「羅美亜ーーー?羅美亜ーーー!?」
宿の中を名指しで叫ぶ。神宮寺姫娘こと私は、使い魔である彼女を探す。羅美亜は時折、こうして姿を消す時がある。理由はわからないが、きっと彼女にも用事があるのかもしれない、そう自己解決して半ば諦め気分で羅美亜を探している。彼女には会いたい人がいるといっていた。恐らくその人物の情報やらを集めているのかもしれない。しかし、その人物を求めて今、西の街にいるのだ。結果、ハズレだったわけで、しばらくこの場所で滞在することとなっている。
それにしてもこの街は綺麗な造りだ。街もそうだけど、家の造りが頑丈そうにできている。建築に関して知識はないけれど、素人目にもわかるくらいにしっかりしている。私の故郷である北の街ではこうはいかないなぁ。木造建築でこの頑丈さは出せないもんなぁ。
それに、街の人たちも活気があって近寄りやすい雰囲気を持ってる。私はこの街が好きかもしれない。こういう雰囲気を嫌いにはなれない。だが、羅美亜は嫌いだと言っていた。気にくはない、とか言ってたけれどどうしてなのだろう。まぁ、人それぞれに個性があるように、好き好きなのだろう。
「おや、お姫様。こんなとこで何やってんだい?」
「羅美亜、やっと帰ってきた・・・・」
私は、お馴染みのスーツ姿に黒髪を後ろで一つ結びにした淑女を目の前に安堵のため息を漏らした。これはあくまで『呆れ』の意味だ。
「どこいってたの?」
「どこって・・・・・仕事さね」
「何の仕事?」
「聞いたところで答えると思うのかい?」
彼女は含みのある笑みで私を一点に見つめる。言い逃れする気がない態度には正直感服するが、逆にそれはタチが悪い。羅美亜は既に私の質問に答える気がないのだ。
「いつも何か隠してるけどさぁ・・・・私に言えないことなの?」
「言ってどうすんのさね?それに疚しい事はしてないし、お金も貰ってる。
言ってないことには理由があるけどねぇ・・・・」
「その理由を教えてよ。私は貴方の主人よ?主人に言えない事をどうしてしてるの?」
私の質問に答える気があるのかは不明だが、彼女が見つめる視線には嘘も偽りもない。つまり、羅美亜は嘘など無しに私に言えないことがある。そしてそれを言うつもりも、言う理由もないのだろう。
「何だい、私のことが心配かい?」
「そうじゃなくて、また今日みたいに居なくなった時に、どういうことしてるかが分かれば心ぱ・・・・・・あっ・・・!」
「ふ~ん」
失言だった。
気分を良くした羅美亜は私の頭を撫でてくる。まるで可愛い孫でもあやすように。
「そうかいそうかい、心配かい?それならしょうがないさね」
「・・・・うぐぐ・・・」
屈辱だ。子供のように扱われて嬉しい人などいない。
「寂しい思いをさせたなら、今度から早めに帰るとしようかね」
「こ、子供扱いしないで!!」
ニヤニヤと笑う羅美亜。腹立たしい表情を消し飛ばしてやりたいが、失言した私にそのチャンスをもらえる訳もなく、頭を撫でられ続ける。
「ちょ、・・・・調子に乗るなぁあ!!」
バチバチと火花を飛ばし、彼女に威嚇する。しかし、効いていないのか撫でる手を止めない羅美亜。軽く失神するくらいに電圧を高めてるはずなんだけど・・・・。
「まぁでも、本当に言う必要がないのさね。それに、悪いことは何一つしてないから安心しな?」
「・・・・・・」
ようやく、撫でる手を止めた羅美亜。何故か腑に落ちない思いが募る中、彼女はまたどこかへと行こうとした。私はその手を掴み、止める。
「どこに行くの?」
「・・・・・・」
「せめて、どこに行くのかだけは言ってよ」
もはや、彼女には問うまい。だからこそ、目的地だけ入って欲しい。目的は聞かない、いや、答えないのなら行く場所だけでも知りたい。それさえ答えないのなら、私も出るとこ出さないと。
「どこって・・・・・行かないのかい?」
「え・・・?」
「一緒にさね」
一体何の心境の変化だろう、羅美亜は私に対し手を差し伸べる。そして彼女は少しの微笑みを浮かべる。
まぁ別にそれを断る理由もないし、羅美亜が私を連れて行くというのならやぶさかじゃないし。
「べ、別に一緒になら・・・いいけどね」
「・・・・」
手を取る私に優しく微笑む羅美亜。
あれ・・・・?私が主人だよね・・・?