救世主になりたい男の顛末   作:愛・茶

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第四話 「王の風格」

 酒場のような場所で、屈強な男たちがガヤガヤと騒ぎながら大口を開け酒飲みに勤しんでいる・・・のではなかった。長椅子に腰掛け談笑、カウンター席で真剣な面持ちで話し合い。中には女もいて、明らかに一般市民とは違う勇ましさがあった。

 ここは、ベルベット騎士団。緋乃崎とネイルは到着した。ネイルがそこに行くと、違和感がない程に自然だった。緋乃崎が一歩這入ると、一応に皆の口が止まるほど、不自然だった。決して緋乃崎が、露出狂さながらの格好をしているからではない。彼から発せられる生暖かい何かであった。

 妙にその場が静まる。すると誰かが、

「ソーチョー、人探しってそいつ??」訊ねてきた。

「はい。彼はヒノザキさんと言って・・・。」と緋乃崎のことを軽く説明した。

 

「パツキンの男か~・・・残念、女で爆乳ならパフパフしてもら――――――グハッ!!!」

 

 下ネタ発言に「・・・変態」と抑揚のない声でシズが言い、装備しているであろうハンマーで殴る。

 

「おかえり・・・総長。」

「でもでもっ!黒髪ってのもいいよな~、純情そうな娘の乱れたすが――――――ダハッ!!!!」

 

 シズが言い終わると同時に額から血が流れている顔を上げ言った。勿論殴られた。そんな一連の事が、空気を弛緩させた。

 

「ハハハ八ッ!タクス初対面にでもエロ全開?サイテーーー。」

「しょうがねぇよ、アイツァ生まれたときには既にエロ神様だからな。」

「シズさんもシズさんダゼ、無防備の相手にフルスイングって・・。」

「・・・馬鹿は死んだ事にすら、気付かない・・・・。」

「「「ヒッデーーーー!!」」」

 

 皆が大声で笑う。腹を抱えるものもいれば、高らかに身を反らしているものもいる。だが一箇所だけ、正確には一人だけ、異彩を放つ者がいた。

 緋乃崎は周りの声など聞こえないかのように視線をそちらに向ける。そこには一人の男が座っていた。体は大きく、髪は(おそらく兜だろうと思われるものを被っていて)見えない。しかし一目で強いと思わせる風格があった。緋乃崎と同じだ。いや、同じではない。少し違う。例えるなら虎を緋乃崎、その男はライオンといったところだ。刺々しくない優しい強さ。

 ふと、ある名前を思い出す。それは、チンピラのような男に絡まれた時だ。

 

「・・・・・あれが、ガイヤサンって野郎か?・・・」

 

 そうネイルに問う。不意に訊かれ心底驚いていた。

 

「へっ!?・・・は、はい。あそこに座っているのがベルベット騎士団のトップに君臨なさっているガイヤ=ウィリアスという方です。」

 

 ガイヤ=ウィリアス、親しみを込めてガイヤと呼ばせているそうだ。なんでもこの騎士団に入った者は自分の家族らしい。確かにあの男の放つ異彩さには、そんなことも容易にさせる雰囲気を醸し出している。

 

「あ、あの!ヒノ、ザキさん?ちょっとどこに行くんですか!?」

 

 耳に入る言葉を無視して歩を進める。辿り着く場所は、勿論、ガイヤの所だった。そして目の前に立ち見下ろす。緋乃崎流威嚇のポーズだ。

 ・・・こいつが、トップって事ァこの中で一番強ェ奴・・・か・・・・。

 「ん?」そう言ってガイヤが腰を上げる。

 緋乃崎は目を逸らすまいと睨み付ける。逸らせば何が起こるか判らない、戦場の中に立っているのだから。眼は必然的に上を向く、が、限界が来て顔ごと上を向く。逆に見下ろされる。180センチは優に越す巨体だ。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「なんだ?どうした?」

 

 かなりの威圧感だ、恐怖心を抱いてしまう。恐怖といっても未知数という意味の恐怖だ。やはり刺々しくない。むしろ良い意味で逆らいたくない。そんなところだ。

 

「・・・テメェが、ガイヤか?・・・」

「ん?お前は~・・・、ヒノザキか?さっきネイル総長が言ってたっけ。よろしくな。」

 

 そう言ってガイヤは、手を差しのべる。・・・・だが緋乃崎は仲良くしたいのではない。ただ力を見てみたい。敵意を向けてはいるが、応える様子もない。ならば方法は一つしかないので手を差し出す・・・わけもなく。右肩を後ろに引き、腕を少し曲げ、手の平の力を抜く。右足を摺足で後ろへやり、狙いを定める。足に力を入れ踏ん張る。腰、胴、の順に力を伝え捻る。その際、全体的に少し前傾姿勢になる。

 全身のバネを使い切るが、まだ腕が残っている。ここぞとばかりに肩に伝わった力を腕に廻す。足から腕に伝わった力を手の平に込め、強く握りガイヤの顔面にめがけて。

 一気に放つ!!!

