

 

 

 

 腕をクロスするように左腕を掴む。強い光に包まれた明敏は、その姿を変えていく。鋭い爪に、鋭い牙、茶色い毛並みに金髪の混ざった勇ましいタテガミ。

 まさに、百獣の王ライオンだった。

 

 

 

「ほう、それがテメェの力か?」

 

 

 

 まるで自分の方が上だと言わんばかりに、余裕の表情だった。しかし、明敏には考えがあった。

 

 ドラゴンの大きな翼は邪魔になる。何故ならばガーゴイルの持つ武器は、明らかに切断するという目的よりも、断ち切るというものだと推測する。斧の刃に触れた程度では切れることはない、ならば無駄な部分は極力なくさなければいけない。

 

 

「これで勝てるとは思えねぇけど・・・・」

 

 

 明敏の事などお構いなしにガーゴイルは斧を構え、近づいてくる。

 

 

「ヤッちまえ!!」

 

 

 その怒号とともにガーゴイルは一歩、踏み出した。ただの一歩ではない、明敏との距離を一瞬で埋めた。

 

 

「―――なっ!」

 

 

 さすがに驚きを隠せなかった。いくら数メートルとは言え、瞬時に距離を縮められるとは思いもしなかったのだ。

 ガーゴイルは斧を突き出し攻撃するも、明敏はすんでのところでそれを躱す。しかし敵はそれを読んでいたのか、斧を横凪に払う。

 

 腕で受け止めるも、あまりの勢いと衝撃に明敏は吹き飛ばされ壁に追突する。

 

 

「―――――ぐっ!!」

 

 

 背中と右腕に激痛を覚えるも、倒れる様子はない。いや、むしろ今の一撃で倒れるはずだったのが、敵はそれを許さなかった。横凪に払った斧を持ち替えることなく、そのまま反対側からもう一度振り払う。

 

 明敏はそれをしゃがんで躱し、地面を蹴りあげて懐へ飛び込む。軋む体、痛む右手、それらを我慢しつつガーゴイルの硬い皮膚に拳を叩き込む。

 

 

「―――――痛っ!!」

 

 

 しかし野生動物の力を借りても、鉄板のように硬い皮膚にダメージを与えるのは不可能だった。

 

 

(・・・・・うそだろ!?こんな奴に勝てってのか!?)

 

 

 明敏は距離を開けるように後ろへ飛ぶ。激痛に耐えながらも頭を使う。どう対処すればいいのか、何を使えば倒せるのかを。

 

 そう言いながらも一つ策がないわけではなかった。

 

 

(あの斧を奪えれば・・・・・・・いや、無理だろうな)

 

 

 二メートル強ある斧を振り回しているのだ。掴む力は人間の非ではないだろう。例え今の明敏でも、ドラゴンに変わってもあの武器を奪うのは不可能だろう。ダメージを与えられればの話だが。

 

 ガーゴイルは斧を縦に斬りつける。明敏はそれを避ける―――ではなく、距離を縮め待ち受けた。そして刃ではなく、棒部分を両手で掴む。不可能と思っていた武器を奪う作戦を実行した。

 

 

 

「―――ぐっ!!?重たっ!!!」

 

 

 

 振り下ろした勢いもあったが、それ以前に斧自体の重量がそれを上回っていた。無理と判断した明敏は、掴んだ手を離すと同時に横へ飛ぶ。

 斧がとてつもない轟音を響かせ地面をえぐる。それだけでも、明敏が諦める理由にもなるだろう。

 

 

 

(ダメだ・・・・もう打つ手がねぇ・・・)

 

 

 

 右手の激痛が激しくなっていることに不安を覚えていた。しかしそんなことを考えている暇はない。ガーゴイルは振り下ろした斧を構え直し、明敏に視線を向ける。

 

 

 

 

「っざっけんなよ・・・・」

 

 

 

 

 そう心からの叫びだった。嫌気が差した明敏は、ガーゴイルが近づいているにもかかわらず構えることを放棄した。

 

 

「ハハッ!どうした、もう終わりか?」

 

 

