救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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序章~人生ゲーム~

 とある街角の一角。

 

 決して高いとは言えないが、レンガ造りの家々が立ち並ぶそこは一種の商店街であった。様々な商いが行われる。

 

 

 野菜。果物。肉。武器。防具。―――――様々である。

 

 

 そんな場所に一つ異彩を放つ空間があった。怪しげな幕が張ってあり、雰囲気も暗めだ。看板が立てかけてあるが言葉は日本語ではない。

 

 

 訳せば――――「占い」

 

 

 この世界にも占いというものが存在するのか、と思いを馳せているとガラの悪そうな男が、これまた清純とはお世辞にも言い難い女性を連れて歩いてきた。

 

 

 

「ねぇ、あんなとこに占いって書いてあるよ~。やってみない~」

 

「ほぉ~占いなんかに興味あんのか?」

 

 

「いいじゃんいいじゃん!?ヤロ?」

 

 男はしょうがねぇな、とぼやきながらも口の端を怪しく釣り上げ「占い」と書かれた空間へと足を運んだ。

 

 

 そこは怪しげな幕が暗幕と同じ効果をしていて、足元すら暗く所在が上手く掴めない。とはいうものの広さはさほどなく、高校の文化祭レベルである。

 

 奥にはロウソクがあり、怪しさを醸し出している。中の装飾も髑髏や藁人形といった呪いの道具などがあって怪しさよりも恐ろしさが出ていた。そして中央には幕で覆われたテーブルと人影。

 

 黒いローブを頭から被っていて顔は愚か歳も何もかもが窺い知れない。

 

 

「あの~すみませ~ん。占いして欲しいんですけど~」

 

 

 

「・・・。未来を占ってあげるよ、手を出しな?」

 

 素っ気なく、鬱陶しげに接客をする。声を聞く限り女性である。

 

 清純とはお世辞にも言えない女性は、期待とも遊んでいるともとれる態度で手を占い師に見せる。手首に様々な鮮やかな装飾品をつけていて、動かすたびに忙しなく音を奏でていた。

 

 占い師はそんなことには目もくれず淡々と手を握ったり、かざしたりと仕事を始める。

 

 

「・・・・・・・・・・・・・。」

 

 

「どうなの?なんかわかった??」

 

「インチキなんじゃねぇの?本当はなんも分かんねぇんだぜ」

 

 男は貧相な笑いを上げ、女はかもねー、と便乗する。お構いなしに二人の姿をローブの下から見据える、と言っても目は見えないのだが。例え顔が窺い知れずとも口の端が上がり、客としてきた男女を嘲笑っているのはわかった。

 

 

 

「・・・・近いうち、事故に巻き込まれるね。・・・火災?」

 

 

 

「なにそれ~、何で疑問ケーナンデスカ~?」

 

「これあれジャネ?俺たちの恋の炎で―――――」

 

「彼氏と別れちゃいなよ。」

 

「んだとごラーーっっ!!」

 

 

 

 

 

「彼には、女難の相がある。」

 

「・・・だから何な―――――」

 

 

 

「彼女が苦労する。」

 

「おちょクッてンのかっっ!!」

 

 

 

 占い師はあくまで冷静に、結果と傾向を述べていく。しかし―――――

 

 

「テメェ・・・!!もう行こうぜ!!!」

 

 

「えぇ~面白いよ~?」

 

 男はうるせェ、と一言叫びこの場を去ろうとしたが女は名残惜しそうに、しかし男についていく。

 

 

「待ちな」

 

 

「あぁ!?」

 

 

 眉間にしわを寄せ誠意いっぱいの威嚇で占い師を睨みつける。そんなことはお構いなしと、占い師は自分のテーブルの端にある木で編み込まれた籠を指差す。

 

 

「100」

 

 

 

「・・・・ひゃ、・・・・100ビア・・・!?。」

 

 

 恐らくは金額のことを言っているのだろう。『ビア』は単価だろうか。男が驚きと怒りが顕になっているということは、ありえない金額なのだろうことが予想される。

 小刻みに震えながら拳を力強く握り締め、奥歯が軋む音が他からでも伺える。怒りに打ち震えるとは正にこういうことを言うのだろう。

 

 