 時間にして0.0005秒、文字にして162字。

 誰も気付かないスピードで、畳み掛ける。が、特に殴りたいわけじゃない。だから寸止めをする。距離数センチ。空気が凍りつく。この状況に皆が気づいたのだろう。

 

「・・・トップ気取ってる割にゃァ、・・弱ェのな・・・」

「弱い?俺が?それはこの状況を確認してから言ったらどうだ?」

 

 何の事だと問うと、下を見ろと言う。言われた通り見てみる。空気が凍るのも無理はない。何故なら。緋乃崎はガイヤの顔面スレスレに拳を寸止め、ガイヤは緋乃崎にアッパーカットで拳を寸止めしている。

「そんなことにも気付かなかったのか?」とからかうように言うが、顔が見えていない。それに、と言葉を続ける。

 

「俺の魔法は能力強化《ビルドアップ》だ。攻撃力、防御力、属性の耐性。能力という能力を底上げする。お前、火を使うだろ?なら火属性の耐性と防御力を上げれば、お前の攻撃は赤子のじゃれ合いだな。」

 

 ハッハッハと笑っている。

 鬱陶しそうに半眼で睨む緋乃崎。

 ・・・・よく喋るやつだな。自分の能力全部喋ってやがる・・・。

 だがしかし自分の正体を明かすことは、即ち絶対的な自信に満ちているということ。弱い犬ほどよく吼えるというが、それとは違う。明らかに違う。

 

「俺の勝ちだな。・・・何だ?もう諦めるのか?」

「・・・しろって言ってんのかァ?」

 

 今度は緋乃崎がからかうように言う。無表情で。

 

「やれるもんなら――――――」

 

 な、と聞こえたかどうかは定かではない。ただ鉄がひしゃげる音だけが轟いた。緋乃崎が殴ったのだ。顔面スレスレで。そんなトンデモ技を見て、あのガイヤが殴られたというのと、大きく仰け反っているのとで皆唖然としていた。

急速に静まる。当たり前だ。どんなに強靭な大男でも、あの超至近距離では攻撃にならない。だが緋乃崎は現にガイヤを仰け反らせている。しかも鉄をひしゃげさせている事から、その凄さを物語っている。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カチャッ。

 

 仰け反った巨体が、動く。鉄同士がぶつかるような音をさせながら。周りがざわつく。が、そんな音さえも耳に入らないくらいに、気持ちがざわついていた。

 ・・・・ありえねェ・・・。

 いくら本気ではないとは言え、鉄がひしゃげるほどの力で殴ったのだ。死にはしなくとも、気絶するのが妥当だ。なのに対して目の前の巨体は、上体を仰け反らせるだけ。ましてや攻撃を受け止めるかのように静止し、今起き上がろうとしている。

「やるな・・・。」鎧の奥から声が聞こえる。

 

ダメージがないように感じる。殴る前の声音と変わりない。

 

「今度は。こっちの番だ!」

 

 ガイヤは起き上がる反動で緋乃崎を殴り飛ばす。位置にしてネイルの横、入口から入ってすぐ右にある長椅子に勢い良く盛大に突っ込む。皆が息を呑む。改めてガイヤの凄さに。だがそんなことを他所に。

 

「だ、大丈夫ですか!?ヒノザキさん!!」

 

 ネイルが心配そうに声をかける。そしてガイヤに向き直り言う。

 

「いくらなんでもやる過ぎですよっ!」

「されっぱなしという訳にはいかないだろう・・・?」

「されたらし返すんですかっ!!?」

 

 と、ネイルがムキになって「貴方は・・」と言葉を続けようとする。

 だが自分の後ろで感じる違和感に遮られる。

 生暖かいものが絡みつくような。皮膚に刺さるような違和感。それは、盛大に破壊されて土埃が舞っているところからだった。

 

 黒いものが見える。

 シルエットではない、黒い者。

 室温60度――――――。

 温度が急上昇する。

 

 瞬間――――――。

 

 

 

ボワァァァッ!!!!!!