 そんな嘲笑が聞こえたが、どうでもよかった。そんな余裕はないのだから。

 

 

「『改革者』ってのはそんなもんかぁ?」

 

 

 挑発しているのだろう。しかし明敏は諦め半分でガーゴイルの攻撃を避ける。諦めてはいるが死にたくはないのだろう。

 拳は硬い皮膚のせいで通じない。斧は重すぎて持てない。一歩で距離を詰められるほどの身体能力。もはや勝てる見込みはない。

 

 

 

 

「テメェの力を見せてみろよ?」

 

 

 

 明敏の頭の中で何かの歯車が噛み合うような感覚が襲った。ボスの一言は明敏の回転の速い頭脳にヒントを与えた。

 

 

 

(もっと冷静にならねぇとな・・・・今後の教訓だな)

 

 

 

 明敏は手を胸に当て、能力を解除する。ただの人間になった彼を見てボスはついに諦め死を選んだのか、と思った。無理もない、ただの人間にガーゴイルを倒すことは不可能なのだから。

 

 ガーゴイルは止めと言わんばかりに斧を振り下ろす。だがそれは慢心と呼べるだろう。何故なら振り被りを大きくして威力を上げたのだろうが、ただの人間である明敏を懐に飛び込ませるほどの隙を作ってしまったのだから。

 

 

 

「・・・・・覚悟しろよ、俺の中は今、ドス黒いぜ?」

 

 

 ガーゴイルの硬い皮膚に明敏の手が触れる。否、叩き込んだ。殴りつけるように、恨みをぶつけるように、今までの借りを返すように。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「融解《フィーリング》!!!!!」

 

 

 そう叫ぶと同時、彼の体が光に包まれる。そして形を変えてゆく。

 大きな掌、屈強な腕、鉄のように硬い皮膚、大きな翼。どれもこれも全てガーゴイルのそれだった。

 

 

 

「ったく、そりゃこんなに力が溢れてりゃ、斧の一つも振り回せるってもんだ」

 

 

 

 自身の腕を見ながらそういった。そして落ちていた斧を手に取る。まるで木の棒を取るように軽々しく持ち上げる。先程、受け止め損ねたとは思えないほどに。

 

 

 

「な・・・・何っ!!俺のガーゴイルはどこに行った!!?」

 

 

 

 突然の状況についていけないボスは、慌てふためいていた。恐らく召喚魔法といっても、一体しか出すことができないのだろう。

 

 

「ああぁ・・・あれは俺と一体化したんだ」

 

 

「―――何っ!!?」

 

 

 明敏の言葉が信じられないのだろうが、しかし現実は常に信じがたい事柄の連続だったりする。

 

 

「まさか―――――」

 

 

 

「そう、これがお前らの言う『改革者』って奴の実力だ」

 

 

 ボスは後ろに後退りする。しかし明敏はそれを追うように一歩づつ詰め寄る。

 

 命乞いをする声が聞こえた。助けてくれ、と願う人の声がした。

 

 だが、救世主《ヒーロー》は助ける気はなかった。何故なら既に大切なものを傷つけられているからだ。

 

 

 この瞬間だけは、救世主《ヒーロー》は明敏《悪役》だった。

 

 

 地面をえぐる音と、何かの断末魔の叫びがアジト内に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘を終えた明敏は、階下にいる葵を抱えミケのもとへと行った。

 

 残りの団員たちがミケの恨み色の炎に翻弄されていた。しかし床には既に数名の団員が倒れ込んでいた。体の一部が焼け焦げていて、気絶しているものがほとんどだが、ごく数名は全身が焼けていた。

 

 明敏は残っている者たちへ、ボスを討ち取った旨を伝えると、疑う者もいたが全員階上へ向かって足を運んでいった。

 

 

 

「じゃあ、帰るか・・・・」

 

 

 いつもと変わらない口調だったが、どこか浮かばれない表情をした明敏にミケはどうしたのか尋ねようとしたが躊躇った。

 親密な関係でないからではない、ただ野暮だと感じたのだろう。しょうがない、という言葉では解決できないのだから。

 

