そんな彼の前に、突然現れた女性ネイル・ディミラ。
人探しをする太陽を手伝おうと言い出す彼女の手には、黒光りするサブマシンガンなる銃火器が握られていた・・・・。
「えっ、とー、人探し、ですよね?ちなみに特徴などは・・・。」
ネイルは満面の笑で訊いてくる。あの笑顔、ちょっと鬱陶しいな・・・。
「アァ・・・一人は、金髪で、背が180センチ位ある男で、もう一人が、青髪で、165センチ位の女だ。」
「情報薄いですね・・・」
めんどくさそうに言った緋乃崎の言葉に、半眼で睨んでくる。
「もっとないんですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ねぇ。」
緋乃崎は、人に対しては無関心・非干渉な為、身長・髪の毛以外では人の判別が難しい。
「無いんですか?もっとこう・・・、髪型とか、服装とか、全体的な雰囲気とか」
また笑顔・・・。
「・・・・・・・・。」
「無いんですね・・・・。」
察したのだうか?呆れたように、肩を落とす。そして、あごに右手を当て、何かを思案するように考え込む。まだ銃を持っているため、カチャカチャと左手にある物が揺れて、音が鳴る。
・・・・銃、しまえよ。
そんな思いもむなしく、ネイルは閃いたように顔を上げる。
「そうです!!特徴が判らないのでしたら、こちらが探すのではなく、あちらに探してもらいましょう。」
・・・・・また笑顔だ・・・。何がそんなに面白ェんだ?
「私、人が好きなんですっ!」
!!!エスパーっっっ!?
突然言われた言葉が、あまりにも的確だったために、心底驚いた。
「あっ!勘違いしないで下さいね!私は念力《テレパシー》は使えませんから、ただ貴方の目が「何が面白いんだ」って言ってるような気がして・・・。」
ネイルは、片手に銃を持ちながら否定するように、両手を左右に振る。
アイコンタクトで、相手の思考を読むのがテレパシーってやつだろ・・・。
ふと思い出したように彼女が言葉を続けてくる。
「そういえば、まだお名前を伺っていませんでした。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
しばらくの間、沈黙。
「・・・あのー。」
「?」
沈黙に耐え切れなかったのか、もう一度問いてくる。
「お名前を・・・。」
「・・・・・・。」
緋乃崎は、だからなんだ?と言わんばかりに見やると、彼女は困惑したように、頬を掻く。そこで彼は、ようやく言葉の意味を理解した。
「言わねェと、ダメか?」
それを聞いた彼女は、一転してションボリ顔をした。
「出来ればでいいです・・・。駄目なら構いません・・・・。」と、上目遣いで言ってきた。
緋乃崎は、今にも泣き出しそうになっている女性を見て、やはりめんどくさそうに言う。
「・・・緋乃崎、太陽・・。」
「ヒノザキさんって言うんですかっ!?変わったお名前ですねっ!!!」
やはり、満面に笑みで、今にも耳をピンッと立て、丸まった尻尾を一生懸命振る柴犬になってしまいそうな勢いだ。勢いじゃねェ・・・。もはや犬だ。耳も尻尾も見える・・・。
と、そんな冗談交じりな幻想だが、人懐っこそうなのは否めない。
「さぁ、行きましょう!ヒノザキさんっ。」
よほど名前を教えてもらったことが、嬉しかったのか、強調して名を呼ばれた。
ネイルは、緋乃崎の手を取ろうとして、熱したフライパンに手が触れたかのように勢い良く引っ込めた。
「アツッ!!」
自分のした反射行動を疑うように、自らの手を見る。
「触りゃァ。熱いだろ・・・。」
当たり前のように言う。
「へっ????あっ!体温が高いんですね。」
当たり前の反応に、引きつった笑顔+フォローを入れてきた。
「いや・・・・。能力《アリビティー》の代償だろ。」
「アリ・・・魔法の名前ですか?」
「マホウ・・・・・・・?」
微妙に話が噛み合わない・・・。
このままだと、また沈黙が来ると察したのか、途切れないようにネイルが会話を続ける。
「えー・・・・、えっと、そのアリビティー?って何ですか?」
「・・・・・・・・・能力だ。」
「むむ・・・。」
ネイルは現在進行系で上目遣い、涙目だ・・・・。
「ア゛ァァァッ、アリビティーってのはなァ・・・。」
緋乃崎は、大仰に頭を掻きむしり、言葉を続ける。
能力(アリビティー)とはーーー。簡単に言えば文字どうりに、「能力」。
一般的に、霊感、念力、透視。超能力と言われるものが、「能力=アリビティー」である。それに必ずつきものなのが「代償」だ。例をあげるのなら、緋乃崎のあれがそうだ。彼は、焔の能力保持者。つまり、焔が使える代わりに、体温が異状に高く、彼の半径100メートル以内は、常に外気よりも10度上昇している。だからこそ、今までの言動には説明が行く。
「・・・・は、はぁ。なる、ほ、ど・・・。」
・・・・解ってねェな・・・。
今の説明で理解してない訳ではなさそうだが、納得がいってなようだ。・・・・笑顔がぎこちない。どうやら感情が表に出やすいらしい。
そもそもの話、能力の説明は必要ないくらい常識なはず。石は硬い、水は冷たい、運動すれば汗を掻く、熱をこじらせば体力が落ちる。仕組みは分からなくても・・・という位の常識範囲だ。
それに、オレの存在を知らねェはずがねェ・・・・・。モグリか?
