第27話:ミナエルの苦悶
今は日曜日の朝4時である。昨日降った雪が積もり、豪雪地帯である名深市は全てが白に覆われていた。
ここはマダラの屋敷前の広場、銃弾と同じかそれ以上に速い雪玉が飛び交っていた。
少女マダラ「雪合戦など、イズナ達と遊んだ時以来だな。」ニコニコ
ババババババババババ‼︎
闘技場外での殺し合いが禁止になった選抜試験。
ねむりんに対して警戒する必要が無くなって熟睡したマダラは、100年以上前の記憶を思い出して上機嫌なのであった。
笑顔で9人の木分身達と、雪の弾丸を投げ続けていた。
ルーラ「凄く可愛い顔だけど、雪玉は凶悪ね。」サッ
たま「躱すのが精一杯!」サッ
幼女スイム「...前は躱すのも出来なかった。」サッ
幼女ユナエル「うんうん。」
輪廻眼ミナエル(今日も修行をさせるなんてマダラらしいなぁ。でも、おかげで緊張がほぐれた気がするよ。)
ちょうどその頃、森の奥では ねむりんも修行をしていた。かつては嫌がっていた早朝の修行にも慣れ、毎日の習慣となっていたのだった。
ねむりん「出来た...!」
ギュインギュインギュインギュイン!
ねむりんの両手の中には、光の粒子を纏った丸いチャクラが存在していた。
ねむりん(スノー、アリス。新しい性質変化、完成したよ....!)
新術の形態変化に万華鏡の瞳力、そして須佐能乎の修行を行うねむりんは、五影1人と同等の力を持っていると言っていいだろう。
そして時は流れ午後10時となり、夕食を終えたマダラの部屋には戸を叩く音が響いていた。
マダラ「開けていいぞ。」
輪廻眼ミナエル「うん。」
ガチャ...
輪廻眼ミナエル「...話って何?」
マダラ「後2時間で闘技場へと飛ばされる。作戦のおさらいをしておこうと思ってな。」
輪廻眼ミナエル「ちゃんと頭に入っているよ?能力を使う時は地獄道以外の能力を口に出して、本物の輪廻眼だと思わせればいいんでしょ?」
マダラ「その通りだ。俺は目を閉じたままだから、戦いの最中のアドバイスは出来んぞ?」
輪廻眼ミナエル「大丈夫だよ〜?ちゃんと戦うからね!」
マダラ「油断はするなよ...?」
輪廻眼ミナエル「わかってるって♪」
………………………………………………
深夜0時ちょうどに戦いを始めて10分が経過した闘技場。
広い観客席にはニヤニヤしているクラムベリーとファヴ、目を閉じたままのマダラと試合を見守るルーラ達、1人で下を向いて座っているリップル、クラムベリー達からそう遠くないところに座るねむりんの四方に分かれていた。
試合の展開は、猛スピードで上空を飛び回るトップスピードの晶遁により、殺すつもりで戦えないミナエルが押されていた。
トップスピード「晶遁・翠晶牢の術!」
足元から突き出す結晶の山々、触れれば一瞬で結晶に包まれるという性質を、ユナエルは投げた石ころで確認していたのだった。
輪廻眼ミナエル(どうして私の弱点を...)サッ...サッサッ
水や劇薬に変身する力は攻守共に優れているが、弱点も存在する。
それらは全て分子で構成されているので、晶遁の前ではただ避けるしかなかったのだった。
トップスピード「しぶといな...晶遁・翠晶分身の術!」
計10体のトップスピードが出現し、印を結んでいた。
それは、彼女自身が本気でミナエルを殺しにきていることを意味していた。
トップスピード達「「晶遁・破晶降龍‼︎」」
地面の土を結晶化させて作った30体の結晶の龍が、結晶の牢獄と共に襲ってきたのだった。
輪廻眼ミナエル「修羅道!ミサイル!!」
(爆発が結晶化するか確かめてみるか...)
クラムベリー「へぇ...修羅道ですか。それにしても...目を預けるなんて、マダラも面白いことを考えますよね。ミナエルが死ねば盲目になるというのに...」
ファヴ「トップスピードには頑張って欲しいpon♪」
パキパキ....ドゴォォォォォォン‼︎
ミサイルが結晶化するのと同時に起きた爆発で、結晶の龍10体が粉々になった。
輪廻眼ミナエル「やはり爆発や熱は現象だから、結晶にならないみたいだな。」
トップスピード「大した分析力だな。...行け!破晶降龍!」
輪廻眼ミナエル「修羅道!レーザー光線‼︎」
ビュイン!ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガ........‼︎
熱線は地面から生えた結晶と9体の分身、そして20体の結晶龍の全てを破壊したのだった。
トップスピード「...やっと戦う気になったみたいだな!」
輪廻眼ミナエル「違う!今のはお前を狙うつもりじゃ無かった!」
トップスピード「...うちは返し!」
持っていたうちは団扇に蓄積されたレイザービームを、風に変換してミナエルを吹き飛ばしたのであった。
輪廻眼ミナエル「ぐっ...」
トップスピード「晶遁・結晶五角牢の術!」
輪廻眼ミナエル「部分変身・背中!ジェット機!」
(敵の得意分野である空中戦は避けたかったが、しょうがないか...)
