アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第三十六話 流星決闘録!相対するは赤の武御雷

 

 

 こんにちは 沙霧真由です。

 さて、帝国斯衛軍月詠真那中尉と戦術機タイマンです。

 

 

 『出雲の伊耶佐小浜に降り立つ伊都之尾羽張の子よ。天照が求めし武勇の柱。大国主が認め建御名方を征した雄々しき雷。荒魂沈める 御国の守護者たるは今。雷光たれ武御雷!』

 

 などと呪文を唱えて月詠さんてばやる気マンマンです。呪文を唱えると武御雷って強くなるのでしょうか? 堂々たる赤い武御雷が長刀を構えると本物の武者みたいですね。月詠さんとは以前にタイマンっぽいことをしましたが、まさかガチなタイマンをすることになろうとは!

 それにしても米軍と戦った途中から姿が見えなくなったのはまさかタイマンするため?それに武器も突撃砲じゃなくて長刀? その理由というのが

 

 『殿下を狙撃した米軍と歩を合わせるは帝国斯衛の矜持としてできん。そしていかに貴様が強かろうと長刀一本で戦う貴様に銃器を使うことはできん!ゆえに私も銃は捨てた!貴様に合わせこの長刀一振りでお相手しよう。この戦い、帝国の命運のみならず帝国斯衛の誇りも賭かっていると見た。残った二〇七訓練小隊の者共は手出し無用!私が決着をつける!』

 

 ………だそうです。別に私が勝っても帝国をどうこうできるワケもないんですがねぇ。それに軍人がテロリスト相手に『相手は丸腰で一人!ならば正々堂々が流儀なこの俺も丸腰で一人で捕まえてみせよう!』などと言ったらただのバカでしかないと思うんですが。

 

 しっかしこの流星にタイマンとは!プークスクス!まったくもう月詠さんたらあまり笑わせないでくださいよ。雪ダルマなパイロットスーツに埋まって酸素マスクつけてる状態なんだから。こう大笑いすると辛いんですって!しょうがないなあもう。10秒だけ相手してあげますからね?この後メガネに説教しなきゃなんないんですよ。忙しくてあまり相手できなくてすいません。テヘッ☆

 

 ……と、上から目線どころか上からビームアイな考えで相手したんですが……月詠ファンの方々ゴメンナサイ。月詠さんナメてました。今苦戦してます。

 まず剣戟モーションいじって速くしてますね。タイミングとるのが難しくなるんで普通はやらないんですが、多分月詠さんにとっては普通じゃ遅すぎるんでこうしたんでしょう。でも動作は同じ!動きの合間に素早く懐に入って………入れません!間合いの取り方が完璧すぎ!

 

 この状況に陥って、同じ斯衛の三バカとの闘いを思いだしました。なぜ彼女らとの闘いでたった一回フルオートされただけであんなに戦慄したのか?

 私は物理学チート。対象物を見ただけでその力の強さも性質も方向もわかっちゃうので原子を見ればどんな素材かの鑑定を。戦術機を見ればこれからどう動くかの先読みができます。これにより弾よけという芸当が可能です。とはいえ流星の動きのタイミングや、相手の射撃する距離によっては避けるのが難しい場合もあります。問題は距離。近すぎても遠すぎてもいないその地点で撃たれたら大きく動かないと射線が外せない、という距離があります。私も伊隅ヴァルキリーズとの闘いでそれを学んだので、相手との距離は適切に保つようにしたんです。が、三バカはその距離に来るまで一切撃たず、その距離に来た瞬間三人同時に一斉射撃してきたんです!

 つまりどういう訓練をしているのか帝国斯衛ってのは恐ろしく間合いの取り方が巧み。月詠さんの攻撃をなんとかギリギリ躱すのが精一杯で、攻撃しようにもきっかけを与えてくれません。これが今の状況です。

 

 『聞こえているか?銀の戦術機の者。たとえ貴様が聞いておらずとも構わん。勝手にしゃべらせてもらう。』

 

 月詠さんから通信が来ました。聞いているけど声は届きません!

 

 『私の剣がここまで見切られたことはかつてなかった。正にバケモノだな。』

 

 いえ、私の先読みと流星の圧倒的パワーとスピード、それに無数の動作モーションに武御雷の長刀一本で互角な貴方の方がバケモノです。

 

 『貴様も白銀と同じく何らかの強化をされた者か?だが貴様らの組織がいかに人知を超えていようと、師の名にかけて我が鍛錬否定されるわけにはいかん!我が名は帝国斯衛の月詠真那。いざ尋常に勝負!』

 

 ………新撰組モノにでも行っちゃってください。あとまだ謎組織とか信じちゃっているんですか。月詠さんのセリフ聞いていると私はどこの超時空戦士になっちゃったのかと思いますよ。

 とはいえそろそろ酸素マスクの酸素も心もとないし、何よりこのままこんな戦闘狂と闘っていてはチキンハートな私が潰れてしまいます。しかたない、私もいざ尋常に勝負!

 ビーム長刀を高々と上段の構え。XM3の剣戟モーションのいくつかは冥夜さんに入れてもらいましたが、これもその一つ。見事な火の構え。

 

 『いい応えだ。火の構えか。この月詠に腹を見せる度胸、それだけで貴様の強さがわかる。

 しかしなつかしいな。修行尼時代さんざ師にくぐらされたものだ。”くぐれば極楽くぐらば地獄 六道歩む瀬に迷い無し”そう謳われてな。』

 

 訓練じゃなくて修行ですか。月詠さんってばタイムスリップしてきちゃったんですね?はい納得です。

 武御雷、獲物見据えるよう腰を低く、機動音も静かに長刀斜め下に八相の構え。

 来ますね――――

 

 

 

 

 『いざ、見事くぐり抜けよう!帝国斯衛月詠真那、参る!』

 

 地を這う疾走! 低く迫るは赤の武御雷! 猛き荒武者獅子吼の一刀見せんとす!

 

 スピード全速の90%。これまでのデータから長刀の間合い一歩手前の瞬間に百%にするつもりですね。ならばそれに合わて振り下ろします!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ………………ウソです。私はビーム長刀をポーイと上空へ投げ捨てました。一瞬武御雷がブルッと震えた気がしました。

 そして大ジャンプ! 流星のパワーと脳波コントロール装置の即応性はこんな一瞬でも目標の高さに達することができます。

 下にブンッと長刀で空切る武御雷。上から見ても素晴らしい抜刀術!位置取り完璧!勝負しないで良かった!私はパシッとビーム長刀を掴むと剣先を下に向け武御雷目がけて落下!

 

 

 ザクッ!!!

 

胸部の制御機器を貫き武御雷を地面に縫いつけました。恐るべき武勇の赤き武御雷を征した瞬間でした。

 

 

 私のウソに騙されない者はいないのです。思い出を穢しちゃってすみません。

 

 

 

 

 

 




 第三のライバル撃破!
 熱き闘いを征した真由はこれから何をする………?

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