アンリミテッドは無理ゲーすぎる!   作:空也真朋

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第四十七話 純夏さんにお願い

 

 

こんにちは 沙霧真由です。

 いよいよこの世界の純夏さんと対面です!ヒャッホ~~~ウ!

 え?鏡見ればいいだろうって?そりゃあ顔だけなら私が少し幼いくらいでほとんど変わりませんが、やっぱり前世からのファン心理というやつです!

 

 

 「それで鑑との用件、人払いとかはしなくていいの? あたしや白銀なんかも聞いてかまわない内容?」

 

 夕呼さんが聞いてきました。

 

 「ええ。それはかまわないんですけど涼宮さん、純夏さんのことは?」

 

 「ああ、鑑が00ユニットってことはA-01じゃ白銀と速瀬、それにこの涼宮が知ってるわ。A-01とあたしの通信は涼宮が繋ぐし、秘密にすると面倒なのよ」

 

 やがてノックがして促されて白銀君達が部屋に入ってきました。あ、霞ちゃんもいましたか。夕呼さんの部屋にいないと思ったらそっちにいたんですね。

 そして純夏さん!不思議そうにこっちを見ています!

 いや~感動ですねえ! この感覚、前世の私が甦ってくる感じです!なにしろマブラヴで一番好きなキャラでしたから!

 

 「真由、ひさしぶりだな。…………と、手錠なんかつけられているのか。そっちの暮らしなんかは大丈夫なのか?」

 

 と、白銀君が話しかけてくれました。白銀君もひさしぶり!

 

 「いえいえいえ。生活に不自由はないんですけど、みんなと中々会えないのが苦痛ですよ。こんな腹黒い女ギツネの顔にはもう飽き飽きです!」

 

  ――――ピキッ

 

 おや?なんの音でしょう?

 

 「ありゃ、ここには椅子がありませんね。お~いそこのおばさん、純夏さんに椅子を持ってきて! ないならそこで偉そうに座っている椅子を純夏さんに貸しなさい」

 

 いや~この世界の純夏さんに会えてすっかり舞い上がってしまいましたよ。おかげで後ろからの殺気にも気がつきませんでした。こんなにも凄い殺気なのにね。ギャア~~~~!!

 

 

 

 

 

 「ええっと………ずいぶん首しめられていたけど大丈夫?私への用ってなにかな?」

 

 と、純夏さんが聞いてきましたけどもうちょっと待ってください。まだ声がでませんから。

 

 「はい、真由さんお水です」

 

 霞ちゃんがくれたお水でようやく一息ついて声がでるようになりました。涼宮さんも夕呼さんを止めてくれてありがとうございました。

 落ち着いたので、私は持ってきた容器から石の塊のようなものを出しました。

 

 「それじゃ、早速お願いします。これは地下の反応炉のカケラを元に作ったBETA言語を記録できる記憶媒体です。これにBETA言語である命令を入れて下さい」

 

 通称として”BETA言語”と呼んでいますが、そういう言語があるわけではありません。ハイブの上位BETAから発せられる下位のBETAに送られる脳波型言語をそう呼んでいるのです。

00ユニットである純夏さんは佐渡島ハイブでBETAの思考をリーディングで読み取ったのでそれを理解できます。さらにプロジェクション能力(相手に思考や感情を投影する能力)を持っているのでBETA言語を発することができるのです。

 

 「うん。やってもいいけど、それでBETAにその命令を実行させるのは無理だよ? BETAはハイブからの命令しかきかないんだよ?」

 

 「知ってますから大丈夫です。決して無駄にはしませんのでお願いします」

 

 「まあわかっているならいいや。で、なにをいれるの?」

 

 「いれて欲しい”言語”は二つ。二個あるのでそれぞれに入れて下さい。ひとつは”人類ニ関シテノ重要ナ情報アリ。”もうひとつは………」

 

  それは全ての人類の願いの言葉。

 

 

 「”全テノBETAニ命ジル。自壊セヨ。土ニ帰レ”」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 純夏さんに記憶媒体の”カケラ”にBETA言語をいれてもらった私はそれを丁寧に容器に戻しました。さて、これで進めるところまで進めないと。

 

 「ありがとうございました。それじゃこれで私は戻りますね。………あ、白銀君」

 

 「うん?」

 

 なぜか私はふいに純夏さんを気遣う白銀君にこう言ってしまいました。

 

 「いつまでも…………純夏さんと仲良くしてくださいね。ずっとそうやって一緒に」

 

 純夏さんの行く末を知っているのにこんなことを言ってしまいました。なぜでしょうね?

 

 「真由………?」

 

 おっと不審な感じになってしまいましたか。白銀君に問われる前に部屋から逃げだしました。 

 

 

 

 

 さて、本当は慧さんなんかとも会っていきたかったのですが、あのイベントまで時間がありません。帰還の旨を告げるとゲートまで夕呼さんが見送ってくれました。

 

 「まあ、やりたいことはだいたい分かったわ。それをどうにかしてBETAに実行させようってワケね?」

 

 「ええ、まあそんなとこです。それじゃ私はムショに戻りますね」

 

 「あたしはこのまま基地に残るわ。29日の夜にはそっちに行くから………と、河崎重工の業者が次の30日に来るんだったわね。あんたの言うとおり新素材で作ったパーツやらその他あちこちの戦術機の予備パーツをその日に来るよう手配したけど、買いすぎじゃない?あれじゃそのまま戦術機が7,8台作れちゃうわよ。戦術機はけっこう余っているんだけど?」

 

 「いえいえ、きっと『ラッキーだわ!』って喜ぶことになると思いますよ」

 

 「ふーん?………まあいいわ。流星の方もちゃんと29日に動かせるよう段取りつけておくわ。気をつけて帰りなさい」

 

 夕呼さんにさよならしてゲート前に止めてある車の前に来ました。護衛さんがドアを開けてくれたので中に入ろうすると、

 

 

 ウオオオオォォォォ………………

 

 

 と一瞬地下の反応炉が大きく呻ったのを聞きました!

 私の脳にはBETA技術由来の記憶補器が埋め込まれているので、ある程度反応炉の響きのようなものが聞こえるのですが、こんなに大きいのは初めてです!

 

 「……………あ」

 

 その戦慄するかのような音に私はひとつ大事なことを見落としていたことを思いだしました。

 

 (……そうだ、BETAは佐渡島戦の前までは本気じゃなかったんだ)

 

 BETAは生物の形をしていますが、実は資源採掘ロボ。資源採掘が優先で人類の排除はその次。でも佐渡島ハイブを潰した人類を脅威と感じ、人類排除を最優先にしたら………?

 ……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………なるほど、私がためらっているヒマなんてなかったんですね。そしてやはりこれから起こる横浜基地襲撃こそ全ての運命の分岐点。

 今更ながら無茶な決断をしてくれた夕呼さんに感謝です!

 

 

 

 「………?どうしました、沙霧?」

 

 いきなり固まった私を不審に思って護衛さんが聞いてきました。

 

 「あ、何でもありません。早く帰りましょう」

 

 

 ―――――来ますねBETA!

 

 

 私はにわかにざわめき始めた佐渡島があった方を一瞬睨んでから、車に乗り込みました。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 




 運命の日迫る! 
 真由は見据える
 
 人類の勝利を!!

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