こんにちは。沙霧真由です。
四時間に渡る検査がやっと終わりました。今、白銀君といっしょにピアティフさんに案内されて応接室へ向かっています。
それにしても、女として白銀君を見るとやっぱり女を引きつけるものがありますね。基地に変わりはてた元学校を不安そうにキョロキョロ見回す姿が可愛いと感じてしまうあたり、私もすっかり女の子になってしまったようです。
さすが恋愛原子核!私も引きつけられてしまいそうです。
やがて、ある部屋の前に来てピアティフさんは扉をノック。
「香月副司令、連れてまいりました」
うながされて中に入ると制服に白衣を着て不機嫌そうに座っている美女。
香月夕呼! ババーン!!
やっぱりラスボス感ありますね。白銀君以上に感動してしまいます。
「夕呼先生……?何やってんですか?」
「え?」
さぁ、というわけでアンリミ冒頭の夕呼さん、白銀君の邂逅が始まりました!
香月博士直々のBETA講義、平行世界理論は聞きごたえありますねぇ。
ごちそうさまでした。
「社」
おっと、リーディング少女霞ちゃんが呼ばれて入ってきました。夕呼さんのそばに来ると、何やら小声でお話ししています。そして白銀君を見てニヤッと笑い、私をきつい目でにらみます。
「いいわ、白銀。とりあえずあんたを訓練兵として置いてあげる。ピアティフ」
ピアティフさんが入室。
「彼をまりものところへ連れていきなさい。それと二〇七訓練兵としての編入手続きを。まかせたわよ」
「はい。了解しました」
白銀君はピアティフさんと退場。霞ちゃんも隣の部屋へもどりました。
「さっきの女の子は何だったんです?」
まあ知ってるけど聞かないのも不自然ですからね。
「何でもないわ。ちょっとした連絡よ。それよりあんたこそ彼、なんで連れてきたの?」
「ここへ来る途中出会いました。すごく困っているような彼を放っておくのは私の正義の心が許さなくて連れてきてしまいました。まさか平行世界の人間なんて驚きだなあ!」
巧みなウソで即答!夕呼さん、ジト目をしながらもすっかり信じてます。
「…………まあいいわ。それよりあんたがくれたレポートの件だけど」
「はい、お見せするのも恥ずかしいシロモノですが一応批評をください。
『ヨシ、半導体百五十億個分の並列処理を手のひらサイズにしよう!私様に不可能はねえ、私様は天才だあ!』と、馬鹿なことに挑戦して『あびゃあ!やっぱり出来ませんでした。おバカでゴメンナサイ、ゴミでした。』なんてレポートですからね。バカで笑っちゃうでしょ?うん、バカです。自分で笑っちゃいます。プークスクスッ アーッヒャヒャヒャヒャ……」
ギロ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!とにらまれた!?
ヒイイイイイイイ怖い!からかいすぎた?
「……そうね。批評をあげる。あれは世界最高の科学者達と技術者達が心血をそそいで作りあげたものよ。あれをどこで手に入れたの?」
いきなりぶっちゃけた!?
これが香月夕呼の交渉術!?
横浜の女狐ハンパねえ!
「私が入学してからコツコツやってきたものです。そんなすごい評価をくれるなんて感動で震えちゃうなあ!」
ウソです。
希望届け出す時このイタズラ思いついてパパッとつくっちゃいました。いやー解けない問題って楽しいですね。五日も頑張っちゃいましたよ。おかげで本当の研究時間が大分削られちゃいました。震えているのは怖いからです。
「………まあいいわ。あなたはまだ学生で本採用は出来ないけど見習いで雇ってあげる。二年間こちらの講義で卒業資格と同時に正式に雇うわ。それと健康に問題があるようね」
「はい、定期的に特殊なお薬を飲んでいます」
前にもいった通り私、普通だと脳の働きが凄すぎてまわりが止まって見えたり、物質の構成が細かくわかっちゃったり、人や状況の先がわかりすぎちゃったりして普通にくらすことができません。ですので脳の働きを鈍らせるお薬を定期的に飲んでいるのです。私がお医者様の家に引き取られたのはそんな事情もあるのです。
「なら三日ごとに健康診断を受けてもらうわ。薬もこっちで調合してあげる」
なにやら面接定番の志望動機すら聞かれずに採用されてしまいました。これでは最初から採用を決めていたことがまるわかりです。ピアティフさんは念入りに舞台を整えていたのに。
いえ、私に茶番は無用と見切ったのでしょう。無駄でも茶番をやる人は多いのにこの判断の速さはさすがというしかありません。
横浜の女狐、堪能いたしました!
面接で大笑いする真由! それをものともせず採用する夕呼! 息づまる二人の対決! 二人が再び相まみえる日はいつ!?