地面から出現した巨大な結晶を避けるために、上空へと飛んだミナエルであった。
トップスピード「翠晶分身‼︎晶遁・一糸光明の術!」
(シスターナナの魔法を、分身達でお互いに掛け合う!)
一糸光明の術とは自身を結晶で囲みつつ、ビームを放出するという攻守一体の技であり、30体の分身による、掛け算の容量で強化したビームの雨は圧倒的な規模を誇っていた。
迫り来る弾幕を前に、ミナエルは怯えるどころか怒りの感情が込み上げてきていたのであった。
それも仕方が無いであろう、命を救ってあげたい相手から一方的に攻撃されているのだからーー
輪廻眼ミナエル「...お前が私を殺したいのはよく分かった。私も本気で戦うとしよう。」
トップスピード「ハッタリのつもりか?」
輪廻眼ミナエル「修行では危なくて使えない技があってな....今見せてやるよ。魔力変換...」
<マダラサイド>
マダラ「やれやれ.....一緒に修行をした仲間だったから、穏便に済ませたかったんだがな。」
ルーラ「
幼女ユナエル「お姉ちゃん、あれを使うのか....!」
たま「あわわわわ.....」
幼女スイム「♪」ワクワク
<クラムベリーサイド>
ファヴ「向こうの連中が騒ついているpon!」
クラムベリー「ふふふふ...何か面白いものを見せてくれるのでしょうか。」
<リップルサイド>
リップル「⁉︎」
(あの小さな石は何だ?)
リップルが驚いたのは、無理もなかった。
ミナエルが弾幕に向かって投げたのは、魔力で生成した小さな石ころ数発である。
しかし、それははただの小石ではなかった。
光線にぶつかった途端に閃光を放ち、その大きさからは想像できない規模の爆発を起こしたのである。
クラムベリー「原子爆弾...魔法の国も認める、人間達の発明品ですね。」
ファヴ「また世界大戦が起きて欲しいpon☆」ケラケラ
クラムベリー「全くです。次の選抜試験は国が違う魔法少女どうしを戦わせて、戦争を起こしましょうか。」
ファヴ「最高のアイデアだpon♪」
キノコ雲を見ながら笑う2人の巨悪であった。
分身トップスピード「あの石、まさか...」
輪廻眼ミナエル「ウランだよ。名付けて...ミニ原子爆弾。あまり規模が大きいと観客にも当たるでしょ?まぁ、これで私の力は分かったと思う。」
(地獄道以外では殺せないし、完全な個人戦じゃないからやりづらいな...)
分身トップスピード「この結晶にヒビが入っていない時点で、大したことないよ。もう一度だ!」バッバッバッバッ
輪廻眼ミナエル「どうして戦いたがるんだよ...!」
(硬さは一級品か....)
トップスピード達「晶遁・神柱光明‼︎」
輪廻眼ミナエル「魔力変換・ブラックホール!」
(本当は、口寄せの閻魔だけどね....!)
口寄せした閻魔に光線を食わせたのだが、閻魔を見ることが出来ない周りの者達は、ミナエルが本当にブラックホールを出して吸収したと認識したのだった。
クラムベリー「!....凄すぎます。どこまで魔法の強化を施したんでしょうか。」
輪廻眼ミナエル(閻魔を踏み台にッ...!)
「天道!万象天引!」
バッ
見えない壁を蹴ってジェット機で飛び去ったミナエルの動きに、クラムベリーはさらに興奮していた。
クラムベリー「引力を操作して空中移動ですか。彼女は輪廻眼を使いこなしています。」
ファヴ「ミナエル...中々凄いpon!」
クラムベリー「ああ!私も戦いたい...!」
トップスピード「くそっ...変則的な動きだ!」ハァ...ハァ..
(チャクラも少なくなってきたな....)
輪廻眼ミナエル「もう終わりにしてやるよ。魔力変換・奥義...」
ミナエルはトップスピードの軍団に向かって、ホース状に変換した腕から正体不明の液体を飛ばしたのだった。
トップスピード達「晶遁・紅の果実!」
(この結晶は無敵だ!)
ジュオオオオオオオオ.... ジュウウウウウウウウ......