 

 

 

 空気が弾けるように土埃が消える。そこに居た人、いや、化物に誰もがたじろぐ。ガイヤでさえも。殴られたであろう頬は、黒く変色し、左手に駆けて侵蝕している。黒く、溶岩のように。そして狂ったように見開かれた眼で全てを一瞥している。

 

 

―――『炎帝』。緋乃崎 太陽――――――

 

 

「・・・・・アァァ・・・・・・チッ・・・・。」

 

 疲れたように嘆息し、舌打ちをする。同時に右手で込み上げる何かを抑えるように胸に手を当てる。

 皆、誰も声を出せないでいる。見ている光景が非常識すぎて。

 

「お前は・・・。・・・誰だ!」

 

 一声を放ったのはガイヤだった。顔は見えないがかなり警戒している。だがその一声が功を奏したのか、状況を理解しきれていないものが口々に相談している。声量は小さいが、静寂していたこの場では大きく聞こえた。

 

「・・・ウルセェ・・・・。。。黙れっ!!!」

 

まさに鶴の一声、虎の咆哮。空気が止まる、何もかもが止まる。呼吸する事さえ許されない。猛獣の檻に居る緊張感。

 

「・・・・おい。ガイヤとか言ったな、俺は頂天には興味は無ェが強ェ奴には興味がある・・・・。」

 

低く怒りに満ちた声音が、より緊張感を煽る。

 

「・・だから・・このナントカ騎士団ってのに這入ってやる・・・。」

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 応えられる筈も無く沈黙する。誰もが何かを発したいが恐怖で何もできない。だが。

 

「ッ!!本当ですか!?」

 

 緊張感を他所にそう笑顔で応えたのは、ネイルだった。

 

「良かったぁ・・・これでヒノザキさんも私達の仲間ですねっ。」何故か今まで以上に笑顔になっていた。

 緋乃崎は深呼吸をしながら自分の姿を戻すように力を抑えていく。『仲間』と言う言葉に反応したのか、受け入れる奴が居たからなのかは判らないが。

 ――――――少しだけ口の端が上がっていた。

 

 

 

 

 

 その後、緋乃崎自ら騎士団に在籍するための条件を設けた。

一つは、仕事内容だ。ベルベット騎士団は2時間おきに城内、城外を見回り、危険がないかを確認する。

その仕事をしないということ。だが戦闘においては積極的に、むしろ強制的に参加する。

もう一つは、緋乃崎自身への非干渉だった。なんてことはない、ただ干渉して欲しくない。それだけだ。

 ガイヤは勿論承諾した。何故なのか、彼にとってあの計り知れない化物じみた力は全てを消しかねない。

 しかもヒノザキの眼は何の躊躇いもなく、感情も無く、『無』で人を殺すと言っている。

 放っておけばいつか、仲間が。自分の家族が危うい。

 だが同時にヒノザキという男は、自分が何をしてしまうのか、何をしないのか。

 ヒノザキは、緋乃崎と言う人間を知っている。だからこそ心配には及ばないのだ。

とはいえ、条件を提示されているのに、こちらは何も提示しないのは尺に触るので。

『緋乃崎がなにか行動する際、ネイルも付き添わせる』という条件でこの話は終止符を打った。




ここで少しお知らせです。

この『救世主になりたい男の顛末』を読んでくださっている方々にはお伝えしようと思ったので、「後書き」にて書かせていただきます。

只今、別進行で漫画を描いていまして・・・・
小説とは全くもって関係のない内容のものを製作中なのですが、そちらの方に力を注いでいこうと思っているので

『一旦休止』

・・・という形をとらせていただこうと思っております。

勿論、楽しみにしてくださっている方や

更新されたからしょうがねぇ・・・読んでやるか・・・・

って人もいると思います。
この小説を読んでいる方がどんな趣で読んでくださっているのかはわかりませんが一旦休止させていただきます。
ちょうど区切りもいいですしwww


「んだよ・・・漫画描いてんのかよ?・・・いっちょ冷やかしにでも行くか!」

っとか言うと思うので詳細等は作者のツイッターを探して批判でもしてきてくださいwww



一発で見つかるといいですねwww
それでは~
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