 

 

 

「・・・・そうね」

 

 

 

 それだけ言うと、街に着くまで会話が交わされることはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これなんてどう?。」

 

 西の街、商店街にて。

 

 暴力団ジェラードから救出された葵は、服屋に明敏とともに来ていた。

 

 体に負っていた傷は大したこともなく、二三日で回復した。だが彼女自身心に負った傷は治りそうもない。それもそのはずだ、見ず知らずの男達数人に鋭利な刃物で体を傷つけられ、終始不気味な笑いに囲まれていたのだから。

 

 精神的にズタズタな葵だったが、明敏に見せる顔はいつものように瘴気のない目をしていたが恋人に見せるような、柔らかいものだった。

 

 

「う~ん、これとこれなんかどうだ?」

 

 

 実際、今はダメになった制服の代わりに新たな服を楽しく吟味している。どれもこれも目新しいものばかりで、どれが可愛くて、どれがオシャレなのか分からない。

 

 

「これ?。」

 

「ああ、ファッションのことはよくわかんねぇけど、これは似合うと思う」

 

 

 明敏は第一印象を大事にしようと思い目に入った服を葵に渡す。店員が試着室まで連れて行く。

 一体どんな服装になるのか、そんな期待で胸が膨らむ。明敏は服を買えないのかと問われれば変える気はないだろう。学ランは動きやすいのだとか。

 

 

 

「ちょっといい?」

 

 

 

 声がした方に振り向くとそこには、赤を基調とした服に身を包み、赤い髪を後ろで一つ結びにした少女。ミケが立っていた。

 

 

「どうした?」

 

「いや・・・・アンタがあの時抱えてた女の子って誰なのかなって」

 

「あいつは、俺の・・・・・」

 

 

 一瞬、どう説明しような悩んだがそれは一言で説明がつく。

 

 

「俺の、妻だ」

 

「そう、奥さんは大丈夫?平気だった?」

 

 

 明敏の悩みは一体なんだったのか、何一つ疑問を持つことなくミケは葵の安否を心配していた。

 

 

「ああ、何とかな・・・・。体にあった傷は完治したし」

 

「そう、それは良かった」

 

 

「そういや、何か恩返ししねぇとな?」

 

「恩返し?」

 

 

「ああ、お前を囮に使っちまったからな」

 

 

 明敏は罪悪感があった。呪術師とは言え一人の少女を戦場へと向かわせたのだから。

 

 

「気にしないでよ、アタシはアンタを疑ったんだし」

 

 

 これは暖簾に腕押しだな、と感じた明敏は方向性を変える。

 

 

「そうか・・・じゃあ助けてくれたお礼ってことで、一つなんでも言う事を聞くってのでどうだ?」

 

 

 恩返し、ではなくお礼、ということであれば重みも少なくなるはずだ。そういわれたミケは少し渋ってはいたが、明敏がどんな小さいことでもいいから、と補足してやっと了承した。

 

 

「わかった、それじゃあ―――――」

 

 

「アキ、どう?。」

 

 

 ミケの言葉を遮るように試着室から葵が新しい服に身を包んで出てきた。白を基調とした服。彼女の髪の色が引き立っていた。

 

 

 

「うん!似合ってる!!」

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 親指を突き立てて感想を述べた。それは彼自身のお世辞ではなく本心からの感想だった。

 

 

 

「まぁ詳しい話はアタシの店に来てちょうだい」

 

 

 

 そう言ってミケはその場を去った。二人の邪魔をしたくないと思ったのか、それとも他に理由があったのかは分からない

 

 

 

「アキ、あの人は誰?愛人?。」

 

 

「んなわけねぇだろっ!!」

 

 

 

 穏やかな空気が流れた。その後も服を選んでいたが、結局先ほどの白い服に決め支払いを済ませた。

 

 

 

 今日の救世主《ヒーロー》は何事もなく平和に過ごしていた。






今回から挿絵を入れていこうと思います


気が向いたら、前回までの話にも入れていこうかな・・・・。


まだ検討中ですがほぼ確定だと思います。
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