救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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―――――――ミケ、合格だよ。君はもう立派な呪術師だ。



―――――――僕なんかよりも、ずっと才能に溢れた・・・・人間だよ。






弐章~旅立ち~

 

 

 

「・・・・・・・ハル兄ィ・・・・・・・助けて・・・あげられなくて・・・・ごめんね・・・」

 

 

 その場に崩れ落ちるミケの上には、息も絶え絶えなハルがいた。恐らく、もう後がないのだろう、だがハルはミケに覆いかぶさることをせず立ち上がる。

 

 何か言いたそうにしているものの、口を開けば鮮血が流れ落ちてくる。

 

 

「―――――――――――――」

 

 

 一度明敏を見た。胸に大きく空いた穴からは大量に血が流れ落ちる。

 

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 明敏は言葉がなかった。否、この状況で掛けられる言葉を見つけられなかった。

 ミケを見やる。最早、正気を失うほどに心がズタボロに壊れていた。何をする気も、何を言う気も起きないのだろう。

 

 

「―――――――」

 

 

 再度、ハルが口を開く。しかし言葉は発しなかった。ただ、鮮血のみが流れ落ちるばかりだった。

 

 

 ―――――――瞬間。

 

 

 ハルの頭に一閃の光、ならぬ黒い光が貫いた。通り過ぎた後にはハルの体に頭と呼べるものは存在しなかった。

 

 

 

「これでいいのかねぇ?私ァ、気に入らないけど」

 

 

 

 明敏の後ろからそんな声が聞こえた。

 視線を移すと、そこには黒髪で長身の女性が立っていた。

 

 

 

「おや?あんたってもしかして?」

 

 

 

 その女性は明敏を見るなり、懐かしい友人に出会ったように顔を綻ばせた。勿論彼には女性との面識はない。

 

 

 

「初めましてだねぇ、『メルト・フィーリング』・・・・・じゃなかった、ミヤムラアキトだ。

 

 私ァ、『破壊神《マギノ・ブレイク》』保持者の羅美亜ってんだい」

 

 

 羅美亜と名乗った長身の女性は明敏に手を差し伸べ挨拶をする。

 

 

 

 

「あんたと同じ、―――異能力者さね」

 

 

 

 

 不敵な笑みと共にそう告げた羅美亜は、明敏の手を強引に取り握手を交わし去っていく。半ば放心状態の明敏だが、ふと我に返り状況を確認する。

 

 首から上が無くなったハルの遺体。

 

 そうさせた黒い閃光。

 

 明敏は去っていこうとする羅美亜に声をかけた。

 

 

 

「待てっ!!」

 

 

「何だい?メル―――フィーリング保持者?」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

 明敏の疑問の答えは既に出ていた。

 もしかしたらという思いは脆くも崩れ去ることなく決定的になった。

 

 

―――――彼女はミケの言う『黒い球体を使う人間』だったのだ。

 

 

 明敏の呼びかけに振り向いた羅美亜の周りには黒い球体が浮いていた。まるでこちらの意図を汲んでいるかのように、見せつけるかのように自らの能力を提示していた。

 

 だからこそ、質問するまでもなく彼女がそれだったのだ。

 

 

「いや―――――ヒメコって奴が街でお前を探してたぜ?」

 

 

「そうかい?・・・・まったくお姫様は・・・・・。

 

 そうだ、フィーリング保持者?」

 

「ん?」

 

 

 

 

「その内また会おうじゃないか」

 

 

 

 それだけを言い残し羅美亜は本当に去っていった。

 後には静けさと、虚しさと、後味の悪さだけが充満していた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・」

 

 

 無言のまま、明敏はミケを抱え家へと向かった。

 遺体を放置しておくかどうか迷ったが、やはり弔わなければいけないと思い、ミケを家に残してきた後、墓を作りそこに埋葬した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハル兄ィ・・・・・アタシ、また旅に出るね」

 

 

 翌日、ミケは何事もなかったように平然と墓に手を合わせていた。

 

 

「ちゃんとハル兄ィの分まで生きるから、見守っててね」

 

 

 心が壊れるほどに愛していた兄を殺して尚、変わらないミケはあの瞬間には絶大な決意のもとに下した行動なのだろう。

 

 ただ人を殺すのとは違う。

 復讐を果たすのとも違う。

 

 師として、家族として、最愛の兄として、掟を破った者を葬った彼女の心境は凄まじいものだったのだろう。それ故の決意には、明敏も脱帽であった。

 

 

 

「さてっ、アキトはどうすんの?」

 

「どうするっつってもな・・・」

 

 

 正直なところ特にすることがなかった。

 

 

 

―――――世界を変える。

 

 

 そんな名目の元動いていたが、実際のところ何をすればいいものかと悩むばかりであった。

 

 

「とりあえずは西の街に戻ってみたら?。」

 

「それもそうだな」

 

 

 葵の提案に文句のつけようもなく了承した。西の街に戻る途中で何か事件に遭遇するかもしれないという淡い希望もあった。

 

 

「じゃあじゃあ―――――」

 

 

 ミケは明敏の前に立ち塞がり言葉を続けた。

 

 

 

「―――――アタシもついて行っていい?」

 

 

 

 その時、後ろで一つ結びにした赤い髪が風に揺れ、まるで―――――。

 

 

 

 

―――――彼岸花のような儚さが、明敏の目の前にあった。

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