救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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「・・・ちょっとアンタ・・・・その話詳しく聞かせてもらうよ」



 突然現れた『黒い球体を使う人間』を知る者。

 ミケは親の仇である人間の知り合いだという少女に、鬼の形相で睨みつけた。






弐章~再会~

 

「詳しくって言っても・・・・・」

 

 

 少女は困惑していた。まるで他に言いようがないかのように。しかし実際そうなのだろう、黒い球体を使う能力者という言葉だけで既に十分な情報だ。

 

 

「アンタとその知り合いはどういう関係なの?

十年前のこととアンタは関係してんの?

その知り合いがどういう人間なのか知ってんの?」

 

 

 ミケは、困惑する少女の心境などお構いなしに詰め寄る。だが、明敏が手で制し、進行を防ぐ。

 揉め事を防ぐためか、話をややこしくしない為か、それとも自分が詳しく聞いたほうがいいと判断したのか、それは答えなくとも判断がつくだろう。

 

 

「その知り合いってのは、どの辺ではぐれたんだ?」

 

「いや、あの人神出鬼没なんでよくわからないんです」

 

 

 頭を掻きながら答える少女は、別段嘘を言っているわけではなさそうだった。

 そうか、と素っ気なく明敏は返しその場を去ろうとする。怒りに打ち震えるミケを強引に連れて行く。それ程までに恨みを抱いていたのか、と思わされた。

 

 

 

「あの!出来れば見つけた時に彼女に言ってほしんですけど」

 

 

 

 歩き始めた明敏たちに少女は声をかけた。

 

 

 

 

「ヒメコという人が探していたと伝えてください」

 

「わかった、見かけたらな」

 

 

 

 努めて明るくそう言った。少女には申し訳ないがもしかすると知り合いは殺されるのかもしれない。そんな気持ちを押し殺しながら。

 

 

 

 

 

 街を抜け、目と鼻の先に村が見えるまで歩き続けた明敏たち。

 流石に数時間も歩き続けたため疲れが限界まで来ていた。ちょうどいい木陰で一休みをする。

 

 

 

「足が痛ぇ・・・・こんなに歩いたのは初めてだ」

 

 

 

 ふくら脛辺りを手でマッサージしながら、そんな言葉が口をついた。

 葵はというと、少女でありながら疲れどころか足の痛みすらないような表情だった。目に瘴気がないということを除いてだが、それは単に人間ではないからだろうか、明敏はそんな無意味なことを彼女の態度から予測していた。

 

 

(・・・・・人間らしく造ったとか言いながら、しっかり人間以上じゃねぇか)

 

 

 いろんな意味でため息が漏れた。

 

 

「アキ。」

 

 

 突然葵が明敏を呼ぶ。それに反応した彼はどうした、というように彼女の顔を見る。しかし、彼女は何を言うでもなく女性特有の座り方をした自分の膝に手を置き何かの合図をした。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「疲れてない?。」

 

 

 小首をかしげ問いかける。この時ばかりは自分の頭の回転の速さが憎いと明敏は思った。

 

 

「・・・・え!?・・・・ちょ・・・」

 

 

 つまり膝枕だった。葵の大胆さは既に承知済みだが、彼自身彼女の大胆さについていけない。

 愛や下心や羞恥心よりも先に理性が上回ってしまう。好きであることは変わらないが、同時に好きであるが故に理性がそれを制御してしまう。

 

 

「いや?。」

 

「いやじゃ・・・・ねぇけど・・・・」

 

 

「じゃあ。」

 

「なっ!!」

 

 

 葵は渋る明敏の顔を掴んで無理やり膝に乗せる。柔らかい感触を後頭部に感じながらも体は緊張と羞恥心で固まっていた。

 葵はそれを感じ取ったのか、まるで母親が子供に見せるような柔らかい笑顔で彼の顔を撫でる。

 

 

「―――――っ」

 

 

 『触れられた』という感覚からか、それとも懐かしさからか明敏の目は少し潤んでいた。

 

 

「・・・・・アキ。」

 

 

 囁くように名を呼ぶ。それに応えることができない明敏は彼女の目を見つめることしかできなかった。

 このときほど、彼女をアンドロイドではなく本当に人間なのだと認識したことはないだろう。

 

 

 

(・・・・葵は・・・・・・人間じゃねぇか

 

 ・・・・機械じゃねぇ、人間に近いアンドロイドじゃねぇ・・・・

 

 

 ただの・・・・人じゃねぇか。・・・・・俺の愛した・・・・人じゃねぇか)

 

 

 

 そんな思いを胸の内にしまう。言う必要なんて無い、確認するまでもない、そんなことは最初からわかっていたことだからだ。 

 そう認識した途端、愛しさと同時に恥ずかしさが明敏を襲う。顔を向けることができず、思わず逸らす。

 視線を外したその先にはミケがいた。先程まで怒りに打ち震えていたのが嘘のように平常を保っていた。何か思うところがあるのか自分の掌を見ながら考え事をしていた。

 

 

「・・・・・黒い球体を使う・・・・・能力者」

 

 

 それは先ほどの少女がいっていた『知り合い』のことだ。

 

 ミケは疑問に思っていた。あの少女はとても悪行を働くような人間ではなかった。人は見かけによらぬもの、ということわざがあるが、しかしミケには占いがある。だからこそあの少女が悪人でない事に絶対の自信がある。

 

 

「だとしたら、あの娘の「知り合い」が独断でやったこと?」

 

 

 少女の年の頃は自分より上、明敏と同い年か一つ上。そして自分の親の仇は、うる覚えながらだが、かなり大人に見えた。自分が幼かったからというのもあるが、しかしあれは二十歳を超えていた。

 

 

 

「・・・・・だったら・・・・人違い・・・・・・・それとも・・・・・?」

 

 

 

 疑問が疑問を呼び、遂には根本までも嘘なのではないかと疑い始めた。

 

 いけない、と自分に喝を入れ気持ちを持ち直す。

 

 

「嘘かも知れないなら、実際に会えばいいのよ。

 もし人違いならまた探せばいいんだし」

 

 

 前向きに考えを固めたミケは、木陰でイチャつく明敏たちに体を向ける。

 

 

「休んでないで行くよっ!村まであと少しなんだし!!」

 

 

 そう言って熱血キャラよろしく熱く燃え上がった。といってもただの比喩である。

 

 

 

「その声は・・・・もしかしてミケ?」

 

 

 

 どこからかそんな爽やかな声が聞こえた、声質からすると男。名を呼ばれたミケは声のした方に視線を向けると、そこには案の定赤い髪をした男性が立っていた。

 

 

 

「やっぱりミケか」

 

 

 

 明敏たちが通ってきた道を歩いてきているところを見ると、街に買い物でもしていたのだろう。手には大量の食材があった。

 

 名を知っていることと、反応を見ると知り合いなのだろう。ミケは顔を無邪気にほころばせ、まるで子供のようにその男性へ走ってゆく。

 

 

 

 

「―――――ハル兄ィ!!!」

 

 

 

 抱きつかれたハルという男は困ったような、嬉しいような表情を浮かべそっとミケの頭を撫でた。

 

 

 どうやら兄妹の再会だったようだ。

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