ウワァァァァァァァ‼︎ やめてぇぇぇ! グァァァァァァァ‼︎
トップスピード「嘘だろ...?」
さっきまで隣にいた分身達は結晶を融解して浸入してきた液体に触れた途端、断末魔と共に消えてしまったのである。
輪廻眼ミナエル「壊せないなら溶かせばいい。...さすがオリジナルだと褒めたいところだけど、このままだと死ぬよ?凶悪な劇薬どうしを魔力で融合した“ミナエル酸”だもん。」
トップスピード「ミナエル酸だと...?」
輪廻眼ミナエル「フッ化水素、フルオロスルホン酸、フルオロアンチモン酸、王水、カルボラン酸、マジック酸...他にも色々混ぜて、全ての良いところを取った酸だよ。...さて、大人しく魂を抜かせてくれるかな?」
トップスピード「...嫌だ!」ポロポロ
ルーラ「勉強の成果ね。」
マダラ「ミナエル酸は俺の須佐能乎も簡単に溶かすからな。大した力だ。」
たま「ミナちゃんが味方で良かったぁ...」
輪廻眼ミナエル「どうしてそこまで拒むんだ?」
トップスピード「......」ポロポロ
(お腹の子を守る!3つ目の人工チャクラの身を食べてやる!)
自身の懐から果実を取り出すトップスピードであった。
ねむりん「‼︎」
(2つの果実でさえ経絡系がボロボロなのに、3つ目なんて無理だよ!)
ガツガツガツガツガツ.....
輪廻眼ミナエル「!....おい、やめろって!」
(水の果実か⁉︎)
トップスピード「ゲホッ...溶遁の術!」ボタボタボタ
輪廻眼ミナエル(私の酸が操られたッ...!)サッ
「....!」
ミナエルが酸の液体を躱して下を見た時、命が尽きたトップスピードが変身前の姿で落下していたのである。
ファヴ「マスターも意地悪pon。無理だと分かってるのに、5つの果実をあげるなんて♪」ケラケラ
クラムベリー「お詫びのつもりだったんですよ?隣にリップルがいる前提で、シスターナナの魔法を選んだ彼女への...」フフフフフ
輪廻眼ミナエル「‼︎」
リップル「ちっ...」
(半年間は死なないって、こういうことだったのか.....!)ポロポロ
たま「お腹が膨らんでるよ...」ポロポロ
ルーラ「子供がいたから、拒否したのね...」
マダラ「外で生きられない赤子は、地獄道でも蘇生することは出来ないからな。」
幼女スイム「...」
(...母親が死ねば、赤ちゃんも死んじゃうんだ。)
幼女ユナエル「!」
(ねむりんが泣いてる...)
ねむりん「うううっ...」ポロポロ
ファヴ「子供も死んじゃったpon☆」ケラケラ
クラムベリー「ミナエルが羨ましいです...芽吹く命を摘み取る快感。...たまらないでしょうね♪」
ファヴ「ザコの子はザコ。生まれる価値なんてないpon♪」ケラケラ
ねむりん(クラムベリーとファヴ.....私はお前達を許さない。)
2人の話しを聞いていたねむりんは静かに、自らの闘志を燃やすのだった。
ミナエルがつばめの遺体を空中でキャッチしたところで、気持ちを逆なでするかのような、軽快なアナウンスの音声が流れた。
ピンポンパンポーン♪
ファヴ「決着が着いたpon!勝負はミナエルの勝ち!おめでとうpon☆さっそく明日の組み合わせを抽選で決めるpon!」
巨大なスクリーンに白黒の生物が映った後は、抽選画面へと切り替わったのであった。
ねむりん「‼︎」
(嘘でしょ......)
マダラ「ん...?俺と誰だ?」
ルーラ「ユナエルよ...」
ファヴ「盲目は辛いpon?はやくミナエルから、目を返してもらうpon♪それじゃあ頑張るpon☆」
輪廻眼ミナエル「ファヴ!勝った私に魔法を選ばせろよ!」
ファヴ「あー忘れてたpon☆トップスピードかシスターナナの魔法のどちらかを選んでいいpon♪」
輪廻眼ミナエル「...トップスピードの魔法にするよ。」
リップル「......」
ファヴ「元相方のリップルの目の前で、よく言えたpon♪」
マダラ「気にするなミナエル。端末のボタンを押して、みんなで帰るぞ。」
輪廻眼ミナエル「はーい♪」
幼女ユナエル「わかりました!」
ねむりん「.......」
(明日殺しあうのに、どうしてこんなに気楽なの?)
