救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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参章~噂~

 

「女連れてこの街を歩くたァ、なかなか度胸あんじゃねぇか?」

 

「おい、こいつ変なカッコしてんぜ?」

 

 

 品のないような、挑発するような口調で話しかけた輩は明敏たちの行く道を塞いでいた。

 

 ミケの故郷の帰り、東の街を通らなければ西の街に行けないので、渋々ながら関わるべきではない人がチラホラ見える街中を歩いている途中、案の定関わるべきではない人に目をつけられた。

 

 

「ここを通りたきゃ、一人で通んな!?」

 

「そうだぜ、このカワイコちゃん達はオレらが遊んでやっからよ?」

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 明敏は聞く耳を持たなかった。無視をしているというよりも相手の出方を伺っていた。もし葵に手を出そうものなら、という具合に臨戦態勢であった。

 当の本人、葵は我関せずな具合に、頭の中は明敏にねだる物でいっぱいだった。

 ミケはというと、苦虫を噛み潰したかのように露骨な表情を見せていた。

 

 

「おうおう、怖い顔しちゃってぇ~。

心配すんなよ、俺たちァ酷いことしねぇからさぁ?」

 

 

 男はミケに触ろうとするが、しかし彼女は黙っていなかった。警戒心むき出しの眼つきで男の手を払う。

 

 払われたことに一瞬の戸惑いを見せたが、逆にその行動が彼らの心を揺さぶったのか、さらに機嫌を良くして迫っていく。

 

 

「いいねぇ気の強い女は好きだぜぇ?」

 

 

 明敏の準備は万端だった。葵に指一本、息一つでも触れた場合にいつでも攻撃ができる状態だった。

 

 

「ミケ、そっちは任せた」

 

「アンタは彼女以外を守ろうって気は無いわけ?

 仮にも救世主《ヒーロー》でしょ?」

 

 

「俺はお前ならできるって信じてんだよ」

 

「はぁ・・・・嬉しいような・・・悲しいような・・・」

 

 

 明敏たちの会話に目もくれず、男たちはお世辞にも上品とは言えない表情を浮かべながら近寄っていった。

 

 正に葵とミケの体に手が触れようとした瞬間―――――――――。

 

 

 

「女性に積極的なのは良い事だが―――」

 

 

 男たちの後ろから声が聞こえた。低く、大人びた声だった。

 

 

「男として、その行動はどうなんだ?」

 

 

 白髪混じりのその者は言わずもがな男だった。かなりの長身で体つきは大きかった。過言かもしれないが、片手で車を押せるのではないかという程に筋肉質だった。

 そして注目すべきは両腕に装着されている金属だろう。

 盾として付けているのか、それとも別の目的があるのか。

 

 

「あ゛ぁ!!んだオッサン!!」

 

「俺たちとヤろうってか!!?」

 

 

「闘争心溢れるのは、男として立派だが―――」

 

 

 長身の男は手のひらを空中にかざし男たちを睨む。

 

 

 

「―――――――――行いが男らしくないな」

 

 

 

 瞬間、長身の男の手のひらに稲妻が走る。地面から発する電気が手のひらに吸い込まれるように。

 

 長身の男は一度、手のひらを握り直し、何かを掴むように一気に振り抜く。

 

 

 

「「「「「―――――――――っ!!?」」」」」

 

 

 

 その場にいた全員が息を飲んだ。

 それもそのはずだ、何故なら長身の男の手には大剣と呼ぶに相応しい程の巨大な剣が現れたからだ。

 

 

 

「・・・錬金《アルケミー》」

 

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

「れ、錬金術・・・・・!!」

 

 

 

 長身の男の呟きに逸早く反応したのはミケだった。

 それもそのはず、この世界での錬金術師は、鍛冶屋以外には居ないはずなのだ。理由としては錬金術を習得するのに時間がかかるからだ。興味本位で欲するレベルを超えているからだ。

 

 

「小童共、死ぬ度胸がある者から前に出ろ。

 

 

 ワシが男らしさと言うものをその身に刻んでやる」

 

 

 大剣を肩に掛け威圧するその風格は、明敏が能力で獅子になった時のとは違う長年の積み上げた威厳だろう。

 

 

「あ・・・・・お、俺用事思い出したわ!!」

 

「え・・・?・・・・あ、・・・あぁ!俺もだわ!」

 

 

 そんなわざとらしい演技をしながら男達は去っていった。長身の男は鼻を一つ鳴らすと、手に持っている大剣に手をかざし消す。

 

 

「・・・・・・・・・・」

 

 

 そして明敏たちの下へ歩いて行く。ただ一点を見つめて。

 

 

「悪いな―――――」

 

「助けていただいてありがとうございますっ」

 

 

 明敏の言葉を遮って口を開いたのはミケだった。これはあくまでも比喩だが、ミケの眼はハートマークと化していた。

 