すこし呆れ顔で、とりあえず尋ねてみる。
「・・・おい、『炎帝』って聞いたことねェか?」
「いいえ、知りません。」
英語の教科書ばりの回答に・・・ではなく、嘘偽りのない回答に驚いた。
『炎帝=フレイムエンペラ』これは緋乃崎の異名、別名、通り名、伝説、である。彼の焔の能力は、他のそれとは比べ物にならない程に、氷も凍てつく前に溶けるほどに、水に触れるまえに蒸発するほどに、同じ炎でさえも燃やす。全てを超越し、浄火し、灰さえも燃やす。だからこそ、炎帝。故に、炎帝。彼に勝るものも、挑むものも、近づくものもいない。だからこそ、ヒトが近寄らないからこそ、二人の、「洸輔と恵」の存在が・・・・・。
「えんてい、と言うのもありびてぃーですか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・もういい。てめェのやろうとしたことってなんだ?」
いくら説明をしても無駄と判断した緋乃崎は、話題を変える。
「えっ!?でも、私理解してな―――――――――」
「てめぇのしてぇこたァァ何なんだっ!!?」
ネイルの言葉を遮り、怒声を放つ。・・・・・・・目が潤んでる・・!!!!
「うっ・・・うう、うるる・・・・。」
「!」
突然の大粒の雫に、半ばたじろぐ・・・。・・・・・・子供か!?。
漫画のギャグで使われるような、あからさまな泣き顔。ふと、ある記憶が蘇る、恵の言葉だ。博識な彼女は、色々為話をしてくる。通称『恵辞典』
《いーい?女を泣かすと・・・男の性欲が落ちるのよ!》
知らねェェェーーよ!!今それが知りてェんじゃねェよ!!!
恵辞典は、タメにはならなかった。
「ううっ・・・・・・ぐすっ、うるるぅぅー・・・・ヒッ、ヒッ。ううぅ-。」
(つд⊂)
ちょうどこんな感じになった。
女が泣くと男はどうすればいいかわからなくなる。一つ勉強になった。
「あァ・・・・。・・・・・・・・・・。・・・分かった、後で教える。だから・・・。」
なんとか機嫌を直してもらうために、とりあえずという建前で、使わない頭をフルに使って、出してみた。やはりまだ顔を手で被ったまま、鼻をすすってい―――。
「本当ですか?絶対ですよ!絶対教えてくださいねっ?私、いつまでも憶えてますからね?」
「ね?」と言うと同時に・・・・満面の笑をした。目が赤いところを見ると嘘泣きではなさそうだが・・・。
・・・女って怖ェェ。男がたじろぐ訳だ。
「ではとりあえず、私についてきてください。」と、笑顔。やはり何が嬉しんだろうか・・・。理解できん。
緋乃崎は、歩くネイルをよそに後ろを向く、彼女は付いてきてないことに気づいたのか振り返る。すると・・・。
「・・・総長。」
と、抑揚のない声がきこえたと同時、目の前に何かが降ってきて、地面に激突する。
「・・・総長・・。見つけた・・・。」土埃の中からそう聞こえた。
「っ!シズちゃん!?」
そこに居たのは、男?・・・いや女だ、白髪ショートで・・あれ・・アホ毛か?
とりあえず上は、北極にでも行くのか?というような、袖にモコモコが付いているコート?と思う、下はホットパンツにニーソックス。不釣合だ。「・・・暑いだろ、上が」そう呟く本人も、露出狂さながらの格好である。
《シズ》というアホ毛は、一目散にネイルへと駆け寄る・・・いや、体を磁石のように密着させる。
「あのー、どうしてここに?」――――――笑顔・・・じゃねェ!
「・・・探してた・・・。寂しいから!」
抑揚が無いのに、最後だけ妙に力強かった。
密着させた体を、猫が甘えるように擦りつけていた。怖気が走ったのには、顔と目だけがネイルを見つめ・・・見ていた。
「そっ・・そうなんですか・・・。」
引きつった笑顔。こっちが笑ってしまいそうだ。
「ん。一時間探した。でも苦じゃない。会えたことが嬉し・・・・?誰?」
こちらの存在に気づいた。
なぜ顔だけ向ける?こえェよ・・・。
恐怖映画さながら、顔をグリっとこちらに向ける、目に覇気があまりない分余計に・・・。
「か、彼はヒノザキさんと言って、人探しで困っていて・・・、・・・・・そうだ・・・シズちゃん、ベルベット騎士団へ行って伝えて欲しいことが――――――」
「頼み?」
すぐさま顔をネイルに戻し、遮るように問う。表情は見えないが、なんとなくネイルの表情が・・・。恐らく熱い視線を向けられているのだろう。
「!はっ、はい・・・、そちらに戻るので準備を、と伝えてください。」
「人探し・・・、でいい?」
はい。とネイルが返事をすると、密着させていた体を渋々離す。後ろに大きく一歩下がり直立。ネイルにビシッと敬礼をすると
「ファルスィーズ=T=ユクナ、総長の命により、これから帰投します。」
抑揚のない声で、辺りに聞こるように言ってその場を去る。ホッと、一息ついたのはネイルだった。緋乃崎はというと、あまりの状況の変化と目の前で起きたこととで呆然と立ち尽くしていた。
「・・・では、行きましょうか。」
顔が見えない・・・。恐らく疲れている。
緋乃崎は、流石に気を使って、「・・・あ、あぁ・・」と言って彼女の後について行く。
そういやァ、ここどこだァ・・・?
緋乃崎のいる場所はどの教科書にも載っていない。未知の場所。嫌でもついて行かざるを得ない状況にある。なので、ついて行きながら、この辺りのことを聞き出し・・・・・・無理だ・・・・。
ネイルは常に笑顔で、背景に『ぱぁ~』っと効果文字が付きまとうのです