端末のボタンを押したマダラ達は、いつもの屋敷へとワープしていった。
輪廻眼ミナエル「ううう...ううう......」ポロポロポロ
闘技場では気丈に振る舞っていたが、屋敷に戻った途端に泣き出してしまったのだった。
幼女ユナエル「お姉ちゃん...」ギュ
たま「ミナちゃん....」ポロポロ
ルーラ「ミナエル、あなたは悪くないわよ...」ナデナデ
輪廻眼ミナエル「でも仲間の命を奪ってしまった...!私はどうすればいいの....」ポロポロ
幼女スイム「...2人の分まで生きるしかない。」
マダラ「その通り。もっと強くなって、こんな戦いが2度と起きないようにするのが....唯一の償いだろうな。」
輪廻眼ミナエル「うん.......分かった!私もっともっと強くなるよ!これからも修行よろしくね。」ポロポロ
マダラ「任せておけ。」
ルーラ「それじゃ、私たちは眠りましょうか。」チラ
幼女ユナエル「そ、そうだね。」
幼女スイム「ふわぁー...」
たま「おやすみ〜」
昨日から2人部屋で眠ることが出来るようになり、みんなはそそくさと部屋に行ってしまった。
マダラ「あいつら...そんなに眼球を見るのが怖いのか。」
輪廻眼ミナエル「う、うん。」
(みんな、気を遣わなくていいのに!)
ミナエルがまだ落ち込んでいると思い、今晩はマダラと2人きりにさせようというルーラ達の気遣いであった。
マダラ「終わったぞ。痛くなかっただろう?」
ミナエル「うん!それじゃあ、シャワー浴びてくるよ。」
マダラ「今日の戦いぶりは見事だった。お休み。」
ミナエルと分かれた後、個室で料理本を読むマダラ。
マダラ「キャラ弁か...。これからの弁当で試してみるか。」
コンコン!
扉を叩く音に応答すると、髪をバスタオルで拭きながらの美奈が入室し、マダラのベッドに腰を下ろしたのだった。
美奈「.....」
マダラ「どうした?明日の朝も早いぞ。」
美奈「えっと...」
マダラ「...罪の意識で眠れないのか。」
美奈「うん...。関係ない赤ちゃんを殺しちゃったから。」
マダラ「ミナエルよ。あの赤子は殺されたのではなく、死んだのだ。結末は同じだが、過程が大きく異なると思わないか?殺し合わなければ生き残れない戦いにおいて、最後までお前に殺意は無かった....凄いことじゃないか。
それに俺は2度死んだから分かるが、人は望めば何度でも生まれ変われる。きっと今頃、トップスピードとその子供は、どこかの家の双子として生を受けてるかもしれんな。」
美奈「ありがとう....」ポロポロポロ
マダラ「あぁ。....もう大丈夫か?」
美奈「うん」ゴソゴソ
マダラ「何をしている?」
美奈「リップルが怖くて眠れないから、一緒に寝てよ!」
マダラ「そうか、なら全員でだな。」
早苗「気配を消してたのに、何でわかるのよ⁉︎」
綾名「さすがお父さんです。」
優奈「お姉ちゃんだけなんてずるい!」
珠「ずるいずるい!」
美奈「みんな寝たんじゃ無かったの⁉︎」
マダラ「やれやれ...布団を用意するか。」
マダラが大広間に布団を用意している頃、ルーラを除く少女達はマダラの両隣を決めるジャンケン大会で賑わっていた。
少女マダラ「俺は端で寝るから、それじゃあな。」
美奈「イジワル!てか、変身するなー!」
綾名「...どうして変身するんですか?」
少女マダラ「同衾というものは、好きな人とするものだろう?自分の恋人とやってくれ。」
綾名「どうきんって何ですか?」
少女マダラ「主に男女が一緒に寝ることだ。」
早苗「あなたに異性への感情なんて無いでしょ?ジャンケンに勝った2人の要望を聞いてあげて?」
少女マダラ「あぁ。」
(ルーラは本当に気が強い奴だな...)
美奈「恥ずかしくなったから、やっぱり変身してて!」
たま「私はどっちでもいいよぉ〜♪」
少女マダラ「わかった。消灯するぞ。」
電気が消えた真っ暗な部屋。
照らすのは月明かり、聞こえるのは少女達の声。
美奈「あったかい...」ムギュ
珠「お父さ....あ、今は妹だった!」ムギュ
少女マダラ「...くっつきすぎだ。」
(まぁ、悪い気はしないがな。)
優奈「明日は私が隣だからね?」
綾名「...私も隣。」
優奈「わかってるって♪」
早苗「川の字で寝るのって、楽しいわね。」
少女マダラ「...そうだな。」
川の字で眠るマダラ達、平和な時間を噛み締めているかのように安らかな寝顔である。
続く
ミナエルには飛行能力がありますが、ジェット機の方が速く飛べるのでそうしました。
閻魔の中では抜いた魂と体が無いと蘇生できないということで、お腹の中の胎児までは救えないということにしました。
トップスピードは、我が子を殺してまで自分だけが助かるのは嫌だったのでしょうね。
ジャンケンをせずとも、今日だけはミナエルを隣で寝かせようということになりました。