 

「アタシ、ミケっていいますっ」

 

 

 まるで尻尾を振る犬のように、長身の男へアピールをしていた。彼女はきっと年上が好みなのだろう。

 趣味が悪いとは言わないが、彼女の年齢からすると年の差が離れすぎている。恋愛は自由と言うがこの場合それはどう適応されるのだろう。

 

 しかしその心配はないようだ。長身の男は尻尾を振るミケなど眼中に無いように素通りし、明敏―――の隣へ向かっていった。

 

 

「・・・・・・?。」

 

 

 今まで我関せずだった葵も、目の前に立たれれば無視するわけにもいかなかったのだろう、目線を長身の男へ向ける。

 

 

「・・・・やはり」

 

 

 そう呟いて何かを確認したように頷いたあと、葵の目の前で膝をつく。

 

 

「名は何と言う?」

 

「・・・・如月・・・・葵。」

 

 

「・・・・アオイか・・・・いい名だ」

 

 

 長身の男は噛み締めるように葵の名前を口遊んだ。彼女も咄嗟の質問で答えてしまったが、しかし葵は重大なことに気づいていた。

 

 それは―――――自分の隣に居るものの存在だ

 

 

 

「ワシは其方に惚れた、嫁に来―――――」

 

「――――――――――――っ!!!」

 

 

 そんなプロポーズをしながら葵の手に触れたほんの一瞬、長身の男の顔面に一撃が飛ぶ。

 男はそれを間一髪で避け、後ろへ数歩下がる。怪訝な顔をしたが、攻撃主を視界に入れるとその表情も一変する。

 

 

「アキ・・・。」

 

 

 宮村明敏の動きは素早かった、否、動きはなかった。

 

 彼の身体は既にライオンと融合していたのだ。鋭い爪に鋭い牙。茶色い毛並みに勇ましいタテガミ。

 

 正に百獣の王と呼ぶに相応しいほどに―――――眼付は怒りに満ちていた。

 

 

「俺の女に・・・・手ェ出してんじゃねぇよ!!!」

 

 

 明敏の能力の発動に誰も気づいていなかったのではなく、動きそのものを有していなかった。ただ一点、葵のみ彼の行動が予想できていた。

 

 それは単に自分の愛する人だからなのだろう。

 

 

「ワシの恋路に邪魔をするというのか、小童?」

 

 

「お前が誰だろうと、葵に触れる奴の人生を

 

 

 ―――――終止符《ピリオド》に変えてやる」

 

 

 

 明敏の威圧は凄まじいものだった。

 

 

 有言実行―――――。

 

 

 まさにその通りに彼は動くだろう、彼女のためならば。

 

 

「錬金《アルケミー》」

 

 

 長身の男は空中に手をかざし、何かを掴むと同時に一気に引き抜いた。

 

 ―――――大剣。

 

 どれほどの重量があるのかはわからないが、片手で振り回すのは至難の業であろう大剣を長身の男は文字通り片手で持っていた。

 

 

 

「ワシの名は『ゲンゾウ』。

 

 昔、この地で有名だった元鍛冶屋だ」

 

 

 

「俺は宮村明敏。

 

 この世界を変える『救世主《ヒーロー》』だ」

 

 

 

 ゲンゾウと名乗る男につられるように明敏も名を名乗る。今にも決闘が始まらんとする空気だった。

 一本の緊張の糸が張り詰めたような雰囲気。お互いがお互いの出方を伺っている。

 何かの拍子に激闘が始まってしまう程に。

 

 

「ミヤムラアキト・・・・・『改革者』か」

 

「―――――――――っ!!」

 

 

 明敏はゲンゾウの呟きに呼応するように一歩、踏み込んだ。その踏み込みは二人の間を一秒よりも早く縮める。

 

 その跳躍を脆ともせず手に持った大剣を振り下ろす。しかし明敏はその攻撃を難なく避けた。それもそのはずだ、大剣を、ましてや片手で振るっているのだから動きが見えるのも当たり前だ。

 

 

「―――っ!!」

 

 

 ゲンゾウの後ろに回り込んだ明敏は廻し蹴りをしようとした。しかし―――。

 

 

「―――フンッ!!」

 

 

 明敏の横合いに衝撃が走る。

 

―――ゲンゾウの大剣だった。

 

 初めの一撃よりも数倍速く斬撃が繰り出された。避けきれないと判断したのか大剣の刃を素手で受け止める。

 しかし勢いに押され吹き飛ばされた。

 

 

「『改革者』とはその程度か?