 

「―――ッざけんな!!!」

 

 

 そう叫び、目の前にあった物を蹴飛ばして去っていった。

 

 

 占い師は律儀なのか何か企んでのことか、さっきの客を見送っていた。

 

 

「・・・・・はぁ。人の忠告は―――」

 

 

 男女が角を曲がったことを確認すると、回れ右をして反対方向へと向かって歩き出す。まるで何かを把握しているように。何か意図があるかのように。

 

 

 

 

 

「―――聞いておくもんだ。」

 

 

 

 

 日の光を浴び、黒いローブから翡翠色の瞳が伺える。それは吸い込まれるような、得てして見透かされるような。不思議な色をしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それではお願いしますね。」

 

 胡散臭い喋り方で、嘘くさい営業スマイルを浮かべた高見沢の顔が、電話越しからでも伺える。それは単に彼自身の個性ともとれるのかもしれない。

 

 そんな言葉を、さも当然の如くわかった、と一言で済ます男がいた。

 

 

 学ランの前を全開けにてして腕捲くり、髪は金髪に染めているのに不良感ゼロ。

 

 

 この話の主人公。宮村明敏は携帯の通話を切り、辺りを見渡す。なにか動物がいないかを探しているのだ。

 

 居るのは青い髪を風になびかせながら機械的な瘴気のない目をした少女。如月葵の姿だけだった。

 

 こちらと目があった為か小首を傾げていた。恐らく会話の内容を訪ねようとしているのだろう。明敏は辺りを見渡しながら電話の内容を淡々と告げた。

 

 

 

 

 

 高見沢陽一の『救世主になるための人生ゲーム』第一弾。

 

 今現在の場所から、西に暫く行くと街が見えてくる。その街はレンガ造りの町並みで、その街角には商店街の空間がある。様々な商いが行われていて、一通りの物資を集めることができるほどだという。その場所で火災が起きるらしい。犠牲者は数十人。時刻は現時刻から一時間後。

 

 

 

 

 

「・・・火災?。大丈夫なの?。」 

 

 

 心配なのかそれとも遂行できるか聞いているのかは判らないが、明敏にはそんなことは愚問だったようだ。

 近くにいた鳥に狙いを定め手を伸ばし能力を発動する。

 

 

 

 

 

 ――――――フィーリング。

 

 

 

 

 茶色い羽を撒き散らし、優雅に翼を広げながら立ち振舞う鳥人間がいた。

 

 嘴は小さく、腕はそのまま翼となっている。遺伝子レベルで融合しているため、決して背中に羽が生えることはない。とはいえ、もともと生えているのならばそれは反映されるが。

 

 

「そんなもん、やらねぇことにはな」

 

 

 空を仰ぐように呟く。誰に言うでもなく。言い聞かせるでもなく。

 

 葵は鳥人間と化した明敏に近づき、そっと、翼となった腕に触る。なんの躊躇いもなく、まるで恋人の体を触るように。

 

 

「いつも思うけど、・・・不思議。本当にこれが変身じゃないなんて。・・・どうしてこれが私に効かないのかしら?」

 

 

この言葉は明敏に言ったわけではないようだ。これこそ自分に言い聞かせているように。

 

(私はアキと一つになれないということかしら)

 

 解釈を変えれば卑猥に聞こえるかもしれないが、彼女の言う『一つ』というのは文字通りの意味だった。それもそのはず、結婚を交わしたにもかかわらず愛した者と一つになれないのは何よりも不満だろう。

 

 鳥人間化した明敏はしっかり捕まっていろよ、と葵に行ったあと勢いよく空へ飛び立った。事件が起こるであろう西の街へ。 




まだまだ続きます。


実はこの物語、4分割ぐらいに分かれています。


それぞれ主人公が変わって話が繰り広げられます。

そしてその全て頭の中で最終回まで組みあがっています。

かなりぶっちゃけましたが、上手く文章に書き起こせるように頑張りますので、

応援よろしくお願いします。


不躾ではありますが気が向いた時などでいいので

この作品の感想でなしに、良いところ悪いところなんかを
書いていただけると、私自身参考に出来て嬉しいのでお願い致します。


最後に、読んでいただいてありがとうございます。
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