 西の街での噂は、所詮噂止まりか?」

 

 

ゲンゾウは挑発するような口調で大剣を振りかざす。一方、吹き飛ばされた明敏は華麗に着地し、同時に地面を勢いよく蹴り上げる。

 やはりというべきか、明敏の跳躍は一瞬にして距離を縮める。その勢いを利用して腕を振りかぶり一撃を当てる。予想していたのかゲンゾウは大剣でそれを防ぐ。

 

 

「その程度か、『改革者』?」

 

「・・・・・黙ってろ」

 

 

 明敏は腕を振り抜くと弾かれるように距離を離す。

 

 

―――――――――思い込みの激しさ。

 

 

 不意に頭を過ぎった言葉。明敏自身言葉の意味は分かるほどに理解している。しかし何かが引っかかっている気がしていた。

 

 以前の彼は『触れられない』という思いを抱いていた。だが『触れなくても良い』と強く思うことで能力が発動し、『触れる』ことを許された。

 しかし、今の明敏はその『思い込み』を必要としない。何故ならば『触れなくていい』ことで力を発し、『触れる』ことが出来るのだから―――。

 

 高見沢の言葉に信憑性がないのは口調のせいだが、外れたことがない。

 故に何か明敏にとって有益であることに変わりはないはずだ。だとすれば、もっと他の利用方法があるのかもしれない。

 明敏は戦闘中にも関わらずそんな思いでいっぱいだった。

 

 

「小童、もう終いか?」

 

 

 

「・・・・・・・・・・他の利用方法」

 

 

 

 ゲンゾウは待ちくたびれたように大剣を構える。

 挑発しても無駄と判断したのか、見た目に似合わず俊敏な動作で走り込む。片手で大剣を持っていると感じさせない程に。

 

 

「・・・・・・・・・・俺の左腕は・・・・・」

 

 

 明敏は何かをブツブツと呟いていた。まるで呪文のように。近づいてくる脅威に気づいていないように。

 

 

「では、これで終いだな・・・・!!」

 

 

 振り下ろされる大剣。風切り音が絶望を伝えるその瞬間、明敏は左腕を掴んだ。そして相手を見据え叫んだ。

 

 

 

 

「―――――――――染色体X《クロス・フィーリング》」

 

 

 

 

―――――――――ガキィィンッッ!!

 

 

 

 刀が岩に弾かれるような音が響く。それもそのはずだ、重量のある大剣が一本の金属のような硬い皮膚で覆われた腕に止められたのだから。

 

 

 

「―――――ガーゴイルの左腕《ガーゴイルアーム》」

 

「―――――っ!!?」

 

 

 

 明敏の身体は百獣の王だった。茶色い毛並み、勇ましいタテガミ。だが一点、左腕だけは鉄のように硬い皮膚を持ったガーゴイルのそれだったのだ。

 

 

「やっぱ、これぐらい出来ねぇと・・・・

 

 『救世主《ヒーロー》』にはなれねぇよな!!」

 

 

 ゲンゾウは明敏の変化に驚いて油断していたのか、振り払った拍子に大きく隙を作ってしまう。

 

 

「しまっ―――――」

 

 

 明敏は隙だらけな懐に踏み込んで、右腕を振りかぶる。

 

 

「くらえぇ!!!」

「『改革者』発見ーーーーー!!!」

 

 

 突然の大声に明敏の動きが止まる。声の方へ顔を向けるとそこには葵を拘束する者の姿が見えた。

 ミケはというと、戦闘は苦手だと言ってはいたが幾らなんでも貧弱すぎではないだろうか、気絶されていた。

 

 

「~~~~~っ」

 

 

 明敏は声にならない叫びだった。

 

―――――拘束された。

 

 それ自体は今までに二回ほどあった、それはどちらも明敏の不注意からなったこと。そして拐われるか、縄などの拘束器具によって拘束されることだった。

 

 だが今回は違っていた。頭の回転が速く、非常事態になっても怖いほどに冷静になる明敏の脳がフリーズした。

 

 理由は至ってシンプルだ。

 

 葵を拘束している者は、彼女の両腕を後ろで拘束し、抵抗されないようにしているのだろう。そして後ろから抱きつくように葵の顎あたりに手を添えて、もう片方の手で刃物をチラつかせていた。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

「貴様、彼女を離せ!!!」

 

 

 ゲンゾウは叫んでいた。惚れた女が捕らわれているのだ。それは極自然な対応だろう。

 しかしその行動さえしない男が一人いた。

 

 

 

「・・・・・・・・・・どいつもこいつも・・・・・・

 教え込まなきゃ分からねぇのか・・・・?」

 

 

 

―――――明敏だった。

 

 怒りに打ち震えているように肩を揺らし、ドスの効いた低い声を発する。

 始めに言っておくと、彼はまだ能力を解除していない。つまり左腕はガーゴイルのそれだが、それ以外は百獣の王のままなのだ。

 

 

「へっへーー、いいか!!『改革者』!!?テメェの功績は知ってん―――――」

 

 

「覚悟は出来てんだろうなァ!!このクソ野郎ォォ!!!」

 

 

 

―――――獅子の咆哮。

 

 その場にいた者全員の動きが静止した。大声を上げたからではない。騒ぎを聞きつけたわけではない。

 

 

―――――――――恐怖したのだ。

 

 

―――――――――脅威を感じたのだ。

 

 

 動くべきではないと思ったのではない。動けないのだ。

 明敏は一歩ずつ踏み出す。怒りと、憎しみと、嫌気を込めて―――。

 

 

 

「・・・・・教えてやるよ、俺の女に手ェ出すことが、

 世界に牙剥くよりも―――――」

 

 

 彼の目には優しさの欠片もなかった。

 

 

 あるのは真っ白く、白い、純粋な――――。

 

 

 

「―――――恐ろしいってことをなァ!!!」

 

 

 

―――――――――殺意だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・・ごめん」

 

「幾らなんでも弱すぎだろ・・・・・」

 

 

 東の街のなかを人混みをかき分けて進む明敏達。かき分けるといっても、人混みが勝手に道を開けていくだけなのだが。

 

 

「言ったでしょ?アタシは武術は苦手だって」

 

「にしてもだろ?あの時は持ち堪えてたじゃねぇか」

 

 

 それもそのはずだ、彼らの後ろの方には地面に頭から埋まった人間がいるのだから。と言っても、死んでいるわけではない。恐らくは気絶しているだろう。

 

 

「だって、さっきのは後ろからいきなりだったから・・・・」

 

「アキ、そんなに責めないで。ちゃんと助かったんだから。」

 

 

「・・・・・・・」

 

 

 葵には頭が上がらない明敏。彼自身それほど責めるつもりも無いだろう。しかし呪術師であるにも関わらずな功績に疑問があったのは仕方がないだろう。

 

 

「小童、男たる者、しつこさは厳禁だ」

 

「何でお前がいるんだよ」 

 

 

「惚れた女を逃す程ワシは、愚かではない」

 

「男にはしつこさは要らねぇんだろ?」

 

 

「恋愛に事欠いては重要だ」

 

「意味がわからねぇ・・・・」

 

 

「ごめんなさい、私とアキは既に結婚してるの。」

 

「それでも構わん」

 

 

「いや、構えよ!!」

 

「まぁ落ち着け小童、ワシには今することがなくてな」

 

 

 ゲンゾウは悩むように腕を組んだ。

 

 

「鍛冶屋はどうしたんだよ」

 

「『元』と言ったろ。廃業したんだ、ある小僧のせいでな」

 

 

 胸の内を吐露するような口ぶりで口を開いたが、それ以上言葉を発することはなかった。

 何か事情があることは理解できる。明敏もそれ以上追求することはなかった。

 

 

「まぁ何だ、ワシも小童達の仲間に加えてもらえんか?」

 

「大歓迎!!!」

 

 

 明敏より先に肯定したのはミケだった。そう言われてみれば彼女はゲンゾウを一目見た際、比喩だが目がハートマークと化していた。だとすると肯定するのは納得できる。

 

 問題は明敏だった。渋るように口を閉ざしたままゲンゾウを睨んでいた。

 それもそうだろう、自分の愛した女性に手を出そうとした男を身近に置くなど考えられない。

 

 

「納得がいかないか、小童?」

 

「当たり前だろうが・・・・!!」

 

 

「ならば、彼女を諦めよう」

 

 

 ゲンゾウはきっぱりとそう言った。まるで吹っ切れたように告げる。あまりのあっさりとした発言に明敏は疑いが拭い去れなかった。

 

 

「信じられるとでも?」

 

「貴様らが婚約している時点で諦めはついている」

 

 

「言い訳がましすぎるだろ!!!

 じゃあさっきの言葉はなんなんだよ!!?」

 

「小粋な冗談だ」

 

 

「・・・・・・・・・て、テメェ・・・・」

 

「アキ、私は構わないわ。」

 

 

 握り拳で怒りを露にする明敏をなだめるように葵が前へ出る。収拾がつかないと感じたのか、全肯定のミケを尻目に彼女は一つの忠告を申し立てる。

 

 

「貴方が付いてこようと、何をしようと構わない。

 

 でもその代わり、私は心身ともにアキのモノだから。」

 

 

 恥ずかしげもなく堂々と発言する葵は、男よりも男らしく見えた。とは言え、仁王立ちで言ったわけではなく明敏の体に抱きつきながらの発言だったため、その限りではないだろう。

 

 

「恋は奪い合いだと言うが、他人の者に手を出す程ワシは堕ちぶれてはいない」

 

「・・・・葵がそう言うなら別にいいけど」

 

 

 渋々と言った様子の明敏。これからの先行きが不安で仕方なかった。それは何の因果か、彼の不安は別の意味で叶われてしまう。

 

 

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